雄英高校の入試の日よりそこそこに時間が経ち、今日は合格発表日。
雄英高校の合格発表は学校に合格者の受験番号を掲示するのではなく、専用サイトで確認できる訳でもなく、1つの手紙が各住所に送り届けられる。
封筒ではなく、如何にも手紙らしい手紙だ。
中には紙媒体のものではなく録画した映像を空中に投影できる機械だけが入っている。
部屋の電気が消されたリビングの机にそれを置く、ソファの真ん中に座る私の隣には剣さんと第2子を身篭った酒成さん、私の膝の上には長男の刀くん(5歳)が座っている。
置いた途端に映像が映し出されると・・・
『私が投影されたぁ!!』
そこには黄色いストライプのスーツを身にまとったオールマイトがいた。
「オールマイトーー!!」
オールマイトが大好きな刀くんは突然現れたその姿に驚きつつすごく喜んでいる。
しかし・・・
「むむ?何故オールマイトが合格通知の映像に出てくるのだ?」
「まぁまぁ理由は語られるでしょうから静かに見守りましょ、刀も静かにしましょうね」
「はーい」
3人は口を閉じ、映像のオールマイトに注視した。
『いやぁすまない白威少女、驚かせてしまったかな?何故オールマイトが、と思っているだろう。実は私が雄英に勤める事になったからなんだ』
オールマイトの言葉にこの場にいる全員が驚いた、何せ雄英に合格した生徒はNO.1ヒーローに直接教鞭を取ってもらえる、ヒーローを志望するものにとってこれ以上に贅沢なことはない。
「さて白威少女、君の試験結果についてだが・・・
意味深な終わり方が気にかかる、まるで・・・
「そう!何を隠そう今回の試験、見ていたのは
オールマイトの後方にある液晶テレビ、オールマイトがリモコンのスイッチを入れるとそこには受験生数名の名前と各項目のポイントが映し出される。
「白威日野!、
その数字に驚いた、私も、剣さんも、酒成さんも。
少なくとも次点で高いのが出久の60となると、その高さがより際立つ。
嬉しさもあるが何より驚きでいっぱいいっぱいだった。
「過去、これ程の点数を取った生徒は1人としていない!他者へ手を差し伸べる。正しくヒーローの素質!来いよ!ここが君のヒーローアカデミアだ!」
その言葉を最後に映像は消えた。
あまりの衝撃に刀くん以外の3人が固まっている、次第にプルプルと剣さんが震えだしたかと思えば立ち上がり刀くんを抱える私を持ち上げる。
「ハハッ・・・ハーッハッハッハ!!流石だな、日野!流石は我が妹よ!!」
興奮が治まりきらぬのか、ただ持ち上げるだけだったのが次第に少しずつ動き出し・・・回り出す。
「つ、剣さん!?」
「お父さんもっとー♪」
「お前は自慢の・・・ヒッ!?」
剣さんは個性由来じゃないのに膂力が凄い、そんな人に回された私は意識を失いかけていた。
しかし急に回転が静まっていき、完全に止まるとストンと降ろされる。
足取りがフラフラな状態、視界がぼやけた状態でドカッとソファに倒れ込む。
何とか辛うじて手放さなかった刀くんは私とは正反対にキャッキャと喜んでいる。
ぼやけた視界が治まっていくとそこには全身震えて正座する剣さんとその前に仁王立ちする酒成さんがいた。
「剣さん?」
「!!・・・・・・ハィ」
「日野ちゃんの合格、それもあのようなすごい成績に興奮する気持ちも自分のことのように嬉しい気持ちも分かります・・・。でもやりすぎですよ?」
「ハィ・・・」
「しかも以前も言いましたよね?幾ら兄妹とはいえ日野ちゃんは年頃の女の子・・・それをあのように・・・」
顔は笑っている、でも溢れ出るオーラから酒成さんの怒りが伝わってくる。
先程までの剣さんが嘘のように縮こまっており、私にとっては見慣れた光景となってしまった。
「少しそのままで反省してくださいね?」
「ハィ・・・」
今日はいつもより早く収束した、普段ならあと1時間は何も無かったら続いてる。
何かある理由は刀くんが泣き出すとか私が止めに入ったりするとか・・・。
今回は私の雄英合格した嬉しい日に、必要以上に怒りたくないのだろう。
「・・・さて、それじゃあ祝賀会にしましょうか♪丹精込めて作るわ。・・・あぁ、剣さん?今日はいいですけれど明日から1週間禁酒ですからね?いいですね?」
「・・・ハィ」
「日野ちゃんはゆっくりしててください」
「はい、ありがと・・・」
言い切る前にピロンと音が鳴る、スマホを開くと試験会場で仲良くなった切島くん以外の皆からだ。
試験の結果について送られてきてる。
『【一佳】日野、あんたとんでもないね!』
『【梅雨】?日野ちゃんがどうかしたのかしら?』
