クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

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実質初投稿です。


読書少女天使

受験のシーズンが迫ってきた頃の自分は、「自分はこいつらとは合わないし顔も見たくない」という厨二心があったのだろう。

 

 

あの高度育成高等学校なら俺の顔を知っている奴と会うことはないかもしれないと、必死こいて図書館で受験勉強を毎日続けてて、煮詰まった時にふと本棚をチラ見して、気分転換に本を読もうと手を出してみたが、普段ラノベばかり読んでる自分には難解なのか頭に入って来なかった。後から言われたことだが、結構なしかめっ面だったそうだ。

 

 

「あの…」

 

 

「…ん?」

 

 

声の方向を見ると、銀色の長髪がよく似合う天使のような美少女がいた。

 

 

「結構渋い顔をなされていますが、大丈夫ですか?」

 

 

「あ、ああ。今の自分にはちょっとこの本が難しいみたいで…」

 

 

「普段は本を読まれるのですか?」

 

 

「ら、ラノベにゃら…」

 

 

今思い出してもやはり恥ずかしい噛み方をしていたものだと思う。アレはマジで恥ずかしかった…。

 

 

「…ふふっ。す、すみません…ちょっと面白くって…」

 

 

「い、いや気にしてにゃい…」

 

 

というかキモいくらい噛んでいた。目の前に居たのが天使でよかったと思う。笑いをこらえながら彼女が本棚に向かうと、一冊の本を持って俺に渡してきた。

 

 

「受験勉強での息抜きなら、こちらの本がおすすめですよ。内容も分かりやすくて読み終わるのにそれほど時間もかかりませんから。」

 

 

「あ、ああ。ありが…とう…。」

 

 

この時の自分の顔は真っ赤だったと思う。告白して振られる寸前だったとも言える。振られちゃうのかよ!

 

 

この一件から、読書友達で天使こと椎名ひよりとの交流が始まった。彼女の読書に対する姿勢は凄まじいものがあり、受験勉強をこなしながらも時間が許す限りは読書に没頭していた。そんな彼女に俺も影響を受けて、というか本をオススメされまくって沼に沈められた。悪い気は全然しないが。

 

 

「ふふっ、比企谷くんにおすすめしてもらったライトノベルも面白いですね」

 

 

「俺としては椎名にそういう本を読ませるのにまだちょっと違和感があるけどな」

 

 

「本に貴賤は無し、ですよ。あ、でもえっちな部分はちょっと照れちゃいますね。」

 

 

天使の照れ顔はまだガンには効かないがそのうち効くようになると思う。根拠はないし知らんけど。

 

 

 

 

 

「そういえば比企谷くんはたまにチェスをやってますが、お得意なんですか?」

 

 

「いや、ぼっち生活が長すぎて強さはわからない。昔しばらく一緒に過ごした、カッコいい奴との思い出の名残なんだわ」

 

 

「楽しい思い出だったんですね」

 

 

椎名との交流は図書館だけのものだったが、居心地の良い時間だった。俺が誰かを誘って遊びに行くのが無理ゲーなのと、受験シーズンという事もあったが。

 

 

 

日の落ちる時間が早くなり肌寒くなってきた頃、そろそろ彼女との交流も終わってしまうのだろうという寂しさが、ぼっちだった俺に襲い掛かってきた事実に驚いた頃、すっかり椎名の影響で難しい本でも忌避感を抱かずに楽しく読めるようになっていた。ある日なんとなく本屋で本を買おうと思い立ち寄った時に、「今の俺ならどの本も楽しめるし、いっそ適当な本を手に取って買ってもいいかもしれない」「ガチャ感覚で手に取って椎名にも読んでもらって感想を言い合うのもいいな」とブルーな気分を紛らわせようとしていたんだろう。

 

 

今にして思えば、ここが分岐点でもあったんだろうなと思う。本は面白かったし悪いことには全然なってないからよかったのだが。

 

 

「なあ、椎名」

 

 

「はい?どうしましたか、比企谷くん」

 

 

「昨日本屋に寄って、なんとなくで手に取って面白かったから買った本があるんだが…読まないか?」

 

 

「はい!比企谷くんのおすすめは面白いですから読みたいです!」

 

 

「ああ、これなんだが…」と椎名に渡し、椎名が表紙を見た途端に見た事がないほどの驚きようだったと、今でも印象深く覚えている。

 

 

「ひ、比企谷くん…これ…」

 

 

「あ、ああ…正直昨日初めて知った『かみないつし』って作家さんの本で…言い回しとかが結構面白くてな、ってええっ!?」

 

 

と、いきなり椎名に抱きしめられて胸に顔を埋められた。あまりにも予想外な出来事で物凄いテンパったのは記憶に新しい。

 

 

「…比企谷くん」

 

 

「ひゃいっ」

 

 

「私も…私もこの本が好きです。好きなんです。」

 

 

「は、はいっ」

 

 

「比企谷くんと、出会えてよかったです」

 

 

潤んだ目に花が咲いたかのような笑顔の椎名は、まあまあ濁った俺の目から見てもとても美しいものだった。

 

 

 

 

 

 

「お、お見苦しい所を見せてすみませんでした…」

 

 

「い、いや気にしてないよ?」

 

 

「…ふふっ、なんで疑問形なんですか」

 

 

そりゃ長いことぼっちだったからだよ、気のきいたセリフなんて言えたもんじゃない。

 

 

「比企谷くんとは趣味が合うなって思ってましたが…私が思ってた以上に合うのが嬉しくって、つい」

 

 

「あ、ああ…まあ、俺も…悪い気はしてない」

 

 

なんなのこの子、勘違いして告白して振られても後悔しない気すらしてきたよ。でもそろそろ別れの季節が近づいてるんだよなぁ、今まで生きて来た中で一番憂鬱だわ。やっぱ人生クソだわ。

 

 

「…でも、こうやって一緒に過ごせる時間もあまりないんですね………」

 

 

「っ…まあ………そうだな………」

 

 

「………進学したら、3年間は出会えないですし…」

 

 

うん…うん?

 

 

「…?どうかしましたか…?」

 

 

「いや…本の話は今まで結構してきたけど、互いの進学先については全然話してこなかったなって…というか…」

 

 

「…?」

 

 

「椎名の進学予定って、高度育成高等学校?」

 

 

俺も大分マヌケ面してたと思うが、椎名も大分ぽかんとした表情だった。それでも可愛いが過ぎたが。

 

 

 

 

進学前の椎名と過ごした日々は、まあこんな感じだった。入学した時クラスが同じだったこともあり、交流も増えて図書館で今まで通り感想を言い合ったりするのは変わらず、楽しかった。が、

 

 

「比企谷くん、今日も部屋に行ってもかまいませんか?」

 

 

距離感はバグり散らかすようになってた。




基本オチが書きたいだけまであるかもしれないです。
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