クソボケ谷八幡君 in よう実   作:結構暇なひと

97 / 104
ボケっとしてたら大分時間が過ぎてました、ちょっぴり反省してます。


1年D組クソボケ谷君55

「比企谷ボーイ、野暮用が出来たから失礼させて貰うよ?」

 

 

「………飯までには戻って来いよ?」

 

 

「フッフッフ、分かっているとも。」

 

 

試験当日に行う駅伝のコース確認中に出来る野暮用って何だと思いながらも、高円寺に許可を出した。許可を出さんでも行くような男である、言って来ただけマシと言えよう。結構なスピードで崖まで移動した後少し立ち止まり、少し辺りを見回した後そのまま飛び降りていった。

 

 

「………野暮用とやらへの最短距離なんだろうけど躊躇なさすぎだろアイツ、ターザンか何かか?…まあいいや、コース確認を進めるぞ。」

 

 

「いやいやいや、少しは止めろよ!?」

 

 

「高円寺を制御できる訳ねえんだから引き留めようとするだけ時間と体力の無駄だぞ、石崎。奴は自分という絶対のルールを持ち合わせて動いているからな。それはそれとしてちょっと気になる事もある、とりあえず歩きながら話す。」

 

 

何か言いたそうな顔をしながらもひとまず同意はしてくれた、龍園が俺を侮っていない事と飯の準備をしなくてもよくなった事が効いているのだろう。兎も角出発して、道を覚えながら野暮用とやらについて考えてみたが明らかに見定めてから動いていたので目標は有るのだろう。こんな所でわざわざ人と会うって事は無いだろうし、そもそも他人に対する興味が薄い奴だ。そう考えると相手は動物になるだろう。

 

 

「…あー、熊は流石にアイツでも行かないだろうから…猪あたりか。っていうかここって猪が出るのかー…。」

 

 

「…比企谷、何の事だ?」

 

 

「高円寺の目的が猪狩りの可能性が高いって事だ、消去法だけどな。」

 

 

原始時代でも生き残れそうだな、アイツ。財閥の御曹司が学校で一番野性味が溢れるってのも一般的なイメージからはかけ離れてそうだが。後、ほぼ素手で猪に立ち向かえるって事にも感心してる。

 

 

「いやいやいや、流石に無理だろ!?それが本当なら早く連れ戻さないと駄目じゃねえか!」

 

 

「俺らは俺らでコース確認しなきゃならんから連れ戻しに行くのは駄目だ。高円寺ならムキになることもない、無理なら無理と判断してサクッと逃げるだろう。アホな事はするが頭脳はマヌケじゃないからな、怪我をする事は無いだろう。むしろ猪を捕獲してるくらいだろう、賭けても良い。」

 

 

「…高円寺の無事が約束されたな。」

 

 

「…冗談だよ?」

 

 

綾小路がぽつりと言い、周りもなんとなく納得している。ちょっぴりゲン担ぎになるかなみたいな気持ちで言ったけど、全員がもう心配してないのはどうかと思うよ。

 

 

「…仮にだが、突然猪に襲われて怪我をしたとしても穴埋めを要求されるかもしれんから、高円寺に任せるのが一番良さそうではあるけどな。そんな事より駅伝で決めなきゃいけない事なんだが、今歩いてるコースは18㎞で1人最低1.2㎞は走らなきゃいけないが……俺らは10人なので6㎞余る。一応聞くけど、余分に走りたい奴は居るか?」

 

 

「その聞き方だと誰も居ないと思うんだが、仮に誰も多く走りたくないって言ったらどうするつもりなんだ?」

 

 

「俺が7.2㎞走る。この特別試験のせいで日課のジョギングが出来てないからな。」

 

 

「…あぁー、あの殺人的な奴か。別にそこまで疑ってなかったし男子全員参加させられると思ってなかった分余計辛かったな、比企谷式ジョギングは。」

 

 

「一応言うけど俺は止めたよ?けど俺らのボスが『侮りの視線が気に入りませんね、理解らせましょう』って頑なに意見を変えないもんだからさあ。」

 

 

橋本や鬼頭は完全に巻き込まれだったからね。あの日のAクラスの男子はほぼ全員よれよれで授業をなんとか乗り切っていたのはよく覚えている。2日おきにやってる事なので「次は明後日な」と男子たちに伝えたら「ナマ言ってすみませんでした、勘弁してください」と余裕の無い声で言われた事もよく覚えている。それでも僅かに侮りの目は残っていたが、ペーパーシャッフルでそれなりの結果を残したので完全に無くなっている。嫉妬の目は一切消えていないが。

