「デートがしたい?」
「うん、ダメかな…?」
「いや、ダメって事は無いが…。」
一緒に勉強していた帆波からぽつりと言われる。デートをする事自体が嫌ではないんだが…。大きな問題が二つほどある。
「二つほど問題がある。」
「問題ってなぁに?」
「そもそもデートって何したら良いんだ?長年ぼっちしてた俺には何していいのか全然分からないんだが…。」
ひよりとのデートの時は、恋愛小説をなぞろうとして結局なぞれてなかったし。
「んー…。一緒に映画を見に行ったり、食事を楽しんだり、買い物を楽しんだり……とか?」
「何で疑問形なのか……帆波の経験に頼るしかないと思ってたんだが。昔からすげぇモテてただろうし。」
「あー…。ほら、私の家って母子家庭だからさ。誘われた事はあるしお金も出してくれるって言ってくれた子も居たけど、相手に甘えてお金を出してもらうのは違う気がして…。それに…。」
どうやら昔から気遣いの出来る良い子だったようだ。なんとなく帆波の頭を撫でる。
「ん…。どうしたの?」
「いや、なんとなく…。」
「ふふっ。八幡くんからしてくれるのは珍しいね。」
「…まあ、俺にもそういう気分の時はある。そういえば最後に言いよどんでたけど何だったんだ?」
「あー…。言ってくれた子がって訳じゃないんだけど、お金を出してくれた男子がそれを笠に着て迫ってくるとか、女子の間でそういう話もあったから…。」
……リスクマネジメントが出来ていて何よりである。
「…ま、まぁとりあえず、一緒に映画を見に行ったり、食事を楽しんだり、買い物を楽しんだりするか?」
「する!」
「となると…もう一つの問題だが…。」
「うん。」
「…体育祭以来、妙に視線を感じるようになってて……。南雲先輩にも絡まれたし。」
「えっ、大丈夫だったの!?」
「ラーメン奢ってもらって、ジムで先にへばった方が負けの走り込みで勝ってきた。」
「本当にどういう状況!?」
相変わらずいいリアクションしてくれるな、そこがいい。
「まあそんなこんなで、クラスが違って一年でも屈指の人気者の帆波が相手となると…変装でもしたほうがいいんだろうけど、どう変装したものかなと。」
「……なるほどー。あー、うん、分かった。私に任せて!」
ということで帆波のコーディネートに任せることになった。
待ち合わせも醍醐味らしいので、分かりやすい待ち合わせ場所に集合する事となった。「一緒に行くほうが良くないか?」と聞いたら「分かってないなー八幡くん。」と頬をむにむにされながら言われた。そういう部分での機微は未だによくわからない。
今の俺は髪型をワックスで弄られ、前髪は立ててアホ毛を無理矢理ワックスで抑え込まれている。そしてイマイチ着るタイミングに恵まれてなかった、帆波に見繕って貰った私服とプレゼントされた銀縁眼鏡で待ち合わせ場所に待機している。
しかし、何故か分からないが妙に視線を感じる…。なんでだ、と思ったがよく考えてみれば普段こんな奴見かけないからである。これ、ひょっとして俺だとバレたら恥ずかしい奴なのでは………。急にモテようとした奴とか思われてそう。
そんな状態でキョロキョロしそうなのを抑え込んでいると、横から抱き着かれた。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
「…あー、いやそんなに待ってない。…私服、よく似合ってる。」
こう言うのが正しいって小町ゼミで習った。これ以上の事は全く学んでいないのだが。
「ふふっ、ありがと。じゃあ早速映画見に行こっか!」
「…おう。」
帆波が来たことで、さっきより明らかに好奇と嫉妬の目が増えている。とっとと映画を見に行くのに否は無い。帆波の嬉しそうな顔を横目で見ながら映画館に向かう事となった。
帆波の強い要望で、恋愛映画を見る事になった。
「恋愛映画か、流石に初めて見るな。というか映画館に来るのが久しぶりだわ。」
