「うーん、よく寝たー。」
翌朝目が覚めるとともに洞穴にいる現状を確認し、この状況が夢ではないことに嘆息をもらす。ベッド代わりになっていたウィンター・ウルフに礼を言って立ち上がると腹が減っていることに気が付いた。思い返せばあの召喚を行った夕刻前から何も口に入れておらず、既に胃袋は空っぽだ。
すきっ腹を抱えながら洞穴から出ると、そこには整った野営地が出来上がっていた。
「マスター、起きたカ」
「やえいちつくっタ!」
「つくっタ!つくっタ!」
「たきびのじゅんびもしタ!」
洞穴の入口の前の広場には焚き火を起こす場所が用意され、広場の周りの森からは下草が取り除かれ獣が草むらに隠れられないようになっていた。入口の横には刈り取られた草まとめられ、簡易のベッドとして使われたことが察せられた。
「ありがとう、ライダーズは帰ってきたか?」
「木の実ヲ持って帰ってきテ、また獲物ヲ探しにいっタ」
どうやらライダーズは俺の起きる前に一度帰ってきて、また食料を探しに出てしまったらしい。
「木の実か、その木の実はどこにある?」
「この中ニ入ってル」
茶色のコボルドから小さな布袋を受け取り中身を確認すると、どんぐりのような木の実がぎっしり入っていた。どんぐりか・・・、まあ腹の足しにはなるだろうと一つ試しに殻を割って中身を口の中に放り込んでみる。
――――渋い。いやどんぐりらしい味といえばそうなんだけど、あまり腹いっぱいになるまで食べたい味ではない。とってきてもらった手前、残すのも失礼な気がしてもごもごと食べ続けていたが、なくなるまで食べても満腹には程遠かった。
気を紛らわすため、食べながら思いついた疑問をコボルドたちに投げかけてみる。
「お前たちって食事しなくて大丈夫なの?」
「食事できるけド、あまり意味無イ」
「ねむるのモいちにちふつか、だいじょーブ」
「でモ、たべるとたのしイ」
「ねむれるとうれしイ」
なるほど、まあ元はカードだしな。それに食べれないとアイテムの使用にも制限がでるし・・・・・・って、
「俺は馬鹿か・・・!アイテムで食べれるの出せばいいじゃん!」
早速洞穴に戻った俺は嫌がるウィンター・ウルフをソファにしながらアイテムのカードに目を通す。探したところ案外食用によさそうなアイテムは少なく、アイテムカード全てをひっくり返しても食用に適したアイテムはたったの二種類だけ。
≪鬼払いの団子≫と≪元気になる実≫
前者は人間に効果はないから俺にはただの団子だ。とするならば、心もとない防御力を少しでも上げることができる「防御力+1」の効果がある≪元気になる実≫にするべきだろう。
「アイテム召喚『元気になる実』!」
ユニットの召喚と異なり掲げたカードは光ると同時に燃え上がった。
「うわっちっちぃ!」
思わずカードから手を離すと炎は宙で六芒星を描き、桃のような果実を落として消えた。
ビビった~、消耗品だとああなんのか。そりゃカード回収できないわ。
それにしてもこれが「元気になる実」?見た目リンゴ並の大きさの桃にしか見えないが・・・
手に包み持って齧ってみると、桃のような見た目に反してシャキシャキとした食感。果汁もたっぷりだし効果うんぬんはおいといても美味いわ~。それに見た目のわりにだいぶ腹が膨れるし。
さて、美味しさのあまり一気に完食してしまったが、防御力+1の効果はどの程度のものなのか。試しに洞穴の壁を力いっぱい殴ってみたが全然痛くない。本来なら血がにじむようなことをやってるのに防御力アップのおかげか拳にはかすり傷一つない。
念のため、ステータスも確認すると
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属性:聖・魔 レベル:1 攻/防:0/2(30分間) 進軍タイプ:歩行
新米召喚術師 【人間】 スペル:* アイテム:1(使用済み)
魔力:5/5
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残念な事にこの状態は30分しか続かないことが分かった。しかし本来は戦闘中しか使えなかったアイテム:消耗品が戦闘外でも使えるようになっているのだから、その事を喜ぶべきだ。防御面の向上はもっとほかの方法を探すとしよう。
その日の昼、回復のためと称して昼寝にいそしんでいた時、途中でコボルドによって揺り起こされた。
「ううん、どーしたー、まだ起こすに早すぎ・・・」
「ライダーズ戻ってきタ、獲物とっテ帰ってきタ」
待ちに待った知らせに起き上がり、伸びをしながら洞穴を出ると
3m級の巨大イノシシがいた。
目の前のショッキングな光景に硬直していると、化け物イノシシの陰からコボルドたちが出てきて声をかけてきた。
「マスター、エモノとれタ!」
「さばくまデ、すこしまツ!」
「にク、はらいっぱいくえル!」
癒されるぐらい自警団のみんなはいつもどおりだ。それにしても、とライダーズに問いかける。
「獲物をとってきてくれてありがとう。でも、よくこんな立派なイノシシを仕留められたな」
「・・・水場にいたのヲ奇襲しタ。後手なラ勝てなかっタ」
「・・・水も汲んできタ。これで暫らくハ食料困らなイ」
どうやら奇襲によってチャージ+2がいいように影響したようだ。確かに防御力1のライダーズでは明らかに強そうなこのイノシシに先手を取られれば倒されていただろう。しかし、彼らのイニシアチブ能力は±0、今回奇襲が成功したのは単純に運だ。あまり過信はしないようにしよう。
そして夜、再召喚したコボルドたちとウィンター・ウルフとともにたき火を囲んで巨大イノシシの肉を焼いて食べた。塩も胡椒もないただ焼いただけの肉ではあったが肉自体は思ったより硬くもなく、腹を満たすにはもってこいであった。
焼かれていない生肉に喰らいついているウィンター・ウルフを横目に見ながら大ぶりに捌かれた肉をかじりとっていると、ガチリ、となにやら固い感触が歯に伝えられた。
(なんだ、骨か・・・?)
