ライシュウハイセカイ   作:そこの角にいる

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A.かっぱ

 

 

 

 

 

「おい! 見ろ! あれ!」

「え、なに⁉︎」

「上だ! 上ッ!」

「鳥か?」

「飛行機か?」

「いや! ヒトダマンだ‼︎」

「ヒトダマンが空中を爆走してるッ!」

「ダンジョンに向かってるぽいなー」

「対空防衛の的にされなきゃイイけど」

「あー」

 

 

 

 現場主義の防衛軍のお偉いさん、高玉(こだま)御大将(←階級じゃない)との話をスッパリ切り上げて、ダンジョンに潜る。

 人目につかないところをテキトーに目指しながら、飛びかかってきた〈ナッツイーター〉を蹴り飛ばした。

 

 ──エディ。

 ──はい。【転移門(ポータル)】起動。

 

 最近、子狐と子狸に安定し始めたアポとウォーダンが引っ付いてくる。

 おれたちを囲い光の柱が立ち昇る。

 光が回転を始め、風を巻いて球状になったところで、フッと浮き上がる感覚があり、気づけばもうそこはおれたちの砦の中だった。

 

『おかえりなさい。あろう』

「うん、ただいま。で?」

『はい、砦の門の前にいます』

 

 外に出るとまず、食料や道具類が積まれた葛籠(つづら)やら魚籠(びく)やらがあり、その向こうに50匹以上のカッパが並んで地べたに座っていた。

 

「多いってぇ……」

 

 思わず呟いてしまった。

 

 しかしみんな衣服を身にまとっている。知能の高さを窺わせた。

 

「クゥ、ル、ル、ル、ル、ル、ル」

 

 そんな音がカッパたちの間から重なって聞こえてくる。

 泣き声らしい。鳴き声でなく、泣き声。

 それに混じって、警戒心と戸惑いが感じ取れた。

 

「Mack」

「Mack」

「Mack」

 

 マックという囁きとざわめき。念話でエディにどういう意味? と訊ねるも意味は不明。

 

 最前列のカッパを後ろにいるカッパがつついて呼んだ。

 

「Quax, Paag, quo quel quan Mack?」

「qua」

「quan?」

「qua」

「quan? qcalon」

「qua. qyn ol !」

 

 クアックア言ってるのをどうしたものかと眺めていると、仲間に一喝したカッパが揉み手をしながら大変不気味な顔をこちらに向けた。

 えーどういうことかと他のカッパを見渡すと、不気味顔のカッパが仲間たちに振り向いて「キーッ」と鳴いた。カッパたちが全員不気味顔になった。

 どうやらこちらの機嫌を損ねないよう笑顔で対応しようとしているのだと察した。逆効果だ。

 

「アナタ様がこの館の主でしょうクァ?」

「そうだけど」

 

 喋れるんだ。フツーに。

 

「Pou-Fou──わたしはパッギといいます。我々をお助けいただきたいのです。どうクァ。伏してお願い申し上げます」

 

 そう言ってパッギは頭を下げきゅうりを差し出してくる。

 周りのも同様に。()いだそのままのきゅうりもあれば、くたっとしたのはどうやら漬物のきゅうりだ。かじりかけのもある。……いらんて。

 

 話をすごく簡単にまとめると、彼らモンスター同士の戦争があったということらしい。

 

「我々は、この地に国を築く以前、常に仮想敵は隣国『(かはうそ)』でした。クァつて大きな戦争もありましたし、またいつそうなってもおクァしくない。そういう間柄で」

 

 互いに互いを恐れ、軍備も拮抗し、じっと相手を窺いつつ、小競り合いをしていた。しかし突然、謎の第三国が戦争を仕掛けてきた。

 

「あれらは全身を粗末な布で幾重にも覆って肌を少しも見せません。顔を隠すマスクは大気中クァら水分を集め、どんな環境でも視界を確保するための突き出た視覚補助装置が取り付けられています。頭部の小鬼めいた短い角は、マスクに取り付けられているのクァ、実際生えているのクァ、わクァらないのです」

 

 壊れた魔道具を修理し、扱う知能と、遊び感覚で獲物を追い詰めなぶり殺しにする嗜虐性を持つ。

 

「戦闘の中で、一部剥がれたマスククァら覗く突き出た特徴的な歯の目撃証言クァら、齧歯類ではないクァとの話もありますが、詳しいことはわクァっていません。なぜなら、あれらは死ぬまで殺し続けますし、死ぬと毒性を持つ泡へと変わっていくのです。しかし呼称がないのも不便でしたので、仮に〈齧族(ロデレー)〉と言っております」

