遊戯王GX 決闘モンスターリリカルなのは   作:あかない

60 / 73
お前はハムエッグの黄身も愛した女もナイフで半分に切り分けるのか?
お、おう・・・・(←これ以外の返答が出来る方を作者は尊敬します)


いや~、凄いOPでしたね。あのコラボは予想外でした。今季はドラマもアニメも好きなのが多く嬉しいです。前季アニメ&ドラマ共に一話を見過ごしたりして、ほとんど見てなかったので。



第五十五話

 

「ホントに大丈夫か遊斗?」

「ああ。最悪デュエルゾンビに囲まれたら俺を捨てて逃げろ。元の世界に戻れないパターンが最悪だからな」

「何言ってんだ! お前はちゃんと俺が――」

「ハァ・・・・。レイちゃん。そうなった時は頼むな」

「遊斗先輩・・・・」

 

十代に支えられながら何とか地上に戻って来る事が出来たが予想以上に体力の消耗が激しく、思う様に体が動かない。仮にも三幻魔と戦った後なのでこれくらい当たり前なのかもしれないが、ここ最近不気味な程体が変化していたから少し違和感を覚える。

十代の話では、発電所と食糧庫を賭けたデュエルに無事勝利したが、再びデュエルゾンビが襲い掛かって来てかなりの人数がデュエルゾンビにやられてしまったらしい。発電所を賭けたデュエル事態、デュエルエナジーを集める為に奴が仕組んだ罠だったのだ。

鍵となるヨハンは、クロノス先生、明日香、ジム、剣山と言ったメンバーに守られながらデュエルフィールドに行き、三沢は万が一にも発電所を止められない様に発電所に向かったそうだ。

それで十代とレイちゃんは、三幻魔の登場時の雷や炎を見てこっちにやってきたらしい。

 

「あの道を曲がればデュエルフィールドです!」

 

その言葉を待っていたかの如く、レイちゃんが指した角からデュエルゾンビ達がやって来た。しかもさっきまで、腹が減っていたと騒いでいた生徒達の顔まで見える。

 

「くっ! 逃げるぞ!」

 

だがそれも出来なかった。後ろを振り返るとデュエルゾンビの群が見える。ここまで数が多いとモンスターを呼んで強行突破しかないが、病み上がりでデュエルディスクを付けていないレイちゃんには無理だし、俺も精霊達(みんな)の状況が分からない以上、無理やり呼び出す事は出来ない。フェルも疲れきって今は休んでいる。必然的に十代が召喚するしかないが、十代に体力は温存させておきたい。最もこの状況で十代に頼るしか――

 

「こっちだ!」

 

その時だった。床のタイルがズレて、その中からオブライエンが現れたのは。

喜びの再会といきたいが、時が時だ。オブライエンの後に続きレイちゃん、俺、十代の順に地下に入り、最後にいた十代が、デュエルゾンビの追跡を防ぐ為にタイルを戻した。タイルには持ち手が無いので、上からここに来るのは不可能だろう。

地下は俺達が中腰にならないと歩けない非常に狭かった。しかも普段使われていないのか、埃や蜘蛛の巣があり、長居したい場所では無い。

 

「オブライエン。デュエルフィールドへの道は分かるか?」

「ああ。ここから直にデュエルフィールドに行く事が出来る。しかしこの道を利用して学園内を探索していたが、おそらくもう俺達とデュエルフィールドにいる仲間以外は全滅だ」

「そんな・・・・」

「大丈夫だレイ。戻ったらみんなのゾンビ化も治る」

 

など話していると、ドタドタと地上が騒がしくなる。デュエルフィールドに近付くにつれその音は騒がしくなるので、おそらくヨハン達にデュエルゾンビが襲ってきたのだろう。それに気付いたオブライエンは歩く速度を速めてデュエルディスクを構える。

 

「みんな! こっちから来るんだ!」

「オブライエン! みんな、こっちだ!」

 

