「へぇ、トマスさんはドワーフだったんですか。ドワーフの方に会うのは初めてです」
「ほう、そうか。しかし生誕証を持っとらん上にドワーフも見たことがないとはよほど辺鄙なところの生まれなんじゃなあ?」
隊長と神官とやらを待つ間、俺は此処に残った立派な髭の背の低い衛兵―――ドワーフのトマスと世間話をして時間を潰していた。とは言ってもこっちの身の上話はできないので、この街についてや衛兵の仕事などの話を一方的にしてもらっていただけなのだが。
彼の種族が分かったのは互いの装備について話していた時だ。初めはトマスが街の話が一段落したところで俺の装備をまじまじと見て、"武具は見事じゃがそれに着られておるな"と言った。まぁ、たしかにこの装備は足りない防御力の底上げのために着ているだけだから見る人が見れば身の丈に合わないものを持っているように感じられるのだろう。しかし、街に入れば危険はかなり少なくなるから過剰な防御力などほとんど必要ない。だから街に入ったら当座の資金を得るためにもこの装備は売り払うつもりだと伝えると、彼はかなり驚いていた。なんでも、てっきり先祖伝来の武具を相続して腕前より良い武具を持っているのだと思っていたから、『売る』という選択をするとは思わなかったらしい。何処か適正な値段で買い取ってくれるところがないか聞いてみると、"ぼったくりも酷い買い叩きもしない誠実な店だ"と快く衛兵隊とも取引をしている武器屋を紹介してくれた。
装備の処分についてアテが出来たことに礼を言って、そのついでに抱いていた小さな疑問を告げる。すなわち、"その体で戦斧を使うのは大変じゃないか?"と。
彼―――トマスは他の衛兵と同じ意匠の鎧を身につけているが、その身に帯びた武器は他の衛兵が剣なのに対し彼はゴツイ戦斧である。服の上からでも鍛え上げた筋肉を感じさせるその太い腕を見ればそれを振り回すことも可能なのだろうが、彼はいかんせん背が低い。身長は他の衛兵と比べても二回りは小さいし、腕よりさらに太い両脚は力強くはあるものの短足と言うほかなく全体的にずんぐりとした印象を受ける姿である。そんな彼が輪をかけて範囲(リーチ)を狭める武器を選んだのはなぜか、それが俺の疑問だった。
問いかけられたトマスは一瞬キョトンすると呵呵大笑し、"ドワーフの戦士は昔から戦斧か戦鎚を使うのが習わしだ。それにワシらにとってはこの程度の重さ、片手でだって扱えるわい"と言い切った。ここに至って、俺はようやく目の前のこの男がドワーフという人間とは別の種族であることを知ったのだった。
ドワーフ。モンコレにおいても土属性の主な種族の一つとして登場している亜人だ。能力的には完全な後攻型でイニシアチブ:-Xを持つ者も多く、小型のユニットとしては防御力が高めな事が特長で相手の攻撃を耐えて殴り返すのが基本運用法である。設定的には性格は短気で頑固。無類の酒好きで、手先が器用なことを活かした鍛冶をはじめととする職人仕事が得意。外見は例外なく背が低く髭を蓄えている・・・・・・だいたいこんなところだろうか。
勿論、オーガの時のようにモンコレと姿すら違う事もあるのだから、この設定とどれくらいこの世界のドワーフが似通っているかは分からない。しかし、今までこのトマスという男を見た限りでは割と俺の抱くドワーフのイメージと共通する点が多い気がする。
この世界にいる種族についても知識をすり合わせしときたいなぁ、などと考えながら適当に答えていたら迂闊にも冒頭の発言をしてしまい、図らずも相当な世間知らずであることを知られてしまった。その後しばらくはトマスからの身の上についての追及をかわしていくのに骨を折ったが、そのうちに彼も聞かれたくない話題であることを感じ取って問い詰めるのを諦めてくれた。
世間話が"最近、酸っぱいエールのような安酒しか飲んでない"などという愚痴に変わり始めたころ、トマスは一旦話すのを止めて焦れたように漏らした。
「しかし遅いな。あ奴め、一体何をやっ『お~い!』・・・・・・噂をすれば、じゃな」
響いた声に嘆息しながら振り返った彼の視線の先を見ると、初めに会った衛兵が腕を振りながら門から小走りにこちらに向かってきており、"結構待たされたな"などと気の緩んだ思考をしていた俺はその後ろに続いて門から出てきた2人の姿にギョッとした。
