クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

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体育祭が終わると言いましたが嘘付きました。あまり進んでないです。


1年D組クソボケ谷君24

「綾小路、鬼頭。綱引きどうしよう?邪悪なボスドラゴンの事だから、絶対縄を手離して転ばせてくるぞ。奴の策に対策しないで怪我するのも馬鹿らしいんだが。」

 

 

「…開始直後にこちらが縄を手離すのはどうだ?」

 

 

「……Aクラス対Cクラスという構図であったなら、Cクラスにダメージを与えるのとAクラスから怪我人を出さないようにする手段として実行しても問題なかっただろう。だが、Dクラスが一緒な以上、賛成は得られまい。」

 

 

綾小路の提案と鬼頭の言葉を尻目に、Dクラスの様子を見る。張り切りボーイから怒髪天ボーイに進化寸前の須藤が檄を飛ばしている。あそこまでやられてまだ真面目に戦おうとするのは良いが、対策を立ててる様子が一向に感じられない。せめて、何か一工夫して欲しい。この学校、クソ真面目に戦う事は別に推奨してないよ?

 

 

俺たちの会話が気になったのか、葛城が尋ねてきたので内容を伝えた。

 

 

「…そういう訳だが、葛城はどう思う?」

 

 

「………9月頭の顔合わせの際、龍園はBクラスと相談もせずに早々に引き上げていた。もし比企谷の言う通りに縄を手離す場合、おそらくBクラスもそれに引っかかるだろう。…俺たちもCクラスの動きに合わせて縄を放した方が、かえって怪我人が出ないかもしれない。」

 

 

「…せめて今くらいはBクラスの味方しとけよ、アイツ。体力も温存出来るし一石二鳥ではあるが、後はタイミングか…。」

 

 

「アイツならやる」という認識は共通のようだ。それぞれがまず龍園の顔を怪しまれない程度に見ておく。そして何かしらアクションを起こす…というか掛け声あたりを合図にするだろうから、それに合わせて手を離して、万が一巻き込まれないように横に逸れて逃げようという作戦に決まった。

 

 

1回目からは流石の龍園も仕掛けてこず、なんとか俺たちが勝利した。2回目は龍園が背の高い順に整列させ力を入れやすいようにしたのと、警戒しすぎてしまったのが響いて俺たちが敗北した。中々難しいもんだなと思いつつぼんやりと龍園を見るが、安定のあくどい顔である。これは絶対仕掛けてくるわ。

 

 

3回目の拮抗しているタイミングで龍園が檄を入れた。そしてタイミングを合わせるような掛け声と同時に、Aクラス全員で縄から手を離して横に逸れた。結構良いタイミングだったようで転ぶ事無く綱引きは続いており、「何やってんだテメェらッ!?」という声を聞きつつちらっと観察した。どうやらBとDだと須藤の分だけDの方が力強いらしい。Cクラスの連中も流石に面食らった状態だったので、綾小路と鬼頭に目配せをして、改めて縄を掴みに動き、思いっきり引っ張って勝負を決めた。

 

 

「…それにしても君ら、ぶっつけ本番で全員よくあそこまで上手い事反応出来たね。流石Aクラスって所か。」

 

 

「比企谷が言った『ニチャァ…とした笑顔』って何なんだよって思ったけどよく分かったわ。」

 

 

「ああ、あの笑顔は確かにそんな感じだった。人を嵌める時の顔ってああなるんだな。」

 

 

判断能力が低くないようで何よりだ。それはそれとして、龍園の印象が「ニチャァっと笑ったら危険のサイン出してる人」みたいになってるがまあ問題ないだろう。ともあれ、どうにか綱引きは無事に乗り切った。

 

 

 

 

 

女子の綱引きは特に何か仕掛けられる事もなく、正々堂々とやってギリギリ勝利していた。意外とひより1人分が響いた結果かもしれない。戻ってきたひよりがテントで座ってる俺に気付き、少し早足になって近づいてきた。ハイタッチのために片手を挙げたら、手と手を合わせる大人しめのハイタッチだった。ちなみに鬼頭と綾小路はバチンッとバチンッッって感じの、しばらく手がヒリヒリする強烈極まりないハイタッチだった。

 

 

「ナイスファイト、1か月前に比べてずっと動けてる。度重なる筋肉痛に屈せずによく頑張ったな。」

 

 

「…正直に申し上げますととても辛かったですが、皆さんが支えてくれたおかげでなんとか頑張れました。改めて、ありがとうございます。」

 

 

「心苦しさはあったけど結構厳しめにしたつもりだし、心を鬼にして接してたつもりだけどくじけずによく頑張ってくれたと思うわ。」

 

 