上で何が起こっているのか分からないが、声から察するにヨハンは無事な様だ。数回の銃声と、モンスターの叫び声が鳴った時には、デュエルフィールドに向かっていた全員が無事に地下に潜る事が出来た。

この狭い空間にずっといる訳にもいかなかったので、オブライエンの案内で下水道に向かう事にした。あそこからだったらデュエルアカデミアの正面玄関近くに出られるらしい。

 

「ヨハン。レインボー・ドラゴンはどうだった?」

「こっちの世界に持ってくる事は出来た。だがカードが入ったケースが砂漠地帯の方に落ちてしまった」

「なるほど・・・・。じゃあ十代は奴の元へ、ヨハンはレインボー・ドラゴンの探索になる。オブライエンの話ではデュエルゾンビはデュエルアカデミアに集まっている。そうなると必然的に十代の方に人数が行く事になるが・・・・」

「ヨハンの護衛は俺がやろう」

 

オブライエンが付いているなら心強い。砂漠地帯を探す事になると出来るだけ沢山の目が必要になる。

 

「明日香もヨハンとオブライエンに付いて行ってくれ。十代側は強行突破になる」

「構わないけど、それだとレイや疲れているあなたの方がいいんじゃない?」

「いや、モンスターを召喚できる明日香が行った方がより探す時間が短縮される。それに俺は三幻魔に、レイちゃんはマルタン君に用がある」

 

まあ俺の場合用と言うよりかは、因縁というか。十代と奴等のデュエルを見届けたい。

 

「分かったわ」

「そろそろ出口だ」

「じゃあヨハン。また後で会おうな」

「ああ! それまでやられるんじゃないぞ」

 

無事に三つの太陽の元に出た。しかしデュエルゾンビは俺達の出て来る先を知っていたのか、既に数十人のゾンビが集まっていた。

 

「いきなりドン!? でも挫けないザウルス。究極恐獣(アルティメット・ティラノ)、超伝導恐獣《スーパーコンダクターティラノ》を召喚!」

「私も負けないノーネ。古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェルドラゴン)しょうかーん!」

 

一気に全員がモンスターを召喚する訳にはいかない。まずは剣山とクロノス先生がエースモンスターを召喚し、デュエルゾンビ達が召喚したモンスター達を破壊して行く。

 

「行くぞみんな!」

 

四体の最上級モンスターの攻撃により開かれた道を指し、十代が先陣を切る。レインボー・ドラゴンを探索する三人は別の道を走っていた。

足を動かす度に体に激痛が走るが、それを堪え十代とレイちゃんの背中を追って行く。

 

究極恐獣(アルティメット・ティラノ)!?」

「頑張るノーネ古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェルドラゴン)!」

「次だ! 古生代化石竜スカルギオス、地球巨人ガイア・プレートを召喚!」

 

みんなのエースモンスターも数で押されると限界がある。先陣を切っている十代もネオスとフレア・ウィングマンを使って道を切り開いているが、その道はすぐに埋められる。何とか十代の近くにいた俺はデュエルゾンビの群を突破する事が出来たが、チラリと後ろを見るとジム、剣山、クロノス先生が戦っていた。

 

「アニキ! 遊斗先輩! 今から一発大きいのを発動するドン! 後は任せたザウルス!」

「なっ! 剣山!?」

「罠カードジュラシック・インパクトを発ドン! フィールドのカードを全て破壊するザウルス!」

 

すると上空に無数の隕石が浮かび上がり、自分達とデュエルゾンビの群に向かって降下して行く。効果が効果だけあり、中には俺達の方へ落ちて来る隕石もあった。隕石が地面に落ちた衝撃で足元が揺れ、走る速度が落ちてしまうが、奴が用意した決闘場の元までやって来る事が出来た。

階段を上る途中、さっきまで居たデュエルアカデミア前を見ると、モンスターや動きまわるデュエルゾンビは一体も居らず、皆砂漠の上で気絶している。みんなの犠牲があってこそ俺達はここまで来れた。その事が悔しくて唇を噛み締め、一段ずつ階段を上って行く。

