1年Cクラスは好意的に見て、不良のクラスだ。好意的に見なければマフィアファミリーみたいなクラスだ。笑えねえ。
龍園というロン毛の不良…いや授業態度ちゃんと真面目に机に向かって勉強してるから不良なのかアイツ…?まあでも暴力に忌避感がまるでない危ない奴ではあるか。
4月中に椎名や教室に来た一之瀬を引き連れて職員室に向かい、Sシステムについての答え合わせで口止め料を3人とも得てほくほくしつつ、答えに至るかもしれない一之瀬を封殺して「仕事したなぁ」と呑気してた5月の頭のHR後、隣のクラスの絶叫をBGMとして聞いた後に
「俺に従って動け、文句がある奴は特別棟に来い。あそこには監視カメラがねえ。そこで格付けしてやるよ。」
みたいな事言い出して山田や石なんとかが喧嘩しに行ったんだよな。まあ気づいたら二人とも部下になって、龍園が恐怖政治を敷くのに成功してたが。まあ俺は「適度に手伝えばいいだろ」と舐めた考えをしつつ、様子見を続けている。
「クラスの人たちは見事に体を動かすのが得意な人たちばかりそうですね。」
「確かにな。なんでそんな偏ったクラスになってしまったのか…。」
「…でも比企谷君が一緒でよかったです。一人で図書館の本を読むのは寂しいですから。」
…出会ってから1年近くなる付き合いだが、この子はどうしていつも心を溶かすような事を言ってくるのか。ある意味一番心臓に悪い。
「…んんっ。まあとりあえずそれはいいか。さて椎名、今日はどの本を読む?」
「はいっ!では今日はこちらを一緒に読みましょう!」
…椎名とくっつきながら一緒に本を読むことに照れを感じつつも慣れた自分が居る。中三の時の椎名は俺と別れる事になると思っていた反動かもしれない。どうしてもそう自惚れてしまう自分がひどく照れくさい。
「…あー、そういえば」
「はい?」
「…着物、似合ってたじょ」
…未だにこういう褒めに慣れずに噛むのは何でだろうな。普通の会話だと必死に練習してどうにか噛まずに喋れるようになったというのに。
「…!ふふっ、ありがとうございます!」
「…おう。」
椎名の突っ込まない優しさに救われながらも、やはり羞恥心が凄い。でもちゃんと褒めないと椎名は意外と拗ねるのだ。天使でも拗ねるんだなと当初は驚いたものだ。なので噛むのは改善したい、出来るか知らんけど。
基本的に俺は椎名とつるんでいるが、椎名が茶道部の活動へ行く日はぼっちに戻るのでケヤキモールにて時間を潰そうと思ったが…
「…彼がそうなの?」「ええ、1Aの女王の下僕だとか…」「私は一之瀬さんにタカるヒモって…」「同級生にお兄ちゃんって呼ばせたらしいわよ…」
…まだまだ時期尚早だったようで、そそくさと逃げるように寮に戻ろうとしたが、
「おやおや比企谷君、奇遇ですね。」
「…こんにちは、比企谷。」
「こんにちは!比企谷くん。」
下僕の下に女王が推参したようだ。下僕って認めちゃったよなんでだろう。
ひとまずカフェへのお誘いを受け入れ、なんとか腰を落ち着けた。しばらくテスト期間などでバタバタしていたから、彼女達と会うのは久々になる。坂柳と神室と一之瀬で一緒に行動するようになったとのことだが
「有栖ちゃんを手伝ってあげたくって、あと新しく妹が出来たみたいで」
「なんとなく…なんとなくよ。妹が出来たみたいでちょっと嬉しいし」
と言われていた時の坂柳の表情は引きつりながら頬を染めていた。まあ恥ずかしいわな、長男でも耐えられない。長女でも多分無理だろう。
「それにしても比企谷君、正直私は貴方と再会する確率は低いと思っていましたよ。」
「ああ、まあ、そう考えるのが普通だろうな…。」
「それにずいぶん見違えましたね。体幹もしっかりして全体的に引き締まってるようですし。」
「…まあ、色々あったからな…。」
…坂柳に見透かされてる気がするがとりあえずすっとぼけるしかなかった。無駄な努力だとしても。