片方はいい。青色に染められたゆったりとした服に身を包んだ壮年の男性だ。首からは雫型をした銀色の紋章を提げており、深いしわの刻まれた顔は柔和な印象を与えている。
問題はもう一方だ。小さな子供の胴回りくらいありそうな太さの、指先が膝下まで優に届く長い腕。これはいい。痩せすぎた人のように腹だけが突き出た独特の体形に特別にあつらえたような鎧を身に付けた2mを超すヒョロリとした身体。これも百歩譲っていいとしよう。しかし何より俺を驚かせたのは、先の尖った小さな耳や太く大きな鉤鼻も気にならない程の、口が耳まで裂けた異様な面貌だった。
正直隣の青服の男性を頭から丸齧りし始めても驚かない、いかにも怪物といった顔をした者の登場に衝撃を受けていたが、トマスがその異貌の者に向けて拳を胸につけて腕を平行にした構え―――おそらくは敬礼―――をし、そして同じ礼があちらから返されたことで、俺は我に返るとともに彼こそが呼ばれて来た『隊長』であることを認識した。
「おう、トマス。そこの若いのが件の"召喚術師"か? ・・・・・・って、なんだ? 俺の顔になんか付いてるか?」
「え、あ、いや・・・・・・」
無意識にその顔に視線が釘付けになっていたようで、怪訝な―――顔から想像したのよりは普通の―――声で問うてくる凶悪な面構えに俺はへどもどしてしまい、咄嗟に言葉を返すことができなかった。何でもない問いかけにあからさまにおたつく俺を不審に思ったのか、眉間にシワを寄せ少し歪みが走った顔は先程よりも迫力を増していて、顔には出さないように努力するものの身体が強張るのまでは抑えきれず、それが更なるを不信を買う悪循環に陥ってしまう。
自分に向けられる鋭い眼光に俺はただ身体を固くするだけでまともに言葉を返せずにいたが、脇によけてその様子を見ていたトマスが吹き出し、声をあげて笑い始めたことでその連鎖は断ち切られた。突如笑いだしたトマスに皆呆気にとられ、厳しい顔をしていた『隊長』も底抜けに明るい笑い声に毒気を抜かれたようで、ハァと一息ついて頭をガシガシと掻くと俺から視線を外してトマスの方を向いた。
「・・・・・・トマス、どういうことか説明してくれるか?」
まだ釈然としないものを感じているからだろうか、説明を求めるその声は最初に俺に問いかけた時より若干低い。まぁ、無理もないな。そもそもここに呼ばれて来たのは下の人間では判断しきれない不審(もしくは危険)人物をどうするか決めるため。その対象が挙動不審なら怪しむのも当然の事だ。トマスを信用しているからこそ一旦疑念を打ち切ったが、納得するには程遠いという所だろうか。トマスが笑いながら答えている時、俺は気が緩んだ事でできた頭のどこか冷静な部分でそんな事を考えていた。
「ガハハハハ! いや何、隊長が強面すぎるってだけの話じゃわい!」
「強面って・・・・・・確かにお前さんよりは厳つい顔をしてる自覚はあるが、見た目の怖さなら虎獣人や獅子獣人の方が上だろ? 牙もあるし」
「こやつが生誕証も持っとらん事は聞いとるじゃろう? 話を聞いたところ、ドワーフも見た事がないような辺鄙な所の出身らしくてのう。そんな奴が生まれて初めてトロールを見りゃ、そりゃあ驚きの一つもするもんじゃて!」
トマスの言葉に顎に手を当て"なるほどなぁ・・・・・・"と深く頷く彼を見て、俺は早速現れたモンコレと違う特徴を持つ『トロール』に心の中で世の不条理に叫びをあげていた。
だって全然違うじゃん! 達磨みたいな肉厚な体形でもなければ皮膚が緑色でもないし! 唯一近い所を挙げれば身体が大きい事だが、モンコレの「種族:トロール」はだいたい4レベルだからワイバーンとほぼ同サイズと思えば明らかに小さい。こんな違いがまだまだあるなら知識を学ぶ優先順位を上げなきゃいけない。はぁ、やるべき事が山積みだなぁ・・・・・・
思わず出そうになる溜め息を堪えていたら、一応納得したらしい彼は口角を僅かに上げて再び話しかけてきた。本人は柔らかく微笑んだつもりなのだろう、多分、きっと、コワイけど。
「あー・・・・・・なんだ、驚かせちまったようで済まねぇな。俺がこの街の衛兵隊長、ウル氏族のユーグだ。そこの座ってるワン公がショーカンジュツで喚び出したってやつかい?」
