「毎年の事なんだが、クリスマスプレゼントって何を渡せばいいのか分からんわ。」
「んー……気持ちが籠っていればいいんじゃないかなー?」
「小町に気持ちを込めて『これで好きなものを買え』って言いながらワイルドカード樋口一葉を渡したら、完全に呆れられたな。」
「まさかの現金かー…。嬉しいかもしれないけど情緒が全く無いにゃー。」
「確かに趣はないですね。ですが、確実に役に立つものをプレゼントするのは八幡くんらしくもありますね。」
「ねー」と言いながらお出かけについてきた帆波とひよりの意見は一致している。「現ナマに勝るプレゼントは無い、貰っても困る事は殆ど無いからな」って親父も言ってたのでそれに倣ったんだが。ちなみに親父はワイルドカード福沢諭吉を出して、やはり小町に呆れられていた。俺のあげた樋口さんを出しながら「やっぱり親子なんだねー」と笑ってもいたが。
「でも気に入らないプレゼントの場合、質屋へGOするのが普通なんだろう?なら最初から金のほうが手間が省けて良くないか?」
「………八幡くんは女性の事を何だと思ってるのかな?」
「こないだ綾小路と話をした時に調べたら、そういう実例が意外と多かったから………。」
「流石に極端だと思うのですが…。自分で言うとちょっと恥ずかしいのですが、私たちがそういう事をするのは想像が出来ないですね…。」
「ひよりたちがそういう事をする場合、切迫した理由があるか、とんでもなく駄目なものを送られた時くらいだろう。勝手なイメージで悪いが、君らがお金欲しさでやったとしたらこの世の終わりだよ。」
俺の言葉に帆波は若干苦笑いをしている。過去をちょっぴり思い出したのだろうが、もう終わった事と帆波も割り切っているから今更気にしない。今朝の目が覚めた直後に見た帆波の顔は、緩みまくっていたからストレスとかも大丈夫そうだし。
それはそれとして、一つ気になってる事を聞いてみる。
「ところで帆波さんとひよりさんや。なんでガッチリ腕にしがみ付いてるの?」
「駄目って言ったのに眼鏡つけてるからかにゃー。さっきから結構見られてるんだけど、気付いてる?」
「嫉妬の目線ならひしひしと感じてるぞ。帆波とひよりに抱き着かれてたら、俺も同じような目になるだろうから理解も納得も出来る。………それじゃないのか?」
「…本当に全然気付いてないんですね。先ほどから何度も女性から見られていますよ。」
…自分で言うのも何だが、俺は別に女性受けが良いタイプではない。というか6股やってる時点で良い訳が無い。なんかAクラスの女子からは結構受け入れられてるけど。葛城や鬼頭など一部を除いた男子からの視線は嫉妬と畏怖を感じているが。しかし眼鏡一つでそんなに変わるものなのかという疑問はやはり大きく残っている。
「…すまんが、寄りたい所があるから行ってもいいか?」
そう聞いて、2人が頷いたのを見てから目的地へと向かった。俺でも変化が見られるのなら帆波やひよりならさらに効果があるのでは…という建前の元、眼鏡ショップへとやって来た。ぶっちゃけると俺がこの子たちの眼鏡をかけてる状態を見たいだけである。2人に腕を離して貰い、丸みのある黒縁眼鏡を手に取ってサイズを確認する。問題なさそうだったので、少し不思議そうにしているひよりに掛けてみた。
「……………やべ、超可愛い。」
「…本当ですか?」
「あ、うん。可愛すぎて心底びっくりした。」
天使が可愛くなりすぎて、思った事をそのまま口に出していた。メガネスキーという訳でもないのだが、どれほどの効果をもたらすのかが俺も分かってきた。嬉しそうな顔をしてるひよりの頭を撫でたい衝動を抑えつつ、帆波にも掛けるべく細めのメタルフレームの眼鏡を確認する。サイズ感良し見た目もまあ悪くないと判断し、どこか期待した目の帆波に掛けた。
「…どう、かな?」