そう思い吐き出そうとした時
「マスター、ちゃんとたべてるカ!?」
ドン、とぶちのコボルドが背中を叩いてきた衝撃で硬い物ごと飲み下してしまう。
「ゲホッ、ゲホッ」
「ごめンマスター、だいじょうぶカ?」
「だ、だいじょうぶだ・・・、だけどいきなり叩くのはやめてくれ」
むせながら答え、水を飲んで落ち着くと、今度は腹から熱いような感覚がじんわりと体中に広がっていった。
「一体なんだ・・・?」
そう思っていたところに、いつぞや聞いた声が脳裏に響いた。
―初めての魔力上昇おめでとう、お祝いに新しい能力をあげよう―
この森で初めて目覚めたときに聞いた声。相変わらず謎な声を信じ、ステータスを確認する。
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属性:聖・魔 レベル1 攻/防:0/1 進軍タイプ:歩行
新米召喚術師 【人間】 スペル:* アイテム:1(使用済み)
魔力:3/8
✥鑑定[普通/対抗]
✥感覚共有[普通/対抗]
○魔力回復
○新米の召喚
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ん、本当に能力と魔力が増えてる。でもなんでだ・・・?心当たりがあるとすれば先ほど飲み込んだ骨か何かだが、骨を食べるだけで魔力って増えるんだろうか。要確認だな・・・・・・、そう考えながら新たに手に入れた能力の詳細を確かめる。
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✥鑑定[普通/対抗]
ユニット一体かアイテム一つが対象
対象のステータスを確認できる
✥感覚共有[普通/対抗]
召喚中のユニット一体が対象
対象と感覚を共有することができる
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なるほど、ステータス確認能力に感覚の共有能力か。食料も余裕ができたし、これからこの森を探索していくには便利な能力だな。
試しに感覚共有を一心不乱に肉をかじっているウィンター・ウルフに使ってみる。目を閉じ、むむむ、と念じ続けていると初めはぼんやりと、そして徐々にはっきりとウィンター・ウルフの視界が見え始めた。自分よりかなり視点の低い視界の中、そのほとんどは目の前の肉塊に向けられていて、生肉を食べている味や飲み込んでいる感触もうっすらとだが感じ取れる。
(お~い、俺の方を向いてくれないか?)
(ますたー?いまにくくうの、いそがしい)
どうやら、感覚を共有してる間はそれぞれの思考がテレパシーのように伝わるらしく、念じた自分にウィンター・ウルフの考えが伝わってきた。とは言っても、ユニット本人の意思のほうが優先されるようだが。
(ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから!)
(・・・・・・わかった)
ようやく肉から視線を離したき火のほうを向くと、眉間にしわを寄せ、うんうん唸りながら集中してる自分の姿があった。ある意味滑稽な姿に思わず笑いがこみ上げてくると、急激に感覚が遠ざかり数瞬で感覚共有は解けてしまった。感覚共有はかけるほうがかなり集中していないと簡単に解けてしまうようだ。緊急時には使えないことを心に留めておこう。
十分な食料と新たな能力を手に入れ、召喚獣たちとのささやかな宴は夜が暮れるまで続いた。
ちなみに、イノシシの軟骨や小さめの骨を飲み込んでみましたが、魔力は上がりませんでした。残念。
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属性:聖・魔 レベル:1 攻/防:0/1 進軍タイプ:歩行
新米召喚術師 【人間】 スペル:* アイテム:1
魔力:3/8
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●アイテム[消耗品]
アイテム:1につき1回しか使用できない使い切りのアイテム
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鬼払いの団子 消耗品
[普通/対抗]
ユニット1体が対象。
対象ユニットが「種族:エイプ/ハウンド/バード」の場合、
「攻撃力:+2/防御力:+2」する。
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※桃○郎印のキビ団子。
犬・猿・雉限定で強化するアイテム
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元気になる実 消耗品
[普通/対抗]
ユニット1体が対象。
対象を「防御力:+1」する。
もしくは
アイテム1つが対象。
対象を破棄する。
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※効果が複数あり、どちらかを選ぶことができるアイテム
本来のゲームでは、もっぱら下の効果で使われる
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