クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

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妖怪ハンターという諸星大二郎先生の漫画が最初の巻だけ無料だったので読んだのですが、友人に「主人公がエルメロイ二世に似てる」と言われた影響で本当に似ていました。それが気になり過ぎて頭に内容が入ってこず、主人公が登場した直後に読むのを中断したのが私です。


1年D組クソボケ谷君35

ここ3日間ほどの森下の様子がおかしい。普段は近距離からじーっと見つめて何かを誘ってきたり、こっちが何かやろうとする事に連れて行けと言ってきていたんだが、今は遠くからじーっと見つめてくるだけである。後、なんか知らんけど目が据わっている気がする。こやつ相手だと結構分かりにくいので目を合わせてこっちからも見続けたが、なんかちょっと顔を赤くして横を向いた。何か言いたい事でもあるようだが、切り出せないと言った感じと見た。………今更怖気づくような奴でもないはずだが。

 

 

ちょっと前に原作者が「ゴミ」と評した原作崩壊映画を興味本位で見に行こうとしたら「私も興味が有るので連れてってください」って言って一緒に視聴した。実際の所詰まらなかったのだが、途中でこっちにもたれるように寝落ちして上映終了後を過ぎてもすやすや寝続けて起きなかった。仕方ないのでおんぶして帰る事になったが、途中で起きて「映画はどうでしたか?」と宣ってきた。森下らしい図太さだと思いつつ、詰まらなかったと伝えたら「そうでしたか、ではこのまま寮までお願いします」とタクシー代わりにされたのは忘れられそうにない。

 

 

俺にとっての森下は遠慮のない奴だし、それが嫌と思った事もない。しかしここ2日ほどこんな感じの様子で、3日目も様子がおかしいので放課後に俺から近付いた。どうしたのかと聞く前に「や、やんのかおらー…」と顔を赤くしてそっぽを向きながら弱弱しい声で言ってきた。本当にどうしたのだろうか。

 

 

「………大丈夫か?季節の変わり目で体調が崩れそうなら無理するなよ?」

 

 

「………いえ、元気モリモリですので心配は無用です。」

 

 

漸くちゃんとこっちを向いたが、まっすぐではなく上目遣いでこっちを見ている。…俺に言いたい事はあるけど言いにくい事で言い出せない、という感じでもじもじしていると思われる。無理やり聞き出そうとした嫌われて疎遠になる、というのは寂しいので無理に聞き出す気は無い。

 

 

「まあ何を悩んでるか分からんが、手伝ってほしい事がありそうなら言ってくれ。」

 

 

「…ん?今なんでもするって言いました?」

 

 

「言ってねえよ。」

 

 

「ケチですね、男の子ならそれくらい言い切ってください。」

 

 

このふてぶてしさを見せて来たあたり、俺の思い過ごしだったかもしれない。しかしこやつ、やはり俺にやって貰いたい事はあるようだ。それも並の事ではないようだ、割とマジ気味になんでもして欲しそうなトーンでケチって言ってきよったし。…まあ、こいつの事だからそのうち言ってくるだろう。

 

 

帰り支度の為に自分の席に戻ろうとすると手を掴まれた。急に掴まれたので内心ちょっとビビりつつ掴んできた森下の顔を見る。まだ行くなという事なのだろうか、ちょっと睨んできている。まだ教室には人がそれなりに残っていて、ガッツリ見られているので離してほしいんだが。

 

 

「………は……比企谷、どこかに出かけましょう。いいですね?」

 

 

「…いや、今日は帰るだけだからいいけどよ。自分でもよく分からない予定が入ってくる事もあるから、出来れば早い段階で言ってくれると助かるわ。」

 

 

「…どんな予定だったんですか?」

 

 

「結構でかいサイズの鰤を卸して刺身や切り身にする作業。」

 

 

「…貴方も変な事してますね。」

 

 

「緊急事態だ、すぐに来てくれ」と綾小路からメールが届いて何事かと思ったら、100㎝とかいう化け物級のサイズの鰤を取り寄せていやがった。今の綾小路は料理が出来ない訳でもないが、魚を卸す技術はまだ習得していないので俺にヘルプを求めて来た。流石に全部は食いきれないだろうからと、半分くらい持って帰ってくれと報酬代わりに貰ったが。むしろ数日掛かりとはいえ、半分食い切ったアイツに恐れ入る。「また今度頼む」って言ってきたあたり完全に味を占めてやがるとも。サイズがサイズなだけに、結構重労働だったんだけど。

