それから今更ですが、エンドフェイズ時の表記を少し変えております。ひょっとしたらまた次に遊戯王作品書くかもしれないので、その練習的なノリです。まあいくら短いとはいえ、四期にも時間がかかると思うので、次作を書く確率はかなり低いでしょうが・・・・。書いたとしても100%完結しませんね←オイ
第六十六話
「帰って来たか。デュエルアカデミアに・・・・」
マイナスイオンを放つ穏やかな波を背に、俺は海岸からデュエルアカデミア本校を見上げた。あれから、
あれから色々な事が起こった。一から順に全て説明すると日が暮れてしまうので、簡単に説明する。
まず
その一ヶ月の間、もう一人のフェルの事をずっと、奴だとか、ボロボロの恰好をした少女とか言うのもかわいそうなので、フィンスターと名を与えた。因みにみんなで考えた名である。
フィンスターも随分と穏やかと言うか、平和な性格になり落ち着いた。まあ元々落ち着いた正確であるが、どこか歪んでいて、その歪みが徐々に和らいでいったと言った方がいいかもしれない。
因みに。
「ね~ね~遊斗! 早く遊斗の部屋に行こうよ! フィンスターも遊斗の部屋に行きたいって!」
「その前に校長先生に挨拶して、十代に超融合を返してからな。それに俺の部屋って言うより、みんなの部屋って言った方が合ってる」
「けど置いてあるものは遊斗の物が多いから、遊斗の部屋でいいんじゃない?」
「まあそう、なのか?」
フェルとフィンスターは二重人格。二人の内一人が表に出て、もう一人が内側におり、二人の気分によって表に出る人格が変わる。まるで初代デュエルキングの武藤遊戯さんと、名も無きファラオの魂の様だと、今でもしみじみ思う。
閑話休題。
それで精霊世界でのいざこざが一段落ついたので、俺は一ヶ月ぶりにデュエルアカデミアに帰って来たのだ。因みに先程、俺の部屋に行きたいと口にしたのがフェル。何だかんだで俺の部屋じゃないか? と言ったのがフェイト。美少女二人を両手に歩くのは男として悪くないが、フェルは妹や近所の子供感覚で接しているので、両手に花って感覚では無い。
久しぶりのデュエルアカデミアを懐かしみながら歩いていると、目の前で男女が言い争っていた。いや、正確には争いでは無く、女が男を一方的に怒鳴っていると言った方がいい。
「どうして十代様の相手が明日香さんなの!?」
「いや、俺に言われても困るザウルス。レイちゃんはそんなに俺と組むのが嫌ザウルス?」
「嫌とかそういう問題じゃなくて、何で卒業生同士でしかペアが組めない様にしたの!?」
もはや顔を見ず、変声機で声を変えようとも誰と誰が言い争っているか一目瞭然である。男に文句を言っているのは十代大好きなレイちゃん。方や怒鳴られている方は同じく別の意味で十代が大好きで、それに加え恐竜も好きな剣山。
そのやり取りを見て、二人を知らないフェルは首をチョコンと傾げ、二人と仲の良いフェイトは「あはは・・・・」と俺と同じ様に苦笑している。
話の内容はよく分からないが、とりあえずかなり困った顔をしている剣山を助ける為に二人に声を掛けた。
「よっ。二人とも、何してるんだこんな所で?」
「遊斗先輩!?」
「遊斗さん!?」
「そんな幽霊を見たかの様に驚かなくても・・・・」
虫の居所が悪かったレイちゃんも、困っていた剣山も、二人揃って目と口を開いてポカーンという表現が一番あった顔をしている。ネットのポカーンの顔文字を二人の横に並べると、かなり似ているだろう。
「い、今までどうしてたんですか!? みんなが帰って来ても遊斗さんだけ帰って来ないし!」
「あ~、あれから色々あってな。向こうの次元でいくつかやらないといけない事があって。エドやオブライエン、亮さんから何か話を聞かなかったか?」
「そういえばあの三人も、遊斗先輩は向こうで何かする事がある。心配しなくてもいいドンと言っていたザウルス!」
「あの三人は語尾にドンって付けないが、そういう事だ。やる事やって帰って来た訳。それで今度はこっちの質問だがレイちゃんは何に怒ってたんだ?」
するとレイちゃんはグイッと背伸びして、俺に顔を近づけて、か~な~り怒った表情で説明を始めた。が、感情的になっていて説明がかなり断片的で分かりにくく、仕方無いので事情を全て知っている剣山に説明を求める事にし、その間フェイトにレイちゃんを宥めてもらう事にした。
「え~と、出来れば始めから説明して欲しいんだが」
「分かったザウルス。まずそもそもの始まりは、もうすぐ卒業する卒業生との交流の為のペアデュエル――簡単な言い方をするとタッグデュエル大会ドン。卒業生は卒業生同士で、1・2年生は1・2年生同士でペアを組むザウルス。因みにペアの相手は異性じゃないとダメザウルス」
「あ~、去年のカップルデュエルみたいなものか。で、レイちゃんは十代と組めなくて怒っていると。まあ去年はレイちゃんが十代とタッグ組んだんだからもうすぐ卒業する明日香に譲ってやっても「ダメなの!」そうなの?」
