遊戯王GX 決闘モンスターリリカルなのは   作:あかない

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ついに五十話ですね。しかし五十話でここってずいぶんとペース早いなぁ。まあ伸ばすより完結させるの第一って言う考え方なので仕方ない。


ネーミングセンスが全く無い作者ですが、最近少し自分のネーミングセンスに自信が持てました。
まさか公式で シ ャ マ ル ビ ー ム が使われるとは思っていませんでした。八話の時点でほぼ似たようなネーミングを考えた自分のセンスに嫉妬! ルがないからニヤピンですが。


ここ一週間ベクターやなのはの特典映像の所為で腹筋が良からぬ事になっています。 



しばらくデュエルありません。


第五十話

「あああああああああ!」

 

絶叫が止まらない。止まってもすぐに、息も吸わずに再び絶叫を上げる。

なんでみんながこんな目に合わなきゃいけないんだ!? ・・・・俺の所為だ。俺が注目を浴びる様な事をしたから、みんなが狙われた。俺がもっとしっかりしていれば。もっと慎重にしていればこんな事にはならなかった。

 

「ストップ遊斗!」

「遊斗呼吸してないぞ!」

「あああああああっ! ああああああ!」

「落ち着け遊斗! 落ち着くんだ! ツッ・・・・悪い遊斗!」

 

ドガッ。

右頬を襲った強い痛みと、頬を殴打した時の小さな鈍い音と共に、突然視界が青くなった。青い空を背景にした十代が俺を見下ろしていた。

 

「ハァ゛ハァ゛ハァハァ・・ハァ・・」

 

肺が勝手に空気を取り込み、いつの間にか荒くなっていた呼吸を整えていた。自分の体なのに自分の体じゃない様な感覚。さっきの痛みもいつの間にかボンヤリとしてきた。

 

「しっかりしろよ遊斗! みんながいなくなった辛さは分かるが」

「ツッ! お前に何が分かる! ずっと、ずっとずっとずっとずっと一緒に生きてきたんだ! 何も考えない能天気のお前に俺の何が分かる!」

「今のお前の言葉。コブラが言っていた台詞とそっくりだぞ・・・・」

 

今まで聞いた事のない、凄く優しい十代の声が耳に入ってくる。その声と共に、今まで現実と夢の狭間に居た意識が、ハッと現実に返って来た。

頭に溜まっていた血が一気に降りて行き、自分でも頭が冷めて行くのが分かる。それと同時に、さっき殴られた痛みが戻って来て、さっきまでの出来事が夢でない事を実感してしまった。

 

「じゅう、だい・・・・」

「ああ・・・・」

「どうして、どうしてみんなが! ぅ、ぁ、うあああああ!」

 

泣いた。思いっきり泣いた。赤い制服に顔をうずくめて、喉の痛みも気にせずに、暫くの間ずっと泣いた。

 

 

 

 

「そ、その。すまなかった!」

 

冷静になってすぐ、恥ずかしい気持ちを抑えながらみんなに謝った。多分傍から見たら俺の体は綺麗に90°に曲がっていると思う。それくらいみんなへの申し訳ない気持ちで一杯だった。

 

「ドントウォーリー。気にするな」

「僕たちでさえ悲しいッスから」

「お、俺も悲しいザウルスぅぅ~!」

「一緒に精霊達を助ける方法を考えましょ?」

「遊斗と精霊の絆は深いんだ。きっとみんな大丈夫さ」

「俺達親友だろ?」

「みんな・・・・」

 

みんなの優しい言葉に感動して再び涙が出そうになったが、何とか堪えて泣くのを止めた。次に泣く時はみんなと再開した時と泣いている時に決心したから。

ゴシゴシと腕で目を擦って流れた涙の後を拭うと、首をキョロキョロと見渡して辺りの景色を確認する。

冷静になって初めて知ったが、ここは白い砂漠のど真ん中にある様だ。砂漠地帯に浮いている建物が一つだけあった。デュエルアカデミアだ。

遠目からでよく分からないが、デュエルアカデミア本校も俺達と一緒に飛ばされた様だ。

 

「まずはデュエルアカデミアに行こう」

【了解!】

 

と、ヨハンの声に皆一様に返事をしてデュエルアカデミアへと向かう。砂の高さはさほどなく、足の甲が浸かるか浸からないかぐらいで、歩くのにも支障はない。ザクザクと砂の音を立てながらデュエルアカデミアに向かっていると、その途中、遠くにヒラヒラと動くマントの様なものが視界に入った。

 

「おい、あれ」

「誰かいるな・・・・ってあれ!」

「三沢君ッス!」

 

