砲撃開始から十分経過
アンドロメダ級宇宙戦艦〈アンドロメダ〉 艦橋
砲撃開始からかなり時間が経った。
未だ、ハレカゼの撃沈には至っていない。砲術長から権限を奪った山南は、アンドロメダへ誤差の修正を伝えながら、砲撃を続けていた。
「アンドロメダ、誤差修正、-5、+1」
『了解』
アンドロメダのサブフレームが、口頭での指示に従い、その通りに誤差を修正する。
そして、再び砲撃。閃光が迸り、ショックカノンのエネルギー波がハレカゼに向かう。
砲撃はデブリの暗礁に着弾し、派手な爆発が起きた。だが、ハレカゼの撃沈には至らない。山南は再び誤差修正を伝える。
「再び誤差修正、-6、+2」
『了解』
誤差修正後、再び砲撃。
だがこれもハレカゼへの直撃コースを外れ、周辺のデブリを粉々に砕くだけに終わった。
山南がまた誤差修正を伝えているが、その数値は出鱈目だったことを、砲術長は見抜いていた。彼は拳を震わせ耐えていたが、ついに耐えられなくなって席を立ち上がる。
「……艦長!いい加減にしてください!当てる気があるんですか!?」
砲術長は無礼なのも承知で艦長に喰ってかかる。砲術長はその能力の高さから、艦長の砲撃指示の出鱈目さが、わざと外すためのものだと分かっていた。
「……砲術長、座れ」
「下手なんじゃなくてわざとですよね!貴方ほどの人が外すはずがない!やる気があるんですか!?」
「座れ」
「砲術の権限を私に返してください!あんな小っぽけな船、一撃で粉微塵に──」
「いい加減にしろ!」
艦長の職務怠慢に怒りを覚えていた砲術長だったが、山南は声を低くして彼を叱責した。
珍しい光景だった。山南が部下を怒鳴るなんて滅多にない。彼は部下がどれだけミスや悪いことをしても、怒鳴らずに叱る優しさを兼ね備えた人物だ。
それが、いくら砲術長がしつこく喰ってかかったとはいえ、あんなに恐ろしく怒鳴るとは思えなかった。
「座れ」
「は、はっ……」
山南の低い言葉に促され、かなりの不服はあれども、砲術長は折れるしかなかった。
にしても……と山南はモニターのハレカゼを見る。今の状況、我ながら大人気ないなと思った。
ハレカゼは小さい船だ。かの磯風型の改修型で、よくぞこの砲撃から逃げ続けていると思う。彼女らの技量は、今月入学したばかりの新入生とは思えない。
対して、アンドロメダは彼女らから見ると巨人だ。もしハレカゼから反撃が飛んできたとしても、波動防壁を含むアンドロメダの防御力なら、かすり傷にすらならないだろう。
そんな絶対安全圏から、山南は大きくて太い40サンチショックカノンで、華の女子高生達をどつき回しているのだ。聞こえが悪いと事案にしか聞こえない。
「そろそろか……」
名残惜しいが、あと二、三発くらいで彼女達との戯れは終わりにしよう。
「アンドロメダ、主砲一番、-3、+1」
『了解』
「同時に主砲二番、+3、-1」
『了解しました』
山南は先ほどとは違う砲撃の仕方を始めた。アンドロメダは艦長の指示に忠実に従い、その通りに主砲を向ける。
『発射』
閃光が迸り、アンドロメダのショックカノンが放たれる。砲撃はデブリの暗礁をすり抜け、ハレカゼへ向かっていく。
一方で、席に戻った砲術長は自分のコンソールでその砲撃の諸元をシミュレーションしていた。
「(放射状に撃っただと……やはり当てる気が──)」
山南がなぜ放射状にショックカノンを撃ったのか、見当もつかない。なかなか当てられないので、痺れを切らして拡散させたとも言い難い。
着弾までの数秒間の間、砲術長はシミュレーション画面を見る。着弾地点はハレカゼの周辺に散らばっていたが、問題はその先の予想進路地点にあった。
「(これは、まさか……!)」
砲術長は山南艦長の目論見を理解し、冷や汗をかいた。もしこれをわざとやっていたのだとしたら、我らが"オヤジ"は……
同時刻
駆逐艦〈ハレカゼ〉 艦橋
一方のハレカゼ艦内。
アンドロメダから逃げ続ける中、その光を捉えたのは突然だった。
『捉えた!弾着予想、55、42、31!』
捉えたのはアンドロメダの砲撃角度だ。
明乃がその着弾予想地点をもとに、即座に回避行動を指示する。
「リンちゃん!取り舵30度!」
「と、とーりかーじ!」
鈴が操縦桿を横に倒す。取り舵いっぱいとまではいかないが、少しだけスラスターを動かし、アンドロメダの砲撃の被害範囲から逃れる。
その次の瞬間、アンドロメダの砲撃が右舷側を掠めた。放射状に撃ち込んだのか、左舷でも閃光が見えたが、着弾はしなかった。
「避けれた!」
「よし、いけます!」
「すごい……こんな短時間で予測プログラムを……」
ましろが電算室に入って行ったミーナの腕前に対し、そんな言葉を漏らす。一方のミーナは自慢げだった。
『見たか!儂は実家が軍艦のシステムを製造しているからな、親からプログラミングを教えられたのだ!』
ミーナが行ったのは、妨害されていないパッシブのセンサーを動員し、繋ぎ合わせることでアンドロメダ級の砲撃を予測するプログラムだ。
