"コスモ"ハイスクール・フリート2202   作:篠乃丸@綾香

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第六話です!


第六話:序章・砲撃されてピンチ!

翌日

パシフィック級パトロール艦〈ユウナギ〉

 

 漆黒の宇宙区間に、歪みが現れた。

 それは時空の裂け目のように広がっていき、そこから一隻のパトロール艦が姿を表した。

 地球製ワープ機関特有の、水飛沫のような効果を撒き散らしつつ、横須賀高等宇宙学校所属の教導艦〈ユウナギ〉は土星沖に到着した。

 

「ワープ完了。現在位置、土星の衛星ヒペリオン軌道上、座標誤差0.003」

 

 教導艦〈ユウナギ〉の操舵手、太田健二郎が現在位置を報告する。座標誤差の少さは良好で、〈ユウナギ〉の練度の高さが窺える。流石は教導艦と言ったところだろう。

 

「続いてサルシマ、ワープアウトします。右舷20度、上げ30度」

 

 続いて〈ユウナギ〉の右手上方に、もう一隻の教導艦〈サルシマ〉がワープアウトして来た。予定されていた出現座標とほぼ誤差はなく、彼方の練度も高いと窺える。

 周囲には、同じ横須賀高等宇宙学校の学生艦たちが続々と集結している。横須賀校の生徒たちは月面軌道での教練対艦戦闘を終え、土星沖の衛星ヒペリオンに集合していた。

 艦長の古代はそれを艦橋から一瞥しつつ、戦術長の南部に問いかけをする。

 

「全艦集合したか?」

「いえ。ムサシとハレカゼがまだです」

 

 どうやらまだ全艦集合というわけではないらしい。入学してすぐの初航海だ。何かしらのトラブルが発生することは予測していた為、通信士の相原に問いかける。

 

「相原、遅刻報告は出ているか?」

「いえ、ムサシからは何もありません」

「……?」

 

 その言葉を聞き、古代は少し疑問に思った。通常、集合場所に遅れる際は何かしらの連絡を入れるのが当たり前の事だ。

 社会人になるための報告連絡相談、これは軍隊でも一緒。それを欠いているともちろん減点だ。だが──

 

「何も報告なし、か……こりゃ報連相不足でまた減点ですね」

「ムサシは前途多難だな……」

 

 南部がムサシの不運っぷりを見てそう言う。初発進の時も何故かエンストして離水が遅れてしまうなど、ムサシは何かと不幸に思えた。

 だが、古代はそんなムサシを心配していた。初っ端からエンストしたとは言え、ムサシは一応、成績優秀者の集まりである。流石にこんな基礎的な遅刻報告を欠くクラスだとは思えない。

 また、何かトラブルでもあったのだろうか。

 

「通信機の不調という可能性もあります。どのみち報告を待つべきかと」

「……そうだな。サルシマの古庄教官に通達。サルシマ及び学生艦は、先にヒペリオン基地に降りるよう伝えてくれ。本艦は二隻を迎えるため、軌道上で待機」

「了解です」

 

 古代は相原に、残りの艦隊を先に地表に降ろすように伝えた。一応、階級と立場は古庄と同じでも、実は古代の方が先任である。判断するのは古代の方だった。

 

「……そういえば、ハレカゼの方は?」

「報告によると"機関不調により遅刻します"……だそうです」

 

 そういえばと思い出したもう一隻の駆逐艦は、ちゃんと報告を行なっていた。

 どうやら機械的トラブルに見舞われているようであり、あっちもあっちで前途多難だな、と教官の立場ながら少し同情した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

横須賀高等宇宙学校所属 駆逐艦〈ハレカゼ〉

 

 月面軌道上での演習を終え、土星沖のヒペリオンで再集合と通達された駆逐艦ハレカゼだったが、現在はトラブルの発生で遅刻していた。

 副長のましろが、内心の怒りで眉をピクつかせながら、航海長の鈴に問いかける。

 

「……現在位置は?」

「えっと……アステロイドベルト宙域、小惑星リュウグウ軌道上……」

 