「……………微笑みが可愛いし綺麗だしで全然心が落ち着かねえ。自分がそれに当てはまるかどうかに疑問は残るが、何を危惧してるのかは理解出来た。」
少なくとも無暗にやきもきさせる事は慎んだ方が良いという事は分かった。眼鏡をかけたまま喜び合ってる2人を見て、アクセサリーの効力を大分実感した。眼鏡2つ分のポイントが減ったくらいには。
皆へのクリスマスプレゼントは、有って困る事のなさそうという事でマフラーにした。ちなみに後日、眼鏡を4つ購入する事にもなった。マフラーを買い終えた後に家電量販店へ向かい、元の自分の部屋に置いても良いなとマッサージチェアを眺めている。
自分の部屋をどれくらい弄っていいのかを少し前に真嶋先生へ質問を投げかけたのだが、なんと何から何まで弄ってもいいらしい。普通はポイントの事を考えると弄りようがないから、特にそういう校則が無いだけだったようだが。ちょっとした秘密基地気分で使うかと思い綾小路に声を掛けた結果、本を読むのに快適なスペースで意見が一致したのでベッドや勉強机を取っ払い、本棚がずらりと並んでいる。それと、1人用のソファと本と飲み物を置くのにちょうどいい机を5セットほど用意した。元々は2セットだけだったのだが、綾小路以外にも使わせてみたら意外と好評だったのでどんどん増えた経緯がある。それ以上は部屋を変えるしかないので断念したが。
隅っこのほうならギリギリマッサージチェアも入れられるかもしれないと見に来たが、今回は1人じゃないので種類を見るだけで終わるだろう。即決で買うようなものでもないし。さらっと見終えた後、他の家電を見に行ったら綾小路がホームベーカリーらしきものを見ていた。目線に気付いたようでこちらを向いて、そのまま手招きされたので近づいた。
「比企谷、こいつを見てくれ。どう思う?」
「…ホームベーカリーじゃなくて餅つき機か。」
「ああ、正月に色々と試すのも悪くないと思ってな。七輪と炭は検討中だ。」
「綾小路くん、ホームベーカリーでもお餅は作れると思うんだけど…。」
「一之瀬、男子高校生の胃袋はあれくらいの量じゃ満足出来ないよ。少なくとも俺は腹一杯になるくらい食べたい。」
…未だによく分からない所のある奴だが、食いしん坊キャラが俺の中で確立されつつある。俺も食う方だから気持ちはよく分かるが。
「悪くないとは思うが、餅だけのために買うのは躊躇する代物だな。角餅じゃ駄目だったのか?」
「あれはあれで美味しかったが、やはりつきたての餅を堪能してみたい。それに、うどんやパスタも作れるみたいだから、そっちも試すつもりだ。という事で、今年のクリスマスプレゼントはこれで頼む。」
「…いやまあ、お前が良いなら良いけども。」
今年って言ってるあたり、来年も貰う気マンマンである。ポイントが余りに余ってるとかいう奇妙な状態が継続されてるから構わないが、コイツの中で退学する可能性はほぼ無いらしい。渡したポイントで買わないのは多分、なんとなくこいつが抱えている問題のために温存しているかってとこだろう。あるいは、ポイントを持っていることを悟られないためにか。
「………杵と臼ポチって一緒に餅つきしてくれって言われるよか建設的か。俺もお相伴に与るだろうし。」
「ああ、構わない。…ところで、どうして一之瀬と椎名は眼鏡を掛けているんだ?」
「死ぬほど可愛いから付けて貰ってる。後はなんとなく周りに自慢したくなったから…。」
「…お前って、たまに物凄く馬鹿になるよな。」
「今回はバッチリ自覚があるわ。」
自分でも信じられないくらい刺さったからね。尊死という言葉を理解したくらいには。呆れられつつもこの後餅つき機を購入して綾小路にプレゼントし、一度寮に戻ってから自分たちの部屋に戻っていった。
私自身もメガネスキーという訳ではないですが、この2人がしてたらヤバいかなと思いながら書いていました。