「へぇー。その時は何を見たの?」
「1学期にひよ…友達と一緒にミステリーを見に行ったな。トリックが滅茶苦茶だった。」
面白かったけど、妙な映画だったなーと少し思い出す。
「うーん…。」
「ん?どうした?」
「いやー…。相変わらず仲いいなーって。」
「……そうか?」
最近は結構全員甘やかしてる気もするんだが。と言っても俺は俺、彼女たちは彼女たちだから感じ方は違って当然か。とりあえず映画が始まるまで頭でも撫でて誤魔化そう。
「…んーっ。何だか誤魔化されてる感じもするけど、誤魔化されてあげようっ。」
「…おう。」
映画が始まり、見続けていると顔面が引き攣ってくるのを感じる。内容が身に覚えがあり過ぎるのだ。役者さんは俺とは似ても似つかないイケメンだが、俺の人生をなぞったかのような内容なのだ。いきなり公開処刑が始まったようなものである。
「…あっ……。」
帆波も思わず反応しちゃってるし。本人が辛そうな表情ではなく、恥ずかしがりながらも懐かしそうな顔をしてるのが幸いだが。
「にゃはは……」
「う、うおぉぉ…。」
映画を見終わった後、少し早めの昼食を取るため個室のある店に入ったが、映画の内容を思い出して思わず頭を抱えてしまった。
「え、映画凄かったね…。」
「…まるで自分を見てるようだったわ。っていうかえっ、俺って第三者目線で見るとイケメンでもあんなヤバい奴だったのか……うおぉぉ…」
どうしても顔が赤くなる。今までやってきた事に後悔はないが、半端じゃない恥ずかしさだった。
「…ふふふふっ。でも、そんなに時間も経ってないのになんだか懐かしくなっちゃったよ。良い思い出って言えないかもしれないけど。」
「…あれから1年は経ってるのか…。…正直言うと、無人島で一緒に過ごした時安心を覚えたぞ。」
「…えっ?」
「陰りが無いように見えたし、前よりも明らかに強くなってるなって…。上から目線で何様って感じだが。」
「………そっか。うん、八幡くんにそう見て貰えてるなら、嬉しいかな。」
静かな時間がしばらく流れる。頼んだものが届き、舌鼓を打ちつつ食事を済ませ、店を後にした。
この後は冬用の服を見に行ったり、本屋に立ち寄らせてもらったりと無難に過ごした。大体やりたいこと出来たかなってのと、荷物が増えたので寮に戻ってから俺の部屋に集まった。
「んーっ。今日はありがとう、楽しかった!」
「…おう。ならよかった。」
途中で、小町がデートとかの記念に何かプレゼント送ると良いって言っていたのを思い出し、今日の締めとしてこっそり買っておいたプレゼントを渡す。
「…えーっと、これ。」
「…?これは?」
「あー、なんていうか。記念にってやつで、やる。」
「えっ!?ありがとう!…開けてみていい?」
「…おう。」
正直怪しまれない程度に時間をかけて見てみたが、どれがいいのか全然分からなかった。なので店員さんに尋ねてみたところ、これが一番人気と言われたものを購入した。
「……えっ?こ、これって…指輪…?」
「あ、ああ…。要らんかったら捨ててもらっても…んんっ!?」
話してたらいきなりキスをされた。
「ありがとう……ありがとう八幡くん…とっても嬉しい…。」
「え、あ、うん。…おう。」
抱き着いてきながら潤んだ目で上目遣いにこちらを見ている帆波に若干の戸惑いを覚えつつ、プロってすげえなって思った。ここまで喜んでくれるとは思わなかった。
「………八幡くん。」
「あ、はい。」
「今夜は、寝かさないよ?」
あ、目が据わってる。スイッチが完全に入っておられる…。っていうか男だけが言う台詞じゃないんすね…。そんなことを思いつつ、帆波と一夜を共にすることとなった。
後日、あまりにも上機嫌な帆波を見て話を聞いた3人から指輪をせがまれることとなり、同じ店に再度行く事となった。少しばかり痛い出費だがしょうがないと割り切った。
読んでくださる方が意外と多い事に結構ビックリしています。