クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

9 / 104
確実に原作の雰囲気をぶち壊してる自覚はあります。


椎名ひよりは動く

椎名ひよりは決意した。一番の友達との距離をもっともっと詰めようと。

 

 

この学校で一番時を共にしているのは間違いなく自分だが、話に聞いていた件の彼女達の距離がとても近いのだ。その縁で私も交流はあるのだが、私と同じくらい比企谷くんの事が好きだと、彼女たちの雰囲気や態度で分かった。それに危機感を覚えたのだ。

 

 

気づいたら私を含め、全員が比企谷くんの部屋の合鍵を貰っていた。彼はなんだかんだ優しいのだ、そこが良い。良いけど女誑しだと思う。

 

 

 

 

 

「比企谷くん、ちょっとよろしいでしょうか?」

 

 

「…ん?どうした、椎名?」

 

 

図書館で本を読んでる時、不意に椎名が聞いてきた。

 

 

「今度の日曜日、お時間はありますか?」

 

 

「いや、今の所予定はないが…。」

 

 

「では、一緒にデートに出かけましょう!」

 

 

何やら聞き慣れない単語に、まともな返事が出来なかった。出かけましょう、と言った時点で確実に押し切るつもりなのは理解した。意外と押しが強い時は今までもあったから。そうして戸惑っていると、椎名は鞄から冊子を一つ出してページを開いた。

 

 

「比企谷くんと、このシーンの行動をなぞってみたいんです…。」

 

 

……思った以上にハードルの高い事を要求されたな。しかし期待の詰まった椎名の上目遣いを落胆させるのは憚られる。…しかし……え、俺こんな陽キャリア充みたいなことをやるの?

 

 

 

 

 

30分前に待ち合わせ場所へ到着したが、程無くして椎名が来た。私服センスがイマイチの自覚がある俺は制服だが、彼女は白と水色の明るい私服で訪れた。とてもよく似合っている。

 

 

「すみません、お待たせしましたか?」

 

 

「いや、今来たばかりだから待ってない…。」

 

 

「そうですか、よかったです!」

 

 

なんとなく椎名が早く来そうだなと思ったので早めに来たが正解だった。…しかしまあ、普段以上のほんわかな笑顔に少しばかり顔が熱くなるのを感じる。出会った時からこの子の笑顔には癒され続けているのだ。

 

 

「…あー、あのー…。」

 

 

「…?」

 

 

「…私服、可愛いな。とてもよく似合ってる…。」

 

 

「…!はい!ありがとうございます!」

 

 

…半端じゃなく恥ずかしい!何だかんだ普段椎名には世話になってる自覚があるからやっているが、イケメンは軽々とこんなこと出来るのか!?生物としてのランクが違い過ぎるだろ!

 

 

「では八幡くん、まずは映画を見に行きましょう!」

 

 

「…おう。…って名前?」

 

 

「ふふっ。デート記念です!私も名前で呼んでください!」

 

 

「…ひ、ひより。」

 

 

「はい!」

 

 

…まあいいか、ひよりは喜んでるし。(思考停止)

 

 

 

 

 

 

手を繋ぎながら映画館へ向かい、ミステリー小説が原作の映画を選択した。「無理して恋愛ものを見るより、後で感想を言い合いやすい映画にしないか?」という俺からの提案に乗ってもらった形だ。ちらっと見たひよりの横顔は真剣そうで、少し新鮮味があった。

 

 

映画を見終わった後すぐそばにあるカフェに入り、昼飯を食べてから映画の感想を言い合った。

 

 

「……面白かったけど、結構トリックが無茶苦茶だったな?」

 

 

「……そうですね、実際に行えるのか、ちょっと怪しいって感じでしたね。」

 

 

「役者さんの演技や、作中の雰囲気はよかったけどなんでああなったのか…。」

 

 

「…不思議ですね。」

 

 

本屋に向かって原作を買う事になった。無茶苦茶すぎて逆に気になったってやつだ。

 

 

 

 

予定にはなかったが、そのまま映画の原作小説を一緒に読む事にした。「良い場所があるんです」とひよりに連れられて、他に誰もいない風通しの場所で。

 

 

「やっぱり、気になっちゃいましたね。」

 

 

「ああ、流石にあれを見た後だとな…。」

 

 

そうしていつも通りひよりは俺の方に頭を乗せて一緒に本を…って近ぇ!

 

 

「ひ、ひより?」

 

 

「…早く読みましょう?」

 

 

…顔真っ赤だぞ、と指摘するのは無作法だと件の恋愛小説にも書かれていたせいで指摘が出来ない。なんとなく彼女がやろうとしていることは俺でも分かるが、策士が過ぎやしないか?拒否が絶妙に出来ない。

 

 

 

 

 

八幡くんは私の事を友達と言ってくれるけども。あの日、私にとってこの世で一番特別な本を差し出された時。そして途切れるであろう縁が続くと分かった時に、すでに八幡くんへの感情は爆発的に膨れ上がっている。

 

 

最初は難しい顔をして本を読んでる不思議な方だなと。その縁から話すようになり、受験勉強の合間に本の感想を語り合うのは心から楽しかった。時間を使わせるのを申し訳ないと思いつつも、同じ時を過ごせるのが嬉しい自分は悪い子だと思った。

 

 

中々自覚しなかったけど、おそらくその時から私は、八幡くんが大好きでたまらなかったのだろう。

 

 

 

 

 

 

周りが少し暗くなり始めたので一区切りついた段階で読むのを中断して、そろそろ寮に戻ることになった。予習や復習を済ませなきゃ退学が近づく、というデスゲームみたいな話が冗談にならない学校だからだ。もっと緩い所だと想定していたんですがね?

 

 

「八幡くん、今日は本当にありがとうございました!」

 

 

「……いや、俺も楽しめたと思うから…。」

 

 

何とか役を果たせたと思いたい。ひよりも不満そうな顔は多分していなかったので。

 

 

「…あの、八幡くん。」

 

 

「…ん?」

 

 

「…また、お誘いしても…いいですか…?」

 

 

「……おう。」

 

 

気の利いた事は言えないが、ひよりの顔が嬉しそうだったからよしとする。

 

 

 

 

 

 

なおこの出来事がどこからか広まったらしく、後日3回のデートの予定が入った。そろそろ女子からの「アイツマジか」って目に慣れてきちゃったよ。




かつての坂柳有栖の姿から、結構前向き谷君だったりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。