太陽は昇る   作:ーー塩ーー

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第7話

相澤先生の指示通り体操着に着替えてグランドに集まった私たち、既に相澤先生はグランドで待っていた。

全員が揃うと先生はが私たちに告げたのは

 

「これから個性把握テストをやってもらう」

 

という一言だった。

女生徒・・・お茶子ちゃんの入学式とガイダンスについての質問に、ヒーロー科には不要な行事だとバッサリ切り捨てた。

 

「雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側もまた然り・・・」

 

先生の発言に誰も何も言えないでいる。

そこで私は誰もまだ触れていない、とある疑問を投げかけた。

 

「先生、質問よろしいですか?」

 

「何だ」

 

「確かヒーロー科は1学年A組B組の2クラスのみ、総数は40名のはずです。ですがこの場に生徒は21名いますが・・・問題なければ理由をお伺いしても・・・?」

 

そうこのクラスには21人いる、間違いなく。

皆知らないものだと思っていたのだが何人かは気づいている様子。

 

「あぁ・・・その事か、簡単な話だ。入試で実技成績が同点のものがいた、40位と41位でな。例年では座学の高い方が合格となるのだが、そっちの点数も同点・・・ではないが殆ど差が無かった為、会議の結果、差が殆ど無いならどちらも有望な生徒であると合格賛成派が多数であった為に41位の生徒もヒーロー科合格となった訳だ、過去に前例もあるしな。まぁ31位から41位の生徒は合格通知の映像に映ってたから気づいていたみたいだが」

 

成程、納得です。

 

「分かりました、ありがとうございます」

 

先生はスマホをこちらにかざす、液晶には体力テストで行う種目が表示されている。

 

「話を戻すぞ・・・。お前たちも中学の頃にやったことあるだろ、個性無しの体力テスト・・・。国は未だ確執的な記録をとって平均を作り続けている・・・合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だな」

 

遠慮なくズバズバ言う先生で驚いていると先生と目が合う。

 

「実技成績のトップは白威だったな、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」

 

「20m後半ぐらいだったと思います」

 

「・・・まぁいいや、じゃあ個性使ってやってみろ」

 

・・・これソフトボール投げじゃあ、どの筆しらべ使っても目立った記録は出せない・・・。

単なる記録測定だけならともかく、今回のこれはデモンストレーション・・・、個性の有無で結果が明確に変化がないと恐らく意味が無い・・・。

 

「せ、先生?」

 

「どうした、先も言ったはずだぞ時間は有限だと」

 

「いえ、そうではなくて・・・私の個性ですと何をどうしても使わずにやった場合の記録と大差ない結果になるのですが・・・果たして1番最初の人選として先生的には問題ない無いのでしょうか・・・?」

 

「何?・・・ふむ・・・じゃあ2位の爆豪、代わりにお前かやれ」

 

あぁやっぱり・・・

 

「勝己、すみませんが頼みます」

 

「はん」

 

私が差し出したボールをひったくるように取ると準備運動を始める。

投球フォームに入りそして・・・

 

「〇ねぇ!!」

 

ヒーロー志望とは思えない暴言とともに投げられたボールは勝己の個性“爆破”の爆風により能力無しじゃあ考えられないほどに遠く飛んでいく。

 

「まずは自分の最大限を知る・・・それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

相澤先生が持つスマホの液晶には705.2mの表示されており、皆から歓声が上がる。

ありがとう勝己、私じゃあこうはならなかった・・・。

勝己がやって見せたデモンストレーションにクラスは口々に楽しそうな声が上がる。

しかし彼らの反応を見た相澤先生はため息をついた。

 

「おもしろそう・・・か。ヒーローになるための3年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい」

 

相澤先生の表情がニヤリと笑みを浮かべる、とても悪い予感がする。

 

「よし、8種目の合計成績が最下位の者は見込み無しと判断し除籍処分としよう」

 

クラスに衝撃が走る、私もそうだ。

入試初日にそんなことを言われれば驚かないわけがない。

 

「生徒の如何は先生(オレ)たちの自由、ようこそ・・・これが雄英高校ヒーロー科だ・・・!」

 

結局生徒が何を言おうと結果は変わらず私たちは除籍という脅しを前に個性把握テストを受けることとなった。

私も当然個性を使って各種目に挑む。

 

~第一種目:50m走~

“筆しらべ”【桜花・蔦】、“モノ”と“モノ”を結ぶことで線状に蔦が伸び始点の方に片方を引き寄せる。対象が無い場合は虚空に始点を置けば数秒“桃コノハナ”が生まれ始点となってくれる。

発動できる範囲内であれば蔦が伸びてから移動するまで数秒とかからない。

 

順位・・・1位

 

~第二種目:握力測定~

無理、以上。

 

