クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

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本編が私の中で逆転していたりします。


1年D組クソボケ谷君42

屋上での出来事の次の日の早朝に、久しぶりに思いっきり走る事にした。というより普段は授業があるので、体力を温存してないと頭に入ってこないから手を抜くしかないのだが。ジャージに着替えてから寮を出ると、見覚えのある先輩が立っていた。

 

 

「おはようございます、堀北先輩。相変わらず早いですね。」

 

 

「…待っていたぞ、比企谷。」

 

 

「…?待っていた、とは?」

 

 

「お前とは決着を付けてから卒業をしたい。体育祭の時は、お互い本気を出せる状況ではなかったからな。」

 

 

…この先輩も結構執念深いなあ。しかしまあ元々全力で駆け抜けるつもりだったし、昨日お世話になった事もあるので否は無い。

 

 

「いつも通り1時間走るつもりですが、それでもいいですか?」

 

 

「ああ、構わない。準備運動をしてから行くぞ。」

 

 

互いに全身をほぐすように準備運動を進める。実害があったわけではないが、ここんとこ負け通しなので頭をリセットしたい。その為の全力疾走の予定だったのだが、まさか堀北先輩が少しでも俺に拘っているとは予想していなかった。この人相手だとまた負けが重なるかもしれんが、それも勉強だと割り切る。

 

 

「………一時期噂になっていたが、南雲と引き分けたそうだな。」

 

 

「ん…ええ、明確に引き分けました。何か問題でもありましたか?」

 

 

「問題が起きたのではなく、問題が解決したが正しい。以前の奴とは全く違う男になったと言って良い。今の奴なら、生徒会長に相応しい立ち振る舞いが出来ると確信した。」

 

 

…そこまで言う程の変化があるのか、堀北先輩の中での南雲先輩の変遷には。

 

 

「アレを経験してしまったら、大抵の勝負はどうでもいいと感じてしまうと。学年が一つズレたけど誰よりも得難い経験をしたと、奇跡を体験したと言っていた。どのような勝負をしたのかと、再現性が無い事も聞いている。」

 

 

「今の所再現できる兆しは無いですね。勝利するだけなら難しい事でもないんですが。」

 

 

たまに綾小路に相手を頼んでみたが勝つだけに終わった。それはそれとして全勝なので、次元が違うとのお墨付きも貰ったが。勝負の結果から綾小路なりに気になったのか、俺の運を超能力の一種と捉えて、身に付け方や他の超能力も実在するのか調べまくってた。論文みたく資料完備で纏め上げて解説や解釈を発表してきたが、俺一人だけが聞くには勿体無いと感じる程度には興味深い歴史だった。なお、ほとんどインチキだったという夢の無い結論だった。

 

 

「南雲は俺との対決を望んでいたが、その際に不要な被害を周りに出させる。それを任期の間に矯正するつもりだった。」

 

 

「つもりだった、という事は…」

 

 

「ああ、俺には奴の危険性を直すことは出来なかった。お前や綾小路に生徒会に誘ったのも、南雲に対する抑止力を欲したためだ。」

 

 

まあ、帆波からの相談で調べたからなんとなく分かっていた。厄介だなと思いつつも、その時は帆波への被害は避けられたのでひとまず是としたが。

 

 

「力及ばず無念だ………と思っていたのだが、2学期のある日に南雲が妙に弱っていた。思えばあの日から、南雲の矛先が自分へと向いていなかった気がする。」

 

 

アイマムみたいなノリで藍の指示通りに山田と一緒に南雲先輩を巻き添えにした時のアレかあ…。あの時の先輩が得たものって、口から溢れてもおかしくない量の甘味だけだったもんなあ…。全員必死に堪えながら帰路に就いたのはよく覚えている。そりゃ俺に矛先向けるわ、帆波に関しての話を出来ないまま解散して、2日くらいぐったりしてたらしいし。

 

 

「ともあれ、南雲の晴れやかな顔を見て…柄にもなく羨ましくなった。対決する理由はそれに尽きる。」

 

 

「………では、そろそろ行きますか。」

 

 

「ああ。」

 

 

 

 

 

「休みが始まって早々に、何やってるんだか…。八幡くんって意外と後を考えずに行動する事が多いよね。」

 

 