 鈴は非常に申し訳なさそうな表情をしながら、副長の方へ振り向き、そう報告した。ましろは内心の怒りを溜め込みながら、内線電話を繋いだ。

 

「ワープ機関の修理はいつ終わる……」

『こちら機関室!このまま巡航で4時間くらい必要だってんだい!もう少し待ってくれい!』

 

 機関長の麻侖が内線電話越しにそう言った。4時間、と言う言葉を聞いてましろは、盛大にため息を吐いた。

 

「演習後の再集合に遅刻するなんて……ついてない」

「ご、ごめんなさい!私が座標計算を間違えたから……」

 

 ましろのため息を見て、鈴は申し訳なさそうにそう言った。

 

「エンジンの不調で、一度ワープが途切れましたからねー」

「ハレカゼは試作品の高圧波動エンジンだからねー。機動性は高いけど、その分故障が多いんだもん」

「演習の時に結構負荷掛けましたからね」

「うんうん」

 

 記録員の幸子と、戦術長の芽依が続け様にそう言った。実際のところ、座標計算が間違っていたのは些細な問題で、近くの一番の原因は、ハレカゼの波動エンジンにあった。

 ハレカゼは特別な船であり、試作品の高圧波動エンジンを搭載している。性能はなかなかのものだが、これが曲者であり、信頼性に欠けて故障が多く、全力を発揮することができないのだ。

 

「……ついてない」

 

 ましろはこんな曲者の船に乗ってしまい、あまつさえ遅刻してしまった事に対し、自分の運のなさを嘆くしかなかった。

 

「大丈夫だよ。遅刻報告は通信員のツグちゃんにしてもらったから、許してくれるって」

 

 一方、艦長の明乃は猫の五十六に餌を与えていた。ましろにはそれがサボりに見えて、盛大にツッコミを入れる。

 

「艦長!何呑気に猫と遊んでいるんですか!」

「いやぁ、五十六に餌を……」

 

 飄々とした艦長が、そう言って笑いかけたその時だった。

 前方から青い光が一筋、ハレカゼに向かって飛んできて、それが前方のデブリに着弾した。

 衝撃でデブリが弾け、ハレカゼに破片が当たる。その衝撃で船が大きく揺れ、艦橋から悲鳴が上がった。

 

「っ、なんだ!?」

『右30度前方のデブリに着弾!ショックカノンです!』

 

 光学観測員のマチコが、咄嗟に砲撃を見極めてそう報告した。

 

「着弾……!?しかもショックカノンって……!」

 

 艦長は慌てて艦前方を見る。双眼鏡を手に持ち、中を覗くと、デブリに紛れた艦影がうっすらと見えた。

 

『発射地点から艦影見ユ!あれは……サルシマです!』

「サルシマ……なんで……?」

 

 明乃は教導艦のサルシマが、いきなり砲撃して来た事に理解が追いつかず、ただ現実を復唱するしかなかった。

 そうしている間にも、サルシマは搭載された12.7サンチショックカノンを、ハレカゼに向けて乱射して来た。そのうちの一発が、またデブリに着弾する。艦が大きく揺れる。

 

『至近弾!』

『デブリで装甲板に亀裂!オイル漏れ発生!』

『厨房で茶碗が割れちゃったよー!』

 

 艦内から次々と損害報告が上がる。

 明乃はこのままの進路ではまずいと思い、即座に鈴へ指示を出す。

 

「リンちゃん、スラスター全開!回避運動を!」

「は、はいぃ……!」

「ココちゃん、遅刻に関して謝罪を打電で!」

「了解です」

 

 明乃は艦長席に設置されている受話器を手に取り、オープン回線で謝罪を投げかける。

 

『あー!あー!遅刻してすみませーん!!』

 

 しかし、謝罪してもなおサルシマの砲撃は止まらない。また至近弾で艦が大きく揺れる。

 

「ま、まだ撃ってくるよぉ……」

「ただの脅しでしょ?決める気ならとっくに決めてると思うよ、サルシマなら」

 

