新米召喚術師の異世界紀行   作:woodenface

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投稿が遅れてすいません。

次は早く・・・・・・できるかな?(汗)


強襲!はぐれオーガ

『“はぐれ”だあああああぁぁぁ! “はぐれ”のオーガが襲ってきたぞおおおおおおおおおぉぉぉ!!』

 

 

 和やかに別れようとした二人の元に突如響いた危機を告げる叫び声。突然の出来事に動揺し、思考が千路に乱れてしまった俺とは対照的に、隣にいた歴戦の狩人は冷静で迅速だった。

 

「召喚術師殿、私は他の狩人と共に現場へ行く。召喚術師殿は昨日のドラゴンを喚び出してくれないか?」

 

 戦力の強化のために即座に大型の魔物を喚び出さない約束を破る許可を出す判断の速さと決断力。俺としてもその要請に応えたいのは山々なのだが・・・・・・

 

「・・・・・・すみません。実は今日はもう、ドラゴンはおろか他の魔物の一匹も喚び出せないんです」

 

 アリッサとジャンと話をしたときに喚び出したフェアリー・ドラゴンで俺の魔力は空っ欠、ウィンター・ウルフの一匹も喚べやしない。スペル:*も長老の家で治療のために使ってしまったし、今の俺に使えるものは文字通り身一つしか残されていないのだ。

 この答えは想定外だったのか、初めガルドさんは目を瞠っていたが、俺の悔しげな表情に真実を感じ取ったのか、すぐに元の表情に戻り若干の口惜しさを感じさせる声で言った。

 

「そうか・・・・・・、分かった。今は時間が惜しい、召喚術師殿はここで待っていてくれ」

 

 そう言うが早いか、ガルドさんは護衛のために装備したままだった弓矢と山刀を手早く確認すると、先程から警告の叫び声が続く方角へと向かって走り去っていった。

 

 

 

 

 待っていてくれ、とは言われたものの、この緊急時にただここで突っ立っている訳にも行かないだろう。もう新たにユニットを召喚することは出来ないが、既に召喚しているユニット―――バステトたちなら戦力になるのではないだろうか。まだ別行動をとっているバステトたちに感覚共有を使って連絡を試みてみよう。全員に感覚共有をする訳にもいかないので、代表をしていたペンダントを下げたバステトを頭に思い浮かべ意識を集中していく。

 

『バステト看護婦団!聞こえるか!』

 

『えっ、あっはい、聞こえています、マスター』

 

『そっちでも警告の叫びは聞こえただろう。今からオーガを迎え討ちに行くことは出来るか?』

 

『それが・・・・・・、こちらもちょっと面倒な事になっていまして・・・・・・』

 

『何? どういうことだ?』

 

『オーガ襲来の報を受けて村人たちが長老の家に避難してきているのですが、今私たちは手分けして避難する人たちを誘導しているんです』

 

 頼みの綱のバステトたちも動けない・・・・・・か。

 

『分かった、それが終わってからでいい。現場に向かってくれ』

 

『了解しました。お気を付けて、マスター』

 

 集中をやめると感覚共有が解け、バステト看護婦団の声は遠ざかっていった。しかし、本当にどうするべきか。魔力は底をつき、召喚術も戦闘スペルも使えない。戦力になりそうな頼みの綱の召喚したユニットも今は手が離せない状況にある。絵に描いたような八方ふさがりだ。

 

「いっそフル装備でなら・・・・・・、いや、でも・・・・・・」

 

 今着ている《黄金の鎧》に合わせて、小屋の中に放りっぱなしにしている《黄金の盾》、《黄金の槍》を装備すれば相当な敵でもなければ対処できる攻撃力と防御力が得られる。しかし、それはあくまでステータスで見ればの話だ。たとえ槍と鎧の能力で攻撃面が多少なりとも強化されているとしても、所詮は武術の心得すらもかじったことのない素人のへっぴり腰の槍捌きでは敵に傷を負わせることすらおぼつかない。

 それになにより・・・・・・、心が追いついていない。はぐれオーガ撃退のために加勢しに行く、それを考えただけで今までにないほどの感情が沸き上がってくる。

 ―――それは恐怖、それも死が間近にあることへの恐怖だ。現代日本では襲われることのない感情に冷や汗は止まらず鎧の下で膝がガクガクと震えている。また、現場に向かったガルドさんが何とかしてくれるのではないか、という希望的な観測も恐怖に負けて次の行動に移れない理由の一つでもあった。

