クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

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だいたい八幡君のせいでこうなってます。


選抜種目試験終了後

選抜種目試験に勝利したAクラスは、坂柳を退学に追い込まなくて済んだという安堵はあるものの、困惑に包まれていた。当然である。別のクラスのなんだかよくわからない奴が勝負を決めたからである。ごく一部の生徒はとても嬉しそうであるが。とにかくクラスに戻ってくるのを待つ事になった。

 

 

扉が開き、空になったスポーツドリンクのペットボトルを持ちながら入室してきた。坂柳と、なんかすごく見覚えのある美少女を侍らせながら。全員の目が向いてるからかビクッとしていた。

 

 

 

 

 

教室に入ると、Aクラスの生徒全員がこちらを見ていた。分かってはいたけどビビるわ。まあ、別クラスのはずの奴が、いきなり教室に入ってきて話を少し聞いてそのまま種目に参加するとか意味わからないからね。とにかく教室の前にゆっくり向かって、ひよりと一緒に簡単な自己紹介をする。

 

 

「……えーと。ついさっきAクラスに移籍した、元Dクラスの比企谷八幡です。で、こっちが…」

 

 

「同じく、先ほどDクラスから移籍しました椎名ひよりです。よろしくお願いします。」

 

 

結構な人数がポカーンとしている。まあ、意味わからんタイミングだしな。その顔見たさにやった部分もあるが。ただ、とりあえず…

 

 

「……すまん、ちょっと休みたいから座り込んでいいか?結構限界なんだわ。」

 

 

そう言うと近くの奴が椅子を貸してくれた。本当に助かる。少し休めてきたと感じていると、帆波から質問が飛んできた。

 

 

「…八幡くん。ついさっきって言ってたけど具体的にはいつだったの?」

 

 

「…ああ、Dクラス…今はCに返り咲いたかな?まあCクラスで俺が種目に参加した後からだな。」

 

 

「…そのタイミングでも可能だったんだ…。でも、なんでそんなタイミングだったの?」

 

 

「……いやほら、移籍する前提なのに周りが勝利に喜んでるの見ると気まずいじゃん。」

 

 

「え?何て?」

 

 

「…元のクラスメイトと顔を合わせにくいからこのタイミングにした。それだけだ。」

 

 

周りの空気が凍った気がする。そんな空気を無視して、説明を続ける。

 

 

「んで、俺が自分で確認を取った場合のリスク…というか龍園に知られたらどう動いてくるか分からんから、Aクラスのリーダーである有栖に相談した。で、予約移籍という形で決める事が可能だったから実行した。以上だ。」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

 

「…?何か問題でもあったか?」

 

 

「比企谷の話だと、移籍についてしか言ってない。最初から競技に参加する手筈じゃなかったのか?」

 

 

説明を続けるべきなんだろうが、そろそろ体力的に喋るのがしんどくなってきたので有栖に顔を向けて助けを求める。うなずいてそのまま説明を引き継いでくれた。

 

 

「ここからは私が説明しますね。まず、八幡くんに競技の参加を頼んだのは私です。移籍可能の知らせと一緒に、自信のある種目で参加していただきたいと。間違いなく勝ってくれると思っていましたので。」

 

 

いや、負けかけだったよ?1200メートルリレーで速いのは知ってたが、長距離走ならワンチャンあるんじゃねえかと思って1500メートル走にしたけど、短距離走とそんなに速度変わらなかったじゃねえかアイツ。っていうか負けてたら移籍先のクラスリーダーに止めを刺した負け男としてクラス入りしてたな、危ねえ。

 

 

「…姫さんは、チェスを選択しなかったのか?」

 

 

「……ええ、最初から選択する気はありませんでした。」

 

 

拳を軽く握りながら、少しばかり悔しさを滲ませる有栖の姿に全員が驚いていた。おそらく実力は周知の事実だったんだろう。ちなみに、俺は未だに勝ててない。

 

 

「…少し前に、綾小路くんとチェスを指す機会がありまして。その時は私の敗北でした。今回は確かにリベンジのチャンスでもありました。…ですが、おそらく私が敗れている可能性の方が高かったでしょう。」

 

 

「………マジかよ。」

 

 

素性が分かっても本当に何なんだろうね、あのバグキャラ。隠されてる実力がデカすぎるだろ。宇宙の帝王か?

