ガンダムのおっちゃん   作:灯火011

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ファンネル?突っこみゃええねん

 いつものエネルギーバー。ガンダムさんの周りには、今日も様々な世代のモビルスーツたちが集っていた。

 

 カウンターにはνガンダムくんとΖガンダムくん、そして少し離れたテーブルにはエアリアルくんが、先輩たちの会話に耳を傾けている。

 

 そこへ、普段は実直で真面目な顔つきの「スタークジェガンくん」が、珍しく思い詰めたような表情でやってきた。その肩には、歴戦の証である無数の細かい傷と、特徴的な増加装甲が見える。

 

「ガンダムさん…ちょっと、ご相談したいことがあるんですが…」

 

スタークジェガンくんは、少し緊張した面持ちで切り出した。

 

「お、ジェガンくんやないか。どないしたん、そんな深刻な顔して。まぁ座りぃや。なんかあったんか?」

 

 ガンダムさんはいつもの調子で、隣の空いているスツールをポンポンと叩く。スタークジェガンくんは促されるままに座ると、深々とため息をついたように見えた。

 

「実は…最近の演習で、ファンネルやビットを搭載した機体と模擬戦をする機会が多くてですね…これがもう、どうにも攻略できなくて…」

 

 その言葉に、νガンダムくんがわずかに反応する。自身のフィン・ファンネルを思ってか、少しだけ神妙な顔つきだ。

 

「ファンネル? ああ、あのピュンピュン飛んでくる小さいやつか。あれ、鬱陶しいわなぁ」

 

 ガンダムさんは腕を組み、うんうんと頷く。

 

「はい!四方八方から予測できない軌道で攻撃されて、回避するだけで精一杯で…近づこうにも近づけず、ジリ貧になってしまうんです」

 

 スタークジェガンくんは悔しそうに拳を握る。

 

「ふーむ、ファンネルねぇ…」

 

 ガンダムさんは少し考える素振りを見せると、ニヤリと笑った。

 

「せや! 突っ込んでって全部避ければええんちゃうか? アムロのボンみたいに、シュバババッー!て」

 

「む、無理です! あれはニュータイプの方の領域で…!」

 

 スタークジェガンくんは顔を真っ赤にして反論する。Ζガンダムくんも苦笑いだ。

 

「ほんなら、こっちもファンネル持ったらええやん。お返しや!」

 

「ですから、私の機体にはファンネルを運用する機能が…!」

 

「そっかー。じゃあ、あれや! 歌でも歌いながら突撃したらどうや? 『銀河の果てまで~♪』とか。相手もビックリしてファンネル落とすかもしれへんで?」

 

 ガンダムさんの突拍子もない提案に、バーの空気が一瞬凍りつく。エアリアルくんはポカンと口を開けている。

 

「ガ、ガンダムさん…それは流石に…」

 

 νガンダムくんが困ったように口を挟む。

 

「うーん、あとは…目ぇつぶって突っ込むとか?…いや、それはアムロのボンがようやっとったけど、ジェガンくんには無理やろなぁ。あれはホンマに紙一重やったからな」

 

 ガンダムさんは昔を思い出すように遠い目をする。

 

(…アムロさんはそんな無茶なことを…? それを可能にしたこのガンダムさんもやっぱり…)

 

 若きガンダムたちは、またしても「白い悪魔」の片鱗を感じ取る。

 

 スタークジェガンくんは、すっかりしょげてしまった。

 

「やっぱり、私のような量産機には、ファンネルは天敵なのでしょうか…」

 

「まぁまぁ、そう落ち込むなや。ジェガンくん、君のそのゴツい肩とか、胸の追加装甲、あれは飾りなんか?」

 

 ガンダムさんは、スタークジェガンくんの肩をバンバンと叩く。

 

「え? あ、いえ、これは対ビームコーティングも施された増加装甲でして、防御力を高めるための…」

 

「そうやろ? 考えてみ?ファンネルの一発一発って、そんなに威力高ないやろ? νくんとこのフィン・ファンネルはちょっと別格かもしらんけど、普通のそこいらのビットやったら、戦艦の主砲みたいな馬鹿げた威力っちゅうは無いやろ?」

 

「…確かに、一撃で致命傷になるほどの威力はありません。どちらかというと、手数でシールドや装甲を削ってくるタイプが多いです」

 

 スタークジェガンくんは、ガンダムさんの言葉にハッとする。

 

「せやろせやろ。ほんなら、答えは簡単や。その自慢の増加装甲で何発か受け止めて懐に飛び込んでしまえばええんや。ファンネル使いは、接近されたら意外と脆いもんやで。細かい作業は得意でも、取っ組み合いは苦手なタイプが多いんちゃうか?」

 

 ガンダムさんは自信ありげに言い切った。

 

 その言葉に、バーにいた他のガンダムたちも頷く。

 

「確かに…! ファンネルやビットは、本体から離れてオールレンジ攻撃を行うのが強みですが、逆に言えば、本体の近距離での対応能力が疎かになっているケースも考えられますね」

 

 Ζガンダムくんが分析する。

 

「ファンネル自体も、ビーム兵器が主体なら、ある程度の被弾は覚悟の上で距離を詰めれば、飽和攻撃の前に潰せる可能性はあります。一発のエネルギー消費も大きいですし」

 

 νガンダムくんも、自らの兵装の特性を踏まえて同意する。

 

 エアリアルくんも、

 

「ガンビットも、連携を崩されると一気に不利になりますから、強引にでも接近されるのは嫌な戦法だと思います!」

 

 と目を輝かせた。

 

 ガンダムさんは、スタークジェガンくんに向き直る。

 

「わいがア・バオア・クーで戦ったジオングってやつも、両腕がデカいビーム砲やったけどな、あれも当たり所が悪うなければ即死はせんかった。まぁ、こっちは頭も腕もやられとったけどな!ガハハ!」

 

(…またその話! それで相打ちに持ち込む方が異常なんだ!)

 

 周りのガンダムたちは心の中でツッコミを入れるが、口には出さない。

 

 スタークジェガンくんの顔には、先程までの絶望の色は消え、希望の光が灯っていた。

 

「増加装甲で受けて、近接戦闘に…! そうか、私の機体の特性を活かせば、ファンネル相手でも十分に戦える…! ありがとうございます、ガンダムさん!」

 

 深く頭を下げるスタークジェガンくん。

 

「おう、ええってことよ。まぁ、言うても当たらんのが一番やけどな! 精々頑張りや!」

 

 ガンダムさんはニカッと笑い、再びエネルギーパックに手を伸ばす。

 

 その背中には、やはりただの気のいいおっちゃんではない、歴戦の勇士のオーラが漂っていた。

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