クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

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月初から7日間がいろいろ手を出してるせいで目を回してます。


1年D組クソボケ谷君45

「正直言うと再会した時に『その程度ですか、比企谷くん。まだまだですねえ。』くらいは言われるかもしれんと思ってた。」

 

 

「…八幡くんの中で、私のイメージはどうなってるんですかね?本当にそんな事を言うのであれば、とんでもない鬼畜になるんですけど。」

 

 

24日の朝出かけるまでに時間がまだあるので雑談をしていたが、今更ながら当初思っていた事をぶちまけた。横に座っている有栖は、本人の可憐さに比例して凶悪さを内包していると思っていた。しかし葛城や鬼頭に話を聞いてみると、当初から結構面倒見が良いと言っていた。勉強で詰まってる所を聞きに行けば分かりやすく解説しているのはよく見るし、この学校の授業でやらない科目すら教えられるそうだ。というか4月の時点で調べたらしく、「科目、足りませんね」と言って俺とは違うベクトルでクラスを凍り付かせたらしい。その情報を聞いた時に「大丈夫か、この学校は」と言ったら、紅茶を飲みながら「全然大丈夫じゃないですね、この学校は」と返されている。辛辣すぎない?君の親父さんの学校だよ?

 

 

「手伝った俺が言うのもなんだが、俺らが小さかった頃のお前さんは苛烈極まりない事をしたからな。100%お前に仕掛けた奴が悪いからやり過ぎとは微塵も思っていないが、容赦ねえとは今でも思うわ。」

 

 

「まだ優しい方ですよ、転校程度で済んでるんですから。転校すらままならない程のダメージを与えて差し上げてもよろしかったのです。………本来はその予定でしたが、時を共にした男の子から『カッコいい』と言われましたので、彼好みの終わらせ方にしてあげただけです。」

 

 

思い出を慈しむかのような目をしている。当時の俺は別に出来の良い子という訳でもなかったので率直に思った事を言っただけなのだが、有栖にはそれなりに刺さっていたようだ。

 

 

「…その時の男の子と再会したら、くたびれた目をしていて驚きましたけどね。何かとんでもない不幸に見舞われたのか、それともいじめに遭ってしまったのかと本当に心配しましたよ。事情を心して聞いたら呑気な言葉が返ってきて気が抜けましたが。」

 

 

「その日ごとの限界まで努力してたけど、俺の中のイマジナリー有栖ちゃんが詰まらなさそうな目で見てきてたからやり続けるしかなかったんだよ。何回か『俺、死んだ』って思ったわ。」

 

 

「ド鬼畜じゃないですか、貴方の中の幼少期の私。」

 

 

素直な子供のイメージだったからね。子供ほどちょいワルみたいなものに憧れを持ちやすいと言うが、俺もそうだった。親父にも相談した結果、それほどの子を目標とするなら人並どころでない努力をするしかないと言われた。ちなみにその要因となった大事件については特にお咎めの言葉も無く、「最近の小学生って凄いんだな」と、両親揃ってそんな感じの反応で大分呑気してたのはよく覚えている。

 

 

『…?怒らないの?』

 

 

『んー、そうだな。件の子たちは軽い気持ちでいじめてたんだろうけど、やられた子からしてみれば怒るのは当たり前だ。しかも体の弱い子だったんだろう、いじめが原因でさらに体が弱くなったかもしれないと考えたら反撃するしかない。どちらかと言えばいじめに加担せず、その子に優しく出来た八幡は偉いぞ。』

 

 

と言われながら頭を撫でられて、妙に照れ臭かったのもよく覚えている。

 

 

「そもそも八幡くんは成長し過ぎなんですよ。帆波さんから八幡くんもこの学校に入学したと聞いた時に、それなりに成長している姿を見るのを楽しみにしていたら、想像以上の怪物に育っていた時の私の気持ち、分かります?」

 

 

「それは分からんかな。」

 

 

「情緒を無視して綾小路くんと引き合わせて勝負を勧めたり、退学を無視する振る舞いをされたりと、随分やんちゃになられたとも思いましたねえ。」

 

 

「理由を付けて戦うのを延期するのはダサい、という俺の押し付けを優先したのは謝る。でも後者は俺が悪いわけじゃないだろう。正直、未だにあの人が何を考えてるのか分からなくて怖いんだよ。」

 

 

食い気が先行してる気がするからその手の事に興味あるのかと聞いた事はあるが、そのうち彼女は欲しいと言っていた。それを考慮に入れるなら、まだ色気で惑わせた方が目が有ったろうに。仮に俺が居なかった場合の綾小路の挙動は気になるが、確実にどこかで破綻する脅迫だったのは先日判明している訳だし。

 

 

「そのおかげで八幡くんが私の元に来てくれたのは僥倖でしたねえ。貴方を相手にするのも悪くはないのですが、横に居てくださる事には比べようも無いですから。」

 

