クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

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Dクラスルートは櫛田ルートに見せかけて実はヒロインが5人になってるだけとも言います。


1年D組クソボケ谷君4

初めて比企谷くんを見たのは、一緒のバスに乗っていた時だった。その時は背景の一部としか思わなかったけど、椎名さんと一緒にバスを降りてから一之瀬さんに抱き着かれている場面を見たので流石に印象に残った。

 

 

次に見たのはDクラスに入った時だ。綾小路くんと友達になっていたが、会話があっさり途切れていた。比企谷くんは少し考えた後こう言ってた。

 

 

「………綾小路、どうやら俺たちはお互いに世間話も満足に出来ないようだな。」

 

 

「………ああ。」

 

 

「………無理に話を繋げようとせず、とりあえず共通の話題や趣味でも探していこうぜ。長話はそれからでもいいだろ。」

 

 

「…!ああ、そうだな。」

 

 

前向きなのか後ろ向きなのか分からないが、彼なりに順序を模索した結果がそれだったんだろう。陰キャ2人だとああなるのかと、その時は思ったが。

 

 

学校が始まって少し経った頃に、比企谷くんが綾小路くんにポイントについての言及をしていた。あの時の教室の空気はしばらく忘れなかった。たまに椎名さんたちにそのまま連れて行かれる以外では特に目立ってなかったんだけど。クラスのキモい奴らが青い顔をしていたのは傑作だった。

 

 

綾小路くんのために言ったようで、なんだかんだ情が深いと思う。彼に日々の愚痴を何度も聞いてもらってきたが、相槌を打って静かに聞いてくれた。愚痴を言った後に、毎回彼が差し入れてくれる好物のドリンクを飲むと凄く癒されてる実感がある。堀北に対しての助言は許さないけど。

 

 

中間テストを退学者なしで乗り切り、6月の半ばになった頃に比企谷くんと仲の良い坂柳さんたちに比企谷くんについて聞いたけど、皆が微妙な顔をしていたのはよく覚えてる。どうしたのか聞いてみたら、「また増えた」と言われた。

 

 

「また増えたって、どういうことかな?」

 

 

「ああ、すみません。…櫛田さん、ちょっとお耳を貸してくれませんか?」

 

 

「うん、いいよ。」

 

 

「…櫛田さん。貴女、八幡くんに惹かれ始めていますね?」

 

 

その言葉を聞いた直後は、何を言ってるんだこの女はと思った。私があの陰キャに惹かれるわけないと。しかし、次の坂柳さんの言葉に返事が出来なかった。

 

 

「…八幡くんが貴女から離れても問題は無いんですね?」

 

 

それがどうした、と言えなかった。比企谷くんとの時間が無くなるのは嫌だと、心の底で認めてしまった。顔が熱くなるのを感じて、それに戸惑ってしまった。

 

 

「うそっ、なんで…!?」

 

 

「あー…やっぱり櫛田さんもそうなっちゃったかぁ。」

 

 

「八幡くん本人は自覚が無いのですが、親しくなったら驚くほど人の心に寄り添おうとしてくれるんですよ。」

 

 

椎名さんの言葉に3人が懐かしそうで、それでいて嬉しそうな顔をしている。比企谷くんとの思い出だろう。私の中に暗い衝動が湧き出るのを感じる。どうして私は彼と出会えなかったのか。どうして私だけ彼との思い出が無いのか。

 

 

「…櫛田、顔色が悪いけど大丈夫?」

 

 

「…えっ?あっ、うん。大丈夫だよ。」

 

 

不覚にも顔に出てしまっていたようだ。意識を強く保って慣れ親しんだ仮面をつけ直す。

 

 

「すみません。無暗に追い詰めるつもりはなかったのですが。」

 

 

「ううん、問題ないよ。こっちこそごめんね?」

 

 

「いえいえ。…櫛田さん、そう悲観する事はないですよ。」

 

 

「…えっ?どういうことかな?」

 

 