 だが、どんなに悩んでいようと残酷に状況は流れていく。

 メキメキと太い木が圧し折れる大きな音が村中に響き渡る。音がしてきた方角―――ガルドさんが向かっていった方角を向くと、村の外縁にあるやぐらが徐々に傾き倒れていくのが見えた。倒れていくやぐらはその質量をもって、倒れていく先にある民家を数軒巻き込みながら派手な音を立てて完全に倒壊した。

 数瞬後、辺りに響くこれまで聞こえていた警告の大声とは明らかに違う絹を裂くような悲鳴。俺はその声に驚きを隠せなかった。先程までとうって変わった声が響いた事にではない。その声に聞き覚えがあったからだ。

 

「まさか、・・・・・・アリッサ!?」

 

 日が傾くまで、この世界について丁寧に教えてくれた彼女。今日初めて会ったばかりだが、あの声は間違いなく彼女のものだと確信する。

 心の中の天秤で恐怖と助けに行かねばという義侠心、いや、多少なりとも縁を持った顔見知りを見捨てられない甘さがせめぎ合った結果、天秤はなけなしの勇気を奮う方へと傾いた。

 たとえ相手にならなくても、時間稼ぎくらいにはなるはずだ。早鐘を打つような心臓の鼓動に涙目になりながら乱暴に小屋の扉を開き槍と盾を引っ掴むと、震える両足を叱咤して悲鳴の聞こえた所へ走り出した。

 

 

 

 

 近づくにつれ聞こえてくる轟音を頼りにやぐらとそれに巻き込まれた二軒の家屋の残骸を迂回して現場に到着したとき、場はまさに惨憺たる有様だった。

 あちらこちらに狩人らしき格好をした者たちが呻き声を上げながら倒れており、中には手足がありえない方向に折れ曲がっている者もいる。そんな者たちの中心で対峙する二つの姿があった。

 片方は腰に差していた山刀を抜き相手を睨みつけている狩人、ガルド。矢筒は背負っているが戦闘の中で弾き飛ばされたのか弓の残骸が離れたところに転がっており、倒壊した家の残骸近くでへたり込んで震えているアリッサを庇う様に立ち塞がっている。幾許かの時間をたった一人で相手をしていたのだろう、疲れにより大きく肩で息をしている。

 対峙している相手は・・・・・・これが『はぐれオーガ』なのだろう。手には丸太のような棍棒、その身には動物の毛皮らしき腰蓑以外は一切身に着けておらず、肌は赤銅色をしている。これだけ見ればただの蛮族だが、異常な所が二つある。一つはその額から生えた二本の角。それを見て俺はモンコレのオーガとこの世界のオーガが完全に違っていることを感じた。モンコレのオーガは筋骨隆々、牙が鋭いなどの特徴があるが基本的には姿は人間とそう変わりない。まして角が生えているものなどいないし、たとえ種族の呼び方が同じでもモンコレの姿と同じとは限らないようだ。もう一つの異常な点、それは体躯だ。人間にあるまじき3mを超そうかという巨躯。対峙するガルドさんも2m近い巨漢だが、はぐれオーガを前にしては小柄にすら見えた。

 

「グウウウゥゥゥ・・・・・・!」

 

 近づいてきたこちらに気付いたのか、はぐれオーガはガルドさんを視界から外さぬようにしながらこちらを向き、牙をむき出し低い呻り声で威嚇してきた。その鋭い眼光に腰が引けそうになるのを必死で堪え、涙目で睨み返しながら鑑定を行う。

 

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 属性:火  レベル:3  攻/防:3/3  進軍タイプ:歩行

 はぐれオーガ 【オーガ】

 ✔ぶんなぐる[普通]

 ユニット1体が対象。

 対象に【このユニットの攻撃力】ダメージを与える。  

 ==============================

 

 ・・・・・・よし! こちらの防御力が相手の攻撃力より優っている。特殊能力を持っていたのは予想外だったが、これならなんとかなるかもしれない。恐怖で半泣きになりながらガルドさんに向かって叫ぶ。

 

「私がこいつの相手をします! ガルドさんはアリッサを安全な所へ!」

 

「しかし・・・・・・! 大丈夫なのか!」

 

「いいから行ってください! 時間稼ぎくらいして見せます!」

 

「・・・・・・分かった。感謝する!」

 

 はぐれオーガの視線がこちらに向いている間にガルドさんはジリジリと後ろに下がっていく。俺はそれを見て、バッと身を翻してアリッサの下へ走り寄っていくのに合わせて、気を引くためにガルドさんとは反対側からはぐれオーガ目がけて槍を突き出す。素人の狙いも何もあったもんじゃない突きだ、はぐれオーガは何の気もなくひょいと避けてみせる。しかし、相手の気を引くという目的は果たせたようで、相手は完全にガルドさんに背を向けてこちらを向いた。

