12-1 CQC
ガンダムG3とgMS-01「ゲルググ」が向かい合う。
データ収集用のセンサーを全身に取り付けた両機、ゲルググがアーマーシュナイダーを構える。
機体を傷つけないように作られたトレーニング用のアーマーシュナイダーだが、パイロットに与える衝撃は大きい。
『状況開始』
天井から吊るされたスピーカーからのアナウンスの後、2機が動き出す。
グラナダ基地の一角で行われているその試験の光景をキシリア達は強化ガラス越しに視察していた。
最小限の動きでゲルググはガンダムに接近しアーマーシュナイダーを突き立てようとする。
アーマーシュナイダーが振り下ろされようとした時、ガンダムはゲルググのアーマーシュナイダーを持つ腕を掴み、勢いよく横へ曲げた。
マニュピレーターに保持されていたはずのアーマーシュナイダーだったが、腕を横へ曲げた衝撃で取り落してしまう。
リカバリーを試みるゲルググだったが、ガンダムはそれを許さずに片足をゲルググの後ろへ動かし、勢いよくゲルググの足元を崩した。
ガンダムは態勢を崩したゲルググの片腕をマニュピレーターで掴みながらもう片方のマニュピレーターが胸部を地面に叩きつけるように動いた。
ゲルググはそのまま抵抗も出来ずに地面に叩きつけられる。
地味な光景だとアサーヴは思った。
アサーヴのイメージするMS戦はザクマシンガンなりビームライフルで撃ち合い、近接戦となればビームサーベルを駆使して戦うような世界だ。
目の前で繰り広げられている戦闘は格闘技だ。
浪漫あふれる兵器のぶつかり合いじゃない。
あくびが出るのを堪えつつもアサーヴはキシリアが満足そうな顔をしているのを見た。
ここは話す間であるとアサーヴは普段の感覚を信じてキシリアに話しかける。
「あれはジュードーですか?」
格闘技と言っても色々ある。
アサーヴもジオン軍人であるが、そこまで格闘術に詳しい訳ではない。
新兵時代のカリキュラムにあった格闘術などすっかり忘れてしまった。
自分の発言が間違っているというのはアサーヴにも分かり切っていた。
ジュードーと言ったのは話題作りのためだ。
アサーヴの言葉にキシリアは鼻で笑った。
「CQCだ」
「CQBですか?」
狭い場所で銃器を用いた戦い方の呼び方をCQBと呼ぶとアサーヴは聞いたことがある。
CQCという言葉をアサーヴは聞いたことがない。
「体術を基本としてナイフと拳銃を駆使して戦うのが近接戦闘術、CQCだ」
アサーヴは引っかかった。
キシリアが言うようなCQC、それならCQBと意味合いは同じじゃないのかと思った。
そんなアサーヴの疑問がキシリアに伝わったのか、キシリアはアーマーシュナイダーを回収してゲルググに返すガンダムを指さした。
「実際、両者はほぼ同一の物だ。近接戦闘術として体系化されたCQC、現在はCQBの概念の一つに取り込まれている。貴様が疑問に思うのは当然だ」
自身の不勉強を突っ込まれると思ったアサーヴは少し安堵した。
「以前、イズマコロニーで無人のザクが暴走したのを覚えているか?」
再び始まった。ガンダムとゲルググの模擬戦を眺めながらキシリアはアサーヴに話を振った。
「インストーラーデバイスにMSのオートパイロット機能を暴走させるウイルスが入っていた事件ですよね。確かあのガンダムが暴走した軍警のザクを鎮圧するのに協力したとか」
暴走MS事件の件はマスメディアに取り上げられていたのでアサーヴも覚えている。
グラナダのテレビ局が放送しているローカル番組の「ごきげんグラナダ」でも頻繁に取り上げるくらいにはグラナダでも話題になるくらいの事件ではあった。
ただ、あの時の大手マスメディアとSNSでは憶測交じりの報道と風説が流れていた。
『ウイルス入りのインストーラーデバイスで本当にMSが暴走するのか?』
結局、事の真相は分からず仕舞いでサイコガンダムの件で半ば風化してしまった。
アサーヴの説明にキシリアは僅かに頷いた。
「あの鎮圧でガンダムがザク達を止めるのに使ったのもCQCだ」
「そうなんですか?」
ガンダムがアーマーシュナイダーと鹵獲したシールドと警棒で突撃しているのはニュースでも取り上げられていたが、まさかそんな器用な事をしているとは思わなかった。
CQCを駆使してゲルググを抑えるガンダムは確かに人間が入っているような動きだ。
(でもMSで格闘戦をやる意味あるのか?)
ビームライフルとビームサーベルが活躍する戦場でCQCが活躍できるような余地などあるのだろうかとアサーヴは疑問に思った。
「…ジフレドにナイフを付けるか」
キシリアの言葉はアサーヴには聞こえなかった。
イズマ支部でも使用しているパイロットスーツを着込んでジョンはガンダムに乗っている。
コックピットのシートに固定するためにパイロットスーツだけを着用し、ヘルメットは被らずにシート下部に固定している。
普段はヘルメットを被って乗っているのでヘルメット無しだと違和感があった。
違和感を少しでもなくすためにジョンはドラムバッグの中に入れていたニット帽を被っていた。
(未練だな)
ニット帽の感触を味わいながらジョンはガンダムを動かす。
試験場の管制塔にはジオン工科大学からやってきた研究員達がいた。
「関節部ガッタガタですよ、あんな動きをしていたら」
ラップトップのウィンドウを見ながら研究員がボヤいた。
MSの状況をリアルタイムで監視するソフトウェアが、ガンダムの関節部の悲鳴を記録していく。
「予定通り、G3は改修ね」
「予算、そんなに降りないと思いますよ。ブラジャー部長」
タブレットと強化ガラス越しに見えるガンダムを見比べながらブラジャー部長は頷いた。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