「十代様何か変わって、だからボクが元気にさせてあげようって! だから!」
「フェイト。翻訳を頼む」
何をどう俺に伝えたいのか全く分からないレイちゃんの説明は、俺の想像力で補う事は出来なかったのでさっきまでレイちゃんを宥めていたフェイトに説明してもらう事にした。
「ね~遊斗~。早く遊斗の部屋行こ~」
「はいはい。お前はそこ等辺で遊んできなさい」
「え~っ」
「そう言えばその子、誰ザウルス? まさか遊斗先輩、二股――」
「――違う違う。あ~も~話が進まない!」
それから数分後、俺の部屋に行きたがっていたフェルはなのはさんに案内を頼んで先に部屋に行って貰い、剣山にはフェルがカードの精霊だと説明し、レイちゃんを落ち着かせて、そしてフェイトから説明をしてもらった。
フェイトの説明を纏めるとこうなる。
約一ヶ月前にみんながデュエルアカデミアに帰って来てから、十代の様子が変わったらしい。何でも一週間前まではずっとレッド寮に引き籠っていたらしく、ようやく外に出てからも余り他人と関わらない様にしていた。そんな十代を見ていたレイちゃんと剣山は、十代を元気づける為にペアデュエル大会を開催。
しかしレイちゃんは自分が十代のタッグを組んで十代を元気づけようと考えていたらしく、卒業生は卒業生としかタッグを組めないルールを作った剣山に文句を言っていた。
「で、その後は俺達と会ってこうしている、と。ま~、とりあえず剣山、お疲れさん」
「あ、ありがとうザウルス~!」
学校行事を一から作るなんてかなり大変な作業を剣山は頑張ってきたのにもかかわらず、レイちゃんにあ~だこ~だ言われて剣山も結構辛かったのだろう。まるでアニメの様に滝の様な涙を流しながら俺に抱き着いて来た。
とはいえ、恋に一直線のレイちゃんに悪意があった訳じゃない。
「ね、レイちゃん。今の十代がどんな感じになっているのかは知らないけど、十代はデュエルが強い女の子が好みだと思うよ。だからこの大会でレイちゃんが強いって事を改めて証明したら、十代に良いアピールができるんじゃないかな?」
「・・・・さ、流石遊斗さん!」
どうやらレイちゃんなりに納得してくれた様だ。さっきまで鬼の百面相だった顔は、花の様な明るい笑顔へと変わる。
「なら遊斗さん! ボクとペアデュエル大会決勝に出て下さい!」
「へ? 決勝? ってもう決勝まで勝ち進んだのかよ!?」
チラリと胸元で泣いている剣山に視線を動かすと、もう疲れたザウルス! お願いだから変わって欲しいドン! と訴えかけてくるような視線で見つめられていた。確かに今までも散々言われて来た上げく、仲良くデュエルをする十代と明日香を見るレイちゃんをパートナーにしてデュエルして、更に自分より強い十代と明日香を相手にするのは中々骨の折れる仕事だ。まあ剣山の恐竜の骨がそんな事で折れるとは思えないが。
「分かった。一応聞くが剣山はそれでいいのか?」
「勿論ザウルス! 二人とも頑張るドン!」
剣山って語尾と恰好は常識から大きく外れているが、意外と真面目というか常識人だよな・・・・。
「頑張ってね遊斗。観客席で応援しているから」
「ああ・・・・って、ちょっとぐらい嫉妬して欲しいんだが・・・・」
「ん? 何か言った?」
「いや、何でも無い。じゃっ、行こうかレイちゃん」
「はい!」
デュエルアカデミアに帰って早々デュエルとは、まさにデュエルを教えるデュエルアカデミアらしい。思えばあの次元世界では、デュエル=命のやり取りなので、こうやってのんびりやるデュエルは随分と久しぶりだ。腰に掛けたホルダーからデッキ取り出し、デッキの中を確認しようとすると、背中からフェイトの声が聞こえた。
「遊斗」
「ん? どうかしたか?」
「私は遊斗を信じてるから、妬いたりなんてしないよ」
「ッ!?」
「ふふっ、頑張ってね」
太陽の様に明るくも、優しくて何もかも包み込むような大人の笑顔。その笑顔を見た俺の頬はすっかりと赤くなっていたらしく、デュエル会場に向かう間ずっとレイちゃんに冷やかされていた。
◇
「レディース&ジェントルメ~ン! つい~に、このペアデュエル大会~も決勝戦なノーネ!」
【うおおおおおっ!】
会場を繋ぐ出場者専用の廊下で待機していると、マイクによって何倍にも大きくなった懐かしい声と、盛り上がりがピークになった生徒達の声が会場を包み込んでいた。
思えばクロノス先生もあの次元に来ていたんだっけ? 結局会う事無かったが、おそらくあのクロノス先生の事だから、
「まず~は、卒業生からにゅうじょ~う! ブルー寮の天上院明日香とレッド寮の遊城十代なノーネ!」
【うおおおおっ!】
【明日香さーん!】
【十代さーん!】