「え、ええ」
どもりながらも俺が首肯すると彼は"ふむ"と呟き、視線をグレイ・ウルフに移してのしのしと近づいていく。それに驚いたのか今まで大人しく座っていたグレイ・ウルフは牙を剥き低い唸り声を上げて威嚇し始めたので、俺は急いで感覚共有を使い"何をされても大人しくしているように"ときつく伝える。グレイ・ウルフは不満そうではあったが威嚇するのを止めると耳をペタンと悲しげに伏せて、近づいてくるユーグ隊長を受け入れた。
グレイ・ウルフの前に立った彼は屈んで正面から見据えると、"ほう"とか"ふむ"、"なるほど"などと呟きながらその大きな手で毛並みを撫で回したり、口を開かせて牙を眺めたり、伏せた耳を軽く引っ張ったりした。グレイ・ウルフは非常に嫌そうにしていたが言いつけを守って大人しくしていてくれて、しばらくして一通り触り終えたユーグ隊長はここまで一緒に来たもう一人を振り返り口を開く。
「駄目だ、全然本物と区別がつかねぇ。神官殿から見て、どうだ?」
話を向けられた青い服の男性は大きな溜め息をつくと力なく首を横に振った。
「こちらも同じです。先程少しだけ魔力の流れが見えたような気もしましたが、それ以外は全く見分けがつきませんね。『召喚術』、でしたか・・・・・・実に興味深い」
求めていたのとは違う神官の答えに"そうか・・・・・・"と残念そうに零すと、表情を再び引き締めてこちらを向いた。
「悪いが、報告通りならアンタをこのまま街に入れる訳にはいかねえ」
ぐっ、やっぱそうくるか。グレイ・ウルフ程度しか見せてないから大丈夫かと思ったが、思ったより危機意識が高い。
召喚術は端的に言って危険な技術だ、なにせほぼ手ぶらで危険な存在をいつ何処ででも喚び出す事が出来るのだから。六門世界でも召喚術は規制の対象だった。時代によっては悪魔の技術と忌避され、協会や学院に保護されるようになってからも己のために力を振るうモグリの召喚術師は『無法召喚士』と呼ばれる問答無用の捕縛対象だ。組織に属する者たちも、能力の著しく高いものは『戦略級召喚術師』と呼ばれて管理され、戦場や防衛組織に身を置くことを余儀なくされていた。俺にとっては苦々しい思いだが、街の治安・安全を預かる者としては正しい判断と言わざるを得ない。
グァジに口裏を合わせてもらって黙っているという選択もあったが、俺は自身が危機的状況になったら迷いなく召喚術を使うだろう。もしそれで騒ぎが起これば―――いないはずの存在が現れる召喚術の性質上、起こらない可能性の方が低いのだが―――素直に話している場合といない場合、どちらの罪が重くなるかは明白だ。下手をすれば、騒ぎを起こすために黙っていたと取られる取られる事も考えられる。だからこそ(多少の誇張は除いて)正直に伝えたのだが・・・・・・
ここまで頑張ってやって来たのに街には入れないのは困るなぁ、せっかく久しぶりに柔らかいベッドで寝られると思ったのに。諦め気分でいた俺に、ユーグ隊長は思いがけない言葉をかけた。
「・・・・・・しかし、アンタが神官殿の『誓約の奇蹟』を受けて誓うのなら街に入っても構わない」
・・・・・・? 話が見えなくなった。しかし、どうやら条件付きでなら入れてくれるようだ。
「その『誓約の奇蹟』というのは?」
「神官殿の祈りの奇蹟で、水と契約の神マディアの名の下に誓ってもらうのさ。神を証人とするんだ、もし誓いを違えたりすれば・・・・・・」
「・・・・・・違えれば?」
思わずゴクリと唾を呑む音が俺の耳には大きく聞こえた。
「確実に天罰が落ちる。まぁ、神の名において誓った事を違えるヤツなどそうはいないが・・・・・・、記録には全身の血が沸騰して死んだヤツもいるな」
・・・・・・ゾッとした。絶対に落ちる天罰とはこの世界ならではだが、体験するのは御免被る。破る事がないよう誓いの内容には気を付けるべきか。
「ああそれと、神官殿の祈りの奇蹟の行使への寄進額は入街税に加えて払ってもらうからそのつもりでな」
「え!!」
それはマズイ! 俺の持っているのは村で貰った銅貨300枚分の金だけ、それ以上の額は逆立ちしたって出せやしない。まさかツケにしてくれる訳もないだろうし、足りなかったら装備の物納で勘弁してもらえないかな・・・・・・?
