ライシュウハイセカイ   作:そこの角にいる

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配信! 迷宮チャンネル

 

 

 

 ◆

 

『ヘイHEYへーい! どいつもこいつもこんばんわ。俺だZEっ?』

 

 放送が始まるとすぐにコメントが流れ出した。

 

:きちゃ

:へいへーい

:へへへーい

:へい

:へいへいほー

:へいへいほー

:待ってたー

:ZE

 

『地下3階・迷宮チャンネルの時間だYO。そして今日のびっくりどっきりゲストは、こ・ち・ら!』

『どうもこんにちは。〈闇夜烏(やみよがらす)〉所属の岡山丈(おかやまじょう)です』

『フーッ! 言ってみれば一部リーグ上位の探索者が来てくれたZE~』

 

:オカヤマジョー

:カラスジョー

:ジョーさん!

 

「前回、前々回の放送DEは、ダンジョンと探索者の基本や、ダンジョン内DE見られる遺跡や絶景なんかを探索者たちの勇姿を交えてお届けしたZE。今日はみんなお待ちかNEのスキルやジョブについても触れていく。そして後半はなんと領土防衛軍のダンジョン探索部隊『深部情報偵察隊(ディーザス)』の映像だ」

「よく許可が下りたものだ。機密も多いからそれなりの実績を積んだ探索者でないと見られないんだが」

「軍が今どれくらいやれるか、知ってもらう機会になれば。ということらしいYO」

「ここにきて力を示すか。まあ不思議じゃない」

「そうなのかい?」

「本隊と違って探索部隊はさっきも言った理由からもなかなか表に出てこられない。しかし探索者の人気が高まる一方で軍がナメられるようになるのはよろしくない。それは探索者にとってもだ」

「ダンジョン内部DEの犯罪の取り締まりや救助隊の活動の妨げになるおそれがあるからNE」

 

:民草よ、我らが権威を思い出させてやろうってこと?

:楽しみ

:期待

:わくわく

 

「そんじゃあ始めるZE~」

 

 スキルの例として切り貼りされ編集されたさまざまな映像が流れる。

 炎の剣。

 飛ぶ斬撃。

 空中ステップ。

 ハイジャンプ。

 火球。

 水壁。

 風刃。

 土槍。

 

:カコイイ

:スキルほちぃ

 

「スキルというのはつまりは全て魔法だ」

「魔術スキルや剣術スキル等と呼び分けられているZE?」

「わかりやすい分類だと思うが、いざスキルとは、という問いに対しては混乱を招きかねない呼称ではある。剣士というジョブはあっても、剣術というスキルはない。自分の意思も経験も超えて勝手に体が動き出すなど私には恐ろしく感じるが皆はどうか? 実は自分が格闘ゲームのキャラクターになっていて、どこか画面の向こう側から何か得体の知れない者に自分の一挙手一投足を操られているとしたら?」

 

:格闘ゲームとか知らんし

 

「なんと」

「Oh」

 

:格ゲー知らんのか

:ティーンは、まあそうか

:世界が終わって20年だし

:終末トラベラーズ回収してきてやれよ

:他に必要なもんいっぱいあるからなあ

:タバコや酒の回収やめりゃいいんじゃね

:お?

:あ?

:よろしい、戦争だ。

:しかし、世界はもう終わっている

 

「……。ともかく。発動までの過程を肩代わりし、直感的に行使できるようにしたものがスキルだと云われている。例に挙がった剣術スキルとは魔法を使用した剣技のことで、自分の身体の動きそのものをスキルに委ねるわけではない。スキルによる魔法効果の発動に失敗はないが、自身で振るう技の失敗は十分にあり得ることだ」

 

「ということだYO。ってところDE、そろそろ次いくZE!」

 

 

 

 

 ダンジョンの暗路。

 どこか軍服の詰襟を思わせる強化服にプロテクター。ヘッドギアのバイザーが薄く光っている。

 揃いの装備の集団後方から、全長3.4メートル、全高2.1メートル、小隊支援無人多脚機『呑竜』が続く。

 

「情報にYOると、見た目と速度から『ドンガメ』と呼ばれて親しまれてるYOだZE」

 

 武装モジュールの換装によって、12.7mm機銃と対戦車ロケット弾を装備。

 およそ15分で半径250メートルのローカルb6G通信網(地域個別利用型第六世代超・ネットワーク)を実現。

 隊員のバイザーを通して映像と音響から情報を収集、統合してマップや識別カラー付与、軍用強化防護服(パワードスーツ)へのエーテル供給システム。

 積載量1000キログラム。

 

「金持った探索者が自動追走型運搬車輌を連れてるのを見たことあるヤツもいるんじゃないかYO」

「山岳の荷運びロバにたとえて『ドンキー』として販売されているからな。しかし、軍用はケタが違うな」

 

:おお、ドンガメ

:ドンガメ

:ドンガメかぁいいー

:ドンガメじゃなくて呑竜なんだよなあ!

