ライシュウハイセカイ   作:そこの角にいる

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私の名前は

 

 

 

 

 

 ちょこんと映像の右ハジからメタリックな突起が映り込む。

 それが動いて映し出されたのは、赤と青が混ざり合う〝人魂〟を模したフルフェイス。

 頭の右っ側にヒトダマの火先がちょこんと飛び出し、目は逆三角、口はギザギザ。

 何歩か後ろに下がってやがて全身が映し出された。

 白いマフラーに黒のロングコート。

 その人物がおもむろに片手を上げた。

 

『ハオ』

 

 

 

 

 

 

 先日のこと。

 鎌仲組官衙(かまなかぐみかんが)・広報部キャリア支援事務室・ミルクティ響介宛に届けられた探索映像。

 響介は驚きと共にすぐにチャンネルで取り上げることに決めた。

 

 

 

 

 

 

「地下6階迷宮チャンネル! 始めるZE! 進行はやっぱり俺だZEっ?」

 

 椅子に上り机に足をかけてマイクに叫んだミルクティ響介が、いそいそと椅子に座り直して続ける。

 

「今日は予告の動画を観て集まってくれたヤツらも多いんじゃないかYO! なんと今回、自ら俺に推薦してきたツワモノだZE! 推薦されたからってホイホイ取り上げる俺じゃNEぇが、こんなん持ってこられたら取り上げないワケにはいかNEぇYOなッ! ってことでさっそく一緒に観ていこうZE!」

 

 

 

『ハオ。私の名前はヒトダマン。ヒトダマン・レッドブルー』

 

:レッドブルーてw

:これ狙ってんのか?

:どうかな、今さら知らない奴も多いだろうし

 

『今日は諸君らに……飛躍のための翼を授けるぅ~』

 

:やってんなあ!

:www

:狙ってんな!

:間違いないw

:www

:何のこと?

:ぜんぜんわからん

:やっぱついて行けてないヤツもいるよなぁ

 

『気のせいだから。気にするな!』

 

:コメント予測して発言してるw

:w

:なんだコイツw

:目がビカビカしてるw

 

『そんじゃ、テキトーに探索しつつ、話していこうと思う。ミルクティ響介氏にはフォローを頼むおれだZEっ』

 

:コイツw

:いじってんなあ

響介:任せろYO!

:ミルクティコメントしちゃったよ

:視聴者かよ

:w

響介:w

:話せよw

 

『今日の主題はスキルについて』

 

 ヒトダマンが飛びかかってきたナッツイーターをむんずと掴み地面に叩きつけた。

 

:ナッツイーターぁああああっ

:ナァァアッツっ!

:哀れ

:言及すらされないw

 

『スキルについての前に、ダンジョンについて少し話そう。20年前突如地球に出現してから今日に至るまで、そして今この時も、様々な意味でダンジョンは成長を続け、拡張を続けている』

 

「ただ単純に広さという意味だけではないという主張だZE」

 

『最初期、地球上に無数にばら撒かれたダンジョンの核となる巨大なコンペイトウのようなそれは、触れた者、近くにいた者に漠然としたチカラを与えた。当人の無意識に反応し、それぞれに形を変えたチカラ。超能力ブームをもたらし、特殊能力者(サイキック)、起爆装置《トリガー》、スーパーヒーロー、やがて魔人(デモニック)と呼ばれる者たちを生み出した』

 

:こんぺいとう

:へえ

:じゃあ、ダンジョンの核に触れるとデモニックになるん?

 

「可能性はあるが、そうとも言えないYOだYO」

 

『ダンジョンは造り出した者たちの思惑と、これまでダンジョンに入った多くの者たちの意識と記憶に影響を受けてその在り様を変えてきた。〈陰影〉は実際に存在するモンスターだけでなく、いるかどうか定かでないモノも多く確認されている。それはサブカル全盛期のゲームやマンガの知識を人間の記憶から読み取って発生し、この20年という月日の中で現れては消え、その中のいくつかは定着した』

 

:え、そうなの?

:記憶読まれてんの? 今も?

:マジ?

:いやわからん

 

『知識系スキルに、お馴染みの【鑑定】があるけれど、これまでにない未知のものに使用すると、読み取れるのは意味不明な記号や模様だ。広くそれが認知されるに従って我々の言語に置き換わり、情報量も増えていく。ポーション、ゴブリン。ミノタウロスなんか象徴的ではなかろうか。おそらくギリシャ神話だとかミノス王だとかに関係はない。我々のイメージが先行した結果だ。一方で我々が知るはずもないモンスターの背景情報などは、ダンジョンを造り出した者たちの知識に依るのだろうと思われる』

 

:ふおっ⁉︎

:ええっ

:鑑定ってつまり蓄積されたダンジョンのデータベースにアクセスしていると?