動揺する俺の様子を見てユーグ隊長はクックッと笑いながら言った。
「安心しな、『誓約の奇蹟』は水の神官にとって一番初歩の業だから寄進額も少ない。・・・・・・そうさな、銀貨にして5枚ってところか」
あ、意外と安い。いや、今の懐事情的には十分痛いんだけど、村で病気一つを治すのに莫大な額が必要と聞いていたので思ったより安いという印象だ。この街でなら装備の売却も可能だろうからこの程度の額なら大丈夫だろう。
「分かりました。その『誓約』とやら、させて頂きます」
「おう! そうとなりゃ話は早い。神官殿、よろしく頼む」
ユーグ隊長が促すと神官の男性は頷き前に出てきて、よく通る声で祈りの言葉を唱え始める。眼を閉じ朗々と祈りを捧げる姿は威厳と荘厳さを感じさせたが、俺には難解で何を言っているのか半ば以上分からなかった。分からないなりにジッと祈りを聞いていると、しばらくして辺りがまるで太陽が雲で翳ったように薄暗くなり始め、逆に神官の首に下げられた何かの紋章はぼんやりと光を放ち始めた。紋章の放つ光に誘われるように薄暗くなった周囲も青い光に包まれ、まるで水の中にいるような錯覚を感じる中、神官のはっきりした声が響く。
「神官パウロが水と契約の神マディアに願う、この者の誓いを聞き入れ給え」
この不可思議な雰囲気に圧倒されていた俺はユーグ隊長に無言で顎をしゃくられ慌てて前に一歩出て誓いの言葉を口にする。
「『この街で召喚術を犯罪のために使用しないことを誓います』」
自分ではごく普通に口にしたはずなのに、マイク越しのように反響しながら響いた誓いの言葉。それを声にし終わった瞬間、辺りを包んでいた青い光は急激に明度を増し、その眩しさに思わず目を瞑ると、次に眼を開けた時には辺りは神官が祈り始める前と同じに戻っていた。薄暗くなったり光に包まれたりした名残りなど全く見えない元通りの情景。その落差に目を白黒させている俺にユーグ隊長は機嫌良さそうに言った。
「よし! これで街に入れても大丈夫だろう。無いとは思うが、努々誓いを破らんようにな!」
俺はその言葉に苦笑いを浮かべる事しかできなかった。
「おお~~っ!」
『誓約』を見届けるとすぐに詰所へ戻って行ったユーグ隊長と神官を横目にトマスへ入街税と『誓約の奇蹟』の行使への寄進、締めて銀貨5枚銅貨6枚を支払った俺は彼から貰った従魔用の首輪をグレイ・ウルフに付けてやり、街の門をくぐった。
石造りの建物が目につく街並みはヨーロッパを想起させ―――まあ行った事はないから想像のだが―――、改めて日本ではない所にやってきた事を感じさせる。街の中心へと続くらしい道は石畳で舗装されており、他の地べたが剥き出しの道と違って分かりやすいから迷ったらこの道へ出ればいいだろう。よく晴れた昼下がりだけあって道には結構な人の往来があるが、村と違って明らかに人でない者の姿もちらほらある。服を着た二足歩行の獣のような姿の者、逆に上半身が人で下半身が馬の姿をした者、背中の大きく開いた服を着ている翼を持つ者に山羊のような角や蜥蜴のような鱗、二本以上の腕が生えている者など様々で、俺は思わず感嘆の声を零した。
黄金色の装備一式という派手な物を身に付けている上に結構大きなグレイ・ウルフを連れているせいか、早くも周りの視線を集め始めているようなので、こちらを見て何事か囁き合っている声を振り切るようにしてトマスから聞いた道順をなぞって武器屋を目指す。通り過ぎた道の数を数えて角を曲がるとどうやら道を間違えずに来られたようで、幾つもの鉄看板が道へ突き出している通りに出た。曲がるまでの道より人がまばらな通りを様々な意匠の看板を眺めながら歩いていると、奥まった場所にお目当ての剣と盾の意匠の看板の建物が見つかった。
グレイ・ウルフは店の前に座らせておいて、喜び勇んで扉を開けて中に入ると薄暗い店内に金物くさい金属の匂いが鼻をつく。剣や槍が無造作に突っ込まれた樽や防具や盾が飾られた棚などがある店内を見回すとカウンターの奥に鋭い眼でこちらを見ているトマスによく似た男の姿があった。
「何の用じゃ、ここにはお前さんの身につけておる物より良い品なぞない。お引き取り願おうか」
