クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

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昨日書ききれなかったのと、なんか伸びてて「えっ、怖…」と思ったので1日見送りました。ひっそりやるくらいが私にはちょうどいいですね。


1年D組クソボケ谷君44

起きた時、妙に体が重かった。無茶したせいで疲労が爆発したのかと思ったが、左右には桔梗と真澄が腕に抱き着いている。そして、毛布がこんもりしているので誰かが乗っかっているのがすぐに分かった。この学校に来る前の小町を思い出す行動だ。

 

 

最後は俺を送り出してくれたが、実を言うと小町からはこの学校に進学するのを反対された。「総武でいいじゃん」とか「お兄ちゃんならどこでだってやってけるよ」と言われたが、普段なら折れる俺が折れないのを見て覆す気が無いのを悟った結果、思いっきり泣かれてしまった。その日からしばらくギクシャクしたが、なんとか小町なりに納得してくれた。だが冬になって卒業が近づいてきた頃に、こういう風に布団に潜り込んでくる事が頻繁に有った。というかほぼ毎日だった。

 

 

これ以上小町の事を思い出すと俺も寂しさが増すのでひとまず頭の片隅に置いとくとして、結局の所誰が入り込んできたのか確認したい。だが両腕が塞がっているので捲れそうにない。なので、今の状態から推理をしてみる。

 

 

まず、重さから察するに有栖ではないだろう。あやつはもっと軽いし、食が太くなったとかそういう事もない。運動が出来ない関係上難しいのだろうが、もう少し肉付きを良くしても良いと思う。次に、抱き着かれている感触から、帆波も除外されるだろう。………なんていうか、お胸のサイズが違う。残ってるのはひよりと藍になるが…。

 

 

「………藍か。」

 

 

「………違いますよ、八幡くん。私はプリティーな藍ちゃんじゃありませんよ。」

 

 

「いや、無理があるわ。プリティーなのは認めるけど似てねえよ。」

 

 

ひよりっぽい感じの話し方で言って来たけど、声色を似せようとしてる割に全然似ていない。というか本人もバレるの不可避なの分かってるからか、まあまあ雑なモノマネだったぞ。完全にふざけてたし。

 

 

「…よく私だと分かりましたね。」

 

 

「ひよりは同じ事をやらないとは言わんが、顔の乗せ方が違う。顎を乗っける感じじゃなくて、頬を当てるようにするだろうな。」

 

 

「一之瀬帆波の可能性もありましたのに。」

 

 

「………言っちゃ悪いが、藍と帆波じゃ胸部装甲の差が………。」

 

 

「………くそぅ。」

 

 

むしろこの学校でアレに勝てる女子が居るのかも怪しいが。我らがボスが戦力差に対して、底冷えするような目をしているのをちょいちょい見ている。顔を伏せながら「帆波さんは味方、帆波さんは味方…」とぼそぼそ呟く姿はかなり怖かった。それに比べたら悔しそうに毛布からもそもそと顔を出して、俺の頬を引っ張る藍はまだ可愛い方かもしれない。顔を引っ張られて目も覚めたので、狸寝入りしてる2人に声を掛けて腕を解放してもらった。起きてる事に気付いていなかった藍は目を丸くしているが、その隙にガッチリホールドしてから回転し、互いの上下を入れ替えた。

 

 

「えっ、ちょっ、心の準備が」

 

 

「…嫌ならやめるが、どうする?」

 

 

「………嫌じゃないでしゅ…。」

 

 

顔を真っ赤にしながら目をキュッと瞑っている藍の唇を頂く。数秒程度の触れ合うキスだったが、ボーっとしたままで顔の赤さが全く引いてない。しばらく様子を見ていたが、全然動かない。

 

 

「…大丈夫か?」

 

 

「………私なりに幸せを噛み締めてるだけなので、大丈夫です。…それで、続きは?」

 

 

続きを催促してきたあたり、お気に召したようだ。俺としても続きをしたい気持ちもあるし、どこか期待している目に応えてやりたいとは思うが、ひとまずソファから立ち上がる。

 

 

「朝だからな、これくらいにしておこう。っていうかガン見されてたけど大丈夫か?」

 

 

俺の言葉でようやく現状を把握できたようで、毛布をがっつり被った。そのままころころ回ってロールキャベツくらい毛布に包まった藍を見て、3人で顔を見合わせてから苦笑いをした。正真正銘キャパオーバーのようで、「うぁー」と小さい声で聞こえて来たのでしばらくそっとしておく事にした。

 

 

 

 

 