1時間半後、寮で桔梗に膝枕をしてもらいながらぐったりしている俺の姿があった。シャワーを浴びた後、ソファでぐでーっと垂れるように横になろうとしたら桔梗が少し早く起きたようで、朝食を準備していた。手伝おうと思ったのだが、思いの外足が動いてくれなかったので諦めてソファに寝転んだ。ぐったりしている俺を見て心配そうに声を掛けてくれたが、全力疾走して疲れ果ててると伝えたら呆れた目に変わった。用意してくれた朝食を食べ終え寝転ぼうと思ったら、有無を言う前に桔梗に引っ張られて頭をふとももの上に乗せられて今に至る。呆れながらも柔らかさを持った声で言って来たあたり、桔梗の表情は悪いものではないのだろう。こちらからはあまりよく見えないが。

 

 

「どのみち思いっきり走る予定だったんだが、堀北先輩に勝負を挑まれてな。…互いにムキになって全然スピード落とさなかったから、先輩も今頃は自室で動けなくなってるだろうよ。」

 

 

「Dクラスだった頃のクールな八幡くんはどこに行っちゃったのかなってくらい、今の八幡くんは弾けてるよね。」

 

 

「馬鹿をやれる時にやっておこうという気持ちもあるからな。3学期は確実に、退学者を出す試験をやるだろうし。」

 

 

「退学者が出るだけの試験で済ませてくれるわけないだろうからね…。」

 

 

とにかく競わせたがる学校なので、おそらくクラス対抗戦が学年末あたりに待っているだろう。何をやるかまでは分からないが、学力だけで済ませてくれるほど易しくは無いと見ている。意外と個人の能力より、団結力を評価に入れている学校なので。

 

 

「まあ試験は来てから考えるとしてだ。俺は2学期を楽しんだ自覚がそれなりにもあるけど、桔梗はどうだった?」

 

 

「んー………楽しかったし、気が楽になったかな。不快な視線が目に見えて減ったからねっ。」

 

 

不躾だったからね、Dクラスの男子のほとんどが。Aクラスの男子がそういう目で見ないとは言い切れないが、それでもあそこまで露骨ではなかったし。今となっては懐かしくなったが、結構な頻度で目線がキモいという愚痴は聞いていた。というか愚痴そのものが大分減っているあたり、本当にストレスは減ったのだろう。アニマルセラピーならぬ有栖セラピーの効果もありそうだが。

 

 

「衣食住足りて礼節を知るって程じゃないんだけど、ちゃんとポイントが入ってくるっていいよね。ポイントが足りないとかそういう訳じゃないんだけど、正しい評価をされてるって気がするよね。」

 

 

「真面目にやってても0ポイントは、確かに否定されてる気はするよな…。」

 

 

ちなみにポイント日照りでもあったわけだから追加で要るか聞いたら、「タカるために付き合い始めたみたいでヤダ、安い女に見られる」と言われた。足りなかったら言ってくれとは伝えたが、催促は一切無い。当たり前っちゃ当たり前だが、毎月10万ポイント以上入って来て自由に使えるのなら困る訳がなかった。桔梗は船で優待者だったから、その時の100万ポイントもあるし。

 

 

「それに、地道に好感度を稼ぎに通ってたから受け入れられるのもすぐだったしね。」

 

 

「元からAクラスだったってくらい馴染むの早かったもんなあ…。『櫛田さんのクラス分けがようやく正しくなった』は一種の名言だと思ったわ。」

 

 

「…今はもう、そんなに気にしてないけど。堀北さんより先んじてAクラスになったのは最高だと思ったよ。喜びを隠さなくてもよかったのは幸いだったね。」

 

 

「最近になってようやく大人しくなったもんな、お前さんの堀北アレルギーは。…悪い、助かったわ。ここだと邪魔になるから別のソファで寝てくる。眠気が一気に来た。」

 

 

壁際に設置した、休憩するだけのためのソファへ移動をする。足がまだプルプルするのでゆっくり歩いていたら、桔梗がソファまで行くのを手伝ってくれた。礼を言って、そのままソファに寝転んでると桔梗がソファを広げて一緒に横になってきた。何か言おうとしたが、眠気がMAXになっていたので「おやすみ」とだけ伝えて、そのまま夢の世界へと旅立った。




堀北先輩は引き分けに終わった事はちょっと残念でしたが、久しぶりに何も考えず思いっきりやれた事に関しては満足しました。部屋に戻った直後に足プル状態にもなりましたが。
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