新米召喚術師の異世界紀行   作:woodenface

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襲撃

 あれから数日が経った。

 大量の肉はコボルド自警団の手によって干し肉や燻製にかわり、コボルド・ライダーズが集めてきてくれる木の実や果実などでここでの生活も大分余裕が出てきた。魔力にも余裕があるし、これまで出来なかったことをやっていこう。

 

そう、・・・・・・この森の探索である。

 

そもそも俺はこの森がどのくらいの大きさでどんな場所にあるかすら知らない。できるならこの森を出るための方向、それにどこか人のいる集落があればその位置などを知っておきたい。

 探索のために昨晩選び出しておいたカードをポケットから取り出し、叫ぶ。

 

「普通召喚、《ハリケーン・イーグル》!」

 

 輝く魔法陣から出てきたのは俺を一掴みにできそうな巨体を持った大鷲、風属性レベル2のユニット、ハリケーン・イーグルだ。攻/防は1/1と弱々しいが消費魔力は2と良心的で、なにより進軍タイプが飛行、すなわち空を飛ぶことが出来るという事が大きい。更にイニシアチブ:+2と先攻をとりやすいので、いざとなれば先手を取って逃げ出すこともできるだろう。特殊な能力はなく戦闘力も低いが、探索・偵察にはもってこいのユニットである。

 

 ハリケーン・イーグルに探索を命じた後、俺はいつもどおりコボルドたちの警備する洞穴の中で意識を集中させ感覚共有を行った。

 鬱蒼とした森の中からは見えなかったが、空から見るとどうやらこの森は三方を囲む山の麓にあるらしい。思っていたよりも森は広く、ハリケーン・イーグルでも森の地表を見ながら探索するのは木々の葉が生い茂っていることもあり、かなりの労力が必要に思えた。

 空から見る森の眺めを楽しみながら、森の危険度を知るために地上に見える獣たちにから片っ端から鑑定をかけていく。

 

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 属性:風  レベル:①  攻/防:1/1  進軍タイプ:歩行

 ハンター・ウルフ 【ウルフ】

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 属性:土  レベル:3  攻/防:4/2  進軍タイプ:歩行

 フォレスト・タイガー 【タイガー】

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 属性:土  レベル:2  攻/防:2/2  進軍タイプ:歩行

 ファング・ボア(幼体) 【アニマル】

 チャージ:+1

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 属性:土  レベル:①  攻/防:0/1  進軍タイプ:歩行

 スモール・エイプ 【エイプ】

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              ・

              ・

              ・

 

 オオカミ、トラ、イノシシ、サル・・・・・・様々な動物に鑑定をした結果、この森には無害な獣も多いが、少数ではあるが危険な獣も確実にいることが分かった。ハンター・ウルフなどならコボルドたちが追い払ってくれそうだが、フォレスト・タイガーなどの大型の肉食獣が来れば身を守ることは至難の業、できるだけ早くこの森を離れるに越したことはないだろう。幸いな事に、その姿を見た場所は現在拠点としている洞穴の場所からは大きく離れており、縄張りに近づかなければ襲われることは多分なさそうだ。

 

 再召喚をしながら、探索は数日続いた。

 今日も今日とて上空から動物を探していると、キラリ、と森の中で何かが光っているのが目に入った。

 

(あの光っているものの近くを旋回してくれないか?)

 

(ヒッカテイルノ、トッテイイ?)

 

(危ないかもしれないからダメ)

 

(・・・・・・ザンネン)

 

 光り物に夢中とかカラスじゃないんだから、呆れつつ謎の光源を探していると、森の中に木々が邪魔でよく見えないが、やぐらのようなものが建っているのが見えた。その上には光を反射してキラキラ光る長い筒(おそらく望遠鏡だろう)を覗いてこっちを見ている粗末な衣服を着た青年がいた。

 

(・・・・・・もしかして人間?人間だ!)

 

(マスター、オリテカクニンスル?)

 

 あまりの喜びに集中が切れそうになるのを何とか抑えながらハリケーン・イーグルに応え返す。

 

(・・・いや、今降りても襲い掛かってきたと勘違いされるだろう。日暮れも近いし、一度戻ってきてくれ)

 

(ワカッタ)

 

 人間らしきものを確認できたのは大きな収穫だ。近くに集落でもあればここがどこなのか情報をもらうこともできるだろうし、動物たちを鑑定することで確信したが元の世界とは明らかに違う『この世界』についての知識ももらえるはずだ。

 意気揚々と感覚共有を解いた自分にも、そして帰還を命じられたハリケーン・イーグルも、この時気が付いていなかった。

 

 一つの影がハリケーン・イーグルを追ってきていることに・・・・・・

 

 

 

 

 夕暮れ時、俺は洞穴を出てたき火の周りにみんなを集めていた。というのも、もうすぐハリケーン・イーグル以外は召喚から24時間が経ち、再召喚の必要があるからだ。ポケットから現在召喚しているユニットのカードを取り出し、眺める。召喚に使用したカードは召喚している間色が白っぽくなり、同じ種類の別のカードと区別することができる。召喚したユニットが消えるとカードの色も元に戻り再召喚が可能になるということも、これまでの召喚で知ったことだった。

 ついに時間がやってきて、コボルドたちとウィンター・ウルフが光の粒子となって消えていく。手元の4枚のうち3枚が元に戻るのを見て、さあ召喚だ、と気合を入れていると、ゾクリ、と背筋に悪寒が走った。

