「ラビアランローズには明日0400に到着予定です。ソドンがラビアンローズと接岸した後、ケルゲレンをソドンに横付けし、ソドンの第2MSハンガーにあのMSを搬入します」
狭い艦長室に設けられたテーブルを境におっちゃんはケルゲレンの艦長、副艦長と話をしていた。
テーブルに置かれた船務用の大型タブレットには航路図が表示される。
現在時刻は国際標準時刻で7月13日20時23分、約8時間後には到着する予定だ。
副艦長は話を続ける。
「MS搬入後にジョン君は下船後ソドンへ、アマテ君は帰路でイズマで降ろす」
ジョンのジオン入りが怪しくなったといえど、正式に取り消されたわけではない。
そもそもサイコガンダムの騒動からまだ1日しか経っていないのだ。
キシリアを狙ったテロ行為、ナガラ衆のMSによるソドンとキケロガへの攻撃、軟着陸したとはいえマチュがジークアクスを強奪した件からそんなに時間は経っていない。
ジョンがジオンに行く最大の理由ともいえるG3は変わらずにソドンで保管されていた。
本来ならジョンとG3はサイコガンダムの件が落ち着いた後はパープルウィドウに収容される予定であった。
だが、キシリアを安全かつ早急にグラナダへ帰還させることを最優先にパープルウィドウは動いている。
それに機密の塊であるキケロガを回収しなければならなかったのでパープルウィドウはジョンとG3に構っている余裕がなかった。
結局パープルウィドウはキシリアとキケロガを収容したらそのままグラナダへ向かってしまった。
ソドンはラビアンローズで修理を受ける必要があり、修理が完了するまでには軽く見積もっても1か月近くはかかると見込まれた。
その間、ジョンとG3はラビアンローズで足止めになってしまう。
そのままラビアンローズで足止めになろうが、ケルゲレンでイズマに送り返そうにもジオン工科大学側はイマイチ事態を把握しきれていない。
正式な文書も出ていない以上、とりあえずジョンをソドンに降ろすしかケルゲレンは出来なかった。
「営倉に放り込んでいる2人についてですが…」
艦長は手持ちのタブレットに営倉内の監視カメラのライブ映像を表示した。
『俺は何でこんなところにいるんだろう…』
『ムラサメ研よりご飯美味しいね!!』
営倉内で頭を抱えるゲーツとそんなゲーツにお構いなしに出された夕食を食べるドゥーがタブレットに映し出されていた。
「彼らのような人間を社員として契約すること自体は良くあることですが、軍警への誤魔化しはどうするんです?」
「シモダに任せているで」
シモダ、という名前を聞いて艦長と副艦長は微妙そうな表情を浮かべる。
お好み焼き名人とリック・ゾックの着ぐるみを装着したシュウジの光景が2人の脳裏に浮かぶ。
「あの着ぐるみの名前はSDゾックくん、本人曰く「MS」らしいな」
2人の思考が表情から読めたのかおっちゃんは苦笑いを浮かべた。
『MSは18mから始まった。技術が進むにつれて20、30mへと巨大化していく。そこまで技術が円熟すれば小型のMSが登場し、15m級が主流になる。そして再び大きくなる…』
『サンライズカネバンは時代を先取りするんだ!!!!ジオンの連中がゲルググで止まっている間、サンライズカネバンは小型MSを開発する!!!!』
などと主張するシモダ率いるチームは自信満々にSDゾックくんをおっちゃんに対してプレゼンテーションを行った。
見た目は着ぐるみだが実態はパワードスーツ、歩兵の銃火器とメガ粒子に耐える性能を誇るという。
(しかし変わってるよな、この人)
シモダはおっちゃんがどこからか拾ってきた科学者であると副艦長は聞いている。
ジャンク屋稼業が本業のサンライズカネバンでお好み焼き名人、SDゾックくんの開発予算のGOサインを出しているのはおっちゃんだ。
ジャンク屋が作る意味があるのかは謎だ。
おっちゃんがゲーツとドゥーを連れてきた時はさすがの副艦長達も困惑した。
イズマでテロをやった地球連邦軍の人間をなんで連れてきたんだ、副艦長は突っ込みを入れた。
『テロ?何言っとるんや?この2人はこの間入ってきた新米組や。酒で酔ってるから営倉いれとき』
そんなことしらん、という態度をおっちゃんは押し通した。
営倉にいる2人はケルゲレンの新入りで着任当初にトラブルを起こして営倉で頭を冷やしているという話をおっちゃんは押し通した。
実の所、この2人のような後ろ暗い人間はサンライズカネバンでは珍しくない。
ケルゲレンと共にジャンク運搬船となったリリー・マルレーンは一年戦争中のブリティッシュ作戦で毒ガスを散布する任務に参加していた。
戦争に勝ったといえど汚れ仕事をしたリリー・マルレーンとそのクルーに対する風当たりはジオン内部からも強い。
おっちゃんは払い下げられたリリー・マルレーンと軍縮で除隊させられたクルーを雇用してそのままリリー・マルレーンに乗せている。
働き先に困っていたリリー・マルレーンのクルーにとって拾ってくれたおっちゃんの人気は高い。
(不思議な人だよな、ほんと)
シモダから予算を3倍請求された話を愚痴るおっちゃんを見て副艦長は改めてそう思う。
『ハロ ラクス ハロ』
「またハロが増えてる…」
ジョンは外来用の居室にいた。
昼食後はニャアンとシュウジは勤務に戻り、1人になったジョンは指定された居室にいるしかなかった。
ジョンはマチュの所に行きたかった。
だが、軟禁状態は解消されていないのとそもそもどこの部屋にいるのかも分からなかったのでとりあえず捜索はせずに居室に戻るしかなった。
居室に戻ったらジョンのハロと更にもう1体のハロがいた。
テニスボールくらいの大きさのピンク色のハロでかなりやかましい。
『名ヲピンクチャント言ウンダ』
ジョンのハロはピンクちゃんというハロに疲れているようだ。
ジョンはM65フィールドジャケットを脱いでハンガーにかけるとベッドに座って2体のハロを見た。
「さて、そろそろ話してもらおうか」
ジョンの声が低くなる。
『ソロソロ聞カレルト思ッタ』
ジョンの隣でハロは壁にもたれ掛かる。
ピンクちゃんは腕のカバーをパタパタと動かして宙を飛んでいる。
「ハロ、君は何者なんだ?」
ジョンはハロに色々聞きたかった。
山ほどある質問の中でジョンはまず、突然自分の前に現れたハロについて聞くことにした。
マチュの媚薬の件で曖昧になっていたが、ハロは明晰夢のことを知っていた。
サイコガンダムの件でガンバレルストライカーに変身したことも含め、ハロに聞かなければならないことが多い。
『ジョン、古代核戦争説トイウノヲ知ッテイルカ?』
「藪から棒だな」
『ソレニ近イコトダ、ジョン』
古代核戦争説は大昔に核戦争があったというある種の疑似科学として扱われる話だ。
大昔に文明が栄えて核戦争で滅んで…という話だ。
(まさか、大昔からタイムスリップしてきた、とか言わないだろうな?)
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