 

『クゥ、ル、ル、ル、ル、ル、ル』

 

 泣き声が大きくなった。

 

「『獺』は滅び、我々も大きく数を減らしながらもこの地に逃げ延び、15年以上を概ね平穏に過ごしてまいりました。しかしついに先日、あれらに追いつクァれてしまったのです。勿論、我々の国の勝にはなったのです。その為に36万9500匹の国民が健気にも戦死しました」

 

『クゥ、ル、ル、ル、ル、ル、ル』

 

 また泣き声が大きくなった。

 

「それで深刻な食糧不足が解決されたのは皮肉なものです。あのままでは石炭殻を食うという恥ずクァしい暴挙に出る必要があったクァもしれません。しクァしそれだけの肉が供給されましたクァらね。毎月毎月職工を1万も2万も屠殺する手間が省けたのです」

「ん?」

 

 どうやら職工とは彼らの内の最下層に位置する労働者階級のようだ。

 

「食うの?」

「勿論ですよ? その為の屠殺法です」

 

 ぐおー、アタマおかしくなるぅ。

 戦死した者たちに対しては悲しむのに、毎月1万2万の同胞を食糧にしている。

 頭を抱えるおれを見て、何かを察したカッパが言う。

 

「餓死や自殺する手間を国家的に省いてやってるだけですよ? ちょっと有毒ガスを嗅がせるだけでたいした苦痛もありません」

 

 そういうことじゃない。

 え? あれ? おれこいつら助けるの? うん?

 

「で、おれになにをしろと?」

 

 内心、恐々としながら聞いてみる。

 

「保護してほしいとは言いません。勿論、国を救ってほしいとも。ただわたしどもを雇ってほしいのです。我々にも愛国心はあります。しかしここにいる者どもは国でも少し毛色が違う変わり者でして、愛国心に燃え立って敵に突撃していくを良しとしない者どもなのです」

 

 カッパの国は今、6割を占める知能の低い職工たちがすでにパニックに陥ってデタラメな動きをしている。

 術師階級や戦士階級の政治家や軍のお偉いさんら国を主導する者たちは、国軍である義勇隊を率いて戦っている。

 そして個々で特異な動きをしているのが、音楽家、劇作家、批評家、料理家、画家、発明家、彫刻家などの芸術家を称する者たち。

 この状況にインスピレーションを得て一心不乱にその道を邁進する者もいれば、この機に乗じて職工を生贄に新しい術の開発を始める者もいれば、芸術は爆発だと爆弾抱えて敵に突っ込んでいく者も、自ら大砲の弾になってぶっ飛んでいく者もいる。そして、生き残るを第一とする者、培ってきたものを失うことをこそ恐れる者も。

 

 カッパの一団をよく見れば、後ろの方に固まって、カッパでないのがいる。

 

「ゴブリン? がいるね」

 

 ずいぶん身綺麗な。

 

「ええ。姿が退化して生まれてくる者がいるのです。幸い知性は有しているので、国の片隅に暮らしているのです」

 

 ホ部族と言われるカッパの国ゴブリンは、新たに生まれてくるゴブリンを受け入れ生活している。

 カッパは頭の皿の周りに髪が生えてるのに対して、ホ部族のゴブリンは側頭部に髪がないモヒカンヘアーだ。

 カッパは術師タイプが多い傾向にあり、いわゆる魔法使い系の種族らしく、対してホ部族は前衛の戦士として駆り出されるのだそう。

 ホ部族のゴブリン。なんだか大きなフード付きのローブを着せて、光の剣を持たせたくなる佇まいをしてる。

 

「戦士階級の者どもが皆戦争に行ってしまったので、あの者どもに護衛を頼んだのです」

 

 ──どうするエディ?

 ──彼らの術というのを知れる機会ではありますよ?

 ──うーん、共喰いとかされたらたまったもんじゃないんだけど。

 ──そこはちゃんと食料があれば大丈夫でしょう。より美味しい物を知ればわざわざそんなことを考えることもないでしょう。

 ──あー、じゃ、まあ……いいかー。

 

 ということでなぜか『終末トラベラーズ』出発前の数日を、カッパと過ごすことになったのだった。

 

 カッパはともかく、とりあえずあのホ部ゴブリンはウチの〝自衛隊騎士〟にすることに決めた。

 

 あと、魚籠の中にうなぎがいた。

 

 

 

 

 

 





GQuuuuuuX 再上映、観に行きたいーうおおー


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