ナガラの謎に大して触れてないのでサブタイトルを変えようと思います。
サイコガンダムのテロから1日が経ち、コロニー内の混乱も収束していく。
『準備中』
ジョンとエグザベが出会ったバーがある歓楽街の一角にある小さな食堂の出入り口にはラミネート加工された紙が堂々と貼られていた。
食堂内の壁掛け型のデジタル時計は7月14日6時21分を7セグメントで表示している。
営業開始前で店員達が厨房で準備を進めている中、食堂の奥にあるテーブル席には3人の男が集まっていた。
3人の男の内の1人であるマーコ・ナガワラはMahko's Bakeryというパン屋を構える一方で闇バイトの元締めを勤めている犯罪者である。
闇バイトの元締めであるのと同時にマーコには別の顔があった。
3人の男の内の1人である老人、この老人は以前エグザベがデジタルマイクロカセット男の件で接触していたジオン軍のスパイ、アセットである。
アセットの老人はジオン軍関係者、それも諜報戦以外で自身と接触したい人間がいるのであれば仲介人を介するようにルールを設けている。
マーコはアセットの老人の仲介人の1人だ。
サイコガンダムのテロの一件でイズマコロニーが裏表問わずバタバタしている中でアセットの老人への仲介の申し込みがあった。
連邦、ジオン双方の諜報戦が繰り広げられているイズマコロニーではさして珍しい話ではない、むしろこのテロの前後なら申し込みが来て当たり前だと思いマーコはアセットの老人へと連絡を取った。
アセットの老人はマーコの口から発せられた名前を聞いて面会場所としてこの食堂が選ばれた。
この食堂もアセットの老人とは協力関係にあることをマーコは知っているのですんなりと話は通った。
諜報戦の渦中でアセットの老人が動くような人物…それが目の前で食堂メニューの春雨を美味しそうに頬張っている男だ。
3人の男の内の1人がこの男だ。
年齢は20代半ば、綺麗な金髪を目を隠す程度に伸ばしている。
このご時世の若者の流行りの髪型といえばそうだが、アセットからすれば何でこんな髪型が若者に流行っているのかが分からなかった。
男の着る緑を基調としたファッションは良いのにとマーコは思いながら隣に座るアセットの老人をチラ見した。
アセットの老人は上着の懐から封筒を取り出してテーブルに置いた。
それを見て春雨を食べていた男は小さく笑った。
「どんな高級料理よりもこの店の料理の方が美味しいですね」
「イズマに来るのも1年ぶりだろう」
「何でも屋は忙しいものですから、この1年は特に」
差し出された封筒を手に取り、男もまた上着の内ポケットへと入れた。
中身は恐らくメモリーカードだろう。
仕事柄マーコはこういった物の中身をある程度までは把握できる。
仲介人でしかない自分を同席させても問題ない上に、いくら協力者かつ営業前とはいえ盗聴器を仕込まれるリスクのある食堂での取引を2人の男はしていた。
ジオン軍人のアセットの老人に接触する辺り、この男もジオン関係者であることには違いないだろう。
「テロリストのせいでイズマは大混乱だ。1日経ったからマシにはなったが、軍警は他所の応援でどうにかなっている。
行政機関、特に会計監査局の外交部は地球連邦政府とこの件で大揉めだ」
「でしょうね」
そういうと男は壁にかけられた大型テレビを指差した。
テレビには民放の朝のニュース番組が映し出されていた。
テレビには座礁したサイコガンダムの周囲に立つ他所から応援に来た軍警のMS-06が警備活動をしている光景が映し出される。
その次にハイバリーハウス学園の敷地内に落下した片方の手首のないMS-06が作業用に改造されたガンタンクによって引っ張り上げられている光景があった。
「ニャアンは辞めて正解だったな…」
死者34名、重軽傷者143名のテロップを見て思わずマーコは呟いた。
「スタッフさんですか?」
マーコの言動が気になったのか男は聞いた。
「1週間くらい前までウチで雇っていたバイトの子です。就職先が決まったのでパルダに行きました」
マーコは嘘は言っていない。
パン屋のスタッフではないが、ニャアンがマーコの元で運び屋をやっていたのは事実だ。
ニャアンが就職すると聞いた時はマーコは少し気にかけていた。
今まで以上に危険な仕事に就いてないかと思ったからだ。
ところが、ニャアンの就職先は有名企業のサンライズ・カネバンだという。
ニャアンの履歴書を持っている身からすると一体どんなコネクションがあったのか気になるところではあったが、安定した仕事に就けるのであればマーコが止める理由はない。
言葉少なにマーコはニャアンの退職を認めた。
「なるほど…巻き込まれなくて良かったですね」
テレビに映し出される瓦礫の山を見て男は言った。
「少し席を外してくれないか?」
アセットの老人は少し申し訳なさそうにマーコに行った。
「分かった」
よくあることだとマーコは思った。
ここで帰ってくれならさっさとマーコは帰るが、席を外せならまだ自分に用事があるという合図だ。
呼ばれるまでは外でタバコでも吸おうとマーコは店の外に出た。
ガラガラ…と出入り口の扉が閉まったのを見ると男は箸を置いた。
「ジョンはグラナダへ向かうことが正式に決まった。今日中には到着するだろう。その中には頼まれた物が入っている」
「グラナダですか…何とも因果な」
男は目を隠すくらいの前髪を拭うようにたくしあげた。
「ジョンと2人で始めた何でも屋です。僕もグラナダに行くとしましょう」
「今の君はシロウズだ。下手なことはするなよ」
「ジョンと会った時からシロウズです」
テレビには先程の映像から一転してゼクノヴァとそこからストライクが出てくる映像になった。
「世界中の研究機関が大騒ぎだ。ゼクノヴァとそこから出てきたMS…世間からはテロリストを倒したMSだの言われてヒーローみたいな扱いだ」
ストライクとgMS-αのM.A.Vを見て男…シロウズは感慨深そうにため息を吐いた。
映像が切り替わるまでシロウズは2機のガンダムの活躍をじっと見つめる。
映像がキャストの座るスタジオに変わるとシロウズは興味を無くしたように席から立つと厨房に向かって
「ご馳走様でした」
と言った。
2人は店から出ていき、外の駐車スペースのマーコが待っているMahko's Bakeryの配達車へと歩いて行く。
「そういえば、あのパン屋さんのパンは美味しいですか?」
シロウズの問いにアセットの老人は不意を突かれた。
パン屋とは外で待っているマーコのことだろう。
「それなりだとは思うが…どうした?」
「僕はパン屋さんを食べ巡るのが好きなんですよ。それに朝だったら出来立てのパンを食べたくて」
「春雨を食べた後にパンを食べるのか…」
アセットの老人は目の前で楽しそうに歩くシロウズを見て思わず呟いた。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
-
ジョン・マフティー・マティックス
-
アマテ・ユズリハ(マチュ)
-
ニャアン
-
シュウジ・イトウ
-
シャリア・ブル
-
シロウズ
-
サンライズカネバン社長
-
シイコ・スガイ