 

「ガアアアァァァァァァァァーッ!!」

 

 突然の闖入者に邪魔をされたはぐれオーガの怒りの叫び。その咆哮に鼓膜がビリビリと震え、身が竦む。こちらが萎縮したのを感じ取ったのか、はぐれオーガはすぐさまその手に持った棍棒を振り上げこちらに大きく振り下ろした。

 体が竦み本来ならば反応などできない攻撃だったが、盾を持った左腕が自分の意図なく勝手に動き、鈍い金属音と共に棍棒を受け止めてみせた。ただの純金製の盾なら大きく凹んだであろう衝撃だったが、《黄金の盾》はそれ自体に魔法でもかかっているのか、傷一つ付かない姿でそこにあった。

 攻撃を受け止められたのは予想外だったのか、はぐれオーガはさらに激高した様子で何度となく棍棒を振り下ろしてくる。その度に盾が金属音を立てて攻撃を防いでみせるが、攻撃は防げても衝撃までは防げない。あまりの衝撃に腕はジンジンと痺れていて、盾を放さないでいられるのはひとえに鎧での筋力の上昇によるものだ。

 こちらからも攻撃の合間に相手に向かって槍を突き出してみせるのだが、はぐれオーガは一歩横や後ろに跳んで苦もなく避けてしまう。ほぼ防戦一方の苦しい状況にまだか、という思いでガルドさんの方に目をやると、アリッサを背負って場を離れつつあった。

 もう少しだ、そう希望を抱いたのだが、この行動が悪かった。戦闘の最中に視線がそれたのに気付いたはぐれオーガがこちらの視線を追ってしまったのだ。視線を戻したときにははぐれオーガの顔は完全にあちらを向いてしまっていた。

 不味い! そう思いすぐさま槍を突き出したが、弾かれたようにガルドさんたちの方に走り出したはぐれオーガには肩にかすり傷しか負わせられなかった。

 

「ガアアアァァァ!!」

 

 咆哮をあげて二人を猛追するはぐれオーガ。俺も一拍遅れて追いかけに走り出したが、まだ二人がそんなに離れていないのもあってこのままでははぐれオーガに追いつく前に二人が追いつかれてしまう。何とか足止めをしないと、そう考えた俺の視界に背負われたアリッサの姿が映ったとき、妙案が浮かんだ。成功するかは運次第だが《黄金の槍》の効果で身軽になっている分成功率は上がっているはず、最後の希望を込めて今もアリッサの肩に留まっているアイツに大声で指示を出す。

 

「フェアリー・ドラゴン! 鱗粉の息だ!」

 

 俺の指示にビクンと身を震わせたフェアリー・ドラゴンはアリッサの肩からヒラリと飛び立ち、はぐれオーガに相対して口を大きく開けた。次の瞬間、

 

「キューーーーッ!!」

 

 フェアリー・ドラゴンの甲高い鳴き声と共に、その口から大量の銀色の煙の奔流がはぐれオーガに向かって迸る。これは流石に予想できなかったのか、はぐれオーガは呻きながら足を止め、全身に纏わり付く銀色の煙―――鱗粉を払おうと無軌道に腕を振り回す。

 これがフェアリー・ドラゴンの持つ特殊能力『鱗粉の息』。効果は戦闘に入る前に相手にイニシアチブ:-1を与える、つまりは少しだけ動きを鈍らせる程度のものだが、おかげではぐれオーガとこの場を脱する二人との間に割り込むことができた。

 鱗粉の靄が晴れていくと、そこにはこれまで以上に怒気を漲らせ、目を爛々と光らせたはぐれオーガの姿があった。

 

「グガアアアアァァァァァァーッ!!」

 

 怒りに満ちた鼓膜を破らんばかりの咆哮。無理もない、防ぐしか能がない雑魚に一度ならず二度までもあと少しという所で邪魔をされたのだ。その苛立ちはいかばかりか。この怒れる獣を相手にガルドさんが戻ってくるまで、あるいはバステトたちが応援に駆けつけるまで保たせなければならないのだ。

 頬に冷や汗が垂れるのを感じながら、槍と盾を持つ腕に再び力を込めて未だ来ぬ援軍を信じて目の前の敵と対峙した。

 

 

 

 