流石一年の頃から人気のある明日香と、様々な伝説を作った十代である。その歓声はさっきよりも何倍も大きかった。会場が明るくて、この廊下は薄暗いのでライトの中にいる十代と明日香の姿をハッキリと見る事は出来なかったが、十代の背が伸びた気がする。
「そして~っ! 在校生はブルー寮の早乙女レイとイエロー寮のティラにょにょっ!? シニョール遊斗!?」
「「遊斗!?」」
廊下を出て会場へ入ると、会場からの歓声は無く、ざわざわとざわめき始めた。俺は気にすること無くレイちゃんと共にデュエルフィールドに上って、先に待っていた十代と明日香に軽く手を上げる。
「よっ。二人とも久しぶり。クロノス先生もお久しぶりです」
「お、お久しぶり~・・・・じゃないノーネ!」
「そうよ遊斗! あなたいつ帰って来たの!?」
「ついさっきだ。たまたまレイちゃんと剣山と会ってな。剣山は体調不良らしいから、代わりに俺が出る事になった。それから十代」
「なんだ?」
確かに十代の雰囲気が随分と変わった。いや、雰囲気だけじゃなく見た目も変わっている。デュエルアカデミアにいる時の十代の定番である、レッド寮の服に白いズボンの組み合わせは、黒いズボンへと変わっており、制服の下に着ていた黒いTシャツは黒のタートルネックへと変化。髪も僅かに伸びており、アホ毛が無くなっている。顔立ちも大人びたと言うか、よりイケメンになったと言うか、幼い感じの可愛い系だったのがカッコイイ系になっている。
う~む。男の俺でも、かなり良い男と惚れ惚れする感じになっている。
「このカード、助かったよ。おかげで大事なデュエルに勝つ事ができた」
シュッと十代に向けて一枚のカードを飛ばすと、十代は人差し指と中指の間に挟んでキャッチした。そのカードを見て十代は一瞬顔をしかめるが、すぐに無表情になり、キャッチしたカードをデッキホルダーの中ではなく、ポケットの中に入れた。
「本当に、役にたったのか? このカードが?」
「ああ。無かったら今頃――想像しただけでもやになる」
「そうか。なら・・・・よかった」
「いいデュエルをしような、十代、明日香」
「ええ」
「え~と、何か色々ありました~が! もうどうでも良いノーネ! みんなもブルー寮遊斗・スカリエッティの乱入に異存は無いノーネ?」
【うぉぉぉぉ!】
【遊斗先ぱ~い!】
【頑張ってくださーい!】
いや~、久々の帰還にこうやって歓迎されるのは素直に嬉しい。観客席にいる皆に軽く手を振ると、デュエルディスクを起動させ、デッキをデュエルディスクに装着する。
「遊斗さん。さっきのカードは?」
「超凄い融合カードさ。ほら、そんな事より、十代にアピールするんだろ?」
「はい! 十代さまー! 私、十代様に勝って強いデュエリストって証明してみせます!」
「あ、ああ?」
「それじゃあ行くノーネ!」
【「「「「デュエル!」」」」】
「先攻は僕が貰うよ! ドロー! ライトロード・マジシャンライラを召喚!」
A1700・D200
「ゴブホッ!?」
「ゆ、遊斗さん? どうかしたの?」
「い、いや。何でも無い。レレレ、レイちゃんデッキ変えたんだね~」
「はい! ちょっと落ち込んでいる時、この子達が助けてくれたんです!」
いやいや、落ちつけ落ち着け。まだライトロードと決まった訳じゃない。ライラはその汎用性の高さからライトロードデッキ以外にも様々なデッキに使われる。そもそも高額のライトロードデッキを年齢的にはまだ中学生であるレイちゃんが持てるとは思わない。
「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズライラの効果でデッキトップ三枚を墓地へ送るよ。やった! 墓地へ送られたライトロード・ビーストウォルフの効果で、デッキから墓地へ送られたこのカードを特殊召喚!」
A2100・D300
・・・・この子のデッキ、絶対ライトロードだ。いやいや、別にライトロードが悪い訳ではない。だがやはり俺も向こうの次元では、ライトロードモンスターの精霊と戦った事があり、ライフが削られる事は無かったにしろ、かなり苦戦されたモンスター群だ。軽くトラウマになったと言っても過言では無い。エンドフェイズ時にデッキトップのカードを墓地へ送る(デ?)メリット効果を持っており、その共通効果を使って展開力を爆発的に上げるデッキ。
思い出してみると、精霊世界で
場
遊斗&レイ 手札4 LP4000 TPレイ
モンスター ライラ ウォルフ
魔法&罠 セット×1
「エンドフェイズ時にデッキのカードを墓地へ送るライトロードデッキ。相手にとって不足は無いわ。私のターン!」
この三年間明日香とデュエルした回数は片手で数えられる程度だからあんまり記憶に無いが、確か機械天使とサイバー・エンジェルの混合型だっけ? 俺が言える立場ではないが、明日香のデッキもかなり滅茶苦茶だ。強欲な壺が遂に禁止になった今、あの手札消費の激しいデッキをどうやって回すんだろうか?
