ライシュウハイセカイ   作:そこの角にいる

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ねみみにみみず

 

 

 

 

 

 決闘が学園により承認された。

 

 Cクラスに決闘を受けさせるという前哨戦はやり遂げた。

 その後、〝カッセン〟形式のルールの話し合いが両クラスの代表者らによって行われている。

 なかなか紛糾してるようで、いいんちょーたちがぷんぷんしながら戻ってくることもあった。

 

「向こうは当然のようにクラス外の助っ人を呼ぶつもりでいたみたい」

 

 セワシが教えてくれる。

 おれはセワシが持ってきたCクラスの顔写真付きの資料をパラパラとめくりながら話を聞く。

 

「探索者なら協力者を集め指揮し攻略を進めるのも力のうちだって」

「まーわからんくもない」

「でも今回の決闘はそういうことじゃないってかなり遣り合ったらしいよ。で結局、クラス外の助っ人は5人までってことになったんだけど」

「うん」

「向こうは他クラスでも、まして学内ですらなく、現役の攻略クランから呼ぶってわざわざ教えてきたんだって。あ、ね? いいんちょー」

 

 近くを通りかかったいいんちょーもおれたちの話が聞こえていたのだろう。目を吊り上げた。

 

「そうなのよ! あいつら! 『フッ、5人以内なら誰を呼んでもいいってことだよなあ。今さらルールを追加したりしないよな?』ですって! しかも! 『あ、でもどうしてもって言うなら追加してもいいぜ? 俺たちは構わない。まあちゃんと頼んでくれたらだけどな。でどうする?』ですってッ! もう!」

 

 ガーッと一気にしゃべって息切れ起こしてるいいんちょーをセワシが宥める。「どうどう、落ち着いてー。はい深呼吸ぅ」「すーはーすーはー」

 そんな2人を眺めながら、一人のプロフィールのところで資料をめくる手を止めた。

 

「……ねえ、松田旺次郎と揉めたナリキ何某ってコレ?」

 

 顔写真に指を置く。

 

「そうだよ?」

「ふーん……。そんで助っ人は誰かわかってる?」

「調査してみたけど、やっぱり候補は絞りきれなかったよ。もう少し調べてみるけど」

 

 十数名のファイルを渡された。

 そこにいつか見た顔。

 ナンパ失敗の腹いせにオーガを使った罠に嵌めたあの時の探索者──これでナリキ何某を含めた3人が揃ってしまったらしい。

 おれはぼんやり考えていた。

 

「助っ人かー……助っ人ねー」

 

 

 

 

 

 寮に帰る。

 玄関を開けると、スライムに半分埋まった千果とるー子が廊下を横切っていく。スライムに食われかけてるホラーな光景ではなく、なぜかとてもスライムが健気に見える。うんしょうんしょと2人を抱えて階段を上ってく。

 

「こらそこのダメ人間ども」

「あによー?」

「ん……?」

「ったく。パンツ見えるぞ?」

「変態」

「……えっち?」

 

 それでも2人は動かない。もう放っておこう。

 

 

 

 

 

 翌日。

 

「ままままままままままずいよ! まずいよあろうくん!」

「なんか、久しぶりに聞いたな、それ」

 

 聞けば、山を一つ使った『カッセン』形式の対抗戦で、目の届かない所があるのをいいことに、一部のCクラス生がいろいろと悪だくみしてるんだとか。

 毎回よくもまあ情報集めてくるものだなぁと改めて聞いてみれば、どうやら親族に新聞社勤めがいるそうで。

 

「ずいぶん協力的なんだな」

 

 単純に疑問を口にすると、セワシはフフンと胸を張り、「僕には逆らえないのだよ」と言った。

 弱みでも握ってんのか。

 

「そんなことよりどうするの?」

「銀角金角に言って煽ってやればたぶん止めさせるだろうけどなぁー。プライド優先なヤツらのようだし」

「じゃあ──」

「でも、ジッサイそれでじゃあ正々堂々やりましょうってなるかは、うーん、微妙なところじゃない? 真正面からやりたいヤツらの目を掻い潜って悪さするヤツもいるかもしれない。ってことでその目を増やそうと思う。どうせなら、派手にね」

「?」

「そういや対抗戦の話し合い、まだ難航してんでしょ?」

 