 ・・・・・・一体何度その一撃を凌いだだろうか。右手に握っていたはずの槍は先程棍棒で弾かれた際に手から離れてしまい、今は倒壊したやぐらの根本辺りに転がっている。それを拾いに行く隙を与えてくれるような甘い相手であるはずもなく、今は両手で盾を構え完全な防戦一方だ。その巨躯から繰り出される棍棒の一撃は強力で、盾のおかげで傷を負う事は防げているとはいえ、その衝撃は両手でもっても防ぎきれてはいない。

 何度となく打撃を防いできたことで、両腕の痺れは最早限界に近い所まできている。しかしこの盾が槍のように弾き飛ばされてしまえば俺の防御力は鎧の効果を含めても3、はぐれオーガの攻撃力と並んでしまう。この盾は傷を負う事を防ぐ物理的な壁であり、俺の命を守る命綱でもあるのだ。

 

(分が悪い・・・・・・。いくら装備で補ってるとはいえ、地力が違いすぎる・・・・・・!)

 

 痺れる両腕で必死に盾を掴み、棍棒の連撃を防ぎながら心の中で一人ごちる。モンコレの戦闘は短期決戦。持久力やダメージの蓄積などといった概念がなかったため、基本的には攻撃力と防御力の比べ合いであった。ステータスがモンコレ風に見えるので俺も無意識にそれを基準にして考えていたが、こうして戦ってみるとそれ以外の要素が圧倒的に多いことが分かる。恐怖による萎縮、武器の錬度、そして戦い続ける体力・・・・・・。ステータス上は優っていても実際の戦闘では俺がどんなに役に立たないかが今まさに現在進行形で思い知らされている。

 

(次からは絶対に前に出ないようにしよう・・・・・・いや、次があれば、か)

 

 悲愴な想いと共に諦観が心を捉えようとしたとき、ついに待ちに待った声がやってきた。

 

「すまない、待たせた!」

 

「「ご無事ですか、マスター!」」

 

 倒壊した家屋の陰から走り出てきたのはバステトたちを引き連れたガルドさん。頼もしいその姿に思わず涙がこぼれそうになる。そんな心の緩みを、はぐれオーガは見逃さなかった。

 俺の気がガルドさんたちに逸れた瞬間に放たれた、下から掬い上げるような棍棒の一撃。咄嗟に盾は一撃を防ぐ位置へと動いたが、痺れが限界に達した腕では、集中が途切れた状態ではその衝撃の中で盾を掴み続けることは叶わなかった。

 盾を手放してしまった上に、盾ごとかち上げられたために両手を上に上げた隙だらけの体勢になってしまう中、頭は変に冷静に、次撃を振りかぶるはぐれオーガの姿を目にしていた。極限の状況下、諦めと後悔に心が塗りつぶされ、ゆっくりにすら見える振るわれた棍棒が体に触れる直前、ドンッという衝撃と共に横に突き飛ばされて俺は尻餅をついた。

 

「――――えっ」

 

 言葉にならなかった。尻餅をついた瞬間俺が見たのは、俺を突き飛ばして代わりに殴られボールのように弾き飛ばされたガルドさんの姿だった。吹き飛ばされたガルドさんはそのまま倒壊したやぐらの残骸に叩きつけられ、派手な土煙を上げた。

 数瞬唖然としてその場から動けなかった俺に近づこうとしたはぐれオーガに走って割り込んできたのはバステトたちだった。

 

「ガアアァァァァッ!」

 

「フゥーーーーーッ!」

 

 威嚇するはぐれオーガに対して、いつものおだやかな雰囲気とは打って変わって大型の猫科猛獣のような形相で、目を見開き、全身の毛を逆立てて威嚇を返すバステトたち。一対一ならばはぐれオーガに軍配が上がるだろうが、バステトたちは6人がかりである。はぐれオーガも多勢に無勢を悟ったのだろう、威嚇の声も徐々になりをひそめ、後ろへ大きく跳躍して距離をとると一目散に森の中へと逃げ去っていった。

 

「「マスター、大丈夫ですか!」」

 

「俺のことはいいっ! それよりもガルドさんを!」

 

 俺の所へ走ってきたバステトたちを引き連れ、殴り飛ばされたガルドさんの下へ駆けつける。その場で目にしたものは、身を挺して俺を助けてくれた狩人の無惨な姿だった。

 俺を突き飛ばした後、咄嗟に両腕で棍棒から身を庇ったのだろう。その両腕は文字通り『砕けた』と呼ぶべきような状態で、腕のあちこちからは折れた骨が皮膚を突き破り飛び出していた。叩きつけられた時にぶつけたのか体の各所に青痣ができており、何よりやぐらの残骸の木材が後ろから腹部を刺し貫き、大量の血が足元に大きな血だまりを作っている。