かなりの長時間歩いていたのか、三沢は両手で持った木の棒を杖代わりにしてよろよろと歩いている。向こうも俺達に気付いたのか、少しだけ歩くペースを上げて俺達の方へ向ってくる。

 

「ワッツ! あれは何だ!?」

 

突然ジムが空に向かって指をさしながら叫んだ。ジムが指している方を見ると、そこには人ならざる者がいた。長い赤い髪。細く長い手から生える翼。足の指から生えた何センチもある鋭いかぎ爪。世の中の大半の女性が羨ましがるだろう、スタイルの良い体。デュエルモンスターズの中でも、かなり歴史のあるカード、ハーピィ・レディがそこにいた。

 

「シャアアア!」

 

飛んでいる三体のハーピィ・レディの内一体が獣の声と共に、三沢に向かって急降下した。三沢もハーピィ・レディに気付いたのか、歩くペースを速めるが、衰弱しきっているのか明らかに遅い。三沢の方へ走っていくが、何しろ距離が距離だ。どんだけ速くても、ハーピィ・レディの攻撃を防げる事が出来ない。

ハーピィ・レディのかぎ爪が三沢の背中に迫ったその時、三沢の体が消えた。いや、ある介入者により地面へと押し倒されたのだ。

 

【アモン!?】

 

万丈目とデュエルをしていたアモンだった。何故保健室に居る筈の彼がここにいるのか気になったが、今はそれよりハーピィ・レディの退治が優先だ。こうやって二人の元へ走っている間にも、ハーピィ・レディは攻撃を続けて、三沢を庇っているアモンを傷つけている。

 

「止めろォォ!」

 

一番下にいるハーピィ・レディの元へ跳ぶ――筈だった。しかし俺の体は言う事を聞かず、下に居るハーピィ・レディを狙った筈が、何故か空に居るハーピィ・レディの元まで体が跳んでいた。

しかも辺りの速度が一気にスローモーションになった様に見え、空に居るハーピィ・レディにすれ違いざまに拳を一発打つ事が出来た。

 

「ギャアアア!」

 

地面に着地しても衝撃が全然痛くない。この感覚、どこかで・・・・。

 

「サファイア・ペガサスを召喚!」

「行け、フレイム・ウィングマン!」

 

遠くに居る二人はデュエルディスクにカードをセットした様だ。召喚された二体のモンスターは、自らの翼を使って、空を飛ぶハーピィ・レディを追い、それぞれの必殺技を使って二体のハーピィ・レディを追いやった。

 

「・・・・」

 

みんなは一斉に三沢とアモンの方へ走ったが、俺は暫くの間茫然として自分の体をジッと見ていた。いくら鍛えているとはいえ、人間があんなに跳べる筈が無い。

まるであの時。そう、海馬コーポレーションの屋上から落下した時の様に、体の奥底から力が湧いて出て来る。

一瞬胸に掛けているF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が力を貸してくれたのかとも思ったが、海馬コーポレーションを真っ逆様に落ちたのはこの首飾りを貰う前。

 

「凄いザウルス遊斗先輩! 今何メートルも跳んだドン!」

「あっ、ああ。日ごろの訓練のおかげだろうな。あの人たち、滅茶苦茶厳しいから。って十代! ヨハン!?」

 

自分の体に違和感を覚えながらも、剣山に心配させない様にいつもの顔を装っていると、三沢とアモンの元にいた二人の体がフラついていた。

 

「まさか。召喚しただけでデス・ベルトの影響があるなんて・・・・」

「とにかく今はデュエルアカデミアに行きましょう。みんなを休ませなくちゃ」

 

 

 

 

旅人が着ていそうなボロボロで汚いコートを脱いだ三沢は、デュエルアカデミアにあった食料と水を猛獣の如く食べており、アモンは保健室に運ばれた。

デュエルアカデミアの中は、事態を把握できない生徒がほとんどで、先生達に何が合ったのか問い詰めていた。勿論現場にいた俺達でさえ半分も分かっていないのに、先生達が知る訳が無い。

 

「三沢。どうしてここに?」

「GX大会が終わる少し前からか。あれから俺はジェイル博士の元で次元について研究していた」

「え? 夏休みに家に帰ったけど、お前いなかっただろ?」

「ずっと研究室に籠っていたからな。それで実験の途中、次元エネルギーに吸い込まれてこの世界に来たんだ」

 

つまり三沢がここに来てしまったのは父さんの所為だと。苦労した三沢には失礼かもしれないが、三沢がいてくれた方が心強い。ひょっとしたら三沢なら脱出方法が分かるかもしれない。

 