複雑そうに思えるプログラムだったが、なんとミーナは三分で書き換え、動作テストも無しに予測を成功させていた。凄まじい能力だ。
『アンドロメダ、発砲!』
『予測出たぞ!21、53、66!』
「リンちゃん!」
「りょ、了解!」
アンドロメダが再び発砲。
その砲撃もキチンと予測し、鈴がその通りに回避行動を行う。散布界から逸れることに成功し、ハレカゼは無傷で切り抜けた。
「回避成功です!」
『アンドロメダ!再び発砲!』
『弾着予測、33、41、71!』
「これは……!」
アンドロメダは立て続けに撃ってくる。
その着弾予測地点をましろが確認したが、その目の前には大型のデブリが二つ、ハレカゼの進路を塞ぐように漂っていた。
「艦長!障害物が──」
「リンちゃん!そのまま間をすり抜けて!」
「えっ、りょ、了解!」
ましろは明乃に障害物を避けるように言おうとしたが、明乃の指示はそれよりも早かった。
まさか通り抜けるのか!?と、ましろが目を見開いていたが、ハレカゼはその間を通り抜けるように加速を始めていた。
デブリの壁が迫る。ぶつかるのではないかとましろは目を瞑るが、閉まる寸前のところでハレカゼはデブリを潜り抜けた。
『着弾!!』
それと同時にアンドロメダの砲撃が着弾。
するとデブリから金属片のような、キラキラした物体が舞い上がり、宇宙空間に飛び散った。
「金属片……?」
『こちら機関室!ワープ妨害が途切れた!やるなら今でい!』
機関室からの報告。
その途端、明乃は叫ぶ。
「このままワープに突入する!」
「前方に障害物なし!進路クリア!」
明乃の指示を受け、幸子が報告。
どうやら出来すぎていることに、ハレカゼは暗礁地帯を抜け出していたようだった。
「カウント省略!ワープ突入!」
「ワープ!!」
明乃の言葉を受け、鈴が席の側にあるスロットルレバーを、一気に全開まで持っていく。
その途端、ハレカゼのエンジンがワープに突入。凄まじい速度で加速していき、船はエンジンが作った次元の裂け目に突入。
裂け目に突入したハレカゼは、木星沖から消失した。
同時刻
アンドロメダ級宇宙戦艦〈アンドロメダ〉 艦橋
ハレカゼが木星沖から消失したのを、アンドロメダのシステムが確認した。サブフレームは解析を交え、事務的な報告を行う。
『目標消失、ワープした模様』
「──艦長!意見具申です!ハレカゼを追いかけましょう!」
副長が弾き飛ばされるように立ち上がり、そう言った。なぜこんな当たり前のことを意見具申しなければならないのかと、副長も不満に思っていた。
だが、山南艦長は血気盛んな若者を宥めるように、副長へ向けて座るよう促す。
「無駄だ副長、作戦は失敗したよ」
「まだです!多少ズレはしますが、座標をトレースしてワープ、ハレカゼを再捕捉します!アンドロメダならそれが可能です!」
「…………」
「艦長!」
「…………」
「このままでは、貴方の軍人生命までもが──」
副長が山南のキャリアを心配して説得していた、その時だった。
艦橋に通信が入電したことを表すコール音が鳴り響く。それを確認した通信士が、震えた声で言う。
「ち、地球防衛軍の総司令部より、第一種緊急通信です……山南艦長を、名指しで呼んでいます……!」
「……メインパネルに出せ」
終わった。
艦橋にいる誰もがそう思っただろう。自分たちのオヤジであり、今日まで尊敬に値する職務をこなして来た山南艦長が、これで解任されてしまう……
だが当の山南は、メインパネルに出て来た鬼の形相の芹沢副長官を見て、おうおう、随分と怖い顔じゃないか、若い奴らが見たらちびりそうだなぁ……と、呑気な事を考えていた。
次回──山南修・解任のピンチ!?
本作ゥの予定するCPをっ、亡き総統への手向けとするのだぁっ、選べ!ガーレ・ガミロンッ!
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明乃×ましろ
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土門×もえか
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山南×百々
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南部×志摩
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ミーナ×幸子
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古代×雪
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俺は……選ばない!
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愚かなりゲーぇ↑ルーぅ↓……