ライシュウハイセカイ   作:そこの角にいる

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エーテル運用法~うまく使ってね❤︎

 

 

 

 

 

 一部やけに静かにこっちを見つめてくるので「なに?」と聞いてみれば、クリントこと東木(あずまぎ)が身を乗り出した。

 

「さっきの結界? は魔道具で起動しているのか?」

「まあ、そうだね」

「……それがあれば……いや、ダメか。ダメだな」

 

 言葉の途中でクリントは首を横に振り、いいんちょーが頷いた。

 

「そうね、ダメよ。装備が統一されるのだから、余計な持ち込みは禁止される、か制限されるはず。どうなるかわからないからこそ、それに頼った作戦は採れない。それにそんな貴重な道具を借りて壊したりしたら責任取れないわ」

「まあ結界が一個あったところでなぁ」

 

 どこかからかそんな声が上がったのでおれは言った。

 

「10コでも20コでも用意できるけどね」

「山田くん、余計なことは言わなくていいんだよ?」

「あ、はい」

 

 いいんちょーがこわかった。

 イリヒトとヒビトが改めてクラスの方針を固めるために、よく言って聞かせるように周りを見渡した。

 

「まあ、どうなるにせよ、今回、道具に頼ったやり方はナシだ」

「ああ。Cにも学園にも、今回てめえら間違えたぜって事を突きつけるんだ。そのためには、真正面からCクラスを打ち負かす」

「いいな?」

 

『おうっ!』

『はいっ!』

 

 

 

「ん。じゃ、続き話してもいいかな? うなぎ」

「あ、はい。お願いします」

「その語尾はやめてくれ。マジで」

 

「現代において、人でも物でも大なり小なりエーテルを備えてる。Cクラスの大多数が持つ遠距離攻撃スキルは【魔弾(マナショット)】らしいけど、我々はただ何もせずに【魔弾】を食らったとしても、その威力の一割以上は減衰する。目の前で拳を振り上げられたとき、反射的に身構え、防御姿勢を取るのと同じことがエーテルの間にも起こる。個人差はあるし、減衰してなお、人は死に得る訳だけれども」

 

 減衰するのは攻撃術だけの話ではない。治癒術においても同じことが言える。

 水薬(ポーション)が重宝されるのは誰に与えても100%効果を発揮するからだ。ただそこに品質という別の問題が立ち上がってくるのだけど。

 

「自身のエーテルを高めることは、より防御を固めることとなり、敵の攻撃の威力をさらに弱めることに繋がるということ」

「なるほど。そこでスキルのマニュアル発動の手順が関わってくるのか。スキル行使に必要なエーテルを確保するために、必然的に高めることになるからな」

「そう」

 

 感情の昂りでもガンッとエーテルが増幅されたりするけど、この場合のコントロールはちょっと無理がある。それにめちゃくちゃに疲れる。

 そんな話をして周りを見れば、経験があるんだろう、「あー……」みたいな顔してるのがチラホラ。

 一時的なパワーアップも時限式。なにもしなくとも一気に発散・消費されてそのまま気絶なんて致命的なことにもなりかねない。

 それを利用して戦いを有利に持っていくのも一つの手としてアリアリなのが今の世の中。挑発行為は、なに気に有効の一手になり得たり。

 

「だからまずは手順が大事。スキル発動に際して喚起されるエーテルの感覚を掴む。これが第一段階。ちなみにこれができればあとはちょっとしたコツで【威迫】ができる。飛んできた【魔弾】をこれで迎え撃つこともできるけど、一発に対して使うには無駄な消費が多すぎる。四方八方からの一斉射撃に対して使うならいいけど、でもそうならないよう動くことの方が重要だよね」

 

 周りの顔が頷いてるのを確認してさらに続ける。

 

「んで次の段階は効率的なエーテルの運用に入ってくる。高めるにしても限度があるし、戦闘となれば基本、消費していくばかりだからね。それが【威迫】に続く第2の運用法【誇示(ボースト)】。簡単に言ってしまえば〝自己バフ〟だ。己のエーテルの密度を高め、回転循環させて自身のあらゆる能力を強化する」

 

 スキルへの防御だけではなく、身体能力そのものを劇的に高めることができる。

 

「控えめに言って、足に羽が生えたかのように走れるし、さらに巧く扱えるようになれば、拳で【魔弾】を弾くこともできるだろう」

「残りの日数で俺たちにできるようになるだろうか……?」

「できるさ。下地はできてる。これまでの強化訓練にしろ、マニュアル発動にしろ」

 

 経緯は違った。だが、このためだ。

 

「問題ないない」

 

 

 

 

 ◇

 

「そんで、その上で〝カッセン〟にはこちらもスキルを用意する」

 

『え?』

 

「なにを驚く。スキルは効率的なエーテル運用法の最たるものじゃないか。1の消費でその効果を10にも20にも高め、キミらの言うところの〝スキル方程式〟、いわゆる魔法陣たる【霊気光式(エトァイル・ティル・ク・エーテア)】によって本来成し得ないカタチへと変換する」

 

「ちょ、ちょっと待って」

「エト……ァ……あ?」

「スキル? スキルオーブ使うってこと?」

「え? クラス全員?」

「え? そんなバーゲンセールしてるような物だっけ?」

「え? スキルってなんだっけ?」

 

 おー混乱しとる。まーそういう言い方をしてしまったしな。…………うはははははは。

 

「ちょっと待ってッ!」

 

 いいんちょーが立ち上がり、瞬く間にみんなを鎮め、次いで音もなく拍手するそぶりのおれを見下ろした。

 

「詳しく説明してくれる? 山田くん。場合によってはその方法は採れないわ。武器防具の話と一緒になってしまう」

 

 おれは素直に頷いた。

 

「うん。要は、これならFクラスでも無理をすれば揃えられるだろう、くらいに誰もが納得できるものならいいわけだよ。あるじゃないか」

 

 みんながそれぞれ顔を見合わせ、虚空を見つめることしばらく。

 

「あ」

「ほーぅ、気づいたかね? ネオ」

 

 おれは物欲教授っぽく最初に声を上げた人物に声をかけた。インテリメガネくんこと根尾月太に。

 

「ああ」

 

 ネオはメガネを光らせて言った。

 

「スクロール」

「正解」

「フ」

 

 さすが俺、と自画自賛するネオは放っておく。

 

「『巻物』2種。スキルスクロールとそれよりは多少高くなるけどマジックスクロール。1日の回数制限があることであまり活用されていないそれらを使う」

 

 使い捨てであり、回数自体も大して多くない上に、使いこなすにはやはりそれなりの研鑽が必要ということで、上流階級には見向きもされていないらしい。

 安いと言っても気軽に使えるほどじゃないのも事実ではある。

 一般探索者の中には特にマジックスクロールをもしもの備えとして利用してる者もいるようだが。日の稼ぎが2万(※20万円)を超えてこないと難しいだろう。

 スキルオーブを手に入れた時のために、とか言って散財してはっちゃけてる人もいるみたいだけど。

 

「でもたしかにスクロールなら……」

「バーゲンセールしてるスキルあったなぁ」

 

 

 

 

 

 

「あろうくん、もしかして──」

 

 こそっとセワシが話しかけてきた。

 

「うん?」

「──『魔導書』持ってるの?」

 

 

 

 

 

 

 






関係ないけど、ゲルググ・スガイ機とボカタ機が届きました。作りません。箱とパーツを見てまだにやにやする時間なのです。

お気に入り等、気が向いたらよろしくお願いします。
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