階段を登り終えると、そこに一人の少年がいた。

 

「マルタン!」

「フフッ、あの包囲網の中を潜りぬけて来るとは流石十代」

「マルッち! どうしてこんな事をするの!?」

「そこの男から聞かなかったのか」

 

奴が俺を指すと、レイちゃんの視線が奴から俺に移る。十代に説明したけどレイちゃんには説明していなかったか。色々あり過ぎて忘れていた。

 

「マルタンはカードの精霊に操られてるんだ」

「そ、そんな・・・・」

「俺はここまで来たぞ! お前の正体を教えてもらおうか!」

「そう焦らないでよ十代。まずはデュエルを楽しもうよ」

 

奴は俺の時と同じ様に、左腕からデュエルディスクを生やす。ここまでの事をやって来た相手に話が通じない事は分かっていた。十代もデュエルディスクを起動させて構える。

 

「お前が何者かは知らないが、仲間達を傷つけた事は絶対に許さない!」

「「デュエル!」」

 

 

 

 

「クッ! 流石三幻魔・・・・」

 

奴のフィールドには神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、幻魔皇ラビエルの三体。十代も融合やトリプルコンタクト融合を使って何度も三幻魔を倒したが、その度に復活され、遂に三体の三幻魔を並べてしまった。十代の場には三体の守備モンスターがいたが、僅か一ターンで破壊され十代のフィールドからモンスターが消えた。

 

「十代様・・・・」

「ツッ」

 

十代でも三幻魔相手は辛い。しかも奴は三幻魔専用のサポートカードを大量に入れている。三幻魔の効果が一部弱体化したとはいえ、豊富なサポートカードによってむしろ強化されていると言っていい。それに奴は、十代のデュエルを知り尽くしたかの様なプレイングをしている。

あの十代も三幻魔の前に弱気になっていたその時、この場の誰のものでも無い声がする。

 

「大丈夫か十代!」

「ヨハン! 来てくれたのか!」

「ああ! 手に入れてきたぜ、レインボー・ドラゴンを」

「お前なら必ずやると信じてたぜ」

 

ヨハンだった。

ヨハンの登場に奴の表情に怒りが見えた。今までも奴は十代を自分のものと思っている点が見られたが、やはり奴と十代は深い関わりがある。

 

「俺も加えさせて貰うぜ。俺が加わる事で増えるライフはお前のライフにも加算される。それで文句ないだろ?」

「面白い提案だね。いいよ。君を倒してからゆっくりと十代と遊ぶ。十代には友達なんか必要無いんだ」

 

ヨハンは三幻魔相手に全く脅えず、むしろワクワクした表情で挑んだ。

やはり三幻魔の力は圧倒的で、火力の低い宝玉獣で戦うのは難しかったが、豊富なサポートカードや魔法・罠ゾーンに置かれる効果を利用して次々とフィールドに宝玉獣を溜めて行く。時には三幻魔の攻撃時にコンバットトリックカードを使い、三幻魔を迎撃したりした。十代もヨハンに負けじと二回目のトリプルコンタクト融合を行い三幻魔を破壊する。

しかもこのドローでヨハンはあのカードを引く事が出来た。

 

「やった、やったぜ! 俺は長い間この時を待っていたんだ! マルタン、お前には一つだけ感謝する。お前のおかげで俺のデッキが完成した! そして俺にも感謝してくれよ! 俺の最強モンスターに初めてやられる奴になれるってことをな!」

「なに!?」

 

僅か二ターン目でヨハンはあのモンスターを呼ぶ召喚条件を整えた。

 

「フィールドと墓地に七体の宝玉獣が揃った! これが宝玉獣デッキの真の姿だ! 現れろっ! 究極宝玉神レインボー・ドラゴン!」

 

A4000・D0

 

