念能力教師は世界を変える   作:kakarotto

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第3話 ペン×ト×ノート

 

ルークとクレアからオーラを感じて以来、俺は瞑想によって自分の中のオーラをなんとなく感じることができるようになっていた。

 

オーラはあるのに、精孔が閉じているためにそれを引き出すことができないという感覚だ。今まではそもそも体内のオーラを感じていなかったところから考えると、これは大きな進歩だ。

 

それでも、オーラの操作ができないのは変わらない。精孔を広げる意識を持って瞑想を続けるしかないだろう。

 

俺は毎日瞑想した。精孔を広げるためには、とてつもない集中が必要で、思っていた以上につらかった。これと比べたら、今までやっていた瞑想なんて、ただ目をつぶって座っていたようなものだ。もっとも、あのとき俺がオーラを感じることができたのは、それまでの瞑想によって下地ができていたからだろう。…そう考えないと、まる2年を無駄にしたことになってしまう。

 

母さんと双子はまだ病院にいるが、父さん、姉さんと共に毎日会いに行った。どんなに瞑想で疲れても、双子を見ればすぐに元気を取り戻せた。

 

 

 

 

 

 

そうして1年が経ち、俺は6歳になったが、俺の生活に大きな変化はなかった。幼稚園の代わりに小学校に行くようになっただけだ。俺は、前世では大学受験を乗り越えたんだ。私立の名門校とはいえ、小学校程度の勉強に困るなどということは当然なく、授業中もほとんどの時間はオーラ操作の練習など、念の修行に使っていた。

 

そうして修業した念能力には、大きな進歩があった。というのも、纏を習得したのだ。すなわち、精孔を開いて体から湧き出てくるオーラを、体の周りにとどめておくことによって、身体能力を大幅に向上させることができるようになった。

 

オーラをとどめておくと一言で言っても、そんなに簡単なことではなかった。オーラは意識しなければ勝手に流出していくものなのだ。しかも、オーラの流れは通常目に見えるようなものではない。俺には目だけにオーラを集中させる技術などまだないので、精孔を少しずつ開いていき、全身をオーラで覆って初めて、オーラの流れが見えるようになった。

 

流れが見えたあとも、出ていこうとするものを無理やり引き止めるわけだから、一筋縄にはいかなかった。まずは流れの向きをわずかに変えるところから始め、体の周りを循環させるところまでいかなければならなかった。いまだに意識しなければすぐにオーラが出ていってしまう。この技術を一瞬で身につけたゴンやキルアは、やはり天才なのだと思い知らされた。

 

才能で劣る俺にできることは、理論的な努力しかない。俺はオーラ操作の感覚の言語化に努め、念についての進捗や試行錯誤の過程を紙に書き出し、記録した。そのうちファイルかなんかにまとめないとなあ。

 

他の四大行については…お察しだ。というか、纏も未熟なまま、監督者もなしに軽々しく練を使ってみるなどということは怖くてできない。下手したらオーラが枯れて死ぬ。

 

絶にも難航している。今まで必死に精孔を開くことばかりやっていたのに、急に閉じるというのだから難しくて当然だ。まったく閉じないこともないが、ちょっと絞るくらいがせいぜいで、閉じきってオーラを漏らさない完璧な絶は夢のまた夢だ。

 

しかし、どちらも感覚は掴みつつある。時間はあるのだ。そのうちできるようになるだろう。発に関しては、練と絶を習得してからでいいだろう。早く水見式したいなぁ。

 

「ママ!サッカーしてくるね!行ってきます!」

 

「いってらっしゃ~い」

 

そういえば、姉のマリアは10歳になった。どうやらサッカーに興味があるらしい。時代的に、女子のスポーツは珍しく、忌避されることさえあるが、両親はそういうことは気にせず、むしろ応援している。本当にいい両親のもとに産まれたと思う。

 

「マリア違ってアレンはいつも瞑想してるわね。たまには学校の友達と一緒に遊んでもいいんじゃないの?」

 

瞑想していたところ、母さんに話しかけられた。

 

「いや、僕はこれが楽しいんだよ、母さん。心配しないで」

 

「そう?ならいいけど…」

 

分かってる。6歳児のくせに、ろくに遊ばず瞑想ばかりしているのは、親から見れば相当心配になるだろう。

 

しかし、オーラの感覚をつかんでからの俺は瞑想を楽しめるようになってしまった。瞑想して、精孔を広げる。ただこれだけのことだが、努力した時間がほとんどそのままオーラ総量として表れることには、他にない気持ちよさがある。オーラ総量が増えると、体にエネルギーが満ちあふれるのを感じる。それが心地よくて止められないのだ。