「…寮での八幡くんは砂糖よりずっと甘かったと思いますが。筋肉痛でぐでっとしたたまごみたいになって動けなくなってたひよりさんに『助けてくださいー』って言われたら、愛娘を褒めてあやすみたいに『今日も頑張ったな』って言いながら頭を撫でて、お姫様抱っこで運んであげてる所しか見ていないですよ。」

 

 

「…いやほら、俺は基本褒めて伸ばすタイプだから……。」

 

 

ジト目の有栖に突っ込まれてつい言い訳をした。ひよりの「たすけてー」という目に即陥落したのは認める。ちなみにその光景を見て一番おねだりをしてきたのは、帆波だったりする。後ろから抱き着いてきて「いいなー、私も頑張ったんだけどにゃー」と何度も言われてたりする。

 

 

有栖もこれ以上追及する気は無いらしく、一息ついて気持ちを切り替えたようだ。

 

 

「…そういえば、男子の皆さんはお見事でしたね。龍園くんの罠に対して、良い解答を出されたようで。」

 

 

「合図らしいものが無いか聞かれて、時間が無かったからニチャァって感じのあくどい笑顔をしたらやってくると伝えたが、見事にやり切ってくれたな。」

 

 

「………ふふふっ。やめてくださいよ、八幡くん。次から龍園くんの顔がまともに見られなくなるじゃないですか。」

 

 

俺なりに端的に伝えようとしただけなのだが、有栖にはツボだったようだ。口元を押さえて肩を震わせ続けてるし。

 

 

 

 

 

このままもう少し会話を続けて休憩したかったが、障害物競走の時間がすぐ来た。本当に忙しない体育祭である。一緒に走る奴を見たが、Cクラスの奴がスッゲェ意気込んでこっちを見てきたのでギアを一つ上げる事にした。自分が安全圏に居ると思えるほど、俺は楽観視が出来ない。

 

 

仕掛けてくるなら競技中での接触だろうと読み、のっけから一気に突き放すようにスピードを出した。後ろから「比企谷ァァ!」と聞こえたが、一切振り向くこともなく無視し続けたまま一気に駆け抜けて1位になった。仕掛けようとしてる罠に引っかかってやる気もねえし。Cクラスの奴がゴールしたが、悔しそうにしている。

 

 

「…クソッ、完全に無視しやがって。俺は眼中にないって事かよ…!」

 

 

「…眼中にあるから完全に無視してとっとと終わらせたんだよ。何かしらのきっかけを一切与えないようにな。俺は人様を舐められるほどの才覚に満ち溢れてる訳でもない、ただの凡人がちょっと努力した程度の奴だからな。」

 

 

「…ちょっとの努力でここまで突き放されたならそれは才能でしかないだろうが。」

 

 

「………悪い、大分見栄張った。死にかけるほど努力してきたわ。」

 

 

言われてみればその通りで、思わず謝った。俺の謝罪に気を削がれたようで、とぼとぼと自クラスのテントへ戻っていった。まあ作戦失敗ではあるし、龍園に殴られるかもしれんから仕方なさそうだが。この後綾小路も仕掛けられたのかなと思い聞いてみたが、特に何もしてこなかったようだ。ターゲットはある程度絞ってるようだ。どっちかというとDクラスがメインで、俺はやれたらでいいって感じのようだな。テントに戻っていった奴がお咎めなしでホッとして座ってるみたいだし。

 

 

事が起きたのは女子のレースの方だった。堀北がCクラスの奴と接触事故を起こしたようで互いに足にダメージを負った様子である。

 

 

「……アレかぁー、俺が仕掛けられそうになったのは。やっぱガン無視して正解だったな。」

 

 

「…お前と一緒に走ったCクラスの奴、最初のうちは威勢よくお前を呼んでたのに途中から弱弱しくお前を呼んでたな。完全に相手されてない感じでちょっと哀れだったぞ。」

 

 

「あんなの相手する方が間違いだろ。周到に計画していただろうから、堀北は嵌められるかもな。」

 

 

「ああ、おそらくそうなるだろうな。…逆転材料になる証拠はすでに握っているから、それを送って助ける予定だけどな。」

 

 

「えっ、なんで?」

 

 

「俺は今、学校生活って奴を楽しんでる最中なんだ。龍園の相手なんてしている暇はない。だから、俺以外の奴を黒幕だと思わせるために、匿名で証拠を送って攪乱させるつもりだ。」

 

 

「…お前を悪魔だって思ってたけど、魔王の間違いだったわ。」

 

 

いやまあ今は敵だからいいけど、Dクラスの奴を生贄にするのに躊躇が無いなあ…。堀北の様子にオロオロするDクラスを見つつ、綾小路に少し戦慄した。




もう少し進めるつもりがあまり進まなかったのを見るに、後1話か2話くらいかかるかもしれません。
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