「八幡くんは貴女の事も気に入ってるようですから。」

 

 

そんな素振りを見せて来た記憶がない。男受けする仕草を見せても「上手いな、その動き」と言って来たクソボケだったし。アレはムカついた。思いっきり頬を引っ張ってやったくらいには。しかし、坂柳さんからそう言われて期待してしまった自分が居る。一度、比企谷くんとちゃんと話をする必要があるようだ。

 

 

この時から4人ともよく話しをするようになり、比企谷くんとはどういったコミュニケーションを取っているのかを聞いた。私は、愚痴を聞いてもらっているとは言いづらいので相談に乗ってもらっていると伝えたが。一番驚かされたのは神室さんから聞いた話だった。頬を染めながら内緒話をするように教えてくれた。

 

 

「…頭を撫でて貰いながら、普段の頑張りを褒めてもらってるわ。癖になっちゃった。」

 

 

あのクソボケは、付き合っても居ない女子相手に何をやっているのか。そういえば同級生にお兄ちゃんと呼ばせた奴って言われてた事を思い出す。なんなんだあの男は。だけど、嬉しそうな神室さんの顔に興味が湧いてしまった。私だけじゃなくて全員が湧いているようだったが。

 

 

 

 

 

「ねえ、比企谷くん?同い年の女の子にお兄ちゃんって呼ばれてるのは本当なのかな?」

 

 

部屋に招かれて、いつも通りになった定位置に座ったら開口一番にそう言われた。そういや一時期噂にもなってたな。綾小路に「流石に倒錯的すぎないか?」って言われて、あいつそういうのは分かるのか…と現実逃避をした事をまだ覚えている。

 

 

「…ああ、たまにだが呼ばれてるな。誰かから聞いたのか?」

 

 

「うん、神室さん本人が言ってたよ。妹を可愛がるように頭を撫でながら褒めてもらってるってね。…あんた、女の敵過ぎない?読めない奴だと思ってるけどそういう意味じゃなかったよ。」

 

 

「真澄本人からかぁ。」

 

 

鋭い半目で櫛田がこっちを見てくる。しかし、他の奴の口から聞くと確かにクソ野郎としか思えなくなるな。けれども、俺から止めるつもりはない。真澄がもういいと言うまではやり続けるつもりでいる。

 

 

「……ねえ、神室さんとは何があったの?」

 

 

少し俯きながら櫛田が聞いてきた。櫛田相手に言っていいものか悩んだが、何かあったら真澄に詫びを入れる事にした。さすがに万引きしかけてましたと馬鹿正直に言う気はないが。

 

 

「中二の頃に、真澄が公園にぽつんと一人でベンチに座っててな。事情を聞いたら親がネグレイト気味らしくてな。何やっても褒められもせず怒られもせずと無関心だったそうだ。」

 

 

「………そうなの。」

 

 

「んで、その時の俺は何を思ったのか真澄を俺んちに泊まらせに連れてった。」

 

 

「…何してるのかな?比企谷くんは。」

 

 

俺もそう思います。あの時の決断が間違っていたと言う気は無いが、間違いなく頭の悪い行動である。しかし同時に俺にとってはいい思い出でもある。自分の口元が緩むのを感じる。

 

 

「妹にも引かれたな。『名前も知らないのに連れ込んだの?』って。」

 

 

「それはそうだよ…。なんでそんな事をしようと思ったの?」

 

 

「ああ、あの時の真澄が凄え寂しそうに見えたからな。何とかしてやりたいと思った結果が、真澄と一緒に家族団らんの時間を過ごしてやればいいんじゃないかと。」

 

 

「頭おかしいんじゃないの?あんた。」

 

 

「当時の真澄にも言われたわ。」

 

 

真澄が優しい子じゃなかったらまず成立していない事である。普通に考えたら激怒されて警察に通報されてもおかしくねえし。

 

 

「それで、あんたは神室さんに何をしたの?」

 

 