天使の様に綺麗な翼。汚れ無き白銀の装甲で覆われた細長い体。長い体にはルビー、エメラルド、アメジスト、コバルト、トパーズ、アンバー、サファイアの七つの宝玉が埋め込まれており、その神々しい体からは七色の光が発せられている。三幻魔相手に一歩も引かず、むしろ三幻魔を威圧している。

 

「これがレインボー・ドラゴン・・・・」

「すげぇ、すげぇよヨハン!」

「綺麗・・・・」

「くぅ~、待ちに待ったレインボー・ドラゴン! やっぱりカッコイイ!」

 

その後ヨハンはレインボー・ドラゴンで猛攻撃を仕掛けたが、ライフ8000と三幻魔の壁は大きく、奴のライフは0には程遠い。それでも二人が三幻魔を押しているのは確かだ。

だが奴には究極の切り札がある。二人を信用していない訳ではないが、あのカードの力はフェルと同等。出されたらピンチで済む話では無い。

あのカードを引くなと心の中で願っていた時、突然隣にいたレイちゃんが奴に言った。

 

「もう止めて! 返してよ! マルっちを返して!」

「そんなにこの体が心配なら返してやろう。この世界で行われていたデュエルエナジーの収集により僕の体も復活した。返して上げるよ」

 

すると突然マルタン君の体が前に倒れ、さっきまでマルタン君が立っていた場所に人ならざる者がいた。

俺が予想していた精霊とは違い、その精霊は人間の体をしている。悪魔族なのか体は黒や鼠色と言った暗い色で、額には第三の目が付いている。胸を見ると向かって右は男の胸だが、左の胸は女性らしく膨らんでいるから、ひょっとしたら男女が無い両性類なのかもしれない。

 

「これで引き裂かれた僕の体はやっと一つになる事ができた。もうこの体には様はない。返してやる」

 

その精霊は足元に倒れたマルタン君を掴み、レイちゃんに向けて雑に投げた。レイちゃんの変わりにマルタン君を抱き止め、地面に寝かせる。

 

「まさか本当に忘れた訳じゃないだろうね。僕を、この瞳を」

 

右が黄色、左が緑のオッドアイ。十代はあの瞳を見た途端、数秒間掛けて何かを思い出したのか、ユベルの言葉に少し遅れて声を出す。

 

「まさか、お前はユベル?」

「知っているのか十代?」

「ようやく思いだしのかい、十代。そうだよ、ユベルだよ」

「そんな・・・・、馬鹿な!」

「そうだよ、君は僕を宇宙へ飛ばした。どうして? 僕はこんなに君を愛してるのに?」

 

この二人がどんな関係なのか分からないが、十代の戦う気力が無くなっているのは分かる。

 

「十代! しっかりするんだ! みんなの運命は俺とお前にかかってるんだ!」

「ヨ、ヨハン・・・・。そうだよな。今の俺には仲間達がいる!」

 

ユベルと呼ばれた精霊は二人のやり取りにチッと舌打ちをする。

十代が今まで覚えていなかったとなると、十代にとってはそこまで大切な思い出は無かったのか? しかし十代の反応を見る限り、かなりショックを受けていた。一体二人は・・・・。

 

「ドロー。君達には驚いたよ。まさか一日に二回もこのモンスターを出す事になるなんて。魔法カード、次元融合殺を発動!」

「ッ!? 気を付けろ二人とも!」

「フィールドの三幻魔を融合し、混沌幻魔アーミタイルを融合召喚!」

 

AD0

 

態々三幻魔を融合素材にして攻撃力守備力0。その異様さに警戒し、二人はデュエルディスクを力強く構える。

 

「混沌幻魔アーミタイルの効果発動! 一ターンに一度相手モンスターを選択。選択したモンスターに10000ポイントの戦闘ダメージを与える! カオス・ネオスを選択! 全土滅殺・天征派!」

「10000ポイントだと!?」

 

十代のフィールドに魔法・罠カードは無い。この効果を通してしまえば、10000にネオスペースの恩寵を受けたカオス・ネオスの攻撃力を引いた6500のダメージが十代を襲う。アーミタイルの前に現れた、混沌が具現化した黒い球体がカオス・ネオスに向かって飛ばされる。

