龍園の顔面が変形してもクリスマスはやってくる。普段のクリスマスは、クリスマスにも関わらず両親は仕事に追われていたため小町と二人でちょっと豪華なディナーとケーキを食って終わってたな。今更ながら小町を一人にしてしまっている事に罪悪感を覚える。大丈夫かなアイツ…。
「クリスマスにいい思い出ないけど…今年は皆や八幡が居てくれるから、楽しみ。…小町には悪いけどね。」
「…おう。まあ、あいつなら友達とパーティーなり出来るだろ。」
明日の準備のため真澄とケヤキモールへケーキの予約を済ませた後、ぽつりと真澄にそう言われた。嬉しそうな真澄の表情に、らしくもなく頬が緩むのを感じる。
「この学校に来てから不安はあったけど……大事な友達も出来たし、大好きな人と再会できた。入学してよかった。」
「…俺も、頭を悩まされたことは結構あったが……なんだかんだ楽しかったし、お前たちと再会できたのは嬉しかったな。…ただ、流石に4人とも彼女になる事は予想できなかったが。」
というか予想出来てたまるか。なんなら4人に愛想尽かされて1人になってたまであると思っていた。そこまで好いてくれてると思うほど、俺は自惚れられるわけがなかった。それまでに別にモテていたわけでもなかったし。
「ふふふっ。確かに予想出来るわけがないわね。」
「…今だから言えるが、俺にとっては大きい出来事だけどお前たちにとってはそこまで大きい出来事でもなかったかもしれないって…。入学前までに付き合いのあったひよりはともかく、真澄や有栖、帆波には忘れられてても仕方ないなって部分があってな…。だから、再会を喜んでくれてるのが凄ぇ嬉しかったんだわ。」
自分がやったことが無駄かどうかはどうでもいい。そういうつもりでやったわけではないから。ただ、自分にとってかけがえのない出会いを彼女たちも大事にしてくれていた。それがたまらなく嬉しかった。
「………ねえ、八幡?」
「ん?」
「キスしていい?…いや、するわよ。」
「えっ?」
そのまま手を引かれて人が居ない所へ連れてかれ、しばらくの間真澄にキスをされ続けた。
惚れた弱みもあるけど、本当に八幡は相当なタラシだと思う。私だって…いや、帆波や有栖でさえ漠然とながら再会した時に、八幡にどう思われていたかという不安はあったはずなのだ。それを縋るような、それでいて救われたような目で大事にしていたと言われたら我慢できるはずがない。
私らしくないけど、所謂バカップルみたいにイチャつきたくなったのは仕方のない事。絶対私は悪くない。…八幡が悪いとは言わないけど。
「…甘えられるのは好きだし、全然嫌じゃなかったけども。出来れば部屋でやって欲しいかなって。」
「………ごめん。我慢できなかった。」
しばらく経ってから冷静になって、顔が真っ赤の真澄に言う。なんだかんだ一番の甘えたがりだからなぁ…。俺が甘やかしてしまうのもあるが。今も頭撫でながらこれ言ってるし。
「…ま、いっか。そろそろ戻るとするか。」
「…うん。」
落ち着きを取り戻して、そのまま買い物へ向かう。4人へのクリスマスプレゼントとしてマフラーを送るつもりなので、真澄に試着してもらって使用感を試してもらう。
「普通こういうのって、サプライズでやるものだと思うんだけど…ま、八幡らしくていいか。」
「自分の感性で選んでなんか違うって思われるほうが気まずいだろ?真澄のセンスなら問題ないだろうし。」
「…ま、褒められて悪い気はしないわ。」
ということで真澄に聞きながら、それぞれに似合いそうなマフラーを選んで購入した。その後はやる事があるらしいので、ここで別れて寮に戻った。
部屋に戻るとベッドで有栖がスヤスヤしていた。少しばかり戻るのに時間がかかったのもあって待ってる間に眠くなったのだろう。あどけなさを感じる眠り顔から、ついさっき真澄とああいった話をしたのもあって、出会った頃の有栖を少し思い出す。