「さっそく行くわ! 融合発動! 手札のエトワール・サイバーとブレード・スケーターを融合! 来て、サイバー・ブレイダー!」
A2100・D800
明日香のデッキに多い、機械仕掛けのバレリーナモンスター。他のバレリーナモンスターと違って、明日香の切り札であるこのモンスターの放つオーラは中々のもの。
二年前、翔が覗き疑惑をかけられた時のデュエルでコイツと戦ったっけ。密度の濃い学園生活を送って来たからか、もう遠い昔の様に感じられる。
ブレイダーA2100→A4200
「攻撃力が4200に!?」
「サイバー・ブレイダーは相手のモンスターの数によって効果が変わるモンスター。二体の時は攻撃力が倍になる。バトル! サイバー・ブレイダーでライラを攻撃!」
A4200 VS A1700
「キャッ!」
サイバー・ブレイダーはフィールドを滑ってライラに接近し、鍛えられた足を武器としたキックを使い、ライラを場外へと蹴り飛ばす。サイバー・ブレイダーに比べると攻撃力が貧しいライラは壁に激突し、バリーンと音と共に破壊された。
レイLP4000→1500
「ぅぅっ、すいません遊斗さん」
「ん、気にするな。初っ端らから攻撃力4200なんて出されたらそうなってしまうのは当然だって」
「モンスターの数が変化した事で、サイバー・ブレイダーのモンスター効果が変わる」
ブレイダーA4200→A2100
明日香のモンスターは表記されているステータスは決して高くはない。その分ステータスを上昇する装備モンスターや、サイバー・ブレイダー等の特殊な効果を持つモンスターが花を咲かせる。が、やはり火力不足感が否めないが、そこは気合とプレイングで補っているのだろう。
「マンジュ・ゴッドを守備表示で召喚。効果でデッキからサイバー・エンジェル-荼吉尼を手札に加える。カードを一枚伏せてターンエンドよ」
A1400・D1000
召喚と同時に儀式カードを手札に加える事ができるモンスター。有名な仏像を意識したイラストだろおう。ただ仏様が天使族なのは、違和感を覚えずにはいられない。
場
遊斗&レイ 手札4 LP1500 TPレイ
モンスター ウォルフ
魔法&罠 セット×1
十代&明日香 手札3 LP4000 TP明日香
モンスター ブレイダー マンジュ・ゴッド
魔法&罠 セット×1
さてと、タッグデュエルもずいぶん久しぶりだな。十代と一緒にコブラとデュエルをした時以来か。あれもタッグデュエルよりも変則デュエルに近い。
まっ、デュエルに関係無い事はこれくらいにして、と。
「俺のターン、ドロー! 相手が十代なら、手加減する必要も無いか。レヴィを通常召喚! 効果で自身にLCを置く!」
『やっほー! 久しぶりだね~・・・・って、十代何か変わったね』
LCレヴィ1
A1900・D400
「みたいだな。カートリッジロードをレヴィに発動し、LCを乗せる」
LCレヴィ1→2
「魔法・罠ゾーンにアリサとすずかを置く! アリサの効果でレヴィを支援! バトルだ! レヴィでマンジュ・ゴッドを攻撃!」
『ひっさしぶりの光翼斬!』
A1900 VS D1000
円を描く三日月状の魔力刃が放たれ、マンジュ・ゴッドの体と沢山の手を切断する。グロテスクな光景にならないよう、マンジュ・ゴッドは爆発してフィールドから去り、その代わりに俺のフィールドにそれぞれ少女と女性が守備表示で現れる。
「レヴィの効果。戦闘で相手モンスターを破壊した時、自身のLCを取り除き、取り除いた数だけデッキからLSを特殊召喚する。コロナとカリムを特殊召喚する」
レヴィLC2→0
A500・D1700
AD500
「これで遊斗のフィールドにモンスターは四体。サイバー・ブレイダーの効果が無効になる。変わらないな、お前は」
「いや、お前ほどじゃないが結構変わったさ。アリサの効果発動。支援したモンスターが戦闘でモンスターを破壊した時、対象のモンスターにLCを乗せる。更にフィールドにすずかがいる場合デッキから一枚ドロー」
LCレヴィ0→1
「カリムの効果発動。カードの種類を宣言し、デッキトップが宣言したカードだったら手札に加える。魔法を宣言。デッキトップはレイジングハート。手札に加える。そしてコロナの効果発動! 手札一枚を墓地へ送り、デッキからゴライアスを特殊召喚する!」
AD2300
コロナの隣の地面が盛り上がり、地中に埋まっていた岩や土を使って作られたゴーレムが白いライトの元に姿を現す。かなり理想的なパターンで動いている分、手札消費もさほど多くは無い。
「すずかの効果発動。レヴィのLCを自身へ移動」
LCレヴィ1→0 すずか0→1
「そしてすずかのもう一つの効果。アリサがいる時、自身のLCを取り除き、相手モンスターを選択。選択したモンスターは次の相手のエンドフェイズ時まで攻撃、表示形式の変更ができない。サイバー・ブレイダーを封じる」
「クッ!」
LCすずか1→0
「さっすが遊斗さん! フィールドを埋めてサイバー・ブレイダーの効果を無効にして、更に攻撃まで封じるなんて!」
「いや、まだデュエルは始まったばかりだ。油断はできない。ターンエンド。エンドフェイズ時にデッキからカートリッジロードを手札に加える」
場
遊斗&レイ 手札4 LP1500 TP遊斗
モンスター ウォルフ レヴィ カリム コロナ ゴライアス
魔法&罠 セット×1 アリサ すずか
十代&明日香 手札3 LP4000 TP明日香
モンスター ブレイダー
魔法&罠 セット×1
「ごめんなさい、十代」
「別にいい。俺のターン」