 

 

ちなみに俺にアクシデントが有ったら拙いので、ある程度は距離を分担する事になった。仮にそうなったら、俺がヤケクソで誰かを道連れにする可能性も考慮したようだ。やるかやらないか聞かれたので当然やると言ったらドン引きされた。この後は特にトラブルも無く、高円寺も無事どころか猪を捕獲したようで夕飯のカレーに結果が反映されており、肉がゴロゴロ入ってて美味しかった。

 

 

 

 

 

就寝時間の前に用を足しておこうとトイレに向かっていると話し声が聞こえたので顔を向けると、元生徒会長と現生徒会長がいらっしゃった。剣呑な雰囲気も感じないのでスルーで良いなと思ったが、目が合ってしまった。目を背けてスルーしようと悪足掻きをしたが、呼び止められてしまったので観念した。

 

 

「…何か用でしょうか?夜更かしするんで少し横になって体を休めておきたいんですが。」

 

 

「お前、本当にふてぶてしいよな…。もう少し誤魔化す努力をしろよ。」

 

 

「ルール上は問題ないですからね、本来の用途とは違った目的で利用していますが。」

 

 

悪巧みをするのにもってこいだからね、誰もやってないみたいだが。それとなく怪しい行動をしてるグループは無いかと一応聞いたが、輪を乱す行動を取る人は特に居なかったらしい。

 

 

ここでお二方が話してた事はそれに準ずる内容だったようで、端的に言うと堀北先輩が「こういう風に嵌めようとしていました」と南雲先輩に聞いていたそうだ。具体的な内容を聞く前に、堀北先輩が尋ねて来た。

 

 

「比企谷……もし仮にお前が俺の立場で、南雲が俺を陥れるために動いていたとしたらお前はどう動く?」

 

 

「仮定に無理が有りますよ、俺にはカリスマもやる気もありませんし。………まあ南雲先輩なら堀北先輩よりも先輩の周りの人を狙いますから、クラスメイトの誰かが孤立してしまうのを徹底的に避けますね。孤立してしまったら、その人が1人でどうにかしようと孤軍奮闘しても無駄ですので。」

 

 

「無駄と言い切るのだな。」

 

 

「バスの中でなんとなく考えていたんですが、Aクラス以外の3クラスで試験終了後にポイントを均す契約が成立するなら、Aクラスの誰かしらを退学に追い込めそうだなと。最後の特別試験で逆転出来る差に縮められるならやる価値は有ると結論付けました。実際に行うなら、堀北先輩の目が届き辛い女子を狙います。複数人狙えるならなお良いですね。」

 

 

俺の言葉に堀北先輩は微妙に渋い顔を、南雲先輩は少し感心したような顔を浮かべた。南雲先輩も多分近しい事を思いついていたのだろう。道連れ要員の救済をせずにクラスポイントをさらに詰める案を言ったら堀北先輩は険しい顔した。南雲先輩は引いている。

 

 

「お前、悪辣だなー…。」

 

 

「それくらいやらないと、この顔面神経痛の先輩と戦えるラインに立てないでしょ。足腰が強靭過ぎる相手なら、土台を崩す方がまだ楽って事です。…そこまでやってなお、堀北先輩がAクラス以外で卒業する未来が見えませんが。」

 

 

「まあ、そうだな。確かに嵌めるまでは出来る見込みが十分あったけど、それくらいで終わる人じゃない。その程度の人ならそもそも嵌めようなんて考えないな、ポイントの無駄だ。」

 

 

「………俺相手に何をしても良いという訳ではないぞ、貴様ら。後、誰が顔面神経痛だ。」

 

 

少し強めにチョップをされた。呆れつつも実際に起こりそうにない事になったからか、堀北先輩の顔には余裕がある。頭をさすりながら、もう一言付け加える。

 

 

「…仮に南雲先輩が動いたとしても堀北先輩に肩入れする気は無かったですね、やり方はどうあれ南雲先輩にとっては堀北先輩に挑める最後のチャンスになるでしょうし。結果がどうあれ対策仕切ったならそれくらいの危機管理を、策に嵌ったなら物凄く有能な人でも油断したらああなるという良い例……というか良い教訓になって頂こうかと。」