「そんなに大した事はしてねえな。2か月くらいの間ほぼ毎日泊まりに来てた真澄に、頭を撫でながら話を聞いたり頑張ってる事を褒めてやったりしたくらいだ。」

 

 

「…いろいろとおかしい気もするけど、2か月なのはなんでなのかな?」

 

 

「真澄の親が転勤で、引っ越しに付いていくしかなかったんだよ。」

 

 

あの時は俺も小町も本当に寂しかった。しばらくの間、真澄が来ていたくらいの時間になるとつい定位置に座っていたし、小町もつい料理を3人前作っていた時もあった。

 

 

「んで、互いに自分の力で行ける場所を増やせるようになったらまた会おうって約束して別れた。思いのほか再会は早かったけどな。」

 

 

「何恋愛ドラマみたいな事してんのよ、イカレポンチのくせに。」

 

 

「イカレポンチは酷くない?」

 

 

相変わらず口悪いなーと内心苦笑いで櫛田を見たが、何か悩んでいるというか迷っているというか。櫛田にしては珍しく、言いたいことがあるけど言えないといった様子だった。しばらく待っていると、櫛田が口を開いた。

 

 

「…比企谷くん。」

 

 

「…おう。」

 

 

「………それ、私にもやってみてくれない?」

 

 

 

 

 

「桔梗はいつも頑張ってるよな。嫌なことも率先してやってるし、皆に笑顔で接してあげられてる。桔梗が居なかったらとっくに俺たちのクラスは終わってたな。クラスでの振る舞いを見てていつもそう思ってるぞ。」

 

 

「………。」

 

 

言ってる事はまあ、そこまで特別な誉め言葉ではないだろう。撫で方はやり慣れているのか凄く心地が良い。だけど、目が特にダメだ。普段は疲れているような覇気のない目をしているくせに、邪念の無い優しい目で見ながら撫でてくるのだ。神室さんが癖になると言ったのも分かる気がする。クールな感じの神室さんが、こいつには嬉しそうでかつ、優しい笑顔を向けているのを何度も見ている。彼女はこれにやられたのか。ホストの才能あるな、こいつ。

 

 

私は、こいつにどう思われているのか。こいつに対して明らかに好意を持っている4人の顔が浮かぶ。こいつも、彼女たちに対して特別視してる。………では、私はどうなのか。彼女たちに後れを取りたくない。どうしても彼女たちに嫉妬してしまう。

 

 

「……八幡くん。」

 

 

「…おう。」

 

 

「…八幡くんにとって、私はどんな存在かな?」

 

 

撫でる手を止めずに八幡くんは考えている。器用だなと思う。

 

 

「そうだな…なんだかんだ放っておけないし、一緒にいると楽しい奴だな。愚痴ってる時と愚痴り終わったときの緩急ある表情も見てて飽きないし。嫌いになれない奴だと思ってるわ。」

 

 

「…私の過去を知ってるのに?」

 

 

「むしろタフだなこいつって感心したぞ。普通の奴なら確実に潰れてるだろうし。」

 

 

「………皆の前での私と本当の私、どっちの方が好き?」

 

 

「んー…俺にとっての桔梗は放課後に話を聞いてる時の方が取っ付きやすくて好きだな。学校でそうありたいと必死に頑張ってる桔梗も嫌いじゃないけどな。」

 

 

………こいつは悪い男だ。私にとって一番嬉しいと思う事をずっと言い続けてくる。普段より癒されてる気すらする。やられっぱなしなのも悔しいので思いっきり抱き着いてやった。抱き着きたかったわけではない、多分。

 

 

どんな反応をするのかと少し期待したが、背中に手を回してポンポンと優しく叩いてきた。女としてのプライドを傷つけられたが、不快じゃないから許してやる。門限が来るまでこんな感じで八幡くんに甘やかしてもらって、今日はいつもよりゆっくり寝られた。今後もやってもらおう。




真澄ちゃんにやったようにって言われたので、八幡くんは妹を甘やかすように遂行しました。桔梗ちゃん的にもそれはそれでOKだったようですが。
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