明日香の謝罪に返事一言、か。見た目が大人っぽくなったと同時に、随分性格もクールになっている。前の十代だったら「へへっ、気にすんなって! ピンチの方がワクワクするぜ!」なんて言いそうだけど。何よりデュエルを楽しもうとする気持ちが今の十代の中には無い。
十代はフィールドにいるサイバー・ブレイダーを面倒くさそうな顔で見ながら、チラリと自分の手札を眺める。コンバート・コンタクトかバブルマンでも持っているのだろうか。
「手札抹殺を発動。手札を全て捨て、俺は五枚ドローする」
「TPである俺が効果を受ける。俺は四枚ドロー」
「ブラック・パンサーを召喚」
A1000・D500
ネオスペーシアンか。彼等とこうやって対峙するのもずいぶん久しぶりだ。ブラック・パンサーって事はカリム姉の効果を奪うか、ブラック・ネオスの融合素材にするか。
「ブラック・パンサーの効果発動。お前のカリムの名前と効果を得る」
「効果を奪われたか」
「カリムの効果発動。魔法を宣言。O-オーバーソウル。手札に加え、そのまま発動。墓地のネオスを特殊召喚!」
A2500・D2000
さっそくエースであるネオスを呼んだか。久しぶりのネオスに、軽く手を上げて挨拶をすると、ネオスはコクンと小さく頷いて返事をしてくれた。しかしこの状況でネオスを呼んでも――まさか初っ端からあのカードを・・・・。
「魔法カード、ラス・オブ・ネオスを発動。ネオスをデッキに戻しフィールドのカード全て破壊する!」
「ちょっと十代!?」
上空に飛び上がったネオスは、フィールドの中央に向け怒りの手刀を振り下ろす。ネオスの手刀に耐えきれなかった地面にはクレーターが作られ、攻撃の衝撃が敵味方関係なくフィールドにいるあらゆるカードを破壊する。
エースカードであるサイバー・ブレイダーとせっかく伏せたカードが破壊された明日香は怒っている。
「別にいいだろ。遊斗の厄介なモンスターを全滅できたんだ」
「けどもう少しやりかたってものが」
「二人とも全然に気が合ってないじゃないですか?」
「みたいだね。破壊されたリ・バウンドの効果を発動する。セットされたこのカードが破壊された時、デッキから一枚ドローする」
「コンバート・コンタクトを発動。手札のグロー・モスとデッキのフレア・スカラベを墓地へ送って二枚ドロー。死者蘇生を発動。墓地のバブルマンを特殊召喚し、デッキから二枚ドロー」
A800・D1200
墓地に明日香の切り札であるサイバー・ブレイダーがいるのにも関わらず、二枚ドロー出来るバブルマンを特殊召喚か。ますます明日香の機嫌が悪くなっているが、この二人、よく決勝まで勝ち上がって来られたな・・・・。
「装備魔法バブル・ショットを発動。バブルマンの攻撃力を800アップする。バトル! バブルマンでダイレクトアタック!」
「これが決まったら僕達負けちゃう!」
「大丈夫って。手札のザフィーラの効果を使い、戦闘ダメージを0に。その後デッキから一枚ドロー」
「やはりそう簡単にはやられてくれないか。カードを一枚伏せてターンエンド」
場
遊斗&レイ 手札5 LP1500 TP遊斗
モンスター
魔法&罠
十代&明日香 手札2 LP4000 TP十代
モンスター バブルマン
魔法&罠 バブル・ショット セット×1
「僕のターン! ライトロード・サモナールミナスを召喚!」
AD1000
レイちゃんが召喚したのは、踊子の様な少し露出度の高い恰好をした黒い肌をした女性。サモナーと名乗っているだけあり、両手首には腕輪の様に魔法陣が展開されており、魔法使いらしさをアピールしている。
「ルミナスの効果発動! 手札を捨て、墓地のライラを特殊召喚するよ!」
A1700・D200
俺ならここでライラの効果を使って、十代のリバースカードを破壊するがレイちゃんはどうする?
「バトル! ライラでバブルマンを攻撃!」
A1700 VS A1600
ライラは木で作られた杖の先に埋め込まれている白い宝石に魔力を込めたのだろう。白い宝石は綺麗な明るい光を放ち、ライラが杖を振ると同時に宝石からドッジボールサイズの白い魔力弾が発射された。
「バブル・ショットの効果でバブルマンの破壊を無効にし、戦闘ダメージを0にする」
「ならルミナスでバブルマンに攻撃!」
A1000 VS A800
サポートをメインとするルミナスは攻撃手段が乏しい様で、なんと拳でバブルマンに立ち向かい、あろう事か普通に戦闘破壊してしまった。エドの使うD-HEROもだけど、下級HEROはHEROの名に相応しく無い低ステータスモンスターが多い。
十代LP4000→3800
「罠発動、ヒーロー・シグナル。デッキからレベル4以下のE・HEROを特殊召喚する。E・HEROエアーマンを特殊召喚。効果でデッキからネオスを手札に加える」
A1800・D300
「さっすが十代様。私の攻撃を少ないダメージで抑えながらネオスを手札に加えるなんて」
「いくら十代だからって敵を褒めてどうする・・・・」
「だって十代様だもん!」
「ハァ~。だってさ十代」
「ん? ああ。ありがとな、レイ」
自分の時は愛想の無い返事ばかりをしていた十代が、レイちゃんに対してはしっかりと礼をした。それが面白く無かった様で、明日香の機嫌が段々と悪くなっていた。一方、冷めていた十代から「ありがとう」と言われたレイちゃんは、それはそれは嬉しそうに頬を崩している。
「私はカードを一枚伏せてターンエンドです。エンドフェイズ時にライラとルミナスの効果でデッキのカード六枚を墓地へ送るよ。そしてデッキから墓地へ送られたライトロード・レイピアをライラに装備。ライラの攻撃力は700ポイントアップ」