 

「…おう。…あー、まあ、やってほしい事があれば遠慮なく言ってくれ。」

 

 

「貴方が禁じ手にしている事でも、ですか?」

 

 

「以前の苛烈さのままならともかく、今の有栖なら必要な時にしか求めないだろう。…そう言う事とは関係無しに、力になってやりたいとも思ってる。」

 

 

当初は有栖と再会する事があるならと頑張り続けて来た分の力で、有栖を支えていくつもりだった。だが俺が想定していた以上に、有栖は心が強え奴になった。「今は私の方が弱い、それだけです。むしろ、まだまだ登れると思えば遣り甲斐しかないですよ」とは、綾小路に敗れた後の有栖の言である。9月に入ってから教室でちょくちょく指しているが、ほぼ5分まで持っていったので綾小路も珍しく驚いていた、気がする。そんな子に対して出し惜しみするのはナマ言ってすみませんでした案件にしかならない。

 

 

「ふふふっ、そうですか。ではカッコ悪くならないように、ここぞと言う時には遠慮なく頼らせて頂きますね?私も八幡くんのカッコいい所は見たいですから。」

 

 

「…おう。まあAクラスには他にも頼りになる奴らが居るから、俺の出る幕は無いかもしれんけどな。」

 

 

「秘密兵器が秘密のまま終わるのも悪くはないでしょうが、以前八幡くんがおっしゃってたようにクラス間での差はそれほど無いですからねえ。それに、特別試験はこちらの味方をしてくれるわけでもないですから。大舞台で力を借りると確信していますよ。」

 

 

「…やっぱり、総力戦みたいな試験が来ると思うか?」

 

 

「抜け道は用意されていたとはいえ、力を合わせて乗り越える試験ばかりでしたからね。ペーパーシャッフルのように、生徒が何をやるかを決める特別試験が来るかもしれませんよ。」

 

 

「お前さんが言うと本当に来そうだな…。そんでそれが学年末試験だとすれば…」

 

 

「ポイントで回避しない限り、退学者が確実に出るでしょうね。」

 

 

無情な言葉だが、同感である。だからこそ檄を入れるつもりで悪態をついたというのもある。場合によっては、Aクラスで卒業をするために味方を蹴落とす試験すらあるかもしれないのだ。しかも試験外でのルール無用の残虐ファイトすら許容する学校だ、独り身で学費無料じゃなかったらとっくに退学手続きしてるわ。

 

 

「そういえば八幡くんの進学理由は聞いてますが、卒業する時に希望する進路は決まっているのですか?」

 

 

「あー、一応だが地元の国立大を受けるつもりだ。その前に親御さんたちによる正当な暴力で死ぬかもしれないが。」

 

 

「…そういえばその問題もありましたね、真澄さん以外は。」

 

 

自分ですら擁護出来ないので、仕方が無いと割り切ってるつもりだ。ちなみに、真澄はどうあっても俺の所に転がり込むと宣言しているし、俺も受け入れると返している。むしろ食事事情が一気に落ちぶれるくらいには、真澄の飯に依存している。真澄に限らず、他の子たちも料理上手なのでロスったら死ぬほど凹む自信が有る。

 

 

「後はまあ、大学へは行かずに投資家になって細々とやって行きたいくらいかなあ。」

 

 

「………八幡くんが細々とやれるんですかねえ。」

 

 

「薄々だが、俺もちょっと無理かなって思ってるわ。」

 

 

根拠の無い自信だが、どちらかと言えば爆発的に勝ってしまう気はしている。賭け事に関しては、生涯まともな勝負が出来る気が全然しねえ。

 

 

「………まあ、不自由なく生活させられる能力があるって事でもあるから…。」

 

 

「現状がまさにそうですからね。『金銭感覚が狂うから、いい加減やめなさい』と桔梗さんに怒られて、しょんぼりしてた八幡くんは可愛らしかったですよ?」

 

 

「正論過ぎて何も言えなくなったからな…。」

 

 

桔梗も弾けたが、肝っ玉母さんみたいな貫禄すらちょっと感じる。うちでのヒエラルキーの2トップだろう。Aクラスに来てからの桔梗の様子から、何気なく「お前が居てくれて心底良かったと思うわ」と伝えたらガッチリホールドされ続けたくらいには、ちょっとチョロい気もするが。その時はしばらく桔梗の好きにさせた。

 

 

出かけるまでの間、こんな感じで有栖と雑談を続けた。雑談の無いように暗い話がほぼなかったあたり、なんだかんだ上手い事やれてきたんだなと改めて実感した。




この作品の有栖ちゃんはすでに敗北を知っているので、ちゃんと成長をしています。それはそれとして、八幡君に情けない所を見られたくないという理由も強いですが。
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