「分かった。三沢はしばらくゆっくりしていてくれ」

「遊斗こそ、LSの話を聞いた。無茶するんじゃな」

「俺は・・・・多少無理してでもみんなを取り戻したい。友達、家族、恋人がいる」

「そうか」

 

三沢の元を離れてから購買の柱に寄りかかって腕を組む。

見た限り辺りに食料や水が調達できそうな場所は無い。つまりここにとどまっている限り、食料と水には限りがあるって事だ。幸いデュエルアカデミアにはもしもの事を想定して、予備の食糧庫があると聞いた事があるし、孤島の学校であるが故に普通の学校とは違い、数日分の食料が一回で運ばれてくる。

 

「どういう事だ! 何で周りが砂漠なんだよ!」

「どういう事か説明して下さい!」

「なんで黙ってるんですかクロノス先生!」

「あっ、いや~。ワタクシ達教師もそれが分からないノーネ」

 

何より大変なのがこうやって混乱する生徒がいるって事。不幸中の幸いか、俺のメンタルはみんなの消失でこれ以上ないくらい落ち込んでいる為、たかが異世界に飛ばされた程度では動揺したりしていない。我ながらみんなに依存していたものだ。

 

「みんな落ち着けって!」

「そうだ! こうやってクロノス先生を攻めても何も解決しない! まずは冷静になるんだ!」

 

そしてもう一つラッキーなのが、十代とヨハンの存在。二人はこの状況下でもリーダーシップを忘れずに、混乱している生徒達を落ち着かせている。失礼な言い方だが、この状況では先生達により役に立つ。

そのやり取りを少し遠くから眺めていると、丁度視界をレイちゃんとマルタン君が横切った。

 

「あっ、レイちゃん、マルタン君。ちょっといい?」

「? なんですか遊斗先輩」

「な、何か・・・・」

「そんな警戒しなくていいよ。万丈目とのデュエルの後、二人はアモンをどうした?」

 

すると二人は少しだけ考える素振りを見せ、俺の顔を見上げる。

 

「あの後すぐにアモンさんは目が覚めて、勝手にどこかに行っちゃいました。ね、マルッち?」

「う、うん。止めようと思ったんですが」

「いや、二人を責めてるわけじゃない。ありがとう」

 

そう言うと二人はペコリと頭を下げてみんなが集まっている方へ向って行った。

・・・・三沢を助けてくれたアモンを疑う訳ではないが、何故アモンはデュエルアカデミアの外にいたんだ? 寮に戻って休養? けど寮にいた生徒はデュエルアカデミア玄関前に飛ばされたと聞く。

一人だけ転移座標のミスとも考えにくい。

 

「・・・・」

「何を考えているんだ?」

「ん? ああ、留学生のオブライエンだったか」

「話すのは初めてだな」

「そうだな」

 

彼へ右手を伸ばすと、オブライエンも右手を伸ばし、手を握ってくれた。

 

「そういえばお前はコブラの傭兵だと聞いた。何であの時俺達を助けたんだ?」

「もう隠す必要は無いだろう。俺の本当の雇い主はI2会社の社長。ペガサス会長だ」

「ペガサス会長?」

「ああ。コブラの素性を探る為にコブラの傭兵になったんだ」

 

スパイって奴か。というかそんな事するくらいなら、コブラの素性を学校側が確認してからプロフェッサーとして向かい入れればいいのに。

鮫島校長は良い人何だが、この際ハッキリ言おう。あの人は無能だ。鮫島校長の肩を持つ事が多い俺がこんな事を言うのには理由があり、あの鮫島校長、何とデス・ベルトの正体を知っておきながらデュエルアカデミアから出て行って、判断や仕事を全てクロノス先生に押しつけたのだ。

いくら鮫島校長に優しくしてもらった俺でも、その行動には頭を痛めるしかない。

 

「それは大変だったな。それでコブラが飼っていた精霊の事は何か知っているか?」

「いや、精霊がいる事自体分からなかった。まだまだ未熟だ」

「そんな事無いさ。あの時お前がいなかったら、今頃友達の半分はペチャンコさ」

 

オブライエンは自分のミッションの失敗を気にしていたのか、俺の言葉を聞いて少し嬉しそうに頬を緩めた。と言っても笑っている訳ではない。

堅い奴だな・・・・。なんて思いながらオブライエンの鍛えられた体を上から見ていると、右腰に付けてあるデュエルディスクらしきものが目に入った。

 

「それ、デュエルディスクか?」

「ああ。デュエル以外にもカードが発射できるようになっている」

 

武器に詳しくないのでオブライエンのデュエルディスクの形状をどう説明していいのか分からなかったが、細長い黄色いデュエルディスクで、その先からカードが発射される様だ。