ライラA1700→A2400
場
遊斗&レイ 手札2 LP1500 TPレイ
モンスター ライラ ルミナス
魔法&罠 レイピア セット×1
十代&明日香 手札3 LP3800 TP十代
モンスター エアーマン
魔法&罠
「私のターン! 再びマンジュ・ゴッドを召喚し、デッキから機械天使の儀式を手札に加える。十代、あなたのモンスター借りるわよ」
「ああ。好きに使え」
まるでタッグプレイヤーである明日香の事を全く考えていない様な返事に、そろそろ明日香も限界の様だ。まあ明日香も余り我慢強い方じゃないし、十代を軽く睨みつけながらきつい口調で返した。
「そうさせて貰うわッ。機械天使の儀式を発動! フィールドのエアーマンとマンジュ・ゴッドを生贄に、サイバー・エンジェル-荼吉尼を特殊召喚!」
A2700・D2300
おそらく日本神話の登場人物がモチーフになっているのだろうが、俺はその辺りに詳しくないのでよく分からない。体のラインがきっちりと見えるセクシーな恰好をしているモンスターだが、肌は青で腕は四本あり、二本の腕で二本の刀を、残りの腕で一本の長槍を持つそのモンスターは、セクシーの言葉からかけ離れている。
「荼吉尼は特殊召喚成功時、モンスター一体を破壊する! ライラを破壊!」
荼吉尼は空へ跳び、ライラに向かって長槍を投げる。
「これで終わりよ! 荼吉尼でルミナスに攻撃!」
「そう簡単に終わらせない! 永続罠、ライトロード・バリア発動! ライトロードが攻撃対象になった時、デッキのカード二枚を墓地へ送る事で攻撃を無効にするよ!」
ルミナスの前に
「やるわね。カードを二枚伏せてターンエンドよ」
場
遊斗&レイ 手札2 LP1500 TPレイ
モンスター ルミナス
魔法&罠 バリア
十代&明日香 手札0 LP3800 TP明日香
モンスター 荼吉尼
魔法&罠 セット×2
「俺のターン。レイちゃん、悪いけどルミナスを」
「はい、大丈夫です」
「ありがとね。フィールド魔法ミッドチルダを発動! ルミナスを生贄に、ディアーチェを召喚!」
LCディアーチェ1 ミッドチルダ0→1
A2100・D1600
久しぶりの十代とのデュエルが嬉しいのか、僅かに見えるディアーチェの口元が少しだけ上に上がった気がした。
「魔法・罠ゾーンにキャロを置く。これでディアーチェの攻守が300アップ」
ディアーチェA2100・D1600→2400・D1900
「そしてキャロが存在する時、遠隔転移を発動できる。遠隔転移はLS専用の死者蘇生。墓地のレヴィを特殊召喚!」
『呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃ~ん!』
『テンポが間違ごうておるぞレヴィ』
レヴィA1900・D400→A2200・D700
「悪いな明日香。お前のエースモンスターの出番は一ターンのみだ。ミッドチルダの効果で、ミッドチルダに乗ったLCをレヴィに移動する」
LCミッドチルダ1→0 レヴィ0→1
「バトル! レヴィで荼吉尼を攻撃!」
「へ? 相手のモンスターの方が攻撃力高いですよ?」
「ッツ! 何も無いわッ」
レイちゃんは俺のデュエルを余り見て無いからディアーチェの効果は知らないが、明日香は知っている。荼吉尼に向けてレヴィが光翼斬を放った直後、青い刃に続いて紫色の砲撃が発射された。
「ディアーチェの効果発動。自身を除くマテリアルズかユーリが戦闘を行うダメージステップ時、自身のLCを取り除く事で、フィールドのLSの攻撃力を戦闘モンスターに収束させる」
LCディアーチェ1→0
レヴィA2200→A4500 VS A2800
レヴィの放った三日月状の魔力刃を二本の刀をクロスさせて防いだ荼吉尼だったが、追撃として放たれたディアーチェのアロンダイトまで止める事が出来ずに爆発。レヴィは満足そうに笑みを浮かべながら『シュテる~ん!』とデッキに眠っているもう一人のマテリアルズの名を呼んだ。
明日香LP3800→2100
レヴィLC1→0
「レヴィの効果でデッキからシュテルを特殊召喚」
シュテルAD800→AD1100
『呼んでいただき感謝します。レヴィ』
『へへ~ん、もっと褒めてもいいんだよ~?』
マテリアルズが揃った事で三人を融合させる事ができるが、キャロの効果もあってディアーチェとレヴィの攻撃力は2000を超え、シュテルもレベル3以上のモンスターと戦闘を行う場合攻撃力が2000を超える。しかし十代の手札にネオスがいるのも気にはなるが、その時は伏せカードを使うか。
「カードを一枚伏せてターンエンド」
場
遊斗&レイ 手札0 LP1500 TP遊斗
モンスター ディアーチェ シュテル レヴィ
魔法&罠 バリア キャロ セット×1
十代&明日香 手札2 LP2100 TP明日香
モンスター
魔法&罠 セット×2
手札3
「ハァ・・・・。三年にもなって学校行事のさなか、子供っぽい喧嘩するなよ・・・・」
「ん? なにか言ったか?」
「・・・・十代、それに明日香。このままデュエルをしていたら俺達が間違いなく勝つ。それが嫌ならもう少しコミュニケーションを取るんだな」
二人とも仲直りするつもりがあるのか、互いに顔を見合わせるものの、明日香がすぐにそっぽを向いてしまい十代も俺達へと視線を戻す。明日香の素直になれない性格が裏目に出ている。
しかもパートナーであるレイちゃんからは「相手へのアドバイスはデュエルが終わった後にして下さい!」と怒られるし、まさに踏んだり蹴ったりだ。