『【一佳】そっか、梅雨ちゃんと希乃子は知らないのか。日野、救助ポイントが100点でさ、実技の入試成績がダントツ1位なんだよ。2位の爆豪って奴の倍ぐらい差をつけてさ!』
『【希乃子】凄っ!?』
『【梅雨】本当に凄いわね、でも確かにあれだけのことをしたんだもの。その評価も納得だわ』
『【希乃子】うんうん、私たち日野ちゃんの合格は疑ってなかったよね』
『【一佳】試験時間外とはいえあれだけのことしてたらそりゃね』
『【梅雨】日野ちゃんの結果を知ってるってことは一佳ちゃんも合格したのね、おめでとう』
『【希乃子】おめでとキノコ~♪因みに私も合格なのですっ』
『【梅雨】ケロケロッ♪私も合格したわ、皆にまた会えるのが楽しみね』
どんどん更新されていくコメント。
「お友だちかしら?」
「はい、入試で仲良くなった子たちです。みんなも受かったみたいで・・・。ちょっと、友だちに連絡してきます」
と、一声かけてスマホに視線を再度落とし話に加わる。
『【日野】皆も合格おめでとうございます』
『【一佳】おっ来た、よっNO.1』
『【日野】・・・ありがとうございます、NO.6。私とは89点差かしら?』
『【一佳】おっ言うね、入学したら追い越してやるから首洗って待ってな』
『【日野】あら、それは楽しみね』
『【希乃子】2人とも!1位と5位で言い争わないでよ!もっと下の順位がここに2人いるんだから!』
『【梅雨】気にしなくていいわ希乃子ちゃん、合格できた希乃子ちゃんも周りからしたら凄い点数だわ』
『【希乃子】トゥンク・・・梅雨ちゃん・・・///でもその梅雨ちゃんも私より上・・・』
『【日野】まぁでもホントの話、希乃子の個性で救助ポイントを聞かされずに合格できたのは普通に凄いことだと思うわよ。貴女もそちらの方が点数が高かったのでしょ?普段から意識している証拠じゃないかしら』
『【希乃子】まぁ撃破ポイントも無いわけじゃないんだけどね』
『【日野】逆に一佳は思ったより倒してなかったわね、貴女も確か救助ポイントの方が高かったでしょう?』
『【一佳】まぁそうだね、私は遠距離手段ないし機動力も高くないから。何より日野が、敵倒しまくってたし。私の分があんまり残ってなかったんだよ』
『【日野】私一人でどうこうって訳じゃないでしょうに。』
どんどん私たちの話は盛り上がり、各々の夕食の時間まで続いた。
リビングのテーブルに並べられた数々の料理は豪勢と呼ぶ他ならない程に、見栄えも量も凄まじかった。
正直あの量の7~8割を1人で平らげた剣さんの胃袋が気になるところ、食後は4人で遊んだりして夜を過ごした?
合格発表後から初の登校、剣さんの家から直接向かう形で登校しているのだが、道中勝己のことを思い出し、1位じゃなかった勝己から何か言われるんじゃないかと悩み事が出来、途端に足が重くなる通学路。
行きたくないと思いながらも足を進めれば嫌でも学校に着いた。
しかし予想とは裏腹に勝己が登校してもその視線は私に向かず、出久に対して向けられていた。
当然その視線はとても褒められたものではなく、怒りと不満に満ちたそれこそ
休憩時間に私、勝己、出久は職員室に呼ばれた。
3人の雄英合格者が出たことで教師陣も大いに盛り上がったみたいで、担任に賛辞を送られた。
出久は褒められたことに分かりやすく喜び照れていたが、勝己は変わらず先程の視線で出久を睨んでいた。
教室を出た後、勝己は
「来い」
とだけ言葉を発し、制服の首元を掴んで引き摺るように連行して行った。
私は
「勝己、手は出さないように」
とは伝えたが聞こえているだろうが返事はなく、ただ無言でそのままどこかへ向かって行った。
周りからは止めた方がいいんじゃないの、等と声が上がっているが誰も勝己に口を出すものはおらず結局誰も助けない。
唯一この学校で勝己に物を言え、手を出せる私に対して視線が集まるが私は何もしない。
一応釘は刺したけど、流石の勝己も今の時期に手を出したりはしないだろう。
私物には容赦なく爆破したり捨てたり、それこそ胸ぐら掴んだりはするような男だが、それ以上はしない。
今やったら問題になるのをちゃんとわかっているから。
「やるなら、雄英の授業で・・・かな」
実際、教室に戻ってきた出久には一切の怪我はなく無事であった。
雄英でならここの先生陣と違って危なくなったらしっかり制止するだろう、それこそ言葉だけでなく実力行使もしてくれるはずだ、何より私の目が届くから何かあれば対応できる。
まぁでも出久が早く力を付けて自衛できるようになってくれれば1番いいんだけど。