同日午後 木星沖
駆逐艦〈ハレカゼ〉 艦橋
駆逐艦〈ハレカゼ〉の艦橋では、メインモニターに派手な映像が流れていた。マチコが望遠カメラで捉えた防衛軍の演習の様子だ。
ショックカノンの青い光が迸り、それが小惑星に命中し、派手な光を出している。時々魚雷なども撃ち込んでいるのか、爆発も見られた。
「おー!やってるやってる!」
撃ちまくりが大好きな芽依が、興奮した様子でそう言った。砲術の志摩も、本場の防衛軍の砲撃に目を輝かせている。
そんな様子が木星を挟んですぐ近くで行われているのを見て、ましろはとにかく不安だった。
「まさか、防衛軍の演習区域のすぐそばを抜けていくなんて……」
「艦長って大胆ですねー」
幸子が揶揄うようにして艦長に問いかける。だが、いつもなら笑顔で答えてくれる艦長が、今日に限っては俯いたままだった。
「艦長?」
「えっ、な、なに?」
幸子の声にようやく気づいた明乃は、ハッとして彼女の方を見る。
「はぁ……またですか。しっかりしてください……」
「ごめん……な、なんの話だっけ?」
明乃はましろに注意され、とりあえず謝罪をする。
実際のところ、明乃の意識は話を聞く姿勢になかった。ムサシからの救難信号が気になるのか、ここのところ艦長は上の空のことが多い。
それを知ってか知らずか、見かねた幸子が説明をしてくれる。
「重力ターンの事ですよ。説明してあげてください?」
「う、うん。えっとね、ワープ機関の修理は終わったけど、まだまだ万全じゃないの。だからなるべく機関に負担をかけないよう、木星に近づいて加速する」
明乃は皆にこの航路を選択した理由を説明する。
機関長によると、不調続きだったワープ機関の修理が先ほど完了したところだ。なので、やろうと思えばいつでもワープができる。
しかし──今までグズり続けてきた高圧機関のことだ。修理直後ということもあり、また機関が不調になるかもしれない。
その懸念を少しでも減らすための選択が、この重力ターンだった。木星の大きな重力を使って加速することで、機関の負担を少しでも減らす。
機関長によれば、この航路なら負担を50%は軽減できるとの見積もりだ。ワープ先はヒペリオンだが、この先も逃げ続けなければならない可能性もあるため、致し方ない選択だった。
「確かに、ヒペリオンに着いても匿ってもらえるとは限らないし、機関の調子は温存しておかないと……」
「けどさ、こんなに惑星に近づいて大丈夫なの?」
「広域レーダーに探知されたりとかは……」
芽依と鈴が、演習中の防衛軍に発見されないかを心配してそんなことを言った。確かに普通の星ならば、こんな大胆な航路を取れば発見される。だが、木星は違った。
「大丈夫です。木星はそのコアから強力な放射線を周りに放っており、衛星からの通報は基本遮断されます」
「うん。でもハレカゼみたいな宇宙船は、宇宙空間の放射線から乗員を守るように作られているから、むしろ身を隠せるってわけ」
「なるほど……」
その言葉には、ましろも納得出来た。
確かに木星は、放射線の量が尋常ではない。感性制御開発以前の宇宙船では、木製の衛星エウロパより内側を通れば最後、人も機械も長くは持たずに死んでしまうと言われていた。
木星の放つ電磁波や放射線の量は、他のガス惑星とは桁違いなのだ。今回はそれを活かすことができる。
「にしてもさ──」
そんな会話をしていると、芽依が唐突に演出の映像を指差して口を開いた。
「こんな短期間であれだけ大量の戦艦を作れるようになるなんて、地球も頑張ってるよねー」
芽依の言う通り、今回の演習には、かなりの数の宇宙戦艦が参加しているようだった。
ここからでは詳しくわからないが、地球防衛軍の新鋭戦艦達はほぼ全て参加していると言っても過言ではないだろう。
そしてその数も、ガミラス戦争の時では想像できないくらいに揃っていた。
「戦後復興の賜物ってやつですよ」
「うぃ、うぃ」
幸子はこの復活した地球艦隊のことを、復興の賜物だと表現した。志摩もそれに頷く。だが艦橋で一人、ましろだけは疑問に思っていることがあった。
「(やっぱり不思議だ。焼け野原だった地球が、どうしてたった3年であれだけの宇宙戦艦を揃えられるんだろう……?)」
ましろは不思議で仕方なかった。
明乃に説教した通り、ガミラス戦争からまだ3年しか経ってない。都市部以外の地域の復興も、まだまだ途中なのだ。
ならあの戦艦達は、一体どこから湧いて出てきたのだろう。もし地球に艦隊が湧き出てくる魔法の壺があるならば、それはあまりに不気味すぎる。
──その時だった。
一瞬、ハレカゼの窓、12時方向から何かが青く光った気がした。
窓の反射かと思い、見逃していたましろの視界に飛び込んできたのは、青い三発のエネルギー波だった。
ましろが目を見開いた時には、そのエネルギー波はハレカゼの艦橋横を掠め飛んでいき、後方の何かに着弾して激しい光を散らした。
「きゃあっ!」
「な、なんだ!?」
着弾の衝撃で艦内が揺れる。
今までのよりも高い破壊力だったのか、艦の揺れは大きく、その衝撃の大きさを物語っていた。
『ショックカノンです!後方デブリに着弾!』
遅れてマチコが報告してくる。
状況を一瞬で把握した明乃は、艦長席の受話器を乱雑に取り上げると、CICの慧に呼びかける。
「めぐちゃん!レーダーに反応は!?」
『ありません!無反応の場所からいきなり……!』
明乃はその報告に戦慄する。
直ぐにましろが相手の位置を特定するよう、別の手段を指示する。
「砲撃角度から逆算できるだろ!光学カメラを回すんだ!」
「ノマさん!」
『今やってます!』
命令よりも前にマチコは逆算を開始していたのか、光学カメラが旋回し、不可視の敵を探そうとする。それは、意外にもすぐ見つかった。
『見つけました!そちらのモニターに出します!』
マチコがカメラの映像をメインモニターに出す。少し乱れていた映像が、画像処理によって鮮明になった。
その艦影を見た瞬間、明乃達全員が息を呑み、固まる。
映し出されたのは、青みがかかったグレーの艦艇。
四角を模った直線的な船体に、四方へ向けて安定翼が伸びている。艦橋はビルのように高く反り立ち、電子機器を搭載した構造物が、左右へ出っ張っている。
そして──艦首には、潰した六角形の波動砲が二門装備されている。まるで化け物の口のようだった。
『艦種識別……これは──"アンドロメダ"です!!』
現実は時に残酷だ。
弱き者は挫かれ、強き者ですら、力によって滅ぼされることもある。
ハレカゼの前に立ちはだかったアンドロメダは、そんな現実を、未熟な彼女らに突きつけているようだった。
運命はすでにはち切れている。
ノイズは──消去しなければならない。
ご意見、ご感想よろしくお願いします!
本作ゥの予定するCPをっ、亡き総統への手向けとするのだぁっ、選べ!ガーレ・ガミロンッ!
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明乃×ましろ
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土門×もえか
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山南×百々
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南部×志摩
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ミーナ×幸子
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古代×雪
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俺は……選ばない!
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愚かなりゲーぇ↑ルーぅ↓……