ムサシ救難信号から翌日
横須賀高等宇宙学校 会議室
横須賀校の地下にある、薄暗い会議室にて。同校校長の宗谷真雪は、部下からの報告を受けていた。
「校長……現在ムサシ、ハレカゼを含む数隻の学生艦に加え、ガミラスの留学生艦までもが行方不明となっております。どの船も位置情報を切っており、現在、残りの保有艦艇で捜索を行っているところです」
真雪は状況の深刻さを改めて噛み締める。
彼女の後ろのモニターには、太陽系を表した星系図が映し出されており、そこにはロストした学生艦の最終発見位置が表示されていた。
彼女が考え込んでいる最中、傍のパソコンに映し出された教官の古代進が、謝罪を述べる。
『宗谷校長、申し訳ありません。自分が、ヒペリオン基地を留守にしてしまったばかりに……』
「問題ないわ、古代教官。貴方がサルシマの救援に向かったのは、あの状況では致し方ないことよ」
あの状況でサルシマを放置するという選択肢はないだろう。古代は間違った選択はしていない。真雪はそう言って古代を庇った。
だが、状況は悪いままだ。部下が深刻な表情で最悪のシナリオを告げる。
「しかしこのままでは、本当に反乱行為と見做され、防衛軍本隊による治安出動すらあり得ます」
「まだ真相がわかっていないのに、生徒達を危険な目に遭わせるわけにはいかないわ。私たちは、あらゆる手段を尽くして生徒を守るのよ」
とにかく、真雪達は事態が悪い方向に転じないよう、尽力するしかなかった。できる範囲のことは全部やらなければならない。
「古代教官、そちらは引き続き学生艦の捜索を。何かあればすぐに連絡して」
『了解しました』
真雪は古代にそう伝える。古代は彼女に敬礼を挟むと、通信を切った。
そして── 真雪はパソコンの方から目線を前に持っていく。会議室の長いテーブルの向こう側に、一人のガミラス人がいた。
「……それで?」
宗谷は疑念を抱えたまま、ガミラス人に問いかける。
「ガミラス大使館からの使者、という名目でやって来たそうね。貴方は何者なのかしら?」
真雪の言葉を受け、ガミラス人は片腕を直角に曲げ、ガミラス式の敬礼を挟んだ。ここは地球であるにも関わらず。
「クラウス・キーマン、階級は中尉です。ガミラス大使館から出向して参りました」
そう答えるのは、この学校の滑走路に大使館仕様の白いツヴァルケで着陸した、ガミラスの使者を名乗る男だった。
ガミラス大使館の主要職員の名簿には載っていない人物だ。防衛軍のデータベースでも、彼の名を見たことはない。胡散臭くて信じ辛い肩書きだった。
「今回のガミラス学生艦の件については、すでに大使館側も把握しています。今回の件を速やかに処理するため、地球とガミラスの高等宇宙学校を連携させ、対処するためのパイプ役として派遣されました」
「……バレル大使が自ら声をかけなかったのは?」
「大使が動くのは目立ちます。声をかければ防衛軍にも把握されるでしょう。彼らを動かさず、内密に処理する必要もあります。これは、其方の面子を考慮してのことです」
其方の面子、と言われて宗谷は眉を顰めた。要は、お前達の面子を確保してあげているんだぞ、という意味の暗喩である。
怪しいが、彼の言う通り、今回の件は横須賀校だけでは処理できる可能性は低い。少しでも味方がいるならば、利用してでも手を組むしかないだろう。真雪はそう判断した。
「……分かったわ」
「校長……」
「では貴方にはバレル大使及びバレラス高等宇宙学校との連絡役として、ここで対策に参加してもらいましょう」
真雪がそう言ってキーマンの参加を受け入れると、彼は無言で足を揃え、真雪の承諾に答えた。
一部の部下達はまだ彼を疑っていたが、真雪としても、連携のためのパイプ役は欲しいところだった。疑念はあれど受け入れるしかないだろう。
そんな会話が終わった時だった。会議室の扉が雑にノックされ、外から慌てた様子の黒髪の女性が入ってきた。
「お母さん!大変よ!」
「どうしたの?」
そう言って息を切らして入ってきたのは、宗谷真雪の娘にして、宗谷家の長女、宗谷真霜だった。
彼女は家族関係が赤の他人のキーマンに把握されたのも気にせず、内容を報告する。
「たった今、防衛軍の暗号通信を傍受したの。それによると、ハレカゼ迎撃のための指示が、木星沖の山南宙将に──」
「なんですって!?」
真雪は真霜の言葉に驚いて、席を立ち上がった。部下達にも思わず動揺が走る。
「一歩遅かったか……」
これにはキーマンも思わず唇を噛む。
どうやら学校やガミラス大使館の対応よりも、地球防衛軍の決定の方が一足早かったようだ。
同時刻 木星沖
アンドロメダ級宇宙戦艦〈アンドロメダ〉 艦長室
ピアノの美しい音色に、少しノイズが混じる。
宇宙戦艦〈アンドロメダ〉の艦長室。艦長の山南修の私物のレコードから流れているのは、クラシックピアノの名曲「月の光」。山南のお気に入りの曲だった。
ただ、何度も何度も流している古い曲なので、錆びついたようなノイズが曲に混じっている。しかし、山南にとってはそれもレコードの味だと思っていた。
「…………」
山南は休憩時間はレコードを聞いて、温かい紅茶を淹れて飲むのがいつもの楽しみだった。無類の紅茶好きとしても知られる山南は、テーセットも私物を持ち込んでいる。