「ホント、綺麗になったよなぁ…。」
あの頃の有栖は可愛らしいといった感じだったが、今の有栖は可愛らしさと美しさを兼ね備えているように思える。つまり、以前よりも成長しているという事でもあるのだろう。俺も負けてられん。
無理に起こすのも悪いので、静かに漫画を読むことにした。
………幸い八幡くんはこちらを見ていないので気づいていないが、顔のにやけが抑えられない。優しい声であんなことを言ってくるとは。たまにこうやってとんでもない破壊力を出してくるから困る。可愛いではなく綺麗と、八幡くんがそう思ってくれているのが嬉しくてたまらない。それだけで舞い上がってしまうあたり、自分のことながらチョロいとは思う。
顔のにやけが収まるまで、紙の擦れる音を聞き続けることになった。
しばらく本を読んでいると、ベットから有栖が起き上がる音が聞こえた。ベッドの上の有栖を見ると、顔が赤かった。
「…顔が赤いけど大丈夫か?体調が悪いならすぐに言えよ。」
「……いえ、大丈夫です。むしろ良いくらいです。」
どことなく目が据わっているようにも見える。本当に大丈夫か…?少しばかり心配ではあるが、ダメそうなら介抱してやればいいだろう。
「…そういえば八幡くんが漫画を読むのは珍しい気がしますね。」
「ん、ああ。読まなくはなかったんだが、ひよりに本を薦め続けられてからは小説のほうが主体になっていったな。最近になってから、綾小路とシェアして読んでる。」
「………えっ?綾小路くんとですか?」
そう、先日大立ち回りした綾小路清隆くんとである。体育祭が終わってから少し経った頃に、いつも一緒に居た奴らが遊びに誘ってくれなくなったらしく、どことなく寂しそうにしてたところに声を掛けてこちらから提案をしてみた。「なんか寂しくなって悲しそうだったぞ」と伝えたらひどく驚愕していたが。今では自分の名前を冠したグループが出来たとの事らしい、よかったね。
「奴も小説なり読んでるだろうが、漫画はどうかなと思って。今まで読んだことがなかったのかってくらい凄え集中して読んでたぞ。少年漫画の感想の言い合いとかだと、お前たちに付き合わせるのも悪いと思ってな。」
味方が死んでいく中主人公がやっと宿敵の前に立って止めを刺せるかと思ったら、そいつが宿敵ではなく宿敵が作った存在だった場面を読んだ時に「…は?」と言ってた綾小路の姿は忘れられない。俺も「や、やりやがった…!」って思ったもん。
「やっぱ小説より漫画の方が消費も早いから、二人で半分ずつ出せば出費を抑えられて良いという事で今でも続けてる。」
「………八幡くんのその、妙な所で変にコミュ力を発揮するのは何なんでしょうね。」
「綾小路にも何やら事情はあるかもしれんが、俺知らんし。俺も友達が居ないしちょうどいいかなって。」
「……私たちは友達ではないんですか?」
「いや、友達じゃなくて大事な彼女だろ。」
南雲先輩との会話で友達0人と気づかされてしまったからな。可愛い彼女が4人出来たのはいいがそれはそれ、これはこれ。ぼっち強度がボロボロになってしまったから、友達は友達でほしいのである。そんなことを考えてると有栖がベッドの上に座れと催促してきたので座ったら、俺の胸に頭を押し付けてぐりぐりしてきた。有栖にしては珍しい行動である。
「~~~!もうっ、もうっ!」
「え、どしたん?そこまでおかしい事言った?」
困惑しながらもなすがままにされた。しばらくして落ち着いたと思ったらそのままキスされた。なんなら首筋にキスマークまでつけてきたぞこやつ。
「……八幡くん。明日は覚悟してくださいね?」
「えっ、俺明日殺されんの?」
そんなことを言いつつも、しばらくの間有栖とイチャイチャした。怒ってるような怒っていないような有栖だったが…女心が分かる日が来る気がしない。
綾小路くんからの好感度はまあ低くないです。