 

 

「…んで、どこに行きたいんだ?」

 

 

「………行きたい所に行ってもいいですよ?」

 

 

「そこは決めとけよ。…甘い物でも食いに行くか。」

 

 

 

 

 

制服のまま店に行き、以前大食いチャレンジした店で一人前のパフェと温かいコーヒーを2つずつ頼んだ。教室でもじもじしてた森下を見て、何となく出会ったばかりの森下を思い出したせいかパフェを食べたくなった。前回は美味しかったとはいえ、全員苦しみながら食ってたし。食事は出来るだけ楽しみながら食いたい。

 

 

「ところで俺に何か言いたい事があるんじゃねえか?なんかそわそわし続けてるが。」

 

 

「…確かにありますが、そう簡単に言える訳ないじゃないですか。」

 

 

なんかちょっと切れ気味に言われた。こやつらしからぬ、とは感じるが俺が見た事のない一面なだけだろうな。長い事一緒に暮らしてきた小町の事ですら分かってない部分もあるのだ、知り合って3か月程度ではさらに分からないのも無理はないだろう。

 

 

「…まあ、俺に言いにくい事なら相談出来る奴に言う方がいいだろうな。」

 

 

「…相談に乗って貰った結果、とてつもなく厄介だと分かりました。こんなにも厄介な問題が私の人生に現れると思いませんでした。」

 

 

「…なるほどお前がそう言うんなら、一筋縄ではいかないんだろうな。」

 

 

「ええ、本当に。」

 

 

そう言い合いながら、コーヒーを互いに一口飲んだ。トンチキムーブは多いが、森下の知能は高い。謎解きをひよりと一緒にやってたら乱入してきて、真っ先に解に気付く回数が一番多かった。ペーパーシャッフルで俺より点数が上だったのを自信満々に言って勝利宣言をしてきたので、有栖の両肩に手を置いて「ペアの点数は俺たちの方が上だから」って言い返しておいた。「坂柳有栖を引き合いに出すのは卑怯でしょう」と言ってきたが、俺もそう思う。虎の威を借りる狐ムーブだったからな、有栖は嬉しそうにしてたけど。

 

 

しばらくして2人分のパフェが来たのでスプーンを手に取った。ソフトクリームの天辺を一口大に削って口に放り込んだ。死ぬほど食った時と同じ美味さだ、次からはこっちを頼むのが吉だろう。…だから期待するような目でこっちを見ないでください、店員さん。

 

 

「…やっぱこの店のパフェは美味いわ。…正直この店で懲りてるから、別の大食いチャレンジさせようとしたら全力で止めてたな。」

 

 

「ええ、あの挑戦は無謀でしたね。しきりに止めて来たから直前まで日和ったなと思っていましたが、実物を見て内心『やべー』って思いましたね。泣きながら食べる事も覚悟しましたが、『無理せんでいい』って言われた時は地獄に仏って思いました。知らないから良いとは言いましたが、知った後に再挑戦は無謀と知っているので行く気になれませんでした。」

 

 

「賢明だな。俺も一度は経験するのも良いだろうと乗ったが、二度は御免だし。」

 

 

らしさを取り戻してきた気のする森下と思い返す。アレがなかったらこやつとの付き合いはそれほどなかっただろうなとは思う。俺はあまり自分から行けるタイプではないし、森下が他の奴を誘っていたなら多分そいつと仲良くなっていただろう。

 

 

IFを想像して内心寂しがっていると、顔に出ていたのか森下が不思議そうな表情でこっちを見ていた。

 

 

「どうかしましたか、比企谷。何か悩んでいるようにも見えましたが。」

 

 

「あー、いや…」

 

 

「珍しく煮え切らないですね。男らしくスパッと言って下さい。」

 

 

「………この店の前でお前の誘いに乗らなかったら、多分お前さんは俺とは仲良くならずに他の奴と親しくなってたんだろうなって。そうなってたらなんとなく寂しい気がした、それだけだ。」

 

 

「………そういう恥ずかしい事を急に言わないでください。」

 

 

「えぇ…理不尽すぎねえか…?」

 

 

顔を赤くしながらプイっと顔を背けられてしまった。俺も恥ずかしい事を言った自覚はあるので、落ち着きを取り戻すためにパフェに取り掛かる事にした。




書こうと思った事を逐一メモしておかないと展開が想定してたものからコロコロと変わる、そう実感しました。
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