紅茶を嗜みながら一息つくと、山南は艦長室の窓から外を見る。乗艦のアンドロメダは、木星沖の宇宙を渡っていた。
左右には、アンドロメダの姉妹艦達が陣を組んで航行している。アルデバラン、アポロノーム、アキレス、アンタレス。色と形がそれぞれ異なれど、同じアンドロメダ級の姉妹達だ。
彼女らは今、木星沖で一週間にも及ぶ大演習の最中だった。演習艦隊にはその他、ドレッドノート級主力戦艦や巡洋艦、駆逐艦なども参加している。復活した地球艦隊の晴々とした勇姿だった。
そんな光景を誇らしく眺めていると、艦長室の呼び出しコールが鳴った。ティーカップを持ちながら、壁に備えられた内線通信のボタンを押し、呼び出しに応じる。
「なんだ?」
『山南艦長、お休みのところ失礼します。防衛軍総司令部より緊急連絡です』
意外な場所からの連絡だった。演習中の山南を呼び出すとは、何かトラブルでもあったのだろうか。とりあえず話を聞く。
「内容は?」
『はっ。横須賀高等宇宙学校所属の駆逐艦ハレカゼが、突如として教導艦に対して発砲。防衛軍はこの件を反乱行為と見做し、速やかに処理すべく、アンドロメダ単艦による木星沖での迎撃を命じました』
山南は横須賀校の名前を聞いて、少しだけ眉を動かした。何かと思えば、まさか高校生が反乱とは。事情は知らないがその蛮勇さは大した物だ。
「当該艦の行き先はわかっているのか?」
『はっ。最終目撃地点はアステロイドベルトで、当該艦はワープ機関の故障が確認されています。しかし、もし機関を修理していたとしても、この木星沖を通る可能性は高いそうです』
「なるほど、重力ターンか」
副長が伝えた防衛軍司令部の予想は、山南の予想と全く同じだった。確かに進路としては理にかなっている。山南としても、自分が相手の立場だったらそうするだろう。
「では、本艦はそれを待ち構えろと?」
『はい。アンドロメダは直ちに演習区域を離脱し、ハレカゼを迎撃。対象を拿捕、もしくは撃沈せよとの事です』
撃沈、という強い言葉を聞き、山南は眉を顰めた。地球の未来を撃てと言うのか。相手はまだ高校生だというのに……
「……わかった。下に降りる、少し待て」
だが山南はあくまで軍人として、職務を遂行することにした。現実はいつだって非情だ。気が引ける命令も時には存在する。
艦長の帽子を被り、山南は部屋の艦長席に座った。そしてボタンを操作し、席ごと真下の艦橋へ降りていく。
艦橋に降りると、アンドロメダのシステムを統括するサブフレーム(ヤマトのアナライザーと同型のロボット)が「お帰りなさいませ艦長」と、まるで従者のような挨拶をしてくる。
山南は周りの艦橋要員の敬礼に応えつつ、着席を促し、席の横のマイクを手に取り、演習艦隊に新たな指示を下す。
「艦隊全艦に通達。これより本艦は、密命により演習区域を離脱。単独行動に移る。なお本艦不在の間、演習の指揮はアポロノームの安田副司令が行う」
『了解しました。こちら安田、指揮権承ります』
艦隊に演習区域の離脱と単艦行動を行う旨を伝え、指揮権を階級に則って然るべき人物に移譲する。
これによりアンドロメダは、大将自ら出陣することが可能になった。山南は航法長へ進路を通達する。
「回頭180度、最大戦速」
回頭指示により、アンドロメダはスラスターを全開にして進路を180度反転。
地球のどんな船よりも重く、力強く、それなのに機敏に動くアンドロメダは、舳先を木星へ向け、最大戦速で加速した。
「攻撃目標──反乱艦"ハレカゼ"」
山南の宣言により、アンドロメダは目標と接触するべく行動を開始。ここから、運命は狂っていく。
それと同時に、艦長室で付けっぱなしだったレコードの針が飛んでしまった。
アンドロメダ級、伊201を差し置いて登場の巻……
伊201「お、俺の出番は……?次元潜航艦にするとかやりようが……」
アンドロメダ「そこになければないっすね」
本作ゥの予定するCPをっ、亡き総統への手向けとするのだぁっ、選べ!ガーレ・ガミロンッ!
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明乃×ましろ
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土門×もえか
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山南×百々
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南部×志摩
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ミーナ×幸子
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古代×雪
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俺は……選ばない!
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愚かなりゲーぇ↑ルーぅ↓……