いきなりつっけんどんな態度をとるトマス似の男―――しかし髭だけは彼より長く、三つ編みにしている―――に苦笑しつつ、自分の目的を告げる。
「衛兵のトマスさんの紹介で来ました。この装備を売り払いたいのですが」
「なんじゃと!? ・・・・・・トマスの坊主の紹介か、しかしそれ程の武具を売り払うとは悪いが正気か?」
驚いている顔などは本当にトマスにそっくりだ、おそらくは血縁なのだろう。誠実な武器屋だとは聞いていたが、まさか手前味噌だったとは。まあ他に売り払うアテなどないから別に構わないのだけれど。しかし正気を疑われるとはなぁ、俺としてはレアリティの低くてそれ程惜しくないカードの中で黄金製の物だからそれなりに高価だろうという安直な考えしかもっていなかったのだが・・・・・・
「勿論正気ですよ。武具よりもお金が必要になりましてね、それで買い取って貰えるんですか?」
「フンッ! 確かに武具も見る目のある者に使われた方がいいじゃろうな! どれ、見せてみい!」
不機嫌そうに鼻を鳴らしてカウンターの奥から出てくる男。彼に促され、黄金の紋章以外の身に着けていた装備、鎧と槍、盾を手渡す。男は渡された装備を手に取ると途端に真剣な表情になり、金鎚で軽く叩いてみたりよく分からない工具で調べ始めたりした。
「むぅ・・・・・・やはり見立て通り全て魔法の武具か。しかも魔石を消費する型ではなく、そのものに魔法が込められた物・・・・・・」
独り言のように呟きながら渡した装備を一通り調べ終わった男はフゥと息をつきこちらを見て言った。
「錆びないが柔らか過ぎる金製の武具を魔法を込めて強化する、理にかなっちゃいるがそのせいで鋳潰せもしないから金としての価値では測れん。それに魔石消費型でない魔法具は使う者に才能を要求するからのう・・・・・・込められた魔法も含めて一級品の武具ではあるが、ワシがこれらに支払えるのは白金貨で15枚というところじゃな」
・・・・・・・・・・・・え? え、えっと、たしか白金貨は1枚で金貨100枚分で、銀貨は100枚で金貨1枚分だから・・・・・・銀貨にして―――――15万!? マジで!?
「ほ、本当にその額なのですか?」
俺が震える声で聞き返すと彼は機嫌を損ねたようで眉根を寄せて返答する。
「フンッ! そりゃあワシの店もこの街ではそれなりの大店だとはいえ、大都市の店に比べりゃ買い取り額も低いかもしれん。しかし、ワシも武具鍛冶の一人として誇りに賭けて妥当な額を言ったつもりじゃ!」
いや、俺はそんなに貰ってもいいのかという意味で言ったんだが・・・・・・まあいい、これで資金面での問題は解消されたも同然だ。けれど別の問題もある。このまま白金貨を受け取って使いでもしたらお釣りがとんでもない事になるからまともに買い物できない。そこで武器屋の男に頼むことにした。
「白金貨14枚でいいので、金貨1枚追加でもらえませんか?」
「払いが安くなるから構わんが、何か意味があるのか?」
男は訝しげだ。別に隠し立てするような事でもないので正直に話す。
「両替せずに使える分も欲しいので」
「なんなら白金貨1枚分を金貨で払ってやってもよいぞ?」
「無暗に荷物を多くしたくないので遠慮します」
善意からなのだろうが、金貨100枚も持ってあちこち動くなど俺にはできない。それでも荷物を重くしたくないというだけで査定額を白金貨1枚分下げた俺を変な奴だと言わんばかりの目で見てくる男から代金を受け取り、店から出た。
「よし、当面の資金はなんとかなった。次は宿屋だ、行くぞグレイ・ウルフ!」
そうして俺は店の前でキチンと座って待っていたグレイ・ウルフを連れて、大通りに出るため元の道を戻りに歩きだした。
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属性:聖・魔 レベル:1 攻/防:0/1 進軍タイプ:歩行
新米召喚術師 【人間】 スペル:* アイテム:1
魔力:7/8
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