「でも確かに遊斗先輩の言う通りですね」
「え?」
「だって十代様も明日香先輩も思ってたより全然弱くて、正直決勝って感じがしませんし、弱い者苛めしているみたい」
相手を――大好きな十代を挑発するような事を言って良かったのか? そんな言葉を込めた目でレイちゃんをチラッと見つめると、二人に見えない様に小さく舌をペロッと出した。
なるほどね・・・・。悪役になってでもいいから、少しでも前の十代に戻って欲しいと。
「なっ!? あなた達の方がライフは下なのよ! そんな事言える立場!?」
「確かに俺達の方がライフは低いが、フィールドで勝っている。マテリアルズの攻撃一つ通るだけでライフは並ぶ。お前達が追い詰められているなんて、小学生だって分かる事だ」
「何ですって!」
滅多な事じゃない限り挑発なんてしないので、わざとらしくないか心配だったが、どうやら冷静さを失っている明日香には効いた。怒鳴り声と共に前に乗り出した明日香。その前に、十代の手が伸びた。
「落ち着け明日香。確かに今追い詰められているのは俺達だ。このままだったら負けてしまうかもしれない」
「十代・・・・?」
僅かに首を傾げる明日香の視線の先には、デュエルディスクを眺めて何かを確認する十代の姿。
「明日香、お前のセットカード使わせて貰う」
「・・・・ええ! 思いっきりやりなさい!」
単純な作戦だったが上手くいった様だ。二人に見えない様にガッツポーズをすると、レイちゃんはニコッと笑みを浮かべて小声で「ありがとうございます」と頭を下げた。
十代もいい娘に好かれたものだ。明日香とレイちゃん、十代はどっちを選ぶのか、そもそも二人を選ぶかもわからないが、俺はレイちゃんを応援したいな。やっぱり鈍い十代に対してはストレートで想いを伝えるレイちゃんの方が――って話がズレたな。今はデュエルに集中。
「俺のターン! ゴブリンのやりくり上手を発動し、チェーンして非常食を発動。ライフを1000回復し、墓地のやりくり上手は二枚となったのでデッキから三枚ドローして一枚をデッキの一番下に置く」
十代LP2100→3100
あれ? 一枚目のやりくり上手を墓地へ送るタイミングってあったっけ? 十代はデッキに入れていないから、考えられるのは最初のターン明日香が伏せたカード。だけどあれがやりくり上手だったら十代が発動していた筈。
あの時の事を思い返してみると、十代は明日香がセットしたカードを確認する素振りを見せなかった。明日香はサイバー・ブレイダーが破壊されたのと同時に、フリーチェーンであるやりくり上手を使わなかった事に怒っているのか。
「装備魔法、再融合を発動! ライフを800払い、墓地のサイバー・ブレイダーを特殊召喚する!」
A2100・D800
「あなた達のフィールドのモンスターは三体。よってキャロの効果が無効となり攻撃力が下がるわ!」
ディアーチェA2400・D1900→A2100・D1600
シュテルAD1100→AD800
レヴィA2200・D700→A1900・D400
「戦士の生還を発動! 墓地のバブルマンを手札に加え、融合発動! 手札のバブルマンとフェザーマンを融合し、スチーム・ヒーラーを融合召喚!」
A1400・D1000
「速攻魔法融合解除を発動。墓地のバブルマンとフェザーマンを特殊召喚。そしてバブルマンとフェザーマンを生贄に、ネオスを召喚!」
A2500・D2000
五枚使ってネオスを召喚か。非効率的な召喚だが、このターンで決着を付けるのなら話は別だ。十代は明日香に向け今日初めて小さく笑う。それに明日香も応え、少しだけ口元を嬉しそうに上げる。
「バトル! ネオスでシュテルを攻撃! ラス・オブ・ネオス!」
A2500 VS A1100
シュテルは炎の魔力弾、パイロシューターを突進してくるネオスに撃って時間を稼ぎ、その間にクルッと俺の方を向いて、いつもと変わらない無表情な顔と感情の籠っていない声で呟いた。
『・・・・後ほどお話があります』
「あ~、お菓子あげるから許してくれないかな?」
レヴィとディアーチェが活躍し、ようやく自分が登場したのにもかかわらず、何も出来ないまま破壊される。戦闘に関してプライドの高いシュテルには、大げさな表現かもしれないが屈辱的だろう。と思っていたが、シュテルはフフッと息を吐くと『冗談です。あくまでこれはデュエルですので』と言って、振り下ろされたネオスの手刀を受けて破壊された。
しかし俺の目を見るシュテルの瞳が、とても冗談を言っている様には見えなかった・・・・。さっき言った通り、シュテルには美味しいお菓子を奢らないと・・・・。
遊斗LP1500→100
「相手のモンスターの数が変わった事でサイバー・ブレイダーの攻撃力が二倍になるわ!」
ブレイダーA2100→A4200
ディアーチェA2100・D1600→ A2400・D1900
レヴィA1900・D400→A2200・D700
だがこれでセットしたリバースカードが発動できる。リバースカードは攻撃対象になったモンスターに、攻撃を収束させるディバイトエナジー。ディアーチェとレヴィの攻撃力の合計は4600。ギリギリサイバー・ブレイダーを迎撃できる。
「行くぞ明日香!」
「ええ! サイバー・ブレイダーでディアーチェを攻撃!」
攻撃宣言時と同時にディバイトエナジーを発動しようとしたその時、右手が小さい何かによって掴まれた。この状況で俺を掴むものはただ一つ、レイちゃんの手だった。攻撃宣言を受けたサイバー・ブレイダーは待ってはくれず、ディアーチェに迫って来る。