 芽依の言う通り、教導艦であるサルシマならば最初の一撃で仕留めていたはずだ。少なくともパシフィック級の主砲精度ならば、それが可能だ。

 

「確かに、あのショックカノンなら、一秒に一発は撃てるはず……狙いも甘いし、連射速度も適当だ……」

 

 ましろが芽依の言っていることに賛同しつつも、それが余計に疑問を呼び込むため、考えるのをやめた。

 

「艦長!打電、返答なしだそうです……」

「そんなに怒ってるの?」

「貸せっ、私が遅刻の理由を説明する!」

 

 明乃に変わり、ましろが艦長席の受話器を受け取った。ましろは仁王立ちしたまま、形式的な謝罪文を投げかける。

 

「ごほん……駆逐艦ハレカゼ、集合時間に3時間と20分遅れまして、誠に申し訳ありません。しかしながら、機関にトラブルが発生し、致し方なかったのであります。これは──」

「おお、謝罪のお手本みたいですねー」

 

 幸子が感心しているのも束の間、また砲撃がハレカゼを掠めた。あまりに一方的に撃たれるものなので、芽依が痺れを切らした。

 

「まだ撃ってくるよ!もう、こうなったら反撃しようよ!」

「ダメだ、流石に教導艦に向けて発砲するのは……」

 

 近くに起こっているであろう教導艦に対して発砲するという意見に対し、ましろは拒絶反応を示す。ここは遅れた身として、相手の怒りが収まるまでは砲撃に耐え続けるしかない。だが──

 

「いや、反撃しよう」

「えっ!?」

 

 艦長の明乃はその可能性を拒否した。

 

「えっ、マジ?撃つの?撃っちゃうの!」

「しかし艦長!」

 

 艦長の言葉に興奮する芽依をよそに、ましろが否定意見を述べようとした。だが明乃は本気だったのか、すぐに反論する。

 

「このままだと、怪我人が出る。最悪死者も出るかもしれない」

「しかし……」

「私は艦長。だから、ハレカゼのみんなを守らなきゃいけない」

 

 明乃は艦長の帽子を被り直すと、今しがた考えた自分の案を、艦橋要員へ伝える。

 

「主砲でエンジンノズルを狙えば、足を止められるし、撃沈することもないから大丈夫」

「……ああもうっ、分かりました!」

 

 明乃の言葉を受け、ましろも決心したのか、艦橋の天井にある戦闘配置のレバーを引いた。

 

「戦闘用意!右砲戦!」

 

 艦内にブザーが鳴り響くと同時に、明乃が指示を出す。その言葉を受け、艦橋では砲術委員の志摩がスコープを覗き込んだ。

 

『目標ロック』

「手動追尾に切り替え……目標、サルシマのエンジンノズル」

 

 CICが目標をレーダー上で捉えたのと同時に、志摩が手動照準で誤差を修正した。

 艦橋後ろに装備されたハレカゼの12.7サンチ連装ショックカノンが旋回を始め、エンジンノズルへ照準を改めた。

 

『誤差修正、完了!』

「発射、用意よし!」

 

 ましろの合図を受け、明乃は砲撃開始の合図を送った。

 

「主砲、うちーかたーはじめ!」

「撃てっ!」

 

 それを合図に、志摩は引き金を引いた。

 青い一筋の光が、艦橋後ろから照りつける。光はサルシマへ向け、まっすぐ飛んでいったかと思うと、エンジンノズルを一撃で貫く。

 ノズルから黒煙が吹き出し、小規模な爆発が起こった。サルシマから波動防壁の展開は確認できなかった。

 

「よしっ、命中!」

『サルシマ、速度落ちました!』

 

 命中の報告と、相手の速力低下を確認した明乃は、すぐさま鈴へ指示を出す。

 

「取舵いっぱい!最大戦速!小惑星リュウグウの裏まで、退避!」

 

 その言葉と共に、ハレカゼはスラスターとエンジンの出力を全開にして、近くの小惑星の裏側の方へと退避していった。

 逃げに入った駆逐艦は強い。サルシマから追加の砲撃は届かず、ハレカゼは危機を脱出することができた。




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