:おお、どした

:あらぶっておる

:もしかして開発者か?

:あ

:あ

:ドンガメかぁいいー

:呑竜だって言ってんのっ(*`Д´)φ★ドンッ

:ガメ

:ヽ(@`⌒︎´)ノムキィ(#@益@) dドンッ

:ガメ

:(#`皿´)⊃︎ドンッ

:ガメ

:ε=(怒゚Д゚)ノノドンッ

:ガメ

:ガメ

:(●︎`皿´●︎)

:╭︎ ( ФټФ)┘︎ウェイ~

 

 

 ドンガメの横に立つ指揮官と副官の下に、遠く射撃音が響く。

 映像が切り替わる。

 班長に率いられた6人一班の5チームが散開してモンスターを狩り出していく。

 彼らのメインウェポンはアサルトライフル『仙斎・紀州号』。世界の終わりの混乱期に慌てて配備された純国産自動小銃を改良したものだった。

 

:映像だとあんま気にならんけど音はどうなんだ?

:それ。うるさくないん?

:たしかに銃はモンスターの注意を引くからよくない、とか探索者ニキから聞いたことある

:数で押すからいいのか?

 

「Oh、コメントに質問がきてるNE。そこんとこドゥーなの? 教えてジョーさん」

「仙斎・紀州号はモンスター素材によるマイナーチェンジで音はある程度抑えられているらしい。しかし、それでもあんな閉鎖空間で銃を連射していたら普通に耳がバカになるものだが、部隊は強化服のヘッドギアで完璧に保護されているようだ。あとは探索行においての音の弊害──モンスターを呼び寄せるなどの懸念についての結論は、気にしてもしょうがない、だと思う」

「HO、それはどゆこと?」

「敏感に音に反応して襲いかかってくるようなモンスターは、探索者の防具が擦れるわずかな音でも寄ってくる。逆に銃の轟音で危険を察知して逃げるモンスターも少なくないのでは?」

「熊よけの鈴みたいな?」

「そう」

「モンスターも生き物だものNE」

「後半は私の推測でしかないが、もしかしたら軍はすでに検証を終えているのかもしれん」

 

:でもでかい音ってことは遠くまで届くってことで

:そうか、そのぶん大量に引き寄せてしまうかもしれないってことか

 

「それこそ気にしてもしょうがない。そこで対処できないなら死ぬだけだ」

 

:ええー……

:つめたい

:ジョーさんつめたい

:つめたいじょー

 

「冷たいと言われてもな。銃に限らず、軍に限らず、探索者パーティだって戦闘になれば大声で指示を出すし、スキルによっては派手に爆発したり、地面が隆起したり、デカい音は発生する」

「なるほどなるほど。ソレがダメってなら全員が全員アサシンみたいなムーブかまさなきゃなんないんだNE!」

「そう。しかも人間より遥かに優れた五感を備えたモンスター相手に。多くの者にとって現実的じゃないだろう」

「みんな納得したかYO!」

 

:あ~そっかー

:納得

:ごめんジョーさん

:つめたいって言ってごめん

:ごめんだじょ

 

 やがて部隊がたどり着いたそこは、洞窟内だが地上のように草木が生えた広く明るい空間。一辺がおよそ100メートルくらいはあるだろうか。

 明るさの原因は天井付近に突き出た鉱石のようだ。

 そのいくつもある鉱石の真下の壁際に、淡いピンク色の植物が繁っている。

 

:うわっ

:でたぁ~

:え、植物じゃないの?

:花蟷

:カトウちゃんの群れ

:カマンティスね

:あれ全部モンスター?