 

「戦力として心強い」

「お前もかなり身体能力が高いと聞いた」

「まあな。人よりはあると思う」

「謙遜するな」

 

 

 

 

購買は再びガヤガヤと騒がしくなっていた。おそらく皆冷静になり、さっき考えていた心配事に気付いたのだろう。食料だ。今このデュエルアカデミアにはほとんどの教師と生徒、購買のトメさんやセイコさんがいる。いくら大量の食糧があるとはいえ、人数が多ければ多い程消費速度が早い。

その事に気付いた生徒達の標的は、食料の事に詳しいトメさんとセイコさんへと移った。

 

「腹減ったぞ!」

「食料はどうするんだ!」

「俺、人より食べないと持たないんだ!」

 

お前達がそう言いたい気持ちは分かる。だけどここに流れ着いたみんな我慢しているんだ。それは今、標的になっているトメさんもセイコさんも同じだ。

 

「お前等! いい加減にしろ!」

 

この雑音の中でもみんなの耳に入った俺の音量は中々のものだろう。

そうだ。この数時間の間、色々とありすぎてすっかり忘れていたが、俺はブルー寮三年のエース。ここでみんなを引っ張らなくて、いつ先輩らしい事をする。

 

「トメさん。どれくらい持つと思う?」

「遊斗君・・・・。そうね、節約に節約して一週間って所かしら」

「賞味期限を守らずに、均等にもう一日は持つ?」

「そうね。多分、いや、絶対持たせるわ」

 

時間は八日だけ。結構持つように聞こえるが、辺りに食料になりそうな物が無いこの空間ではかなり厳しい筈。生きるか死ぬかではなく、元の次元へ帰るか死ぬかの二択。

 

「とりあえず今日はもう遅い。今は寝てなるべく腹が減るのを抑えよう。ヨハンとクロノス先生は怪我人の手当てや休ませるスペースの確保と、保健室に居る虻川先生や病人達の護衛」

「おう!」

「わ、分かったノーネ」

「俺とオブライエンは学校の周囲を探索。ジムと十代は学校内の探索」

「OK」

「任せろ!」

「残りの先生方や比較的余裕のある三年生はこの部屋から誰も出さない様に見張りを。下級生は辛いだろうけど、今は休め。イライラしていたらストレスが辺りに伝染する」

【【【【は、はい!】】】】

 

とりあえず頭を回転させるだけさせて指示を出しておく。ただの学生の指示なので、的確なのか全く分からないが、みんなもただがむしゃらにしているより何か指示を受けた方が楽だと思う。中には不満そうな顔をした奴もいたが、軽く睨んで反論をさせなかった。

こういうのは柄じゃないと言うか、苦手なんだが、ブルー寮三年生エースと言う立場を上手く使おう。

 

「じゃあ俺達は外に出るから。危険な精霊がいるかもしれないから、くれぐれも外に出さないでくれ」

「分かったッス」

「ええ」

「了解ザウルス」

 

この場を任せた三人の顔がドアで遮られた途端、へなへなと体の力が抜けて行った。

 

「あ、あはは・・・・。何とか、なったか?」

「素晴らしかったのノーネ。やっぱりあなたは代表に相応しかったノーネ」

「ああ。遊斗のおかげで大分混乱が収まった」

「けどいいのか。危険な外に二人だけなんて?」

「オブライエンがいる。大丈夫・・・・と思う」

 

 

 

 

結論から言うと特に何も無かった。それは逆に言うとメリットになりそうな物の何も無かったと言う事だ。まあ学園の周りをチラッと回っただけなので、あったのは少し離れにある発電所ぐらいだ。

 

「どうしたもんかね~」

「・・・・言わない方がいいのかもしれないが、意外と元気みたいだな」

「いや、正直心ズタボロだよ。けどこうやって元気なフリしてないとみんなを心配させるだろうし。それに――」

「それに?」

「みんな強い心と勇気を持っているから。主である俺がいつまでも落ち込んでられない」

 

 




十代√と思った人、ちょっと屋上に逝かないか♂?



あのさぁ・・・・。仮にも本文シリアスなんですけど。
てか今さらですが、ようやく遊斗のキャラが遊戯王の世界にそこそこ付いていけるくらい濃くなってきたと思います。(ついにあらすじ詐欺)


デュエルが無いから書くのが結構楽でした。その分文字数も少ないですが。
ただこの手の指示を与えたりする台詞って苦手なんですよね。実際異世界トリップを経験された方はそうそういらっしゃらないと思うので、正解は無いと思いますが。

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