 クラス単位の決闘戦。通称『カッセン』と呼ばれる対抗戦は、主に不正を無くすための話し合いで、一方的にウチのクラスが苦心していた。

 事前に罠を設置するだとか、外部から呼んだ伏兵なんてあからさまなものは元より、脱落者への追撃など、絶対にないようにしなければならない。

 

「そのあたり向こうの代表者は話し合う気がないから……」

「ふーん。学園側も相変わらずか」

 

 そこに一石を投じるためのカッセンでもある。

 

「じゃあまあ、ちょうどいいか」

 

 イスから立ち上がると「どこ行くの?」と不思議そうに見上げてくるセワシに笑いかける。

 

「デパート」

「もう授業始まるよ?」

 

 おれは黙って席に着いた。

 

 

 

 

 

 

『ヘイヘイヘイ、迷宮チャンネぇール! はじ、める、ZEぃ!』

 

:きちゃあ!

:ヘェーイ

:あじまた!

:待ってたZE

 

『まず今日はイベントの予告から行くZE』

 

:なんだろ?

:アレだろ『終末トラベラーズ』

:出発式な。もうあと1週間か

:あー

:なる

 

『お役所からのお知らせとしてはそれもあるがYO! 迷宮チャンネルとしてのイベントの予告があるんだYO! その名も! 〝カッセン観戦LIVE(仮)〟』

 

:うおおおおおおおっ!

:きたあああああああ!

:すげぇぇぇえええっ!

:イエァ────ッ!

:フ────ッ

:かっこかりぃっ! イエーッ!

:うおおおおお……なにそれ?

:うん

:なにそれ?

:知らん

:オレも

:なんだ、俺だけ知らんのかと思たじゃん

:おい、叫んでたヤツら

:説明しろ

:……

:……

:……

:おい!

 

『そんじゃあ初開催する〝カッセン観戦LIVE(仮)〟の概要をお知らせしていくZEぇ!』

 

:初開催かよ!

 

『ってことDEぇ、主に探索者を統括し、市の行政と連携して迷宮探索に必要な人材、物資、方法を創出するのが、みんなご存知、学園というところだ。人材育成においては厳しい試験を突破した者のみが在籍を許され、次代のトップランナーになることを期待されているYO!』

 

:きびしー試験ね

:上流階級は除くって注釈は入れておいて欲しいわ

:だが実際にトップを走るのはその上流の市民では?

:そうそう

:厳しい試験以上の結果を残してきてるんでしょ? なんか問題ある?

:一般市民てわりとそういう認識なんだよな

:あーね。探索者は一緒くたっていうか

:意味わかんないけど

:問題だらけなんだよぉ!

:お前らここ以外でそういうの書き込むなよ?

:わぁーってるよ

 

『……学園では成績順にクラス分けがされていて、また別に個人ランキングがあるんだ。そして順位の活発な変動を促すために決闘制度が用意されている』

 

:ほー

:あまり表に出てこない情報だな、なぜか。

 

『ランキングはあくまDE個人のものDE、クラス分けは行事や授業をスムーズに行うための枠組みDEしかないとのことだったんだけどNE! 今回、非常に珍しいことにクラス単位DEの決闘が承認されたんだYO! 簡単に言うと! クラス最下位のFクラスがCクラスに喧嘩を売ったんだっZE!』

 

:おっほ

:下剋上か⁉︎

 

『Cクラスが鎧袖一触にするかそれとも──⁉︎ カッセンは学園が演習に使う小山をまるまる使って行う。領土防衛軍の全面協力のもと、10台以上の『呑竜』によるネットワークを形成し、200機以上の『超小型偵察機マイクロ・リコン』を使い、この迷宮チャンネルで生放送して実況・解説していく〜ZE! 運命の決戦は20日後! 楽しみにしててくれYOなっ‼︎ ……アーイ、では通常配信に戻りまーす』

 

 

 

 

 

 

 翌日のFクラスの教室は、朝の挨拶も控えめで、なにか水を打ったように静まり返っていた。

 

「……なあ、見たか?」

「……見た。3回見た」

 

「20日後だってな」

「俺あれで初めて知ったんだけど……?」

「あたしも」

 

「うぃーす。おはよー。いやー日程決まってよかったねえ。たまたま知り合った防衛軍のおっさんが話のわかる人でよかったよー。迷宮チャンネルの方もすんなり話が通ったし。ノリのいい人たちって……いいよね!」

 

「「「「「お前か山田ぁあああ────ッ‼︎」」」」」

 

 

 

 

 

 

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