"コスモ"ハイスクール・フリート2202   作:篠乃丸@綾香

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第四話です!

挿絵提供:帝政ミサギ(X:@Konwashi_2)さん


第四話:発進・エンストでピンチ!?☆

 明乃達はハレカゼの艦橋へ向かっていた。

 突撃宇宙駆逐艦ハレカゼの艦橋は、艦首方向にある。

 突撃と名のつく通り、この駆逐艦は敵艦へ向け全速で突入する事を設計思想としていたため、視界の取れる艦首に艦橋がある。

 この艦橋の設計、ほとんどがガミラス戦争時代と同じものだ。

 なので新鋭艦に比べて艦橋は小さい。小柄な船であるが故に、仕方のないことだった。

 

「あれ?」

 

 さて、出港準備を迎え、明乃が艦橋にたどり着くと、窓枠のところに見覚えのある猫がいた。

 

「さっきの猫ちゃん?」

「にゃん……」

 

 かなり太った猫だったので、見覚えがあった。朝、ましろと明乃が転んでぶつかった時にいた、太った猫だった。

 

「ね、こ……?」

「かわいー!」

 

 後ろで艦橋要員の生徒が、同じく猫に反応する。

 

「うわっ……!?また……」

 

 そして同じく艦橋要員だったましろも、猫を見てビビり散らかした。

 

「おま──いえ、"艦長"がこの猫を連れてきたんですか……?」

 

 ましろは若干恨めしそうに、言葉を修正しながら明乃に問いかける。しかし、明乃は見覚えがないのでとりあえず猫を抱き抱える。

 

「勝手に乗り込んでたみたい〜えへへ」

 

 明乃は猫を抱き抱えながら頬をすりすりする。猫は特段嫌がる様子もなかった。

 

「名前は……へー、五十六って言うんだ!おじさんみたいな名前〜」

 

 明乃は猫を撫でながら、首輪に書いてある名前を見てそう言った。それと同時に、艦内に出港5分前を告げる鐘が鳴り響く。

 

「あ、出港しないと!」

「ちょっ、この猫どうするんだ!」

「もう降ろせないですし、ネズミを退治してくれるのでいいんじゃないですかー?」

「そ、そんな……!」

 

 猫が苦手なましろとしては、猫と一緒に宇宙を航海するのはごめん被りたかった。だが、艦内の雰囲気的に断れる状況ではない。

 ついてない……と内心思うましろであった。

 

「それじゃあ……改めまして、艦長の岬明乃です。よろしくね!」

 

 明乃は集まった艦橋要員へ向け、笑顔で自己紹介を行う。軽い雰囲気の彼女を見て、他の子達も自己紹介を行う。

 

「……副長の、宗谷ましろだ」

「私は書記の、納沙 幸子です」

「戦術長の西崎 芽依よ」

 

 明乃は彼女達の自己紹介に応えて、名前を覚えると同時に、笑顔で「よろしくね、みんな」と挨拶を交わす。

 

「すみません!遅れましたぁ!」

 

 と、そんな艦橋にもう一人の少女が入ってきた。ツインテールの髪を揺らし、息を整えながら、彼女は自己紹介を行う。

 

「ごめんなさい……わ、私、航海長の知床 鈴です……」

「リンちゃんだね!よろしくね!」

 

 遅れてきたことはとりあえず置いておいて、明乃は彼女にも挨拶を交わす。

 そして明乃は、まだ自己紹介をしていない子がもう一人いるのに気づいて、後ろを向いた。

 

「貴方は……」

「ほ、ほ……」

「砲術委員の立石 志摩さん、だよね?」

「うん……」

 

 そうして最後の子とも自己紹介を交わすと、明乃は前を向き、艦長の帽子を拾った。

 

「よし、じゃあみんな、定位置について!出港準備!」

 

 明乃は艦長の帽子を被りながら、各員に指示を下す。

 

「出港用意!アンカー上げ!」

 

 海の上に着水しているハレカゼは、出港準備に入る。海中へ垂らしていた錨が巻き取られ、艦内の乗組員が配置につく。

 

「エンジン点火準備!前進微速!ヨーソロー!」

 

 その言葉と共に、ハレカゼに装備された波動エンジンが回転を始める。唸り声と共に、しばらくの回転数が上昇。

 そして船は艦首に搭載された補助エンジンの力を借りながら、ゆっくり水上を加速。離水準備に入る。

 

『前方、ムサシが離水します』

 

 回転数が点火準備に達した頃、CICにいる光学観測員の野間 マチコがそう報告をした。光学カメラや肉眼を使い、あらゆる方向に目を光らせるのが彼女の役割だ。

 前方を見れば、そこにはヤマト級二番艦の宇宙戦艦ムサシが、間も無く離水しようとしていた。

 

「もかちゃんだ!」

 

 あの船にいるであろう親友の名前を、明乃は口に出していた。そして艦橋から手を振り、彼女へエールを送る。

 そしてムサシが離水しようとエンジンに点火した──と思ったその時だった。

 