順位・・・真ん中より下

 

~第三種目:立ち幅跳び~

“筆しらべ”【桜花・蔦】、以下略。

連続で使用することで飛距離を大幅に伸ばした。

 

順位・・・同率1位

 

~第四種目:反復横跳び~

“筆しらべ”【霧隠】、横に二本線を描くと凡そ4秒間自分以外の時間の流れが遅くなる。連続使用可能。

しかし機械の反応も遅くなり、発動中の記録は殆ど計測されてなかった。

それに気づき途中から普通にやった。

 

順位・・・真ん中より上

 

~第五種目:ボール投げ~

“筆しらべ”【疾風】、正面なら渦模様を左右どちらかには途中くるりと円を描いた線を引くことで風を起こす。

勝己の爆風と違って火力が無いからお気持ち程度。

 

順位・・・真ん中

 

そして事が起こった、これまで4種目を終えて好成績を残せなかった出久。

力の調整がまだできないようで個性が発動することはここまで無かった。

その表情は焦りと不安でいっぱいいっぱいになっている。

そしてボールを投げるが今回も個性は発動せず、結果は個性を使った私と同じくらい。

だがどうも先程までと様子が違った。

 

「個性を消した。つくづくあの入試は・・・合理性に欠くよ、お前のような奴も入学できてしまう・・・」

 

そう言った相澤先生は髪が逆立ち、目が赤く光っている。

出久曰く相澤先生のヒーロー名は“イレイザーヘッド”と言うらしい。

聞いたことはあるがあまり聞かない名前、実際クラスメイトの殆どは一度もないようだ。

皆には聞こえていないようだけど、相澤先生は出久が個性の制御が出来ないことを見抜き、個性を使った出久が行動不能になる現状を認めていないようだ。

あの様子じゃあ出久が個性を使って結果を出しても、出し渋って素の成績を出しても除籍するつもりだ・・・。

相澤先生は言いたいことを言い終え、出久から離れた。

・・・オールマイトに会ってからじゃなく、合う前から鍛えておけば今よりはまだマシだったろうに・・・どうする出久。

出久は覚悟を決めたのか投球フォームに入る、そして・・・

 

SMASH!!

 

投げられたボールは1回目の結果を遥かに凌駕し、勢いよく空へ向かって飛んで行く。

皆が驚愕の表情を浮かべる中、私は飛んでいくボールよりも出久の赤紫に腫れあがった指に目がいった。

 

「・・・出久、その指見せて。治すから」

 

私に気づいた出久は驚きながらも言う通りに手を広げる出久。

個性を発動、しようとしたが発動することはなかった。

振り向くと相澤先生が“個性”を使っていた。

 

「・・・先生?これはどういうことでしょう」

 

「お前なら俺たちの話した内容は聞こえていただろう。緑谷の今の大きな課題である“個性”を使うと行動になる点。だが緑谷は工夫し、そしてまだ動ける、と言った。ヒーローになればすぐに治療出来ない状況なんてザラにある、お前のような治癒出来る奴・・・それも前線に出てこれる奴は希少だからな。今の緑谷の状態でコイツがどこまでできるか・・・本当に動けるかを俺は見る、だから治すな」

 

納得は行かない・・・けれども出久は恐らく相澤先生の中で除籍候補・・・見返すなら先生の意に反する行動はしない方がいい・・・か。

 

「・・・わ、かりました。ごめん出久、授業が終わったらすぐに治すから」

 

「いや!白威さんが悪いわけじゃないから!元はと言えば“個性”を扱えてない僕が悪いわけで・・・」

 

「それはそう、早く制御して。使う度にそれだけの怪我をされたら心が持たない」

 

「あ、はい・・・。ごめんなさい」

 

「うん、さて次はあっち何とかしなきゃ」

 

「あっち?」

 

私が視線を後ろにやるとプルプルと震えている爆豪がいた。

まぁこうなるだろうなとは思ってたけど

出久も気づいたのか顔が青ざめている。

 

「ゴラァ!訳を言え、デクてめぇ!!」

 

出久に向かって突進してくる勝己。

ヤレヤレと迎撃体制を取ろうとしたが、先に相澤先生が首に掛けていた布のようなもので勝己の動きを止めた。

勝己は力を緩めようと一切しないがそれでも解けない、ちぎれない。

相澤先生曰く炭素繊維に特殊鋼線を編み込んだ捕縛布らしい。

個性を発動しているから勝己は“爆破”で抵抗できないできる。

無理だと悟ったのか爆豪が諦め、相澤先生が布を解いた。

 

「時間がもったいない、次準備しろ」

 

出久は恐る恐る勝己の様子を伺いながら皆の元へ戻った。

そんな出久を憎むように見る勝己、そして私の方を見た。

 

