"コスモ"ハイスクール・フリート2202   作:篠乃丸@綾香

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第二十話です!


第二十話:歓迎?・転入生でピンチ!

戦闘から数時間後

駆逐艦〈ハレカゼ〉 艦内医務室

 

 アンドロメダの待ち伏せと追撃を振り切った後。戦闘から数時間が経ち、艦の安全が確保されたところで、明乃は艦橋を離れて医務室へ向かった。

 医務室の扉をノックして、医務員のみなみが起きているかどうかを確認する。

 

「みなみさん、起きてる?」

 

 一言断ってから医務室に入ると、みなみは起きていた。手元にはお湯を沸かしていたのか、電気ポットとマグカップが置かれていた。

 

「春眠暁を覚えず……一服の茶を喫する」

「ココアだ、ありがとう!」

 

 そう言って手渡されたのは、あたたかいココアだった。先ほど電気ポットを使っていたのはこれを入れる為だったようだ。

 甘い味を想像して飲んでみる。だが明乃の舌に飛び込んできたのは、海水のような塩味だった。

 

「うわぁっ、しょっぱい!」

「宇宙艦隊名物、塩ココア」

「ひょ、ひょっとして……塩だけ入れて砂糖入れなかったの……?」

「ふふっ……」

「みなみさん、わざと……?」

 

 塩ココアというものがあるのは知っていたが、まさかこのタイミングで提供されるとは思ってなかった為、明乃は若干恨めしそうにみなみを見る。

 

「あ、ところでガイデロールの子は?」

「さっき外に──」

 

 みなみが彼女の居場所を伝えようとしたその時、まるで外から会話が聞こえていたように、医務室の扉が開いた。

 

「なんだ、儂になんか用か?」

「あ、さっきはありがとう!おかげで逃げ切れたよ!」

「ふふっ、礼には及ばん。こっちは寝ているところを叩き起こされたがな」

 

 出て来たのは、あのガイデロール級から救出したガミラス人の女の子──ミーナだった。

 明乃は改めてハレカゼの窮地を救ってくれたことのお礼を述べる。あの咄嗟の状況で即座にプログラムを作る腕前は相当なものだ。おかげで助かった。

 明乃は彼女が医務室のベッドに横になるのを待ち、大事な話を始めた。

 

「じゃあ、聞いてもいい?貴方達の船で何があったのかを」

「……我らの船──"シュペーア"で何があったのか、をだな」

 

 そこで少し言い淀むミーナを見て、明乃は彼女の精神状態を心配してか、一応のフォローを行う。

 

「もし言いたくなかったら、大丈夫だけど……」

「いや、心配いらん。儂も何が起こったのかよく分からんのだが……やはり聞いてもらった方がいい」

 

 そう言ってミーナは、改めて状況を話し始める。まずは事の発端から語り始めた。ちなみに言語に関しては、彼女の首元についている自動翻訳機が仲介してくれている。

 

「我らがシュペーアも、土星沖での学生艦演習に参加する予定だったのは、知っておるな?」

「うん」

「儂らは一足先に、合流地点のヒペリオンに入港した……その時は合流を優先していたから、乗員は基地に降りずに待機しておった」

 

 ミーナは続ける。

 

「儂は演習に備えて仮眠をしておったのじゃが……突然船が動き出した。艦長が軌道上に上がる指示を出した覚えがなかった儂は、不審に思って艦橋に行った。だが、艦橋の子達は──誰も命令を聞かなくなった」

 

 そう言うと、ミーナは唇を噛み締めた。何か悔しそうな、それでいてもどかしいような、そんな様子だった。

 明乃は彼女の言葉を聞き、状況を推理した。この場合、普通に考えられるのは一つしかない。

 

「反乱……?」

「……分からん。その後シュペーアは勝手に航行した挙句、様子見してきた我がガミラスの偵察機にも発砲し、事態は混乱を極めた。他の生徒達は暴徒のように正気を失い、儂は艦長と共に籠城していた」

 

 ミーナはそう言って、しばらく俯いた。それから少し言い淀み、説明を再開する。

 

「……そんな時、お主らの船に対してシュペーアが攻撃しているのが見てとれた。艦長は船を脱出して他の船に状況を知らせるように命じ、儂は搭載されていたツヴァルケで脱出……そのあとは知っての通りじゃ」

 

 そう言ってミーナは説明を終えた。彼女が知っているのはここまでのようだ。

 そんな説明を終えると、ミーナはベッドの側に置いてあった艦長帽を見るや、優しく撫でながら語る。

 

「艦長帽まで拾ってくれたのは感謝している。この帽子は、彼女から預かった大事なモノ……シュペーアに戻ったら、返さなくてはならない──必ず」

 

 彼女の最後の言葉には、相当な決意がこもっているのが明乃にも伝わった。その言葉を受け、明乃は改めてミーナに自分たちの意思を伝える。

 

「分かった。シュペーアの件、私も手伝うよ」

「えっ……」

「私たちも窮地を救ってもらったし。シュペーアの事も、助けられれば、この事件も解決できると思うから」

「いいのか?」

「もちろん!」

 

 そう言うとミーナは、「ありがとう」と優しくお礼を言ってくれた。まだハレカゼはシュペーアに対して何もできていないが、彼女からしたら協力してくれるだけでもありがたかった。