 

 

「私の我を優先してクラスにご迷惑をかけるわけにはいきませんからね。…と言いたいところですが。」

 

 

「…?」

 

 

「…正直に申し上げますと、八幡くんがAクラスに来てくれる事に舞い上がっちゃいまして。私のものになった八幡くんの格好良い所が見たかったので、今回参加して頂きました。学力を競った種目の方が勝率は高かったかもしれません。その点はお詫びしますね。」

 

 

「……………いや、あそこまでやってくれたなら負けてもしょうがないって。」

 

 

誰かがぽつりと言った。この学校に入って一番死ぬ気で頑張ったからな。後さらっと所有権を示してきたな。

 

 

「後、山内くんが助かったかのような顔から絶望して崩れ落ちる姿は見物でしたね。」

 

 

あ、まだ根に持ってたのね…。葛城がほんのり渋い顔してるだけで他の奴らが特に何も思ってなさそうなあたり、アイツマジで嫌われてたんだなって。

 

 

「説明は以上です。…八幡くんも疲れていますし、解散としましょうか。皆さん、今日は本当にお疲れ様でした。」

 

 

説明が終わり、歩ける程度には回復してきたし帰る事にした。椅子を貸してくれた奴にお礼を言って返して、そのまま行こうとしたら両腕をガッチリ掴まれた。嬉しさ全開の帆波と、優しく微笑む真澄だった。

 

 

「えへへ。八幡くん、一緒に帰ろ?」

 

 

「…今俺に触ると汗が付くぞ?」

 

 

「そんなのどうでもいいわよ。…八幡が一生懸命頑張った証だし。」

 

 

2人の抱き締める力が強くなる。いいんかなぁと思ってたら、女子は興味津々な目でこちらを見てきて、結構な人数の男子が轟沈してた。本当に人気者だな、この2人…。ある意味味方に蹴落とされる心配が出来たのかもしれないが、一定の実力は示せただろうから大丈夫だと思いたい。

 

 

「……やっと八幡と一緒のクラスになれた。ずっと待ってた…。」

 

 

「…あんなに凄かったんだね、八幡くん。凄く格好良かったよ。」

 

 

そう言ってくれるのは嬉しいけど、そんなに体力回復してないからここまでガッチリ抱き着かれると動けねえ。っていうか誰も帰らねえじゃねえか。ずっとこっちガン見してやがる。内心困惑してると後ろからも抱き着かれた。

 

 

「…私も忘れちゃダメですよ?ずっと一緒に居たんですから。これからも一緒に居るんですから。」

 

 

「…いや、忘れるわけないけども。」

 

 

燃料投下されっ放しである。女子たちがキャーキャー言い始めたもん。男子は握り拳を強く握ってる奴が結構居るが。そして杖を突く音が前から聞こえる。

 

 

「…八幡くん。」

 

 

「…有栖。」

 

 

有栖はゆっくりと近づいて来て前から抱き着いてきた。知ってた。

 

 

「ふふっ。八幡くんが私のものに…。こんなに嬉しい日は今までなかったですよ。」

 

 

言い方がちょっと怖ぇよ。

 

 

「もう絶対手放しませんからね?龍園くんにはもう返しませんからね?」

 

 

「…おう。」

 

 

龍園の名前を出すのはやめてやってほしい。三角関係って言葉が聞こえて来たし。奴と俺の関係は複雑だけど、そういう関係じゃないから。

 

 

「…では、行きましょうか。もう少し余韻に浸りたいですが、本当に限界のようですし。」

 

 

「…ああ。とりあえずシャワー浴びて倒れ込みたいわ。」

 

 

これで1年生最後の特別試験は終了した。かなり際どかったが、自分の役割は果たせた。達成感を感じながら4人と一緒に自分の部屋へ戻り、シャワーを浴びてそのままベッドに横になって眠らせてもらった。

 

 

 

 

 

「…八幡くん、ぐっすりだね。あれだけ頑張ってくれたから当たり前かぁ。」

 

 

「…本当に凄かったわね。綾小路じゃなかったらもっと楽に勝ててた。」

 

 

「…正直に言いますと八幡くんの晴れ舞台での活躍が見たかったから、勝敗はそこまで気にしてなかったんですよね。勝ってくれると信じてはいましたが。」

 

 

「…綾小路くんと競ってる八幡くんは本当に格好良かったですからね。仕方ありませんね。」

 

 

ひそひそと八幡の寝ている横で4人が話し合っている。本来は自分の部屋に戻るべきなのだが、どうしても傍に居たいのだ。本日の最大の功労者の傍に。

 

 

「…それにしても八幡くんは、この一年で4000万も貯めたんだね。」

 

 

「…私たちにプレゼントも送ってくれてるから、それ以上になるわね。」

 

 

「…私たちも愛されている自負はありますが、ひよりさんが本当に羨ましいですよ。」

 

 

「…えへへ。でも、有栖さんや帆波さん、真澄さんでも同じようにしてくれましたよ。あくまで傍に居たのが私だっただけです。…役得ですけどね。」

 

 

嬉しそうに笑うひより。この一年間本当に羨ましかった。Aクラスである事が無意味に感じたほどに。でも新学期からは一緒のクラスなのだ。

 

 

「…正直、2年から八幡が同じ教室に居てくれるだけで嬉しい。」

 

 

「…分かるなぁ。授業中に目で追い過ぎないように気を付けなくちゃ。」

 

 

「…ふふっ。席替えでもしましょうかね?」

 

 

「…是非、傍の席でお願いします。」

 

 

八幡包囲網が確定した瞬間である。まあ八幡本人はそれでも気が散る事無く授業をきっちり受けるが。新学期に思いを馳せながら、4人は一日を終える事となった。




書き進めてはいますが、もうここで終わりでもいいかなって少し思ってます。
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