11-1 震え
ソドンのラビアンローズ入りは淡々と進んでいった。
ラビアンローズのドッキング・アームが展開して傷ついたソドンをドックへと導いていく。
ケルゲレンはドック入りはしない。ジークアクスとジョンを降ろすのが目的のため、ラビアンローズに設けられたドッキングベイに接続される。
ドッキングベイに接続されたケルゲレンの船体側部に設けられたハッチからジークアクスがラビアンローズの誘導員に導かれて降りてくる。
アンテナが非展開状態のジークアクスがドッキングベイからドックへ通じる通路をゆっくりと歩いていく。
蹄鉄のような足が無重力を駆けていく。
ジークアクスのコックピットにはジョンが乗っていた。
ガンダムG3とコックピットのレイアウトは似通っているので操縦には全く差し支えない。
(マチュの匂いがする)
タマキの車でも感じた匂いをジョンはジークアクスのコックピットから感じていた。
(僕は最低だ)
ジョンはマチュに挨拶する間もなくラビアンローズに着いた途端、ジークアクスに乗った。
元々、ジークアクスをソドンに載せるためにパイロットとしてジョンが選ばれていたのでジョンがジークアクスに乗っていることは既定路線だ。
(僕は逃げているだけなんだ)
ジョンは手が震えていた。
暴走MS事件後のようにジョンの精神が段々と不安定になる兆候だ。
自分からマチュから離れていったのに、マチュを求めている自分がジョンの中にいた。
ジョンのハロとピンクちゃんがそんなジョンを心配そうに見ていた。
その様子をケルゲレンの艦橋からおっちゃんは眺めていた。
マチュの軟禁は解除される。
ジークアクスがソドンに到着次第だ。
そこでマチュは初めて気付くだろう。
それは自分の愛する男がいなくなったという現実だ。
おっちゃんは後ろに気配を感じた。
「それでいいの?」
おっちゃんの後ろにはシュウジが立っていた。
シュウジはおっちゃんの考えていることが概ね理解できた。
おっちゃんはジョンとマチュを引き離すつもりだ。
本来、マチュを軟禁する必要がなかったのに無理やり引き離したのもこの瞬間のためだ。
「ボンはこの道を選んだんや」
「ジョンの気持ちを尊重するの?アマテは?」
責めるような口調でシュウジは言った。
「生きていれば、どうしても誰かを泣かせる決断を下さなければならない時がある」
ケルゲレンの艦橋からジークアクスが見えなくなっていく。
「未来が何も分からない中、少しでもちっこい姉ちゃん達の未来のために決断を下す。ボンは今そういう立場におるんや」
「そこにアマテの気持ちはあるの?」
シュウジの問いにおっちゃんは小さくため息をういた。
「想いだけでは誰も救えないんや」
蔑むような目でおっちゃんを睨み、シュウジは艦橋から出ていく。
「どこで間違えたんやろうな…」
そんなシュウジを止めずにおっちゃんはジークアクスが去って行った通路を見つめていた。
「ジャックは出ていったよ」
マチュの軟禁部屋の前でニャアンは扉に背中を付けて言った。
扉の向こうにいるマチュの息を飲む声がニャアンの耳に届いた。
「グラナダのジオン工科大学の研究所に行くって言ってた」
「…ニャアン、ここから出して」
「どうするの?」
「ジョンを追いかける。私からジョンは逃げようとしている」
一瞬の沈黙の後、ニャアンは扉から背中を離して扉の向こうと正面から向き合う。
「アマテ、ジャックは仕事で行くんだよ。すぐに会えるよ」
「違う!!」
扉の向こうのマチュは叫ぶ。
「死んじゃったら会えないんだよ!!ジョンはそれが分かっていないんだ!!」
「死に場所に行かせたのはアマテじゃない…」
マチュには聞こえない程度にニャアンは呟いた。
(アマテがジャックの人生を滅茶苦茶にしたんだ)
誰にも吐き出せない言葉をニャアンは自分の心の中に押し込む。
「あの子は死なないよ、アイナ様が守ってくれているのだから」
唐突にニャアンの前にケルゲレンのオペレーターがふらりと現れた。
「ハーロウさん…」
「何やら騒がしいから来てみたんだがな」
ニャアンはこのオペレーター、ビル・ハーロウと艦外作業時にはよくやりとりをするので身の上話をいくつか聞くことがあった。
一年戦争中にチベットのラサ基地でアプサラスというMAの開発を行っていた研究員の一人だという。
地球連邦軍に包囲されたラサ基地から脱出するために当時アプサラス開発のための発電機代わりに使われていたケルゲレンを使って宇宙へと脱出させるためにアプサラスが活躍したという。
「アプサラスを作っていたらお好み焼き名人を作ることになったのもめぐり合わせ…」
「うるさい!!」
マチュの気に障ったらしい。
「女の子って難しいもんだな」
参ったなぁ、と呟いてハーロウはニャアン達から離れていった。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