 

「ツッ! どうすれば「十代、後は頼むぜ」ヨハン?」

「速攻魔法プリズム・ウォールを発動! 混沌幻魔アーミタイルの効果対象を自分に向け、互いの攻撃を貫通させる!」

「何!?」

 

本来ならカオス・ネオスに向かって飛ぶ黒い球体。しかしフィールドに現れた無数の宝石の柱によって別の方向へ誘導され、レインボー・ドラゴンに向かっていく。

 

「今こそ見せろ! レインボー・ドラゴンの効果発動! フィールドの全ての宝玉獣を吸収し、一体に付き攻撃力を1000上げる! レインボー・オーバー・ドライブ!」

 

レインボー・ドラゴンA4000→A10000

 

「アーミタイルと互角だと!?」

 

ヨハンのフィールドの半分を埋め尽くしていた六体の宝玉が、自らの象徴する光を放ち、レインボー・ドラゴンに埋め込まれている宝玉に入って行く。六つの宝玉の力を受け継いだレインボー・ドラゴンの前に、アーミタイルが放った闇の球体が接近する。

 

「俺は自分のデュエルを通してみんなを救う事が夢だった。今、それを叶える時が来たんだ。後は頼んだぜ。行け、レインボー・ドラゴン! オーバー・ザ・レインボー!」

 

A10000 VS A10000

 

レインボー・ドラゴンは七色に光るエネルギー砲を闇の球体に撃つ。ヴィヴィオさんの砲撃によく似た虹色の攻撃は、闇の球体とぶつかり周囲に黒と虹色の衝撃波を交互に起こす。

攻撃力10000と攻撃力10000の戦い。しかも方や三幻魔の融合体、方や究極宝玉神。その両者の全力がぶつかり、俺達がいる決闘場は一溜まりも無く、ミシミシと音を立てて行く。

 

「うあああああっ!」

「そんな、ばかなぁああ!」

「ヨハァァァァン!」

 

この二体の衝突の近くにいた三人の声が聞こえて来る。ヨハンとユベルはプリズム・ウォールによる貫通ダメージでライフが0になる。残った十代が勝者となるが、その十代も攻撃力10000同士の衝撃に耐えきれず地面に吹き飛ばされた。

 

「レイちゃん! マルタン君と十代を連れて脱出するぞ!」

「十代は俺が運ぶ!」

「オブライエン! 分かった、頼むぞ!」

 

マルタン君を担ぎ、この衝撃の源をキッと睨みつける。ライフが0になったヨハンが元の世界に戻れるか分からない。だから――

 

「ヨハン! 絶対に助けに行くからな!」

 

聞こえているか分からないが、俺は目一杯の大声で叫んだ。

階段を降り切った時には決闘場は岩の集まりになり、その決闘場から虹色の光が柱となって天に昇っていた。

 

「これは・・・・」

「レインボー・ドラゴンの力が発揮したんだ。これでこの世界と元の世界の架け橋が出来た」

 

七色の光が天を貫くその光景は、俺が今まで見てきたどんな景色よりも綺麗だったが、どんな景色よりも虚しかった。

ただ茫然と七色の光を見ているしかなかった俺達の目から、気が付けば七色の光も三つの太陽も消えていた。

 

 

 

 

無事デュエルアカデミアに帰る事が出来た。

その事を実感できたのは、正気に戻った生徒と、この世界に戻る手助けをしてくれた科学者や先生達の大歓声を聞いてからだった。緊張の糸が切れたとはこの事だろう。突然足の力が抜け、フラフラと地面に尻持ちを付く。

大声を上げて喜んだり、嬉しさの余り泣いたり、持って来てもらった食糧を食べたり、友達と抱き合ったり。皆が感動する中を、白衣にポケットを入れたまま歩いてくる人物が一人いた。

 