 

 

「「………。」」

 

 

「堀北先輩も取り返しの付く内に経験しておいたほうが良い事でもあるので、将来同じような障害に出会ったら乗り越えるのに役立つかなと。苦いですが得難い経験ですから。」

 

 

「……………一理ある、か。」

 

 

ビキッと来てはおられるが、俺の言葉を飲み込めるあたりやはり堀北先輩は一廉の人である。理があるとはいえ乱暴な事言ってる自覚しかない。大惨事になりそうだけど傍観者キメるねって言ってるようなものなので、胸倉を掴まれると思ったが自制してくれたようだ。

 

 

「………実際にやられてたら堀北先輩はおそらく嵌められていたでしょうね、南雲先輩が今まで稼いできた信頼をドブに捨ててでも一矢報いたいとまでは読み切れないでしょうし。自分が一番だという自負を揺らがせた相手に勝ち逃げなんて許す人ではなかったですから。」

 

 

「………なずなから聞いたのか?」

 

 

「いえ、精々堀北先輩の尻を追いかけてる事くらいしか聞いてないですね。」

 

 

「お前、もう少し口には気を付けろよ。いつか痛い目を見るぞ。」

 

 

「………ふふぃふぁふぇんふぇふぃふぁ。」

 

 

手心無しに頬を引っ張られながら穏やかな口調で言われた、静かにキレてる時が一番怖い説は本当のようだ。忠告も正しかった、今まさにスゲェ痛い思いをしている。……図星半分、ホの字扱い半分という怒り成分のようだ。一応詫びを入れたので、すぐに放してくれた。頬をさすりながら続ける。

 

 

「……俺の目から見ても南雲先輩は勝者です、2年全体を掌握して思うままに操れると言っても過言ではない程に。そんな人が堀北先輩相手に、王者の目線をしていなかったら分かるって事です。」

 

 

「一応聞くが、王者の目線ってのは?」

 

 

「見下し…とまではいかないでしょうが、人って相手が自分より下だと自信が目に色濃く現れるんですよ。『こいつには負ける事はない』みたいな感じで。以前、南雲先輩からそういう目で見られた時に、なんとなくですが執着心があるんだなと確信しましたよ。」

 

 

1年生にしてはそこそこやれる奴らしい程度の認識だったと思う。実際の所正しい評価だし、俺自身も人の考えを読むのに長けている事以外は、そこそこやれる奴と自負している。………ギャンブルに関しては、どこぞの伝説巨神の暴走状態みたいなもんなのでノーカウントとする。

 

 

「………お前と同学年の奴は大変だな。」

 

 

「そういえばあの時の勝負ですが、先輩が同学年だったらポイントを釣り餌に退学にまで追い込む事も視野に入れたでしょうね。数少ない隙ですし、普通なら釣られる訳が無いですが餌の価値を極限まで高めたら釣られざるを得ないでしょうし。」

 

 

「お前鬼過ぎない?そこまで恨み買ってた?」

 

 

「いえ全く、厄介な相手が本領発揮する前に終わらせるべきだとニチアサで学んだだけです。逆鱗に触れられない限りは余程動くつもりも無いですが。」

 

 

「………あまり表情に変化が無かったから分からなかったが、怒りは買ってたんだな。………危なかった。」

 

 

実際の所、あの時は結構頭に血が上っていた。いざ勝負が始まった瞬間に我に返ったもんだからどうしようかと思ってたら、何時になく冴えていたので俺も南雲先輩も納得できるであろう決着にシフトする事が出来た。

 

 

余談だが勝負の次の日に漫画を読みながら綾小路に勝負の事を話したら、興味を持ったのかお試し感覚でポーカーを挑まれた。手札を言い当てて何枚交換した方が良いとアドバイスしながらゲームを進めたら「勝負のテーブルに付く前に闇討ちするしかない」と普段以上の無機質な目で言われて怖かったのはよく覚えている。アイツも俺を仮想敵と見做す時がちらほらある。

 

 

この後は時間も時間なので断りを入れて、とっととトイレを済ませて横になりながら消灯を待った。

 

 

 




先輩方からの評価は「クソ生意気だけど敬意も持ち合わせてる、敵に回られたら死ぬほどの厄介な後輩」となっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。