おっぱい大作戦   作:そらまめ

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14-6 交錯

厩舎は館の正面玄関から少し離れた場所に建てられている。

こじんまりとした大きさで飼われている頭数もさほど多くない。

特有の獣臭と排泄物の臭いこそあれど建物全体は清潔に保たれている。

 

「恋人さんの中でも乗馬をしたい、って人が多くてね」

「顧客サービスといったところですか」

「珍しいだろ、こういうとこで馬に乗れるってのも」

 

ウーマくんに乗りながらジョンは隣でウーマくんの同族であるアンダルシアに乗る管理員と話をしていた。

 

彼らはカバスの館の屋外にある散歩コースを周回するようにウーマくん達に乗っていた。

 

「しかし、ネオ・チャグチャグ馬コか。聞いたことがないな王子」

「ジョンです。王子ではないです」

「王子はこの後どうするんだ?月から来たと聞いているが、大使館にでも行くのか?」

 

王子呼びについてはスルーされてしまったジョンだったが、管理人の言う通り、今後の方針という点では海岸に上陸した当初から変わっていない。

 

ここがインドのマンガルール市の近くだと分かった以上、マンガルール市にある警察署かジオン軍の基地に向かい保護してもらう。

そうしてサイド6の大使館かグラナダ基地と連絡を取る、というのが当初の計画だった。

 

ところが、この計画に暗雲が立ち始めている。

 

時間の巻き戻しと明らかに変化したサイコガンダムのテロ事件、そしてなによりも宇宙から降ってきたジークアクスとそれに乗ってきたマチュに似た少女と白いハロの存在がジョンは気になって仕方ない。

 

テレビのニュースを見終わった後、ジョンは娼婦の1人から端末を借り受けてネットニュースを調べていた。

 

エンデュミオン・.クレーターの戦いとその後のゼクノヴァについてどこか取り上げていないかジョンは調べてみたが、どこのメディアも月面でMS戦があったことも、ゼクノヴァが発生したことも取り上げてすらいなかった。

 

時間が巻き戻ったのなら取り上げようもない、とジョンは考えたが、それはタイムスリップという話になってくる。

 

「荒唐無稽だよな…」

 

ナガラ衆の影響でどんなに滅茶苦茶な事でも一考するようになったジョンであってもタイムスリップというのは信じられなかった。

仮にタイムスリップしたとしても非合法化したクランバトルとサイコガンダムと国際指名手配については説明がつかない。

 

「ヒヒィィンンン!!」

 

悩むジョンにウーマくんがいななく。

そのいななきには『せっかく俺に乗ってるんだからもうちょい楽しそうな顔をしろ』と言いたげだなとジョンは思い

 

「悪かった」

 

とウーマくんに頭を下げた。

 

「王子、世の中は荒唐無稽な話ばかりだよ。離婚したカミさんは冷蔵庫の製氷皿まで持ってちゃうし、何が起こるか分からないんだ」

 

製氷皿はともかく、後者のそれについてはジョンも同意するしかない。

 

「ジオンが連邦に勝つなんて、この辺だと誰も信じてなかったよ」

 

管理員は顔を顰める。

仕事では表に出さないが、管理員を務める男からはジオンに対する恨みのようなあるとジョンはその顔から察する。

 

「最近じゃ連邦がジオンに勝つ映画なんかが流行ってるみたいだが、王子は観たのかい?」

「映画はご無沙汰ですよ」

 

ジョンはそういいながらも管理員の言葉に思い当たる節があった。

 

(そういえば、ショッピングモールの映画館にもそんなポスターが貼ってあったな)

 

題名こそ思い出せないが、シモダによるあんなグダグダな話で終わるならあの映画をマチュ達と観た方が有意義だっただろう。

ああいう映画を架空戦記物というジャンルらしいが、ジョンにはとんと縁のない話だ。

 

(架空戦記、別の世界の話だからな…別の世界?)

 

ジョンは引っかかるものがあった。

架空戦記は別の世界、ある種のパラレルワールドのお話だ。

 

今の自分がまるで別の世界にいるようか気がしてきたのだ。

別の世界ににいると考えるとニュースとジョンの認識の剥離についてもある程度の説明がいく。

 

(それこそ荒唐無稽な話だな…)

 

突然、ウーマくんが方向転換した。

驚く管理員のことなど知らんというようにこれまで来た道を戻り、走り出した。

 

「どうしたウーマくん!?」

 

一見するとウーマくんが暴走したように見えるが、ジョンを振り落とさないように絶妙に加減し、周囲もきちんと見ながら走っている。

『とにかく俺について来い』というような意思をジョンはウーマくんから感じ、とりあえずそのまま身を任せることにした。

バイクに乗る時とは違う風の感覚がジョンには心地よい。

後には呆然としている管理員と同族の突拍子のない行動に呆れている馬がいるだけだった。

 

 

 

「お姉さまはあんたが落ちてくるって知ってたんだ」

 

少女の着替えを見ながらヴァーニは言った。

洗濯していた衣類はすでに畳み終えており、下着姿だった少女はジャージに似た衣類に裾を通していた。

 

「んん」

 

元々サイズが合っていないのだろう。

上着のチャックが胸の辺りでつっかえ、どうにか上へと進んでいく。

 

「だから昨日のうちにこの部屋もお医者様も手配してたんだ。お姉さまの「夢見」はホントに当たるんだよ」

 

誇らしげにヴァーニは語る。

実際、ララァの夢見が外れたことは殆どない。

それを利用して賭博や株を買おうとする輩もいたが、そういう輩は出禁になっている。

 

「薔薇を追う人が降りてくるんだって」

 

カンチャナの言葉に少女は首を傾げる。

 

「薔薇を追う人…そのお姉さまって人にお礼を言わなきゃ」

 

自分を助けてくれた「お姉さま」に礼を言おうとする少女に対してヴァーニは首を振った。

 

「今はダメ、これから恋人さんが来るからさ」

「恋人…さん?」

 

カバスの館の隠語なので伝わらないな、とヴァーニは思ったが、忙しいララァよりも先にジョンのことを少女に伝えようと思った。

 

「それよりもあんたは王子様にお礼を言った方が良いよ。戦闘機の中で倒れてたあんたをここまで送ってきたんだから」

「王子様?」

 

その言葉にイマイチ意図を掴みかねている少女の耳に馬のいななきが聞こえてきた。

馬のいななきを聞いてヴァーニとカンチャナは目を合わせる。

 

「ウーマくんの声だね。もしかしたら王子様が乗ってるかも」

 

2人は小さな身体で部屋を走り、中庭が見える大きな窓を開ける。

そんな2人の行動に驚きながらも少女は大きな窓へと歩いていく。

 

「王子!」

 

先程の淡々とした喋りとは打って変わってカンチャナは楽しそうな声を上げて窓の外に手を振っている。

 

「王子って何?」

 

少女は窓の手すりに手を置いて身体を外に曝け出した。

周囲を見渡し、カンチャナが見ている方向に目をやるとそこには白馬に跨った少年がいた。

カンチャナのアピールに少し困った様子を見せながら少年は少女の方へと目を向けた。

 

少女の息が止まった。

その姿は少女が恋焦がれている少年と同じ姿をしている。

 

髪は白毛混じりの金髪でミリタリージャケットを着ている。そのため雰囲気がだいぶ異なるが、それを除けば少女の追い求める少年そのものだった。

 

「シュウジ…?」

 

窓際の少女と馬上の少年は互いに見つめ合う。

 

 

 

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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