:すごいけどちょっと怖いな

:逆に読み取られてるものもあると?

:すげえ怖いな

 

『んで本題に入るが、スキルもまた我々のこんなん欲しいという意識から生み出された可能性がある。前にジョーさんが放送で言っていたように、スキルとは魔法。元々あった魔法を我々用にオートで発動するよう調整されたものがスキルだ。スキルの登場に替わり、デモニックの出現は減少していった……──』

 

:あ、おい。前方になんかいるぞ

:闇が、動いた!

:やだ言いかたかっこいいw

:緑小鬼だ

:ってことは奥にまだ最低二体はいるな

:だな

 

『スキルオーブを作るのはダンジョンでも手間がかかるのか知らないが、知っての通りドロップ率は非常に悪い』

 

:話し続けるんかい

 

『しかしデモニックのチカラはダンジョンの核それ自体を犠牲にするから、ダンジョンがどちらを選ぶかは現状が表している通り』

 

:そしてまったく速度をゆるめないヒトダマン

:蹴っ飛ばしたー

:防御は紙とはいえ、アイツらの攻撃スゲェ怖いんだけどなぁ

:歯牙にも掛けんですわ

 

『そして人々のスキル欲しいという思いが高まった結果、低級スキルなどと言われる物が出回り始めた』

 

:うん?

:問題あるんか?

:スキル使いたい

:オレも欲すぃー

 

『低級スキルオーブの使用は、問題あるといえばあるし、ないといえばない』

 

:またコメント予測w

 

『うーん……ただ、個人的には少しもったいないかな、と思っている。ままま、慌てないで。これから説明するから』

 

:まだ何も言ってねえよw

:これ録画なんだよな。

:台本書いたのかな? ヒトダマンw

 

「監修エドワードってあるNE。誰?」

 

:だれw

:誰?

:草

 

『スキルオーブによるスキル習得は、実のところスキルにプラスして、スキルをオートで発動するためのシステムを同時にインストールしているようなものだ。そして当然、それが正常に動作するための領域が必要になってくる。それが君たちのエーテル・スコア。つまり、スキルオーブを使うと、エーテル・スコアの最大値が減る。エーテル・スコアは伸ばしていくことができるものだし、鍛えていけばいずれは取り戻せるだろうが……さて、どのくらいかかるかな。一年? 二年? そのくらい、バカにならない値を持っていかれることになる』

 

「補足しYO! 添付されてた資料によると、スキルを忘れる方法もあるYOだ。だが減った最大値はまるまる元通りにはならないらしい。さ、ら、に、オートシステム入れたから二つ目以降はスキルの容量のみでいいかというとそういうことでもないYOだZE。二つ目、三つ目の幸運を得たとしてもそのたびオートの容量を食う、とあるNEっ」

 

:継戦能力にダイレクトに影響してくるな

:ダンジョンを攻略しようと思ったら長丁場にならざるを得ないもんな

:行き帰りや不測の事態を考えればエーテル値は余裕を持っておきたいし

:ってかどうやって調べたんかな

:やっぱ探索者けっこう見てんだな

:そもそもこの番組は探索者向けを謳って始まってますし

 

『知っての通りエーテル・スコアとはHPでありMPであり防御力であり攻撃力であり、各種ステータスに代わるものだ。スキルがオートで発動するという優位性は確かにある。だからこそ覚えるスキルは厳選したいと思わないか? 野営の際の着火や飲み水の確保、緊急性のないそれらのために、エーテルの最大値を犠牲にする? ま、さすがにそれはないか。火起こしはいくらでも便利な道具があるし、水は魔道具が出回ってるようだし』

 

:なあ、なんかこれまでの発言を聞いてると、

:だよなぁ、つまりこれって

:他にスキルを発動する方法があるって言ってる?

:やっぱり⁉︎

:わたしも思った!

 

『さてさて、疑念もふくらんできたかと思う。そう。スキルのオート発動とは逆に、マニュアル発動とでも言うべきやり方がある』

 

:うおおおおおおおお

:やっぱりっ!

:マジかああああああ!

:キタああああっ

:知りたいです!

:しりたいしりたいしりたいしりたいシリたいSiriたい知りたい尻たい

 

『ってところでまた次回!』

 

:うおおおおいっ!

:ふざけんなッ‼︎

:ウソだろ⁉︎

:ウソだと言ってよジョーっ

:ジョーさんは今日いねえぞ

 

『はいウソです』

 

 

 

 

 





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