:そう

:えっぐ

:虫系は数が多いしデカい分よけいにキモいんだよなあ

 

 明るく輝く鉱石に向けて、壁に沿って積み重なる全身淡いピンク色の巨大なカマキリ。大きさは人と変わらない。

 〈花蟷(カマンティス)〉。

 鉱石を狙って迂闊に近づけば、瞬く間に身体を分割されてダンジョンの肥やしになること受け合い。幸いなことに距離さえ保っていればあそこから動くことはないのだが。

 映像から指揮官の声が響いた。

 

『殲滅する』

 

:まじか

:この数いける?

:倍どころじゃないぞ

:銃とはいえここで撃ち過ぎると……

 

 指揮官が身振りで指示を出すと、ドンガメの武装モジュールが稼働、ロケットランチャーの照準が隊員たちのバイザーに反映される。撃った。爆発した。カマンティスが一掃される。

 

:あ

:あ

:あ、はい

:ですよね

 

 不意に、爆煙が不自然な流れを描いた。

 煙を押し除けて黒い霧が渦を巻く。

 収縮した霧が弾けたと思ったら、何かが飛び出した。

 隊員に襲いかかる。

 

:あ

:え

:ひぇ

 

 隊員に振り下ろされた鎌──を、間一髪わり込んだ指揮官のサーベルが弾いた。

 軍帽に軍用のスマートグラス。口角が上がっているのは余裕の笑みか。

 

:止めた!

:すげえ!

:カマンティスの陰影か

:デカい。2m超えてるぞ

:レア個体?

:いきなり現れたな

:速い

 

 指揮官である隊長がサーベル片手にカマンティスと切り結ぶ一方で、年嵩の副官が指示を出す。隊員たちは距離を取って即座に援護に回れるよう備える班と、周辺の警戒にあたる班に分かれ、推移を見守る。

 カマンティスも速いが、隊長は残像が見えるほどの体捌きだった。

 左手は腰裏に回したまま、舞うようにカマンティスを翻弄しつつ、胴体に斬撃を浴びせた。が、生物の身体とは思えない金属の擦過音がギャリギャリと響いて、隊長が少し驚いたような表情を浮かべた。

 

:かたぁっ⁉︎

:もはや鎧じゃん

:どうすんの⁉︎ これ⁉︎

 

 隊長が再び笑みを浮かべた。

 ゆらりと上体を傾けたと思ったら、消えた。

 視認も難しい速度域──から、適度に脱力した腕が疾風の如く振るわれ、一刀がカマンティスの頭と胸部の間に正確に吸い込まれた。ギャリギャリギャリと火花が散った。

 

:うわっ

:そこもダメ⁉︎

 

 ちなみに、要所要所でスロー再生されている。

 スロー再生が解除。

 隊長が回転するように二度、全く同じところに斬撃が叩き込まれ、カマンティスの首が飛ぶ。さらに回転の勢いを利用して、上からカマンティスの身体を斬り下ろす。

 どしゃりとカマンティスの陰影は地に沈み、塵となって拡散して消えた。後にはいくつかのアイテムとスキルオーブが残された。

 

:うおおおおっ

:おほぉぉおお

:すげえええっ

:かっこよ

:隊長かっけえっ

:まあ、かっけえけども、オジサンには彼らのコスプレ感がなんかムズムズするんだよなあ

:わかる

:わかる

:そう?

:目とか腕に封印された黒いものが疼くんだよなあ

:サブカル全盛世代の悪ふざけがもろに反映されてるって言うしな

:逆に若い世代なんかはなんも思わないらしいし

:なんか思えよ

:ちょっとは思えよ

:冷めてんなあ、最近の若いもんは

:出たよ出たよ、ジジイどもの最近の若いもんは攻撃

:装備が充実してていいなあ

:あのロケットランチャーの情報はありますか?

:領土防衛軍を団体芸なんて言ってた奴らはこれ見たら黙るしかないな

 

「ロケットランチャーの詳細は入ってきてないけど、名称は『能當(のと)・一貫斎』というらしいYO」

「ネーミングから推測されるのは自前で用意した兵器だろうな」

「おそらく、そうだろうNE。自衛隊に馴染みの土地柄だったら防具含めいろいろとまた違ったんだろうけど」

 

 ︙

 ︙

 

「そろそろ終いの時間だZE! お名残惜しいがまた次回! ZEヒ見てくれよなっ。それじゃあ、サヨナラ、サヨナラ……サヨナラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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