『あれ?』

「ん、どうしたの?」

『ムサシのエンジンが……』

「え?」

 

 ハッとしてムサシ艦尾の波動エンジンノズルを見る。するとさっきまでショックコーンの周りを囲っていたエンジンの炎が、なぜか途切れていた。

 

「あれって……」

「まさか……」

「ムサシがエンストぉ!?」

 

 何が起こったのやら、ムサシは入学早々、エンジンが停止するという大失態を犯していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

宇宙戦艦〈ムサシ〉 艦橋

 

 一方のムサシ艦内。

 波動エンジンの点火直前にエンジンがストップするという事態を受け、艦長の知名もえかは艦内電話を手に取り、機関室に繋いだ。

 

「機関室、どうしたの!?何かトラブル!?」

『そ、それが……』

 

 機関室から応答したのは、同じく新入生の徳川太助であった。彼がしばらく言い淀むのを聞いて、もえかは最悪の事態を想定したが……

 

『すみません!俺がギアの3と4を間違えて、エンストしてしまいました!』

「え、えぇ!?」

 

 これにはもえかも、驚愕の声を上げるしかなかった。波動エンジンはフライホイールに接続して点火する必要があるのだが、このギア数を間違えたせいで、空回りしてエンストした様だった。

 

「何やってんだ……」

「マニュアル車じゃないんだから……」

「太助くん!アンタ徳川さんの息子でしょう!お父さん泣くわよ!」

『す、すみません!』

 

 艦橋の生徒達が呆れる中、すかさず副長の女子が太助を叱咤する。彼は徳川の苗字の通り、かの宇宙戦艦ヤマトの機関長、徳川彦左衛門の息子である。

 なので、ムサシ配属になった時は大喜びをしていた。あのヤマトの同型艦だと。しかし、そんな子が初日からこのザマになるとは、副長も思っていなかった。

 

「まあまあ、みんな初めての航海だし、緊張してるのよ」

「艦長……」

 

 しかし、すかさずもえかがフォローに入る。もえかは部下のミスでも責めたりしない、優しい艦長を目指していた。

 

「副長、今は叱責よりも離水を優先しましょう」

「土門くんまで……分かったわ」

 

 それに土門が続いた事で、副長も気を取り直して離水準備に入る。

 

「波動エンジン、出力120%!」

「今度はヘマしないでよ!」

『大丈夫です!行けます!』

 

 点火の準備は今度こそ整った。それを合図に、もえかは叫ぶ。

 

「フライホイール接続!点火!」

『点火!!』

「ムサシ、発進!」

 

 その言葉と共に、ムサシの波動エンジンが点火した。ぐっと座席に押し付けられる感覚と共に、ムサシは離水。そのまま天空へと上昇していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ムサシが離水した様子を、待機を命じられたハレカゼ乗員は見守っていた。観測員のマチコが報告する。

 

『ムサシ、無事離水しました』

「よかったぁ……!」

 

 明乃は胸を撫で下ろす。親友が乗った船は初日から前途多難だったが、それでも無事上がれたようだ。

 

「艦長、こちらも」

「うん」

 

 それを受け、ましろが合図を送る。

 明乃は手元のコンソールで波動エンジンの出力を確認し、ムサシのもえかと同じように叫んだ。

 

「波動エンジン、出力120%!フライホイール始動!」

『了解でい!フライホイール始動!』

 

 機関室からの復唱を受け、〈ハレカゼ〉のフライホイールが回転を始める。心地のいい音と共に、艦が振動する。

 明乃は艦長席に座り、離水に備えてシートベルトを閉めた。隣でましろも席に座り、点火までのカウントダウンを行う。

 

「波動エンジン点火10秒前……5……4……3……2……1……!」

 

 ましろのカウントダウンと共に、明乃は叫ぶ。

 

「フライホイール接続、ハレカゼ発進!」

「ハレカゼ……発進します!」

 

 その言葉と共に、ハレカゼのメインエンジンが点火した。

 少し座席に押し付けられるような、心地よい衝撃と共に、ハレカゼは海を加速していく。そして鈴の操艦により、ハレカゼはゆっくりと離水を開始した。

 

【挿絵表示】

 

 艦が空を飛ぶ。水を撒き散らしながら、艦は海を離れ、大空へと舞い上がる。

 

「じょ、上昇角40度……全艦異常なし……!」

「大気圏内飛行、フラップ格納!」

 

 明乃の言葉を受け、鈴が主翼のフラップを格納。大気圏内で上昇しつつ、ゆっくりと速度を上げていく。

 

『前方に、教導艦ユウナギとサルシマです』

 

 上昇が緩やかになってきた頃、マチコがそう報告した。

 艦橋上のメインモニターには、彼女が捉えた教導艦となる二隻のパシフィック級パトロール艦が映し出されていた。

 そうして船達は、宇宙を目指して上昇を続ける。途中、横須賀の守護神である三笠の上を通過した。

 これから彼ら彼女らの航海が、偉大なものになれるよう、多くの人たちが祝福していた。

 




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