実質Dクラスとのクラス対抗戦となったペーパーシャッフル式期末試験の時間です。解答を進めつつ、クラスメイトの顔をチラ見すると渋い顔の奴が多数。絶望ってこんなに身近に転がってるものなんですね。暴力を鍛えるのもいいけど、それ以外もちゃんと鍛えてほしい。
赤点こそ居ないものの、やはりクラス全体での平均点が学年で一番低い。体育祭の時にDクラスに対して半年間何を学んできたのかと思ったが、自分のクラスでも思う事になるとは…。口と顔には出さんけど。
「…ということで俺たちは無事敗北したわ。」
「勝てませんでしたね…。」
「とりあえずご愁傷様です。お互いお疲れ様でした。」
テストが終わったら打ち上げしようと約束しており、俺の部屋に集まっていた。テストの結果を聞くとAクラスは予想通り勝利していた。
「このペースだと今学期が終わる頃に、Dクラスに落ちるんじゃねえかなって思ってるわ。知らんけど。」
「にゃはは…話には聞いてたけど大分お疲れみたいだね。」
「やる前から不安しかありませんでしたからね…。テスト作成でふにゃふにゃしてる八幡くんが甘えてくれるのは良かったですけど。」
「……ひよりのその立ち位置が羨ましいわ。」
実際の所かなり甘えた。それくらいに徒労感が凄くてやる気が出なかったから。山場を越えてから自分のそれまでの行動に悶絶したけど。
「…どれくらいの頻度で甘えられていたんですか?」
「1日に1回か2回ですね。甘え終わった後のどことなく物足りなさと寂しさの混じった表情は最高でした。その時の表情がこれです。」
「ちょっと、ひよりさんや?」
自分じゃ分からんかったけど、そんな表情してたのか。より恥ずかしさが増すわ。というか撮られてるのに全然気が付かなかった…。
「おやおや、これは………良いですね。」
「…良い。………良い。」
「…普段の八幡くんは余裕のある表情を保ってるからねー……可愛い。」
何故だか知らないが公開処刑が始まった。そして写真と動画の共有がされてるのに戦慄した。弱点を握られるという事の恐ろしさを魂で理解した瞬間である。
「そういえば今回のテストで、龍園くんはどのような対策をしていたのですか?」
公開処刑が終わって、雑談が始まって少ししてから有栖にそう聞かれた。
「ああ、Dクラスのスパイに問題用紙を提出させて、そのままそれを横流しさせたって言ってたな。バッチリ対策されていたが。」
話が違うと言わんばかりのクラスメイトの顔はしばらく忘れんぞ。龍園の策に依存してる奴が多すぎたのが敗因だろう。
「そっか…堀北さんたちも甘くなくなってきてるってことかぁ。」
「あそこまでコケにされてたらそりゃあな。」
「…分かってたのに動かなかったの?」
「…うちのボスは龍園だからな。後、今のDクラスがどこまで成長しているのかも知りたかった。」
ダメなんじゃないかと思ったけどやっぱりダメだった、そういうオチになってしまったが。どのみち危機感は持つべきなのだ、Cクラスはどことなくそれが薄い。ただでさえクラス内にも反龍園派が居て纏まり切っていないというのに。
「Cクラスは良くも悪くも強みがはっきりしてますから。困っちゃいますね。」
「どうしても龍園ありきのクラスだからなぁ…。本来Aクラスも有栖ありきのクラスに進むと思ってたら違う方向目指してるみたいだから、正直羨ましい。」
「…ふふっ。心境の変化がありまして。以前の私ならクラスの方々を駒として見ていたでしょう。ですが……駒として見るより人として見るほうが良いと考えるようになりまして。帆波さんや葛城くんのように頼りになるくらい成長してくれた方たちや、真澄さんも何かと手伝ってくれますしね。」
「………船の時にも思ったが。有栖にそういう考えをさせるようにした、そんな余計なことをしてくれた奴は誰なんだ?」
「…………あなたがそれを言いますか。」
純粋に疑問でもあったから聞いてみたが、何故か全員から呆れた目で見られた、解せぬ。とりあえずこの日はこの話で締められた。それはそれとして、寝る前に話以外の事もやったのだが、ベッドで。
「……黒幕を炙り出す?」
「ああ、いい加減裏でコソコソやらせるのは終わりだ。ケリつけてやる。Dクラスに行くからテメェも来い。」
………死ぬほど嫌なんですけど。というかコイツは誰にあたりを付けてるんだ?