 そんな時、艦内放送からコール音が鳴った。その後すぐに、幸子の声が放送から聞こえ始める。

 

『艦長!学校側から暗号通信で、全艦帰港命令が出ました!』

「えっ……?」

 

 明乃は幸子の言葉に思わず立ち上がった。側の受話器を取り、彼女の言葉に耳を貸す。

 

『えっと……内容によりますと"我々横須賀校は生徒達を見捨てない。皆の安全確保のためにも、可及的速やかに、地球の学校施設へ帰港せよ"とのことです!』

「良かった……見捨てられてなかったんだ……!」

 

 学校からの通信内容を受け、明乃はほっと胸を撫で下ろした。

 今まで学校側から何も連絡がなく、見捨てられたのではという意見もあった。明乃は不安を煽るような事は口にしなかったが、やはりそれでも不安は抱えていた。

 だが、学校は自分達を見捨ててはいなかったのだ。

 

「同舟相救う」

「?」

「その船を同じくして渡りて、風に当たりて、その相救うや左右の手の如し……」

 

 それを見守っていたみなみが、そんな意味深な言葉を言うのを聞いて、地球の諺が分からないミーナは少し首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十分後

駆逐艦〈ハレカゼ〉 艦内教室

 

 十分後、明乃達ハレカゼの乗組員は全員教室に集まっていた。明乃が先ほどの通信内容のことを説明する。

 

「学校から、全艦帰港命令が出ました。ハレカゼも、学校側が責任を持って保護するので、戻ってくるようにって」

 

 明乃が乗組員たちへ説明を行うと、ほっと安堵する声が聞こえた。艦内はこのところ不安続きだったので、せめて学校に見捨てられてない事だけでも、安心できた。

 

「帰還中は、一切の戦闘行為は禁止だそうです」

「良かったぁ……」

 

 そして学校側から戦闘禁止命令が出た事も、ひとまず安心だった。多くの生徒達が緊張から解かれた。

 だが副長のましろはまだ警戒を緩めていないのか、状況の全てが好転したわけではないことを忠告する。

 

「しかし、まだ防衛軍ではハレカゼに対する警戒が続いている。どの軍港にも帰港できない。また追撃されるかもしれん。だから我々は密かに学校に戻る必要がある」

「そうだよね……」

「まだ危機は脱してない、のよね……」

 

 その言葉を受け、一部の乗組員はまだ苦難が続く事を懸念し、少し暗い雰囲気が戻ってしまった。

 これは致し方ないだろう。あまり油断した雰囲気が出ては、また他の船と遭遇した時にどうなるか。ましろはそれを分かっていた。

 

「それから、新しいお友達を紹介します──」

 

 だがあまりに暗くなりすぎると先行きも不安になる。明乃はそれを見越してか、タイミングよく話を切り替えた。

 ミーナが明乃の言葉を受け、一番後ろの席から立ち上がる。

 

「ガミラスのバレラス校から来ました、ヴィルヘルミーナ・ブラウン、えっと……」

「ヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクだ……まあ、長いから好きに略せ」

「じゃあ、ミーちゃんで!」

「ミーちゃ……ま、まあそれでいい」

 

 流石に略しすぎではないか、と頭を抱えていたミーナだったが、そう呼ばれるのも悪くないと思い納得した。

 

「知っての通り、ミーちゃんはこの件が解決するまで、しばらくハレカゼのアドバイザーとして乗船してもらいます!」

「よ、よろしく頼む……」

 

 ミーナが改めて皆によろしくの旨を伝え、少し頭を下げると、途端に拍手が湧き立った。

 ひとまず歓迎はされているようだったが、明乃は一部の乗員達が目を細めたり、そっぽを向いたりしているのを見てしまった。

 やはりガミラスとの戦争からまだ三年、ましろの言う通り、まだまだ和解できない子も居るようだ。これからは根気強く相互理解していかなければならないだろう。

 

「じゃ、じゃあ部屋は……ココちゃん、どこが空いてたっけ?」

 

 そんな様子を見てか、明乃は彼女の部屋について話を切り替えた。見かねた幸子がタブレットで資料を表示し、空き部屋を確認する。

 

「えー、ベッドの空きがあるのは……副長の部屋ですね」

「えっ、わ、私の部屋は──」

 

 ましろが少し嫌がるのを見て、明乃は不審そうに思った。彼女もミーナについて何か思うことがあるのだろうか、と思っていたが、どうやら理由は別のようだ。

 今まで一人部屋だった副長の部屋に行くと、そこには大量のぬいぐるみとぬいぐるみ、ぬいぐるみが所狭しとコレクションされていたのだ。

 

「おおー!」

「ぬいぐるみでいっぱい……」

「普段の宗谷さんからは想像できない部屋ですね!」

 

 なるほど、これを見られるのを恥ずかしがっていたのか、と。陰から見守っていた明乃はそれを察した。

 そんな彼女の部屋を一瞥し、ミーナは部屋の可愛らしさに感化され、こう言った。

 

「いい部屋だな。今日からよろしく頼むぞ」

「う、うぅ……」

 

 なんかフォローされているような気が来て、ましろは恥ずかしさと申し訳なさで一杯になり、顔を真っ赤にして目を回していた。

 




次回──第十一番惑星・乙女のピンチ!

次回から第二章が開始されます。
あと、少し忙しくなって来たので更新ペースが落ちます。
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