ケルゲレンの重力ブロック内にあるレクリエーションルームにはジョンとニャアン、シュウジの3人しかいない。
時間帯としては昼食時であるのでクルーの多くは食堂か勤務中なのでレクリエーションルームに来る者はそんなに多くはない。
「懐かしいな」
食堂から持ち込まれたニャアンとシュウジの昼食の隣にニャアン特製の皿に盛りつけられたカオマンガイを見てジョンは懐かしそうに呟く。
リック・ゾックの着ぐるみを脱いだシュウジが2人よりも先に昼食を食べ始め、ニャアンはジョンの方をチラリと見た。
「お母さんの作り方でやってみたの」
「よく食べさせてもらったな」
ニャアンを一瞥するとジョンはカオマンガイに手を付けた。
ジョンのジオン行きの荷物の中に入れていた先割れスプーンで鶏肉と米を掬って口に入れる。
その様子をニャアンは不安そうに眺める。
一口、二口とジョンは静かに食べていく。
シュウジはうるさく食べていく。
鶏肉と米を咀嚼し、飲み込む。
食道から胃袋へと食べた物が動いていくことを感じながらジョンは目を閉じる。
ニャアンの母親はタイ料理が得意だった。
元々はタイ料理屋を開くために準備を重ねてきた。ニャアンの子育てが多忙の中でも夫と共に進めてきた。
まだ幼かったニャアンも母親から料理の手ほどきを受けていた。
それこそ包丁の取り扱いから始まる基礎技術を幼いニャアンは固めていった。
月の低重力での調理技術までニャアンは母親から学んでいた。
ニャアンの母親は料理の腕前は店を開くには十分な実力を持っていたが、店を開く夢は叶わなかった。
一年戦争だ。
手が止まったジョンを見てニャアンの不安のピークが近づいていく。
(まずかったかな?)
目を開いたジョンは口元を緩めて顔をニャアンの方に向いた。
「懐かしい味だ。もう食えないと思ってたよ」
その言葉にニャアンは嬉しそうに頷いた。
シュウジはそんな2人をチラ見しながら昼飯を食べる。
レクリエーションルームから少し離れた通路で3体のロボットが囲んで話をしていた。
ジョンのハロ、ピンク色のハロ、コンチだ。
『ハロ オマエゲンキカ』
コンチの上に居座るピンク色のハロはジョンのハロを見据えて言った。
『オ元気ソウデナニヨリデス。マサカケルゲレンニ乗ラレテイルトハ思イマセンデシタ』
かつてない程丁寧な口調でジョンのハロはピンク色のハロに頭を下げるように前に傾いた。
『オルフェ ゲンキカ』
ピンク色のハロはボディを傾けながら言った。
『今ノ彼ハジョンデアッテオルフェデハアリマセン。魂ハ同ジデスガ、モハヤ赤ノ他人デス』
『ハロゲンキ』
『貴方ノフリーダムノ力ガ必要ナノハ分カッテイマス。シカシ…』
2体のハロの会話について来れないコンチは困ったような音声を出した。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