「・・・おい日野、テメェは知ってやがったのか。アイツの個性」

 

「・・・えぇ、3年の途中でね。使うところ見たのは初めてだけど」

 

「!!・・・ハハッ、なんだそりゃ・・・。ってこたぁ・・・テメェもグルだった訳か」

 

「グル・・・ね、別にそんなつもりはないのだけど。私は他言しないでくれって頼まれたからそれに応えただけ。私は別にどちらかだけに肩入れするつもりなんてサラサラないよ」

 

私は動かない勝己の横を通る。

 

「出久には個性があって、雄英に受かった。クラスの人たちは貴方の言葉に便乗して暴言吐いたり、いいようにされてるのを見て見ぬふりするような人たちじゃない。先生たちも折寺の教師陣と違って貴方を止めてくれる。貴方がどういう理由で出久を嫌ってるかは知らないし興味もないけど・・・いつまでも中学生じゃないよ、貴方も・・・出久も」

 

勝己にそう告げた私は出久同様に皆の元へ行った、勝己は何も言わず肩を震わせて俯いている。

以降は勝己が特に衝動的な行動を起こすことはなく、順調に授業は進行していく。

【上体起こし】・【長座体前屈】・【持久走】・・・上2つは平均的なスコアだったが、持久走は“霧隠”を上手く使いクラス1位。

それなりの結果を残すことができ全行程が終了した。

相澤先生から集合がかかり、再度皆が集まる。

 

「じゃあ結果発表」

 

時間の無駄だから、と手元のリモコンを操作した相澤先生。

空中に映像が投影され、全員の順位が公開される。

1位から順にモモ、轟くん、勝己、その次に私・・・思ったより良い順位だったので一安心。

一方で最下位はやはり出久、ボール投げ以外がほぼ最低レベルの結果だった。

出久の方を見るとやはり落ち込んで沈んだ表情をしていた。

確かに出久はこのクラスの誰よりもまだまだ未熟、オールマイトから“個性”を与えられたのは聞いた話だと、試験の当日早朝。

そもそも彼自身がオールマイトと会うより以前から鍛えておけばよかった話だが過去の話をしてもしょうがない・・・。

しかしNO.1の力を持つ以上才能がない訳では無い、彼が伸びるのはこれからだ。

先生に直談判する?しかし何を言ったら納得してもらえるか・・・、そもそも除籍の話が出たのは個性把握テストに対して《おもしろそう》という発言があったからで・・・、先生の言う“見込み”の条件・・・最低ラインは?

 

「因みに除籍は嘘な」

 

・・・はぇ?

 

「君らの“個性”を最大限引き出す為の合理的虚偽」

 

ニカッと笑う相澤先生、それに対し驚く生徒もいれば

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない」

 

と驚く生徒に呆れるモモ。

嘘?・・・否、それは違う。

相澤先生の最初の表情、ボール投げでの出久との会話・・・相澤先生はこの個性把握テストを通じて出久をピンポイントで除籍にするつもりだった。

それを嘘だと言ったのは・・・除籍をするつもりが無くなった・・・出久に見込みがあると、考えを改めたから・・・。

何はともあれ良かった、1人だけ不満そうなのがいるけどそれは置いといてとりあえずホッとした。

 

「これにて終わりだ、教室にカリキュラム等の書類があるから目通しておけ」

 

先生の授業終了の言葉を聞いて、私はすぐさま出久の元へ行く。

 

「はい、出久。早く治すから手を出して」

 

「ぇあ!?は、はい!!」

 

急に私が声をかけたからか驚いた出久、しかし素直に手は出してくれたので私は出久に向かって“個性”を使う。

“筆しらべ”【虹星】、丸とそれを貫く1本の線を描くことで光の球体が傷を癒してくれる。

出久の内出血して赤紫に変色した指が元の色に戻っていく。

 

「これで大丈夫ですね」

 

「凄っ!全然痛くないや、ありがとう白威さん!」

 

すると今のやり取りを傍観していた他の人たちからドッと声がかかる。

 

「凄ェ!回復できるなんてめっちゃ希少な個性じゃん!!」

 

「あぁそれだけでプロからスカウトされるだろうし、羨ましいぜ」

 

「でもテスト中何か色々やってなかった?日野の“個性”ってなんなの?」

 

「ふふっまだ秘密です、また近いうちに教えますよ。まぁでも色々できる“個性”だと認識してもらえば。でもまぁとりあえず皆さん、早く着替えて教室戻りません?」

 

「そうですわ皆さん、揃って詰め寄ると白威さんに迷惑がかかりますわよ」

 

その後揃って更衣室に移動、その日の終礼を終えて当日のカリキュラムは終了した。

 

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