"コスモ"ハイスクール・フリート2202   作:篠乃丸@綾香

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第十九話です!


第十九話:山南修・解任のピンチ!?

数分後

駆逐艦〈ハレカゼ〉 艦橋

 

 漆黒の宇宙空間が歪み、ハレカゼがその中から飛び出した。水蒸気のような効果を振り払い、ハレカゼは通常空間に出現する。

 

「わ、ワープ終了……」

「現在位置は?」

 

 ワープ酔いでふらつく艦橋要員を差し置いて、ましろが鈴に問いかける。彼女はハレカゼの現在位置を近くの惑星から計算し、導き出した。

 

「め、冥王星沖……5600kmの軌道上……」

 

 鈴からの回答は呆れたものだった。目的地のヒペリオンではなく、まさかの冥王星。それを受け、ましろはため息を吐いて、こう言った。

 

「航海長」

「は、はい……」

「咄嗟のこととはいえ、遠すぎないか……太陽系の外縁部だぞ……?」

「す、すみません……!」

 

 いつもの逃げ癖からか、あまりにも遠い場所にワープして来た鈴は、少し涙目になりながら答えた。

 だが、すかさず明乃がフォローを行う。

 

「いや、好都合だよ。ワープで逃げるなら遠いに越したことはないから」

「ええ。なにせ相手はあのアンドロメダ級ですから……」

 

 明乃の言葉には、幸子が賛同した。まだ油断はできない。なにせ相手はあのアンドロメダ級だ。座標をトレースして追って来ても不思議じゃない。

 

「みんな。一応、警戒体制を続けて」

「了解です」

 

 明乃は万が一に備え、そう指示を出すが、その表情は緊張から解けて柔らかなものだった。

 

「……でも多分、追いかけてはこないと思うけどね」

「え、何故です?」

 

 明乃がそう言ったのを聞き、ましろが問いかける。まさかあのアンドロメダ級が、みすみすハレカゼを取り逃すとは思えなかった。

 だが、彼女の疑問には幸子が答えた。

 

「アンドロメダ級は、私たちに手加減をしていました。あの船の性能ならば、私たちなんて一撃で仕留めてます」

 

 幸子の考えは、明乃も同じだった。すかさず頷いて言葉を補足する。

 

「うん。多分あの艦長が見逃すついでに、私たちを試したんだと思う」

「そんなことが……?」

「うん。ワープする直前に、金属粉が舞い上がったのは覚えてる?」

 

 ましろはそう言われて、ワープの直前、金属が混じったデブリにショックカノンが当たり、金属の粉が舞い上がったのを思い出した。

 それによりアンドロメダのECMが途切れ、ワープが可能になったのであるが、確かに偶然にしては出来すぎていた。

 

「そういえば……」

「はい。アンドロメダは、私たちはその地点に誘導されるように砲撃していました。おそらく、あの船の艦長がそこに追い込んだんです」

 

 幸子がそう結論付ける。アンドロメダ級のスペックに関して一番詳しい彼女が言うのだから、それは正しい事なのかもしれない。ましろですらそう思い始めた。

 

「それに、多分だけど──」

 

 最後に、明乃がアンドロメダの艦長の優しそうな顔を思い出しながら──

 

「あの船の艦長は、きっと話のわかる人だよ」

 

 確信を持ってそう言った。

 明乃はアンドロメダの艦長、山南修という男のことはよく知らない。だが、同じ船乗りとして、ここまで手加減してくれた人の考えはわかる。あの人は、命令されたフリをしてハレカゼを見逃してくれたのだ。

 だがましろは、彼が見逃してくれたのならば一つだけ矛盾がある気がして、明乃に問いかける。

 

「じゃあなんで、最初の私たちの話は信じてくれなかったんだ……?」

「そ、れ、は!」

 

 だが、その言葉は幸子が答える。

 

「大人の事情、ってヤツですよ♪」

 

 幸子は困惑するましろに対し、ウィンクをしながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

アンドロメダ級宇宙戦艦〈アンドロメダ〉 艦橋

 

 鬼、般若、サタン──

 今の芹沢の恐ろしい表情を表す言葉は数あれど、今の気まずい状況を切り抜けられる軍人は、地球にはほとんどいない。

 山南が若い奴らがちびりそうと言った通り、艦橋の残りの四人は芹沢の表情を見て、恐怖で固まっていた。

 

『山南君!これは一体どういうことだね!?』

 

 芹沢が通信越しでも恐ろしさが伝わる低い声で怒鳴る。怒ってる。それも相当。それもそのはず、今回のハレカゼ迎撃を指示したのは芹沢だったのだ。

 

「はて、なんのことでしょうか、芹沢副長官殿?」

『惚けるな!貴様、ハレカゼ相手に手加減しただろう!アンドロメダ級の性能なら、あんな駆逐艦、一瞬で仕留めることなど造作もないはずだ!』

 

 芹沢にとって、アンドロメダが手加減していたのはお見通しだった。山南はチラリとサブフレームを見る。なるほど、お利口さん過ぎてログは全部筒抜けだったか。

 山南の職務怠慢を確認して怒りに震えている芹沢に対し、当の本人は一応ということで、自身の弁解を述べる。

 

「お言葉ですが副長官殿、横須賀校の新入生はかなり優秀な生徒たちだと見受けられます。彼女らの技量が高く、このアンドロメダから逃げ切れることもあり得ましょう」

『黙れ!そんなことあり得るか!貴様の行為は命令違反、職務怠慢、利敵行為に等しい!今すぐハレカゼを追え!さもなくば──』

「さもなくば……」

 

