おっぱい大作戦   作:そらまめ

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13-2 グランド・セントラル・グラナダ

『アマテの頭がおかしくなっちゃった…』

「何だって?」

端末の向こう側にいるニャアンの震え声を聞いてジョンは困惑した。

『朝起きたらすごい不機嫌で…ブツブツ何か言っているの』

「今はどうしているんだ?」

『シイコさんに連れられてホームセンターに行っちゃった』

休日だというのにニャアンは朝から疲労しているようだ。

 

ニャアンはシュウジ達と共に社長宅から近場にあるゲームセンターに遊びに来ていた。

シュウジ達がスペースグライダーのゲームの筐体に入っている間、筐体の近くにあるベンチに座ってジョンに電話をしている。

 

『滑走路確認、チェック完了…セット』

『アンチアイス オン』

『V1 ローテート』

 

会話の間からシュウジ達の会話が漏れてくる。

相当な大声だろうとジョンは思い、シュウジ達が出禁にならないか心配になってきた。

 

『ジョンを分からせてやるって…って朝ごはんの時からずっと言ってるんだよ』

「やっぱ恨まれてるんだな…当然と言えばそうか」

『シイコさんはそれを聞いて嬉しそうな顔をしているし…』

シイコ・スガイについてジョンはある程度は知っている。

ショッピングモールの件でサンライズカネバン社長の夫人であること、映画館で出番の無かったゆっくりシイコの声を担当しているらしい。

 

一般的には一年戦争時の地球連邦軍のエースパイロットであるという武勇伝をジョンは日ごろのオシントの一環で目を通すネットニュースで時折耳には挟んでいた。

そんな人物がマチュと行動を共にしているとはジョンには予想外だった。

「シイコさんはどんな人なんだ?」

『優しい人だよ。おっちゃんとも仲が良いし…でもアマテと話している時、なんか怖いんだ』

「怖い?」

『言葉にし辛いけど、欲しい物があったら壊してでも手に入れちゃうような』

シイコはどこか歪んでいるのだろうかとジョンは思った。

本人に直接会ったことがないので風評でしか判断しようがないが、一年戦争で人格のどこかが歪んでしまったのだろう。

 

珍しい話ではない。ジョンはそういった人間をこれまで何人も見てきた。

ニャアンには危害を加えていないのでジョンは社長宅の生活にどうこういう気はないが、問題はマチュの方だ。

 

昨日のマチュのその後を聞いた後でもそうだったが、マチュの言動がおかしくなってきている。

その原因を作ったのは間違いなくジョンである。

 

最悪の未来をジョンは思い浮かべる。

 

出張が終わりイズマ・コロニーに足を踏み入れた瞬間、マチュに刺殺される未来…

 

マチュがあらゆる手段を用いてジョンを社会的に抹消する未来…

 

マチュが彼氏を作ってジョンに見せつける未来…

 

『…ジャック、やっぱりアマテとちゃんと話そうよ』

ネガティブな未来が延々とジョンの脳内に作成される中、ニャアンが言いづらそうにジョンに話した。

『私と電話していることだってアマテに秘密にしてるけど、アマテはいつも悲しそうだよ』

「電話で何を話せばいいんだ」

ジョンとしてはもう電話で話せることはラビアンローズで話したつもりだった。

これ以上話しても平行線だろうという認識もある。

『せめて別れ話をするなら直接話そう。電話で言いたいことだけ言って着否は卑怯だよ』

少なからず非難めいた言葉でニャアンはジョンに話す。

「それはそうだな…」

あの電話には逃げという打算をジョンは無自覚に思考していた。

ニャアンにそのことを指摘されたらジョンには否定する資格はない。

女心と秋の空の言葉を使ってマチュから逃げているにもまた事実であった。

 

『ゲーツ、次クレーンゲームやろ!!』

『アリ、外ではその名前はやめてくれ』

『ガンダムのフィギュアを取ろう。…とガンダムが言っている』

 

 

電話の向こうから聞こえてくる声を聞く分にどうやらゲームが終わったらしいとジョンは思った。

 

シュウジ以外にどこかで聞いたことがあるような声が聞こえてくるが、ゲームセンターの騒音でジョンは誰だか分からなかった。

『スペースグライダーのゲーム終わったみたい。ジャック…』

そろそろ通話を切る合図だ。

「ああ、クレーンゲーム楽しんできて」

『聞こえてたんだね』

「出禁にならないようにな、マチュのことでまた電話する」

『…うん』

 

 

 

『随分長電話ダッタナ』

端末をM-65のポケットに入れるジョンの膝の上に乗っかるハロは待ちくたびれたような物言いだ。

『ニャアン ニャアン』

M-65のポケットに入っているピンクちゃんも顔を覗かせる。

「ニャアンとはよく電話をしているからな、ついね」

『マチュトハソンナニ電話ヲシナカッタノニナ』

「メッセージアプリで済むからね」

腕に巻いたアナログ時計を見てジョンはハロを手に抱いてベンチから立ち上がった。

『ジョン、何デ休日ノ朝カラグラナダ・セントラルニイルンダ?』

ジョン達は休日の朝からグラナダのターミナル駅である『グランド・セントラル・グラナダ』にいた。

通路に設置された液晶パネルには0085年7月21日午前7時11分を表示している。

 

人混みの中を歩きながらジョンは構内にあるショッピングコーナーに通じるオートウォークに乗った。

「シャリア中佐、いやヒゲマンからの呼び出しだ」

『シャリアカラ?ドウシタ』

「詳しくは聞いてないが、お茶をしようと言ってたな。話す内容については…」

ジョンは2体のハロを見比べてた後、オートウォークの終わりが見えたので通路に足を置いた。

オートウォークから降りたジョンはショッピングコーナーの書店エリアへと向かった。

「集合場所はグランド・セントラルの書店だ」

『何故ダ?本屋デ集合ナド聞イタコトガナイ』

『デート デート』

5分ほど歩いたジョンは集合場所の書店の前に立った。

平積みされた書籍と店員おススメコーナーを尻目にジョンはシャリアの姿を探した。

店内に入ったジョンは客を避けながらシャリアを探す。

 

「新鮮な雑誌ですよ、エグザベ君」

「シャリアさん、本当に買うんですか?」

「当たり前です。男であれば通じるでしょう」

 

私服姿のシャリアをジョンは見つけた。

隣に私服姿のエグザベと共に雑誌をカゴに入れていた。

ホビー雑誌4割、エロ本3割、漫画雑誌2割といった配分で店頭にある雑誌をカゴに入れていく。

 

この2人の男に声を掛けるべきかジョンはしばし悩んでしまった。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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