引っ越しの作業自体は思ったほど大変ではなかった。どうせポイントが有り余ってるので、配達から設置まで業者さんに任せられたからである。全員が個室を持てるくらいには部屋数もある。なお、俺はあんまり一人で居る事はない。なんなら一人で寝る事もほとんどなくなった。俺のベッド、やたらとデカいし。
ちなみに引っ越し生活が始まって早々に諦めた事がある。節度ある付き合い、無理そうだなって。引っ越した次の日に手を出す事になるとは思わなかった。しかも全員に。多分この学校に来て一番体力を使った事である。
手を出した次の日の朝、皆がまだ寝ている中真っ先に起きた。起こさないように移動して、シャワーを浴びてからリビングで一息ついた。流石に日課のジョギングをやる気になれなかったのでこの時は休みにした。しばらく本を読んでいると、桔梗が起きたようでリビングへやってきた。下着姿で。
「…八幡くんって本当に初めてだったの?触り方にぎこちなさを感じなかったっていうか、上手だったっていうか…。男子高校生は猿ってよく聞くけど、恐ろしく丁寧だったし…。」
「…参考資料が良かったんだろう、今までそういった本とか動画を見た事なかったし…。動画内の動きをトレースして、桔梗たちの反応を見ながら動いてただけだ。」
どうしていいか分からなかったのは事実だが、「動画を見て覚えてください」からの「じゃあ実践しましょう」コンボは衝撃だった。この学校に入ってから一番頭を使った時間である。行為を思い出しているのか、桔梗は顔を真っ赤にしながらもじもじしているが、表情を見るに嫌な体験ではなさそうだった。でもその格好でもじもじするのはやめてほしい、刺激が強すぎる。
「天性のけだものね、あんた。………痛いだけよりは良いけど。」
「けだものは酷くない?必死なだけだったぞ。………体の不調とかは無いか?」
「…まだちょっと何か入ってる感じがするけど、それ以外は問題ないかな。」
「そうか。…とりあえず、シャワーでも浴びてさっぱりしてくると良い。今のお前さんの恰好はちょっと刺激が強すぎるしな。」
「………えっち。」
そう言って桔梗は風呂場へ移動し、シャワーを浴びに行った。夜の事を思い出して、どうしても目で追ってしまった。しばらくそういう思考に行きがちになりそうなので、理性を強く持とうと思う。そう思っていると扉が開く音が聞こえた。
「あっ………お、おはよ…。」
「…おう。」
真澄も下着姿だった。…一応部屋に服なかったっけ?視線誘導されそうなのを必死にこらえていたが、俺の隣に座ってきて唇を突き出してきた。
「………おはようのキス、頂戴?」
「…お、おう…。」
まだ俺も見ていない引き出しがあったようだ。こやつ、本当に可愛いな。求められるがままにキスをした。
「んっ…。昨日のお兄ちゃん、凄かった…。痛いのは最初だけで、ずっとふわふわした気分だった…。」
「………とりあえずシャワー浴びてきな?桔梗も今シャワー浴びてるだろうけど、この部屋の風呂は複数シャワーがあるからな。」
「うん、行ってくる。…一緒に入る?」
「…遠慮しとくわ。」
真澄はちょっと不満そうに風呂へ行った。まだちょっと寝ぼけてるのかもしれないが、無意識に理性を削りに来るのはやめてもらいたい。シャワーを浴びて完全に覚醒してくれ。悶々としてるとまたもや扉が開いた。起きてきたのはひよりだった。
「あっ…お、おはようございます八幡くん。」
「…おう。」
ひよりに顔を向けると、またもや下着姿だった。無自覚なのかわざとなのか分からんけど、誘惑しているつもりなら効果覿面である。無性にひよりに触りたくなる自分に驚きつつも、どうにか自制した。
「八幡くん。あの…」
「…ん?」
「何と言いますか…凄く、良かったです。八幡くんはどうでしたか…?」
「……………最高、だった。」
どうにか言葉を絞りだした。事実ではあるし、ひよりは嬉しそうな顔をしているが「お前の体、最高だったぜ!」って言ってる気分になるのは微妙だった。そんな気分を払拭するためにひよりの頭を撫でた。為すがままに撫でられてほわほわした笑顔のひよりに癒された。
「えへへ…」
「シャワー浴びてすっきりして来るといい。汗掻いただろうしな。」
「はいっ、行ってきますね。」
とんでもない爆弾を落としていったひよりの後姿を無意識に見送った。何も考えずにひよりのお尻をガン見してたのに気付き、このままじゃまずいんじゃないかと思い始めた。危機感を覚えているとまたもや扉が開き、帆波が有栖と一緒に出てきた。一糸纏わぬ姿で。
「……………おはよう。せめて、下着はつけてくれ。」
「おはようございます、八幡くん。…あそこまでやったわけですし問題無いのでは?」
「おはよう、八幡くん。私たち、色んな所を触られちゃったからねー。それに、八幡くんになら見られても全然問題ないし。」
……問題しかないんだよなぁ。彼女たちとそういう事をするのが嬉しくないわけではないが。良い反応をするから、つい夢中になった俺も悪いけども。
爛れっ放しの生活はよくないと分かったので、せめて日を置くなどのルールは設けさせてもらった。俺以外がちょっと不満そうな目をしていたが。まあ、それを受け入れる代わりに一緒のベッドで寝たいとゴネられて、折れる事になった。端から見れば毎日寝る女が変わるクソ野郎である、笑えねえ。
皆の距離感が今まで以上に近い事に心拍数が上がる事以外は、なんだかんだプールへ行く日の前日までは穏やかに過ごせていた。だが5人で寛いでいた時に、友達との遊びから帰ってきた帆波が、スゲェ迫力を出しながら俺に言ってきた。
「………八幡くん、綾小路くんと占いに行ったって本当?」
「あ、ああ…。5日前くらいだったかに行ったが。それがどうかしたのか?」
「…八幡くんと綾小路くんが付き合ってるかもしれないって、噂になりかけてるよ。」
「………え゙っ。」
割と洒落にならない噂の種だった。やっぱり強行突破しちゃ駄目だったじゃねえか。そういう趣味を持つ人を否定する気は無いが、俺がそう見られるわけにもいかない。っていうか嫌だ。
「なあなあで済ませちまったけど、やっぱ止めるべきだったか…。」
「…八幡、もしかしてケヤキモールでの占い屋さんに行ったの?」
「ああうん、そこに行った。異性の2人組でって条件だったんだけど、綾小路が何が何でも俺について占ってもらうと。倍額払ったら占ってもらえた。」
「…八幡くん、そういう時はちゃんと断りましょうね。」
「…悪い、当たるって評判だったから俺も少し気になっちまった。」
やんわりとひよりに注意されながらも、好奇心に屈した事を反省する。しかしまぁ、泣かせんようにしなさいって言われた相手が原因で泣かれるかもしれない状態になるとは予想出来んて。帆波が珍しくぶすっとした表情してるし。
「しかし同性愛疑惑の噂かぁ………。すまん、事実無根だから俺もスッゲェ嫌だ。悪いけど誰か、しばらく外で俺にべったり張り付いててくれねえかな?」
「「「「「いい(わ)(です)よ。」」」」」
5人から即OKが出た。事実とは違う噂はこれで払拭出来たと言っても良いだろう。なお、しばらくして5人を侍らせているという噂が流れるようになったが。ともあれ、この時は帆波の機嫌がなんとか治った事にホッとしていた。
他の方の作品の占い回を拝見させて頂いて思ったのですが、なんで私は男2人でやらせたんでしょうね。