 芹沢が続けてそう言いかけたのを、山南は被せて来た。

 

「もしや、私を解任しますかな?」

 

 山南はニヤリと笑いながらそう言った。

 これには艦橋にいる他の四人も、何を当たり前のことを言っているんだ、と困惑していた。

 だが、山南には確信があった。芹沢は山南を解任できない。その理由は戦後の地球が抱える呪いに起因していた。

 

「今の地球は人材不足です。復興の手前、人が育つのには時間がかかりすぎる。防大を解体し、募集年齢を引き下げ、高等宇宙学校を設立したのもそれが理由です」

『…………』

「そんな中、私は光栄なことに、最新鋭艦アンドロメダの艦長に相応しいと副長官自らが指名してくださった。もし代わりがいて、職務怠慢な私をこの椅子から引きずり降ろせるのだとしたら──地球の未来は安泰ですな」

『くっ…………』

 

 山南は失礼なのも承知で、そんな皮肉を述べた。

 そうだ、山南の代わりは地球にいない。山南はかつてのガミラス戦争の際、武勇艦〈キリシマ〉の艦長を長年務めた生き残り。

 そんな彼のキャリアと経験は、今の地球にとっては貴重すぎる。彼の能力は演習艦隊の副司令官だった安田ですら上回るであろう。

 ……とはいえ、厳密に言えば山南の代わりとなる候補が一人いる。しかし、その人物は地球政府が進める波動砲艦隊構想に猛反対し、左遷されてしまった。今更連れ戻すことはできまい。

 

『……もういい!とにかく!貴様にはそれ相応の処分が下される!覚悟しておけ!』

 

 それを全て見透かされた上での山南の皮肉。ついに反論できなくなった芹沢は、まるで創作物の小物のような捨て台詞を吐くと、通信を切った。

 それを見て、山南は一度ため息を吐くと、一連の騒動を見て固まっていた艦橋要員たちに指示を出す。

 

「進路反転。本艦は作戦行動を終了。このまま演習に戻る」

「は、はっ!」

 

 その言葉を受け、艦橋の四人はテキパキと仕事に戻った。アンドロメダも進路を反転し、暗礁から演習区域へと戻っていく。

 そんな中、先ほど山南の職務怠慢を指摘して逆に怒鳴られた砲術長が、気まずそうに声をかけて来た。

 

「山南艦長」

「どうした?」

「その……すみませんでした」

 

 彼は山南のやろうとしていたこと、そして起こることへの対策、全てが織り込み済みだったことを察し、そう謝罪した。

 

「いいさ、若ければ鈍感な事もあろう」

「はっ……」

 

 山南は優しいので彼の謝罪を受け入れた。

 そうして真面目な砲術長が職務に戻ったその時、山南の制服の胸ポケットで何かが振動した。

 マナーモードにしてある携帯だった。山南は軍人であるため携帯のセキュリティは高く設定しており、間違い電話や迷惑電話などがかかってくる可能性は低い。なので、かけて来た人物が大体予想できた。

 艦橋で電話に出ても良かったが、それでは部下達にマナーの示しがつかないため、艦長席を立ち、艦橋裏の廊下に出てから電話に出た。

 

「……宗谷君じゃないか、どうした?」

『山南宙将、事の顛末は先ほど耳にしました。生徒達を庇っていただき、ありがとうございます』

 

 電話の相手は宗谷真雪だった。

 事が終わった後、わざわざ地球から電話をかけて来たあたり、どうやら状況をどこかで報告を受けていたらしい。

 山南はかつての教え子からの感謝に耳を傾けつつ、壁にもたれかかり、言葉を返した。

 

「なに、礼には及ばんよ。私としても、地球の未来である学生達を撃沈するなど、気が引けるからね」

『はい……』

「ただ、私としても立場というものがある。ポーズだけは取らせてもらったよ」

『ありがとうございます。しかし、なんとお礼をしていいのやら……』

「それなら──」

 

 いい機会だと思い、山南は思いついたように切り出す。

 

「また新しい紅茶が試したいな。新鮮で香りのいい茶葉だ。頼めるかい?」

 

 その注文を、宗谷はある程度予想していたのか、少し笑ってから承諾する。

 

『わかりました。私が厳選して送っておきますね、山南先生』

「はははっ、もう先生はよしてくれ。今度は君が教える立場なんだからな」

 

 山南はそう言いながら、言葉の終わりに「上手くやれよ」とだけ伝えると、彼女との電話を切った。

 

「全く、将来有望な子達じゃないか」

 

 山南はハレカゼの乗員達を想う。

 手加減して、しかも指定のポイントに追い込んだだけとはいえ、山南とアンドロメダの追撃から逃げ切れたのは上出来だ。

 彼女らは山南のテストに合格できた。それなら将来、いい船乗りになる事だろう。彼女らが卒業するのが今から楽しみになって来た。

 そして──あの岬明乃というハレカゼ艦長の目。

 年端も行かないあの子のしっかりとした目が、どこか沖田や古代と同じ感じがしたのは、歳から来る気の所為ではないと、自信を持って言えた。

 




山南修、女子高生を庇いながらも無敵なり

本作ゥの予定するCPをっ、亡き総統への手向けとするのだぁっ、選べ!ガーレ・ガミロンッ!

  • 明乃×ましろ
  • 土門×もえか
  • 山南×百々
  • 南部×志摩
  • ミーナ×幸子
  • 古代×雪
  • 俺は……選ばない!
  • 愚かなりゲーぇ↑ルーぅ↓……
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