「僕とマチュだと身分が違い過ぎるんだ。君はお嬢様で僕は元はといえば難民…初めから釣り合わなかったんだ」
マチュが言葉を発する前にジョンは続ける。
「僕は大した学も家柄もない。君はハイバリー高校、タマキさんは外交部の部長でお父さんは外交官だ。君はキャリア官僚の家庭だ。初めから住む世界が違うんだよ!!」
一息ついてジョンは話を続ける。
「もう明晰夢は見ることはないし、ナガラの連中がマチュを狙うこともない。マチュがイズマに帰ったら全部元通りだ」
自分が冷静ではないとジョンは自覚していた。
左手だけしか見えなかった時期のマチュにも家柄に対してジョンはここまで踏み込んだ話はしてこなかった。
あまりにも感情的になりすぎているとジョンは内心思っていた。
感情的な自分がいる一方でマチュと縁を切らずに昔の自分について聞き出そうと提案する自分がいた。
昔の自分を知る手掛かりを自ら手放すのか?と打算が問いかける。
だが、今後のことを思うとマチュとの縁を切らなければならない。
マチュの悪者、最低な男になろうとジョンは決めた。
「僕と関わっていたらこれ以上人生が滅茶苦茶になる。イズマに帰ればイズマ諸共マチュは幸せになれるんだ」
ジョンは自分が何を言っているのか分からない。
「2年間、本当にありがとう。…じゃあね」
マチュの返事を待たずにジョンは端末の通話を終了した。
震える指で端末の履歴画面からマチュからの電話を着信拒否の設定した。
設定の完了を見た後、ジョンは端末をミニデスクの上に置いた。
ジョンは項垂れながら、壁に寄りかかる。
気力が信じられないくらい抜け落ちて力が入らなくなった。
自分が可哀想だという気持ちがジョンの中に芽生えた。
だが、それは一瞬だけだ。
そんな感情は傲慢だ。
あの電話のやりとりで一番可哀想なのはマチュだ。
2年間とこの1ヶ月、マチュのおかげでどれだけ助けられたか分からない。
マチュがここにいるのもジョンを追いかけてきたからだ。
それが電話で別れ話をされてイズマに帰れと言われたのだ。これがジョンの立場なら納得はしない。
「君がアマテ・ユズリハの人生を滅茶苦茶にしたことを忘れるな」
ハロにも釘を刺されたばかりだ。
ジークアクスの窃盗ですら少しでも対応が違っていたらマチュはお尋ね者だ。
パラレルワールドの存在をハロが言及していたが、それが本当にあるのならばマチュがお尋ね者になっている世界は十分にあり得る。
ジョンが対峙するのはそういう概念を当たり前のように扱える連中だ。
イズマコロニーでの件はほんの始まりにすぎないとジョンは本能的に察していた。
自分のためにマチュが死ぬことや犯罪者になる現実はジョンには耐えられなかった。
現実的な範疇でマチュのことを思うのならこれ以上事態に巻き込まずにタマキ達の所に返すべきだ。
自分がやっていることが模範解答ではないことはジョンは十分に自覚していた。これがジョンという人間の限界でもあった。
(マチュの幸せの中に僕はいない、それが正しいんだ)
そのためならジョンは悪者になっても構わなかった。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