バカンスの日になり、俺たち1年生は豪華客船で目的地まで移動している。本来有栖は乗らない予定だったらしいのだが、どうしてもと頼んだ結果同行出来ることになったという。
ひとまず落ち着けそうな個室のある店に入り、5人で入った。
「…お前も難儀な体だよな。」
「ええ、まあそうですね。もう慣れましたが。いざと言う時に助けてくれる人が居てくれる分、あの時よりは楽ですけどね。」
遠くを見るような懐かしさを噛みしめてる有栖の目に、かつての自分たちを思い出す。コイツが軽かったとはいえ、俺よく体力保ったなぁ…。容赦なく働かされたぞ。
「そういえば、当時の八幡くんってどんな子だったの?」
「そうですね…。どことなく寂しそうではありましたが、優しい子でしたね。あの年頃の子って意外と助けてくれないことも多いので。」
「そうだったんですか?八幡くん。」
「…有栖と出会う前や、ひよりと出会うまでの間は、友達らしい友達は居なかったからな。真澄はどちらかと言えば家族みたいな関係だったし…。」
「…私だけ出会いが一瞬のような気がして、ちょっと疎外感感じるときあるんだよねー…。」
「…帆波が一番劇的な出会いだったそうじゃない……。」
思えば奇妙な出会いや関係ばかりである。まともな出会い方したの、実はひよりだけでは…?
「正直に申し上げますと、9割の足代わりの欲しさと1割の気紛れで巻き込みました。八幡くんが最後まで付き合ってくれなくても楽にはなりましたからね。まあ、最後まで付きっ切りで付き合ってくれたんですが。」
「…まあ、他にやる事もなかったからな。」
「それに、褒められ慣れてないのか褒めた時の表情はどことなく可愛らしかったですね。」
「…いいなぁ。」
「…羨ましいです。」
「…羨ましいわね。」
公開処刑かな?俺のライフがゴリゴリ削られまくってるよ?かつての比企谷少年は何をやってたのかな?
「後はまあ、八幡くんにチェスを教えてあげたくらいですかね。素人ながらに鋭い一手を指してきたのには結構驚きましたよ。対戦後に聞いてみたら『そこに置いてほしくなさそうだったから』って言われまして…鋭い子だったなぁと。」
…その誉め言葉に舞い上がって坂柳と別れた後、周りの奴をじっくり見るようになったら気味悪がられたのが比企谷少年なんだよな。見る目はちゃんと磨かれたけど。
そしてその言葉に納得する真澄と帆波。確かに見る目を養っていなかったら見逃していたであろうから、涙で枕を濡らした日は無駄ではなかったのだろう。辛かったけど。
「…うーん。」
「?どうした、ひより?」
「ああいえなんだか私だけ、皆さんより出会いが普通だなって…。」
「…その分付き合いが長かったみたいで羨ましいわよ。」
「ええそうですね、私は2週間でしたし。」
「私なんて半日もなかったよ…。」
この後4人はスパへ行きたいらしく、確かカジノもあるらしかったのでいったんここで別れた。そしてレストランの横を通り過ぎる時に何やら騒ぎ声が聞こえたのでちらっと見たら、Dクラスの赤髪とよく知らん奴が口論をしていた。アイツらポイントを没収されそうな行動取ってるが、要らないのかな?辺りを見回して、見知ってる奴に声を掛けて事情を聞いてみた。
「綾小路」
「?ああ、比企谷か。」
「これ何の騒ぎなん?ポイント捨てる蛮行になりかねないようにも見えるのだが。」
「入場制限だとかであの男に止められて口論に発展したんだ。」
…確かに恰好をよく見てみると、あまり相応しい恰好とは言えないな。しかし一つ聞いておかないといけない事があるな。
「あ、店員さんすみません。」
「はい、なんでしょうか?」
「ここって入場制限のあるお店なのでしょうか?」
「いえ、当店はどのようなお客様でも歓迎しております。」
「あはい、ありがとうございました。」
「いえいえ、ごゆっくりどうぞ。」
え、じゃあアイツ勝手にルール作って勝手に吠えてるの…?狂犬じゃん…。
「綾小路、あんなのに絡まれる時点でお前もツイてないな…。完全に言いがかりじゃねえか。」
「え、そうなのか?」
「確かにもう少しちゃんとした服装のほうが良いが…。それ言っていいの店の人だけだろ…。」
そんな会話をしてたら、いちゃもんつけてた奴がこっちをにらんできたが無視だ無視。俺は奴の母親じゃないんだ、関わらずに去るに限る。綾小路に別れを告げて、そのままポイント稼ぎへ向かった。
ある程度稼いだ後、シャワーを浴びてから軽い食事とトイレを済ませてくつろいでいるとアナウンスが流れた。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。まもなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう。』
島って聞こえた時点で猛烈に嫌な予感がした。とっととデッキに出て島を観察することにした。意味深なこと言ってくる時は、いっつも面倒ごとに繋がるのがこの学校だ。
「あっ、八幡くん。」
「ひよりも見に来たか、3人は?」
「自分のクラスの方たちと相談するそうです。」
とりあえず二人で島を見ていると、人の気配が見当たらないし泊まれそうな場所も見つけられない。ひよりに冗談交じりに言った事が現実になるとは、口は禍の元だなと少し現実逃避が入った。行きたくねぇ。
「八幡くん、これって…。」
「…冗談でも言うもんじゃないって思ってるわ。」
『これより、当学校が所有する孤島に上陸致します。生徒の皆様は三十分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合して下さい。また、しばらく御手洗に行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいて下さい』
やっぱ特別試験だったわ。やりたくもない無人島生活が始まる。
もっとイチゴ味感覚で書きたい…。