 平和な現代ではまず見ることのなかった凄惨な様相に込みあがる吐き気を飲み下し、バステトたちと協力して治療の妨げになる腹部に刺さった木材からガルドさんの身体を引き抜く。

 

「―――ガフッ!」

 

 木材を腹部から引き抜くと、まるで堰き止めていたように大量の血液がみるみるうちに流れ出し、痛みに悶えるガルドさんは口からも血を吐き出した。時間はもう余りない、どんどんと青を越えて白くなっていく顔色を見て俺は急いで命令を下す。

 

「今すぐ《キュア・ウーンズ》・・・・・・いや、《リジェネレーション》を!」

 

「はい! マスター!」

 

 先程の戦闘を通して鑑定で見えるステータスを信じすぎてはいけないと感じ、万一のことを考えて治癒のスペルではなくより強力な再生のスペルをを使わせる。しかし、このスペルには手札のカードが一枚代償として必要だ。懐を探り、今日召喚に使わなかった最後の一枚を取り出す。《コボルド自警団》、俺のこの世界での始まりの地に残り、実体化の制限時間を超えてカードに戻ってきたものだ。正直に言えば思い入れがあるのでこんな使い方をしたくはないが、今は他に代償となるカードが手元に無い。惜しいと思う気持ちに人命の為には仕方ないのだと言い訳して使う決意を固めた。

 

「《リジェネレーション》!!」

 

 青いペンダントをしたバステトがスペルを唱え、横たわったガルドさんへ突き出した掌にポウッと淡い光が宿ると、同時に俺の手の中にあったカードは同じく光を放つと弾ける様に光の粒子となって消えてしまった。バステトの掌から放たれる暖かな光は徐々にガルドさんの全身を包んでいくと、身体なの中に染み込むように消えていった。

 それから数十秒、ガルドさんの身体には何の変化も現れず、再びゴボリと血を吐いて動かなくなってしまった時には、失敗したか、間に合わなかったのか、という思いが脳裏をよぎった。しかし、変化が起きたのはその後だった。血を吐き動かなくなったガルドさんの身体がぼんやりと光を放ち始めたかと思うと、まるで時間を逆回しにしているように傷がふさがっていく。体中に残る青痣は薄れて消え、腹部に開いた穴すら徐々に小さくなっていったかと思うと、後には傷を負ったときに破れた衣服以外に怪我をしていたことを示すものは傷一つなくなった。ぐしゃぐしゃになっていた両腕が蠢いて元の形に戻っていく様子は非常にグロテスクで、俺は再びこみ上げる吐き気を必死で堪えた。

 一分も経たないうちに怪我一つない姿になったガルドさん。眠るように横たわる彼に近づき、脈と呼吸があることを確認して俺はようやく一息つく。一時はどうなることかと思ったが、スペルは無事効果を発揮したようだ。緊張の糸が一気に緩んだ反動か、両脚から力が抜けてその場にへたり込みそうになるのをバステトの1人に支えてもらってなんとか耐える。

 はぐれオーガの再襲撃への警戒と辺りに倒れた狩人たちの手当てのために、2体いるバステト看護婦団の内の片方の3人をその場に残し、ガルドさんは2人のバステトたちに抱えられ、俺は怪我もしていないのに未だ十分に脚に力が入らないのでバステトに肩を貸してもらいながら避難した人が集まっているという長老の屋敷に向かった。

 

 

 

 

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 属性:聖・魔  レベル:2  攻/防:3/5  進軍タイプ:歩行

 新米召喚術師  【人間】  スペル:*(使用済)  アイテム:1(使用中)

 イニシアチブ:+1

 魔力:0/8

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槍は帰る前に回収しました。


●イニシアチブ
戦いにおける主導権。イニシアチブが大きいほど
先に攻撃することができ、ゲームにおいてはお互いの
1Dで決定する。
イニシアチブ結果に修正を加える常備能力に「イニシアチブ:+X」
と「イニシアチブ:-X」があり、+Xは動きが素早いことを、
-Xは動きが鈍いことを表す。


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リジェネレーション  戦闘スペル
属性:聖  使用条件:聖
[普通/対抗]
手札1枚を破棄することが代償。ユニット1体が対象。
対象ユニットの上に、このカードを置く。その後、対象ユニットが死亡した場合、
このカードを破棄して対象ユニットが死亡しなかったことにする。
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