「…ふふっ。久しぶりに会って私も高揚しているようです。ですがお二人があなたと話をしたそうにソワソワしているようなので、私の番はここで一区切りとしましょう。」
二週間ばかりの付き合いだったので坂柳についてそこまで詳しいわけではないが、当時の大人顔負けの余裕は健在のようであった。相変わらずすぎて安心したまである。
「…えっと。」
「…おう。」
「…あの時、本当に…本当にありがとうございました!」
「…妹さんは喜んでたか?」
「!…はい!」
「…なら、いい。」
「…それにまた比企谷君に会えるだなんて…。」
なにこの子、照れた表情が可愛すぎるでしょ。でもこういうのって※(ただしイケメンに限る)んだよな、八幡知ってる。他者との交流がほぼ絶無だったが、そういった場面に遭遇したときにイケメンじゃなかったからダメだったのを見かけてしまったから。アレは悲惨だった…。
「…あー、まあ三年間よろしく…。」
「…うん!よろしくね!」
…勉強や運動は死ぬ気で努力してきたつもりだから余裕があるんだが、ここ一年間くらいの間は椎名以外との交流がなかったし互いに読書の感想をする間柄だけだったから実質コミュ障ぼっちはまるで解消できてない。だが握手出来ただけ成長しているのだと自己弁護をしておく。
「………お兄ちゃん。」
「………おう、真澄。」
神室にそういったことを提案した以上、俺には応える義務がある、と思っている。たとえ一之瀬の困惑とちょっと軽蔑混じりの眼差しと、坂柳の女の敵を見るような目で見られるとしても。内心怯えているが。そして聞きにくかろうが聞いておかなければならない事を尋ねた。
「…両親との関係は………?」
…気落ちしながら首を横に振る彼女の顔を見るのは辛い。
「…そうか、でも、まあ」
「…?」
「…こうやって再会したんだ。また一緒に…。」
「…!うん!」
普段クールな彼女の顔とは違って童心に帰ったかのような笑顔に照れつつも、他の客が全員こっちを興味深そうに凝視しているのには脂汗を感じるし普通に怖い。パフェ全部溶け切ってますよ?いいんですか?
カフェを出てから、押し切られる形でそのまま俺の部屋に移動することになった。ぼっちじゃ3人に勝てなかったよ…。多分ぼっちじゃなくても勝てないよ。
「…比企谷君、久々にチェスをしませんか?」
神妙な面持ちで坂柳が提案してきたので、ギャラリー二人の元で小学時代以来の対決をすることになった。その際に互いに無理のない願いを一つかなえる権利を賭けたが、なんだかんだで俺も何年もチェスと向き合って来たし、奴との再戦はずっと楽しみで高揚してたのもあり承諾した。ただ、やはり坂柳という壁は分厚くまだまだ届かないようだったので完敗だったが。
「ふふふっ、見違えましたよ比企谷君。本当に強くなりましたね。」
「…そっちはあの頃よりさらに磨きがかかってるようで……。」
「ええ、あの頃よりもさらに磨きのかかった天才ですから。」
なお、お願いとして合鍵を私達に下さいとの事で、出し渋ってたら「「「椎名さんには渡したじゃない(ですか)」」」と微妙に拗ねながら三人に言われた。どことなく寂しさも見え隠れていたので、観念して渡す以外の選択肢は潰れたのであった。次の日にこの事を話の種として椎名に話したのだが、
「比企谷君は、そうやってすぐに自分の懐に入れてしまうんですから。」
と、片頬を膨らませた椎名に痛くない程度の力で両頬を引っ張られながら言われた。安易な賭け事ダメ絶対、と心にも刻んだ。
なお三人が俺の部屋から出て行ったのを見た人から「美少女三人を部屋に連れ込める奴」という噂が流れ、ある程度の尊敬と多大な嫉妬を獲得した。捨てたいけど捨てられない呪いのアイテムを獲得した時のような、憂鬱な気分になったわ。
私は結構浅めのフィーリングで書いてます。