「龍園くん、八幡くんに危ない事させちゃダメですよ?八幡くんも嫌なら嫌って言わないとダメですよ?」
……ひよりにお母さんみたいなこと言われた。テスト作成以来俺を甘やかそうとしてくることが結構ある。悪い気はしないが。
「…まあ、そうなったら真っ先に逃げるから大丈夫だ。」
「心配するな、今回は確認に行くだけだ。…怪我はしねえだろうが、気疲れはしてもらうぜ、ククッ。」
「……で、誰に当たるつもりだ?」
「学年一の変人だ。実力が未知数な分、可能性としては高いからな。」
………あの唯我独尊マンかぁ…。すでに疲労が約束されちゃったよ。
「………で、お前さんがクラスを裏から操ってるのか?高円寺。」
「フッフッフ。変なことを聞くものだね、比企谷ボーイ。」
休憩スペースでCクラスの荒くれ者どもに囲まれながらも余裕綽々で、髪の整いが甘いからと俺に鏡を渡してきた高円寺にそう聞いた。っていうかコイツ、俺の名前知ってたのか。アホ毛ボーイとか言われるかと思ってたぞ。
「生憎そこまで頭の出来は良くないからな。……ところでまだか?手も疲れるし、弄り過ぎても髪が痛むだろうから早めに済ませたほうが良いと思うが。」
「フム、まあこんなものだろう。ご苦労。」
「労いついでに確認として聞きたいが、お前さんは特に動いてないんだな?」
「ああ、その通りだ。私はDクラスの行く末など微塵も興味はないからねぇ。そのような面倒事をする気もないからね。」
「……そうか、分かった。龍園、高円寺じゃねえわ。」
そう伝えたら龍園がスッゲェ渋い顔してきた。なんならCクラスの奴全員に睨まれてる。だが間違いなく無関係だろう。
「……根拠は。」
「…一応ハッタリも考えたが、こんな場面で嘘をつくようなタイプでもないだろう。というかそれ以上にあまりにもこの状況に無頓着すぎる。マジでどうでもいいんだろうよ。」
変人と聞いてはいたがこれほどとは…。おそらく本人の能力もそれ相応なのだろう。ずっと眠れる獅子で居てくれ。そのまま永眠してほしいまである。
「何事かと思えば、ずいぶんと面白そうな組み合わせの集まりですね。」
騒動を聞きつけたのか有栖まで来た。有栖の後ろには心配そうに見てくる帆波と真澄、後は有栖が使えると言っていた男子二人が居る。
「…どうやら話し合いは終わってるようで。それにしても龍園くん、こんなことに八幡くんを使う必要はなかったのでは?」
「ククッ、こいつはこういう時に使えるからな。使わねえ手はねえだろ。それに、変人には変人をだ。」
学園有数の変人が言える事ではないだろうが。口にすると面倒なことになるから言わんけども。
「…まあ、暴力には発展してないから心配しなくていい。それに今日の所はこれで終わりだろう?龍園。」
「ああ、さっさと片付けたいことは片付けられたからし、候補も大分絞り込めたからな。お開きでいいだろう。…坂柳、もう持って行っていいぞ。」
「ええ、そういうことでしたら遠慮なく。行きますよ、八幡くん。」
「えっ?…えっ?」
「ほら、ぼーっとしてないで。」
「行くよ?八幡くん。」
一瞬の困惑のうちに真澄と帆波に両側から掴まれ、皆が困惑している中運び出されてしまう。まあやる事終わったからいいかと、龍園のニヤケ面を見ながら退場した。
なお、この一件の影響からか高円寺並に自由な奴と噂されることになった。そこまでではないと否定したい。
有栖ちゃんは八幡君の使い方に不満があるというより、八幡君を使ってる龍園君に嫉妬してる感じです。