「父さん・・・・」

「まずはよくやったと言おう」

「ありがとう。父さんのおかげさ」

 

この会話だけ見ると、仲の良い普通の親子に見えるだろう。だが実際は違う。父さんは元居た世界ではテロリスト。俺は意味不明な力を持ってる奴。

 

「いくつか聞きたい事がある。そっちの次元を調べている最中、とてつもないエネルギーを感知した。レインボー・ドラゴンを向こうに送る最中にだ。あれは何だ?」

「去年話しただろ。三幻魔と一緒にどこかに行ったフェルシュトラーフェ。あの子と本来の三幻魔が融合したアーミタイルの衝撃だ」

「そのカードはあるかい?」

 

一瞬父さんに渡そうかどうか悩んだが、弱っているフェルや精霊達(みんな)を救う方法を知っているかもしれない。融合デッキが入っているホルダーを取り出し、フェルと三幻魔のカードを探す。

 

「・・・・ない?」

「ふむ。この世界に戻る前に逃げたのかもしれないね」

「あいつ。あんな体で何処に・・・・」

「まあいい、次だ。お前が首に掛けているその首飾りは何だ?」

 

あっ、三幻魔とフェルの話はしたけどこの首飾りの話はしてなかんだっけ?

 

「これは最後にF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)がくれたんだ」

「ふむ、少し触らせて貰うよ」

 

俺の前にしゃがんできた父さんは、服の中から竜の爪を取り出してマジマジと見る。すると何かに気付いた様だ。

 

「今一瞬光が消えなかったかい?」

「え? ゴメン、ボーとしてた」

「ふむ・・・・。お前も疲れただろう。今日は休めばいい」

「やけに優しいな。それとみんなは元に戻るのか?」

「クックック、私は君の父親だからね。質問にはイエスと答えよう。あの連中の事だ、一日二日で戻ってくるだろう。あと最後に、これは独り言だが、次元の余波で数日後に次元の歪が出るかもしれない」

 

そう言って父さんは立ち上がり、他の研究者の人と喜んだりせず、そのまま去って行った。相変わらず一匹狼と言うか、コミュ力が無いと言うか。

細長い背中が視界から消えると、突然目の前にペットボトルが差し出された。

 

「明日香?」

「その、遊斗。十代に何かあったの?」

「十代は何て言ってた?」

「自分の所為でヨハンが、って」

「と言う事はやっぱりヨハンは帰って来なかったか・・・・」

 

血が出る程強く拳を握り、怒りを自分にぶつける。肝心な時にデュエルが出来なくて、結局十代とヨハンに任せっぱなしだった。精霊世界に行って強くなった? 友達一人守れないで何が強くなっただ。

 

「ヨハンはな――」

 

明日香に説明した。十代とヨハンがタッグを組んでデュエルを挑んだ事。マルタン君を操っていたのは十代と深い関係がある精霊という事。ヨハンはデュエルアカデミアのみんなを助ける為に、一人犠牲になった事。

 

「そんな事が・・・・」

「今はそっとしておいてやれ」

 

 

 

 

その翌日。明日香にヨハンの事を説明してから、またいくつか進展があった。

ヨハン以外にももう一人、アモンがこの世界に帰ってきてない事。

マルタン君がこの学校を止めてナポレオン教諭と一緒に静かに暮らす事にした事。

無事にデス・ベルトが外れた事。

みんなのカードの色が昨日より濃くなってきた事。ユベルに根こそぎ力を奪われたが、フェルの救済によってかなり回復が早まったらしい。真っ白な状態でもみんなは死んでなかった様だ。

最後に一つ、これは進展とは言えないが、あれから十代は誰とも話さずに部屋に籠っているらしい。

かくいう俺も疲労回復と精霊世界で起こった事を纏める為に部屋から出ていなかった。さっきの話は見舞いに来てくれたジムが教えてくれた。

 

「さて、俺もいい加減外に出ないとな。十代の所に行くか」

 