 凶悪な「何か」に見られている恐怖。予感の命ずるままに視線を感じる方――森の中へ目を向ける。

 薄暗い森の奥、そこに光る二つの瞳が見えた。この森の猛獣、しかもこちらの数が少なくなる今を待って襲い掛かろうとしている。恐怖に体が強張り、冷や汗が噴き出す。上擦った声で召喚を叫ぶ声とその影が躍り出てくるのは同時だった。

 森から現れたのは一羽の猛禽。翼長は3m近く、その翼はまるで刃のような硬質の輝きを放っている。鋭い瞳はこちらを見据え、自分が獲物である事を否が応にも意識させる。

 

「即時召喚!」

 

 叫んだ声に応え、普通召喚と異なり瞬時に目の前に形成された魔法陣からコボルドたちとウィンター・ウルフが飛び出してくる。急に数を増した敵に一旦上昇した怪鳥に対し、俺は召喚獣たちの後ろに隠れるように数歩下がり鑑定を使う。

 

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 属性:風  レベル:2  攻/防:3/2  進軍タイプ:飛行

 ブレード・ファルコン  【バード】

 ○気配遮断[戦闘]

 このユニットが対象。

 対象ユニットが「敵軍領土」に存在する場合、

「イニシアチブ:+3」を与える

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(特殊能力持ちの先攻型ユニットっ・・・・・・!)

 

 鑑定した結果に内心で舌打ちをする。接近に今まで気付かなかったのはこの能力のせいだろう。しかし敵はイニシアチブ:+3だがこちらは全員合計で+4、差し引き+1分だけではあるがこちらに有利なのだからなんとしてでも先手を取らねばならない。

 

「ハリケーン・イーグル!アイツを空から引き摺り下ろすんだ!」

 

 相手に空の上に居られてはコボルドたちの攻撃は届かない。こちらに有利な形に持ち込むためにも地上へ落とさねば。

 命令に従い、上空の敵に向かって急上昇するハリケーン・イーグル。しかし相手もそれに気付いたのか、更に上へと高度を上げる。

 追いかけるその爪がついにその尾羽をつかもうとした瞬間、相手はヒラリとその身をひるがえし、その翼で体当たりを繰り出してきた。

 急劇な方向転換に避けることはできず、その硬質な羽根は見た目どおり刃のように、ハリケーン・イーグルの片翼を切り裂いた。

 

「ピイィィィィィィッッ!」

 

 ハリケーン・イーグルが悲痛な鳴き声をあげながら墜ちていく。そのさまには目もくれず、ブレード・ファルコンは翼を折り畳み、地表付近まで急降下してくると急降下した勢いのまま低空を飛翔して、俺や自警団たちより前に出ていたライダーズを一瞬で跳ね飛ばし、一直線にこちらへめがけて向かってきた。

 

 しかしその突撃もそこまでだった。

 

「くらエ!」

 

 低空に降りてきた敵に対し、自警団の一匹、白毛のコボルドが手に持った草刈鎌を投げ放った。

 二匹に体当たりをして飛ぶスピードが落ちていたからだろう。放たれた鎌は翼の付け根に刺さり、ブレード・ファルコンは地面へと墜落した。

 

「クエエエエエエェェェッ!」

 

 地に落ちて尚もその鋭い翼を振り回して地面をのたうち暴れていたが、

 

「ガウッ!」

 

 今まで距離をとっていたウィンター・ウルフが風のように疾駆し、その牙は一瞬の躊躇もなく、暴れる巨鳥の頭を噛み砕いた。

 

 

 

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

 生まれて初めての命をかけた死闘。それは余裕のでてきた生活に緩みきった精神を激しく消耗させた。あまりに強い緊張からの解放に、しばらく荒い息を吐いて呼吸を整える。意識して気を落ち着かせると、攻撃を受けた召喚獣たちのことに思い至った。

 

「ハリケーン・イーグル!ライダーズ!大丈夫か!?」

 

 声をかけるが、応える声はない。翼を切り裂かれ墜落したハリケーン・イーグルは高所から落ちたためか首が大きく曲がっているし、コボルド・ライダーズは跳ね飛ばされた際の傷が大きな切り傷になっており、もう助からない傷であることを如実に表していた。

 惨状に絶句していると、しばらくしてその体は光の粒になって消えてしまった。戻ったのかと思い手元のカードを見ると、その二枚のカードはインクでもたらしたかのように漆黒に染まり、触れただけでボロボロと朽ちて崩れていった。

 恐らくこれがユニットが死ぬ、カードが死ぬということなのだろう。

 けっして珍しくはないカード、同じカードが複数枚あるといっても、この数日間を共にした仲間の死に衝撃は隠せない。

 自警団に手伝ってもらい木の杭を地面に打ち込み簡単な墓標にし、穴を掘ってボロボロのカードの残骸を葬った。

 

 同じことが起きる前にここを離れなくては。明日にはここを発つことを決め、洞穴の中での最後の夜を過ごした。

 

 

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 属性:聖・魔  レベル:1  攻/防:0/1  進軍タイプ:歩行

 新米召喚術師  【人間】  スペル:*  アイテム:1

 魔力:1/8

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●即時召喚
戦闘時に行われる召喚。
普通召喚より時間をかけずに召喚できるが、
レベルが①,②,③・・・となっている即時召
喚対応ユニットしか召喚できない。
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