雄英高校の校舎、日本どころか世界的に見ても学校としては広大な規模を誇るヒーローを育成する高等学校。
その校舎の一室、使用中になっている部屋から電話の電子音がプルルルと音が鳴っている。
電話が繋がりやせ細った黄色の目立つスーツを着た男性が電話先の相手に声をかける。
「もしもし塚内くん、今ちょっといいかな」
『オールマイト?こちらは問題ないが⋯一体どうしたんだ急に?』
友人からの急な電話に、そしてとても真剣な声音に戸惑いを隠せない塚内と呼ばれた男はオールマイトの次の言葉を待つ。
「以前、新しい後継を見つけたと話したの覚えてるかい」
「当然だろう?事が事だ、時間が経とうとあっさり忘れられるような内容じゃないだろう。⋯確か緑谷出久くん⋯だったかな。⋯!?まさか、彼の身に何かあったのか?」
『ワン・フォー・オール』特異な性質を持つこの“個性”は初めて誕生した何十年も前からただ一つの目的の為に託し託され続け
オールマイト自身も自身の師匠にそれを託され、そしてつい先日自身の
そんな彼に何かあったとなれば大変どころではないと、事情を知る塚内は一抹の焦りを見せた。
「いや、違うんだ。そういう話じゃない。そもそも彼本人ではなく彼のクラスメイトの少女についてなんだ」
「クラスメイトの少女?一体何があったんだ」
「普段通り彼の訓練をしている最中に姿を見られてしまってね、私と緑谷少年の関係を看破されただけでなく個性のことまで気づかれてしまった」
「何だと!?オールマイト!だからあれほど周りの目は気をつけろと⋯」
「違うんだ塚内くん、それも重要なことだが真に話したいのはそれじゃない」
「何?じゃあ一体⋯」
少しの沈黙の後、オールマイトは口を開く。
「⋯緑谷少年からその少女について話を聞いたんだ。成績優秀でイジメの被害者になっている緑谷少年を庇う品行方正な生徒だと⋯」
「?いい子じゃないか、それが一体⋯」
「個性の名称が不明で誰も聞いた事はなく、まるで複数の個性を持っているようだと」
「!?」
オールマイトのその言葉に塚内は酷く驚愕し、座っていた椅子から立ち上がる。
「それは⋯本当なのか⋯?」
姿こそ見えないがオールマイトには塚内の心情と表情は容易に察せられる、何せ緑谷から話を聞いた彼自身も同じ同じだったから。
「緑谷少年曰く、物を直したり、対象を斬ったり、壁に垂直に立ったり⋯雄英の入試にも来ていたが確かに複数の個性を使っている姿が確認できた。ロボットを斬り、風を起こし、雷を振らせ、蔓のようなもので移動し、試験後には受験生たちの傷を治したり壊れたロボットや建物を直して見せた、まず間違いない」
「⋯その少女のこと、校長やリカバリーガールには?」
「試験前に既に伝えたよ、グラントリノ⋯先生には君の後で伝えるつもりだ。とはいえ校長やリカバリーガールはそこまで危険視していなくてね。私も正直彼女が奴の手先とは考えづらい」
「⋯確かに、そう聞くと杞憂だったと思えてくるな」
少し表情が柔らかくなる塚内。
「しかし油断はできない、その行動全てがブラフの可能性だったあるし彼女が気づいていないだけで奴とは接触している可能性もある。警戒は必要だと思うからこそこうして連絡したんだ」
オールマイトが口にした“奴”という存在、2人にとってそれほど脅威なのか暫く沈黙が続く。
「⋯わかった、彼女についてこちらで少し秘密裏に調べてみるよ」
「あぁよろしく頼むよ塚内くん、私は私で警戒は続ける」
電話が切れ、オールマイトはひとつため息をついた。
座学は好成績で実技はダントツの1位、合格するには文句無しの結果を残し、個性の多様性や試験中の彼女の行動から事を知っている校長とリカバリーガール、そして事情を知らない教師陣からも高評価である。
彼女が奴とは全くの無関係で純粋にヒーローを志す1人の少女であるなら、オールマイトとしても喜ばしいことだ。
だが⋯
「万が一にも奴の間者だった場合には⋯」
言葉に力が篭もり、痩せ細った身体が筋骨隆々なヒーローとしての姿に変わる。
「何としても奴への手掛かりを聞き出し、今度こそ奴を!!」
1人しかいない教室にて強く想いを露わにする、その表情は一介の
そして・・・
「すみません、遅くなりました」
「ちょっとオールマイト、電話長すぎ!!まだ全体の半分も終わってないんだから早く仕事戻って!!」
「あ、ごめんなさいすぐやります⋯」
あまりの仕事量に疲労とストレスが溜まりに溜まり、長電話で長時間留守にしていたヒーローとしては大先輩だが教師としては新任であるNO.1ヒーローに対し容赦なく怒気の籠った言葉をぶつける1人の教師。
しかしその思いはその場で作業している教師の殆どが同様に抱えており、彼らの視線と圧はどんな