この間の戦闘でボロボロになったブルー寮の制服は使えないので、私服に着替える。ふと今気が付いたが、俺の色の好みはフェイトに影響されたのかもしれない。流石に黒一色ではないが、赤と黒の組み合わせが多く、黄色のアクセサリーや小物を付けたりする。

 

「こういうのも無くして初めて気付く事なのか?」

 

みんながいたら、勝手に殺すなってツッコミを入れて来るだろうが、そのツッコミを貰うにはもう少し時間が必要だ。

もう一日以上ダラダラしていた様で、外を出ると、十六夜の月がデュエルアカデミアを照らしていた。

十代の部屋の前まで来ると、コンコンとノックをして「遊斗だ」と名乗る。勿論返事が来るとは思っていないので、ドアノブを回す。勿論鍵が掛かっているのも分かっていたので、未だに続く馬鹿力で無理やりドアノブを回す。バキッと嫌な音が聞こえたが、無事にドアが開いた。

 

「勝手に入るぞ十代」

「なっ、何でドア壊すんだよ!」

「だったらちゃんと返事をしろ」

 

自分しか使わない二段ベッドの下で、十代は横になっていた様だ。今はベッドを尻に引き、勝手に入って来た俺を軽く睨んでいる。だがヨハンを失ったショックがでかいのか、全く怖くない。

 

「十代、お前が考えているのは大体分かる「遊斗には分からな」お前は単純だからな」

「うっ・・・・」

 

そこで言い返せないのが、普段天真爛漫で考えるより先に突っ走る遊城十代だ。

 

「ヨハンを犠牲にしたのは自分の所為。ユベルの暴走も自分の所為。だから何としてでもヨハンを助ける。そうだろ?」

「まあ、だいたいは・・・・」

「昨日父さんの独り言を聞いてな。余波でひょっとしたら今日か明日の間に次元の歪が出来るらしい」

「え?」

「全く信じられない父親だろ? また俺達に次元を旅しろって言ってるんだ」

 

余りの滅茶苦茶っぷりにケラケラと笑いながら十代に告げた。すると十代は突然スッと立ち上がって机の上に置いてあったデッキホルダーを腰に付ける。

 

「おい。いくら何でもこんなタイミングに出る訳は無い。ちゃんと準備して『クリクリ~』マ、マジかよ・・・・」

『クリ~、クリクリ~』

 

どうやらハネクリボーの話では、このデュエルアカデミア内で、精霊に似た気配を感じたらしい。おそらく次元の歪から漏れている精霊の力だろう。言われてみればそんな気配を感じられない事も無い。

 

「俺は行く。遊斗、お前はどうする?」

「行くに決まってるだろ。けどせめてみんなが戻ってから出て欲しかった」

 

次元の歪がいつ消えるか分からない。デッキとデュエルディスク以外何も持っていない、手ぶらの状態で俺達は部屋を出た。

ハネクリボーの案内が終わると、目の前にグニャリとネジ曲がっている空間があった。今すぐにでも飛び込みたかったが、そのグニャリとネジ曲がっている空間が狭すぎて、通る事が出来ない。

 

「ど、どうする?」

「レインボー・ドラゴンの時みたいに、モンスターに乗せてデュエルエナジーを与えればいいと思う。デス・ベルトも取れたし思いっきり召喚できる」

「けどLSは戻って無いんだろ? 俺一人のデュエルエナジーで「僕達を忘れないで欲しいッス!」翔!? それにみんな!?」

 

俺と十代の後ろにはいつの間にか、翔、明日香、万丈目、三沢、剣山、吹雪さん、ジム、オブライエンの八人がいた。つけられていたのか、それとも誰かから次元の歪の事を知ったのか。どっちにしても皆俺達に付いてくる気満々だった。

 

「お前の為じゃない。俺はヨハンを助けに行くんだ」

「俺達もヨハンにはお世話になったドン」

「そうッス! このままじゃ終われないッス」

「ヨハンを護衛するミッションがまだ終わっていない」

「フレンドを助けるのに理由はいらないだろ」

「そのヨハンって子に明日香ともどもお世話になったみたいだからね」

「ヨハンは勿論、次元についても興味がある」

 