 

最低限は運動するようにしているつもりはある。オーラを使って強化するのは、結局は自分の肉体なのだから、この世界でも身体が資本なのは変わらない。たまには姉さんとサッカーしたり、飼い犬のチャーリーと遊んだりと、体を動かすようにはしているが、それでもまだ平均的な子供より少ないかもしれない。…さすがにもう少し運動しないとまずいかもしれない。

 

「こら、クレア!そんなもの食べちゃだめでしょ!ぺってしなさい!」

 

リビングでまたクレアが母さんに怒られてる。ルークとクレアは、相変わらずかわいい。この間1歳を迎えたところで、最近はなんでも口に入れたがって困っているが、そういうところもかわいい。

 

マリアもかわいがっている。俺が産まれたときはマリアはまだ3歳だったから、当時は自分のことで精一杯で、赤ちゃんをかわいがっている場合ではなかったんだろう。

 

どちらかといえば、ルークは俺に、クレアは姉になついている。まあ、2人とも結局は母さんが一番好きなんだけどね。

 

二人を産んだとき、母さんの体調は実のところかなり危なかったらしい。もともと体が強い方でもないのに、40近い年齢だったし、しかも双子だったからだ。

 

しかし、医者と父さんの献身的な介護と、お母さん自身の努力により、幸いにも元気を取り戻してくれた。なんでも、自分が死んで家族を悲しませたくない、子供達には母親がついていなければならないという一心でリハビリを頑張ったらしい。

 

母さんが危なかったという話は、当時の俺には聞かせてくれなかった。母さんや父さんにとって、俺はまだ守るべき子供の一人に過ぎないのだろう。

 

纏を身につけた今となっては、本気を出した俺の腕力は父さんを上回るだろう。それでもやっぱり、俺はまだ守られているのだ。ルークとクレアだけでなく、父さんも母さんも姉さんも、みんなを守れるようになりたい。

 

 

 

 

 

 

 

2ヶ月後、俺は7歳の誕生日を迎えた。

 

「アレン、誕生日おめでとう!」

 

母さんがお祝いのケーキを食卓に持ってきながら言った。

 

「ありがとう」

 

「ほら、ルークとクレアもおめでとうって言ってあげて」

 

「おめえとぉ」

「おめぇと」

 

か、かわいい。

 

「か、かわいい!」

 

やっぱりマリアもそう思うか。すると、父さんが包みに入った小さな箱を取り出した。

 

「お前の誕生日プレゼントには毎年悩むんだ。お前はわがままを言わないし…」

 

「私はわがままってこと!?」

 

マリアが父さんを困らせている。父さんは苦笑している。

 

「そういうことではないが…とにかく、アレンはわがままを言わないし、欲しそうにしてるものがあんまりないからな。喜んでくれるか分からないが、今年はこれに決めた。さあ、開けてみろ」

 

言われた通り、早速箱を開けてみると、中には高級そうな万年筆が入っていた。

 

「最近のお前は、よく紙に何かの図形を書いているところを見かけるからな。最初はただの落書きかとも思ったが、どうやら何度も見返したりしているようだし、お前にとって重要なものなんだろう?やりたいことがあるなら、道具はいいものを使わないとな」

 

「ありがとう!鉛筆よりもいい文房具、ちょうど欲しかったんだ」

 

これは実際、かなりうれしいプレゼントだ。俺は前世から文房具にはこだわりがあるタイプだったので、家にあったような安く量産された鉛筆を使い続けるのはなかなかのストレスだった。

 

「喜んでくれてうれしいよ。私と母さんからの贈り物だ。母さんにもありがとうを言ってやれ」

 

「母さんも、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

「私はこれあげる!」

 

マリアはそう言って、分厚いノートをくれた。

 

「お小遣いで買ったの!ペンがあるなら紙もあったほうがいいでしょ?」

 

「姉さんも、ありがとう!」

 

両親には毎年プレゼントをもらっていたが、マリアにもらうのは初めてだ。それも、こんなに分厚くて、良さげな紙を使っているノートは、姉のお小遣いでは結構奮発しないと買えないだろう。

 

俺は、本当に優しい、良い家族を持ったものだ。…転生者であることも、念能力も、隠しているのが年々申し訳なくなってくる。しかし、こんなに愛している息子・弟の中身が異世界の20代の青年だと言われたら、どんなに優しい人でも大きなショックを受けるだろう。いつかは打ち明けなければならないとは思いつつ、その勇気はなかなか湧いてこなかった。

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