昼からは何をするでもなく、ソファに座ってテレビをぼんやり眺めている。ニュースでくだらねー事して教師が逮捕されたとかイルミネーションが凄いとか言っている。それを右から左へと流しつつ、昨日の龍園について考え始めた。

 

 

この学校に来てからの特別試験でも、ペーパーシャッフルまでCクラスは敗北していないと言っていい。そう考えると、ペーパーシャッフルをきっかけに黒幕排除に動いたのも納得出来る。龍園目線で今後の事を考えると目障りが過ぎるし、負けが込むとCクラスでの影響力が無くなっていく。力ずくで従えている弊害とも言えるのだが、ヤンチャな奴ばかりなのと龍園の成功体験からの最適解でもある。俺もDクラスに居たから、纏まりの無さに対する苦労は見て来た。実際に苦労したのは桔梗や平田だったが。

 

 

龍園は上手く………いや、俺がなんか勝手に呼び出したみたいにはなったが。とにかく理想の展開に持っていけたと、戦うまで思っていただろう。本来であればもっと人数を揃えてタコ殴りする方が良い相手だが、大事になるから無理だろう。…というかもっと人数が居たとしても、あの時の綾小路を見たせいか止められる気がまるでしない。知能が高くて腕っぷしも強いとか、アイツはテロリスト育成塾にでも通ってたのかな?心まで圧し折る手段も備えてたし。

 

 

自ら吹っ掛けた喧嘩に惨敗して心まで折られたら、普通は再起不能だろう。龍園の事だから退学も視野に入れるのは共通見解だった。だが、どうやら綾小路は先に手を打って退学を撤回させると言っていた。寿司を口に入れながら「ここから成長した龍園を見てみたい」とも。改めて思ったけど、やっぱり大魔王だよ、アイツ。

 

 

龍園生き残るんだろうなあ、これから先も苦労するんだろうなあと思いながらも、ふと気になった事がある。龍園の中での俺の評価がどうなっているのか。綾小路を侮っていたのは、全容がはっきりしていなかったからまあ分かる。だが、屋上で寝落ちしているような奴相手にするような目じゃなかった。侮るとか舐めるとかではなく、明確に犯人だというのに証拠不十分で不起訴にするしかない相手を見る刑事の目くらい鋭かった。微塵も油断を感じられなかったせいで、俺も速攻で諦めたくらいには。

 

 

邪魔をするのも悪いが、隣に座って本を読んでいるひよりに聞いてみるか。

 

 

「ひより、楽しんでいる所悪いんだが。少し聞きたい事が有るんだが、いいか?」

 

 

「…?はい、なんでしょうか?」

 

 

「分かる範囲でいいんだが、龍園の中での俺のイメージってどうだったんだ?昨日の醜態を見た後ですら、目の鋭さが変わらなかったんだけど。」

 

 

「少なくとも、下に見ていたという事は無かったですね。八幡くんがどのような方かも聞かれたのですが、特別な事をしているわけでもないと聞いてましたのでそのまま答えました。坂上先生からもお聞きになったようですが、帰ってきた答えは同じだったようでかえって不気味だと言ってました。…そういえば、初めて龍園くんと八幡くんが顔を合わせた後、篭絡するようにとも言われましたね。八幡くんを引き入れたかったんだと思います。」

 

 

「篭絡かあ………。ひよりだと大半の奴に成功しそうで怖いな。」

 

 

「…私なりに頑張ったつもりでしたけど、八幡くんには通用しませんでした。冷静に対処されちゃったって感じですっ。」

 

 

拗ねたようにひよりは言ってくるが、実の所大分通用してた。好意を抱いている相手に抱き着かれても、理性を保った俺は褒められてもいいだろう。ちなみに、裁判の準備期間中に抱き着かれた時は寝返ってもいいかもしれないとちょっと思った。須藤とひよりを天秤にかける場合、須藤側の皿が砕け散る。乗せる価値無しだ。

 

 

だが、今はちゃんとお付き合いをしている身だから俺から行っても問題ないだろう。色々考えたのと朝の全力疾走の疲れの残りで眠くなってきたし、ゆっくり押し倒すようにひよりに抱き着いた。

 

 

「…とっくの昔に篭絡されてるようなもんだったからな。責任取って抱き枕になってくれ。」

 

 

「…そうやって耳元で囁くのは反則ですよ。なんでも許してあげる気になっちゃいます…。」

 

 

龍園の俺への評価はひとまず置いておく、どのみち復活してくる厄介な奴だし。おやすみと伝えて、ひよりを抱き締めたまま夢の世界へと旅立った。




この作品の八幡君も理性は強い方です。なんならそういう事をするためのスイッチを内包しています。なのでやる時はやる、やらない時はやらないとはっきりしてます。
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