十代と同じ様に、ヨハンも自然と他人を惹きつける魅力があるようだ。みんな言葉と共に自分のエースカードを十代に見せる。

 

「みんな・・・・」

「これだけいれば行けるぞ十代!」

「ああ! 行くぞみんな! E・HEROネオスを召喚!」

「XYZ-ドラゴンキャノン!」

「スーパービークロイド-ステルス・ユニオン!」

超伝導恐獣(スーパーコンダクターティラノ)!」

「ウォータードラゴン!」

「サイバー・エンジェル-弁天!」

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)!」

「地球巨人ガイア・プレート!」

「ヴォルカニック・デビル!」

 

皆自分のエースカードの名前に魂を込めて叫ぶ。このカード達がヨハンを救う鍵になってくれるのだ。モンスター達も自らの名前を高らかに呼んでくれ、信頼してくれた主に応える様に力を込める。

俺は融合デッキから一枚のカードを取り出して、誰にも聞こえない小さい声で囁く。

 

「実際に力は使わなくていいです。でも俺の魂を、思いを、あの次元の歪にぶつけて下さい。AOA高町なのは!」

 

俺のデッキの中核であり、最も出番の多いカード。デュエルだけでなく、実生活でもいつもいつもお世話になっていた。まだ会話も出来ないくらい衰弱している状態だが、せめて形だけでもみんなと共に、あの次元の歪をこじ開けたい。

皆次元の歪を指し、攻撃名を宣言する。

 

「ラス・オブ・ネオス!」

「X・Y・Zハイパー・キャノン!」

「ブロウンクマグナム!」

「アルティメットバイト!」

「アクア・パニッシャー!」

「エンジェリック・ターン!」

「ダーク・メガフレア!」

「プレート・テンペスト!」

「ヴォルカニック・キャノン!」

「ディバインバスター!」

 

それぞれの必殺技が時空の歪を無理やり抉じ開ける。十の必殺技は次元の歪を少しずつだが確実に広げていき、小さい穴は次第に大きくなっていく。次第に歪の中から白い光が漏れだし、薄暗い夜に真っ白な光が線を描く。その光の線は次第に大きくなっていき、辺り一帯を白の光で覆い尽くす程眩くなる。

 

「開いたぞ!」

 

この声はおそらく三沢だろう。かなりの爆音で誰の声かハッキリ区別出来なかったが、誰かが開いたと言ったのは耳に入って来た。

その時だった。まるで白い光に引っ張られる様に体が次元の歪に呑み込まれた。体を動かすと皆同じように呑み込まれた。どこまで続く真っ白な空間だったが、今俺達が下に落ちているのは分かる。

何秒か、何分か、何時間か。永遠に同じ景色が続き時間感覚が狂って来たころ、突然真っ白な空間に黒が現れた。

おそらくあれが出口だろう。そう思った時、突然キーンと高い音が聞こえてきた。いや、聞こえて来たと言うよりは直接頭に響かせている様な感覚。余りにも異様な感覚に、酷い吐き気と眩暈を覚え、気が付けば俺の意識は闇に落ちていた。

 

 

 

 




異世界から戻ってきた回に異世界に旅立つ系二次創作。

極力早く進めたいんですよ(文字数稼げない言い訳)
今回はポンポンストーリーが進みました。実は最初、十代とヨハンと一緒にユベルと戦う予定でしたが、構成を練る前から難しいと分かっていたので断念しました。レインボードラゴンを出す、アーミタイルを出す、フェルを出す、十代にも活躍させる。かつフィールドに六体の宝玉獣がいるようにする。
作者には無理です。



それと全く関係ありませんが、遂にブルーアイズのストラクチャーの看板カードが出ましたね。
感動的だ。だが蘇生効果を、効果モンスター以外にして欲しかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。