「レイちゃん?」
「せっかく十代様が笑ってくれたんです。その、良かったら・・・・」
十代と明日香を勝たせたい、か。
・・・・元より俺は剣山の代役であり、この決勝の舞台に立つ事を許されない者。そしてこのデュエルはエンターテイーメント。今この会場の皆が、二体のエースモンスターの連続攻撃によって十代と明日香の勝利を願っている。
「いいよ。レイちゃんがそれでいいなら」
「ありがとうございます」
「「グリッサード・スラッシュ!」」
A4200 VS A2400
ディアーチェは『仕方無い』と小さくため息を吐き、その後ニヤリとあくどい笑みを浮かべると迫りくるサイバー・ブレイダーに向けて紫色の魔力弾を発射する。しかしサイバー・ブレイダーは氷の上で踊っているかの様にスイスイと華麗に移動して魔力弾を回避する。どうやらディアーチェの放った魔力弾は、場を盛り上げる為に多少改良されているのか、魔力弾が地面や壁に着弾すると同時に派手な爆発を起こしている。
そしてとうとうサイバー・ブレイダーの間合いに入ってしまい、ディアーチェはサイバー・ブレイダー自慢の蹴りによって蹴り飛ばされ、壁に激突して小さいクレーターを作ると共に破壊された。
遊斗LP100→-1700
「サイバー・ブレイダーの攻撃が決まったノーネ! よってペアデュエル大会優勝はシニョール十代とシニョール明日香のペアナノーネ!」
【うおおおおおおーーーっ!】
◇
その夜。三年になるまではよく一緒につるんでいたいつものメンバーと、ペアデュエル大会の後夜祭をして盛り上がっていた。会場は懐かしのおんぼろレッド寮。
レッド寮に入るや、人の気配が全く無いので、何故かと問いた。どうやら皆イエローやブルーに上がって、レッド寮は今十代一人しかいないらしい。つまり、レッド寮の制服は十代のトレードマークになったって事。レッド寮の制服は、他寮の制服よりカッコイイ為、十代がちょっとだけうらやましいと思った。何て少し外れた感想を抱いている俺自身も、今はブルーの制服を着ずに私服なのだが。
「けど万丈目や翔だけじゃなくて、他の同級生のレッド生までいなくなったと思うと少し寂しいな。お前もそうだろ? 十代?」
「別に。一人だと落ち着くし、あいつ等も上に行ったんだ。だったら喜ぶべきじゃないか?」
「ま~そうだけどさ」
デュエルした時から分かっていたことだが、随分と十代の性格が変わっており、パーティー始まってすぐの時はかなり戸惑っていた。今も違和感を覚えるものの、元々冷めているところもあったし、だいぶ慣れてきた。
俺は空になったガラスコップにオレンジジュースを七割程注ぎ込み、ゴクッゴクッと喉を鳴らしてジュースを飲み乾す。そして周りでワーワー騒いでいる皆に聞こえない様に、ボソッと十代の耳元で呟いた。
「で? さっき明日香と二人で話してたみたいだけど、何かあったのか?」
「ん? ああ。ちゃんと明日香とは仲直りした。サンキュー」
「俺は何もしてない。その言葉はレイちゃんに言ってあげな。・・・・結局明日香とは何にも無かったのか・・・・」
「何か言ったか?」
「何にも」
卒業あと間近って時に想い人と二人っきり。てっきり告白したのとばかり思っていたが、明日香も恋に関しては奥手。結局二人は友達同士って訳か・・・・。
数ヶ月ぶりの地球世界のジャンクフードを噛みながら、なのはさんが揚げてくれた海老フライを堪能している鈍感野郎の横顔を眺め、ハァと内心で溜息を吐く。まあ明日香の様な、自分の気持ちを素直に伝えられない女の子の気持ちを十代が察せる訳ないと前々から知ってはいたが、18にもなって花より
なんてジャンクフード特有の上手さを堪能しながら考えていると、ポンポンと肩を叩かれた。振り向くと万丈目が立っており、俺だけでなく十代の肩も叩いていたようだ。
「二人とも、そんな隅で何をこそこそしているんだ。二人にはまだ話していなかったな。お前達がいなかった間に生まれた、この万丈目サンダーの伝説を」
「は? 伝説?」
「そうだ。お前達にも1から聞かせてやる」
「聞かない方がいいッスよ。どうでもいい話ッスから」
「どうでもいいとは何だ!?」
「実際くだらない話ザウルス」
「そうね。それこそ本当の伝説を作ってる十代や遊斗に自慢できる話じゃないわよ」
「ええい! どいつもこいつも! いいか、二人ともよく聞け! そもそも事の切っ掛けは一ヶ月前の――」
万丈目の話は何度も何度も途中で遮られ、結局その話が何だったのかは分からなかった。その事に関してはいささか不満ではあるが、それよりもいつものみんなとこうやってワイワイと騒いでいた時間は、今年の数多の嫌な事、苦しい事を忘れさせてくれる最高の時間だった。
それからすぐにあんな大事件が起こるなど、この時の俺達は誰も予想していなかった。
二十代カッコイイよ二十代。
遊戯王作品の中で一番好きなキャラですね二十代。ATMとかカイザーとか元キンとか満足先生とか、遊馬神とかベクターとか沢山の魅力的なキャラがいますが、作者は二十代押しです。
――なんですが、他作品で二十代って見た事無いんで、どんな感じにしたらいいのかいささか不安な面もあったり。最後に本編見たのもかなり前ですし、二十代らしさが出ていればいいんですが。
今回のデュエルは結構早く終わったのですが、これでもかなり文字数使っておりまして・・・・。本当はもっと伸ばすつもりだったんですが、あそこで決めないと、いよいよジャッジメントさんがアップを始めるし、デッキ枚数数えるのとか絶対やりたくないんで。