3機のギャンと共にストライクは森を抜ける。
ウーマくんと共に走破した森も20m近いMSであれば大した距離ではない。
(このギャン達は何者だ?)
助太刀と称して間に入ったギャン達はジョン側に立ってくれたようだが、ジョンは彼らのことを何も知らない。
ナガラ衆の関係者であるようだが、どういう経緯でここにいるのかを図ることができない。
『ちょっと待ってくれ』
海が間近に見える辺りまで移動した時、ギャン達の歩みが止まった。
ちょうどジョンとウーマくんが出会った地点の近くまでジョン達は移動していた。
2機のギャンが木々の中にマニュピレータを入れる。
『兄貴から坊主へ渡しておくように言われたものがあってな』
ストライクの隣に立ったギャンの1機がそういうと2機のギャンは木々の中から大型のコンテナを持ち出してきた。
ジョンは森の中を探索している時には気付かなかったが、ウーマ君と出会ったすぐ近くにはコンテナが落ちていたのだ。
『これ、バイオセンサー研究所にあった奴だ』
2機のギャンが運んでくるコンテナを見てジョンはそのコンテナの正体にすぐ気付いた。
バイオセンサー研究所にあるMSハンガー内に置いてあったコンテナだ。
『X字のバックパックを取り出すんだ。バックパックにはサーベルグリップを付けろ。ライフルとシールドを忘れるな』
『はいよ』
『シールドはデカいのとちっちゃいのどっちがいいすか?』
『デカい方だ。デカい方はバックパックに取り付けられる』
解放されたコンテナから取り出されていく装備を見てジョンは腰を抜かすような思いで見ていた。
『何でG3の装備が入ってるんだ!?』
グラナダにあるはずのコンテナが何故かG3の装備を満載にしてゼクノヴァを通してやってきた別の世界のインドの森の中にある。
ラウンドムーバとジークアクスが装備するタイプのライフルとサーベルのグリップ、対ビームシールドがコンテナから取り出され、ストライクの前に出される。
『ジョン、その様子を見るに使い方は分かるみたいだな』
『使い方は分かるが、何でこんなところにガンダムの装備があるんだ?』
『詳しい話は後だ。これを装着してもらうぞ』
ラウンドムーバにギャン達がサーベルのグリップを取り付けようとして四苦八苦している。
それを見てストライクがギャン達に近づく。
ゼクノヴァに巻き込まれて来たにしては準備が良すぎるコンテナに疑問を持ちつつも、大学の備品を破壊されては困るのでラウンドムーバについてはストライクが自身の手をつけることにした。
『借りるぞ』
ギャンの1機からグリップを借りたストライクはグリップの接続部がジークアクスとストライクの両方が対応できる規格になっていることを確認し、ラウンドムーバに難なくグリップを取り付ける。
『まさかジークアクスのサーベルを取り付けられるとは』
G3の操縦時から疑問に思っていたサーベルの取り付けラッチの謎がここで解明されることになった。
コックピットのデータからラウンドムーバに専用品のサーベルのグリップを取り付けられることは知っていたジョンだったが、専用品のグリップはイズマ支部には支給されなかったのでイズマ・コロニーでは目の前のような光景を見る機会が無かった。
G3は原型機からの名残で太腿にビームサーベルのグリップが格納されていたので専用品が無くても何とかなる環境であったのもある。
ラウンドムーバのMSとの合体に必要な専用プラグが見える箇所を覗いて見るとストライクの背部にある接続部と規格が同一であることが見て取れる。
コンテナラックを介してラウンドムーバーを使っていたG3では不要であった専用プラグだったが、ここに来てジョンはラウンドムーバとストライクが合体できる可能性があることに初めて気付いた。
イズマ・コロニーにいた時は謎だったプラグがストライクとの合体を可能とするのであれば、初めからストライクとの合体を前提にラウンドムーバは作られていたことになる。
『いよっしゃ、これで行けるなぁ』
『取り付けるぞ、兄ちゃん』
ギャン達は慎重にラウンドムーバを持つとストライクの背後に回った。
『ゆっくりで頼む』
物は試しだとジョンは思い、ラウンドムーバと合体してみようと決めた。
ラウンドムーバの専用プラグを慎重にストライクの接続部へとギャン達はぶつけるように合体する。
衝撃が走り、ストライクにラウンドムーバがロックされた。
その直後、ストライクのコンピュータの情報がジョンの脳裏に入り込んでくる。
『ストライカーパックの接続を確認。
本機体において使用可能。
融合炉からの電力供給を開始します』
合体は成功した。
ラウンドムーバに搭載された融合炉からストライクに対して電力供給がなされる。
これで活動時間の不安は解消されたようなものだ。
ラウンドムーバは宇宙用の装備ではあるが、地球上でも短期間の飛行とジャンプによる移動が可能になる。
『いよっしゃあ!!』
『俺たちゃ不器用だが、存外上手く行くもんだな』
『ゼクノヴァを挟んだのによく動くよなぁ』
ギャン達の歓声の中で無事に合体できたことに安堵しつつ、ジョンの内心には更なる疑念が沸き上がってきた。
ハクジを構えた白いギャンはνガンダムへ槍先を向ける。
『貴女方はナガラ衆を名乗っているようだが、我々の立場を忘れたのか?』
槍先を向けられたνガンダムは抵抗はせずにハクジの前に立つ。
『地球圏のゼクノヴァの予防と流れ着いた物を処分するのが我々の役割だろう。そのために永い命を貰ったというのに何を考えているんだ?』
『私達は古いニュータイプの生き残り。何年掛けてもニュータイプが天下を取ることはなかった』
何の感情も込めずにνガンダムは言う。
『私達の長老は今の宇宙世紀で天下を取ることを夢見ている。ナガラ衆のニュータイプによる新たな世界の創造、それが長老の夢』
『馬鹿じゃないか?』
自らの言葉に対して明らかに不本意そうなνガンダムを見てギャンは思わず言ってしまう。
νガンダム自体、本気で言ってる訳ではないのがギャンにも伝わって来た。
『何故ニュータイプであることにこだわる?我々は地球で生まれた者同士だろう』
『少なくとも長老は本気で世界を変えようとしている。だから私達の世界のキシリア・ザビとも提携関係を結んでいる。もっとも…』
νガンダムは意味をなさなくなった左腕の予備サーベルラックを外す。
『失礼ながら貴女方はニュータイプを神聖視しすぎてる。しかもよりにもよってキシリア・ザビと協力関係を結ぶとは、そこまで追い詰められているのか?』
ギャンの問いにνガンダムは答えない。
森の中からバーニアの轟音が轟く。
ギャンが振り返ると森の中からラウンドムーバを装着したストライクがジャンプしながら森から飛び出して行くのが見えた。
『あのコンテナもゼクノヴァでジョンと一緒にこっちに持ってきたな。あんなものをこっちに持ち込むとはナガラ衆は…』
『コンテナの装備を持ち込めるようにしたのは私の勝手です』
問題なくラウンドムーバを使いこなすストライクを見てνガンダムはどこか満足げにその姿を見ていた。
ラウンドムーバは大気圏内でも問題なく稼働した。
相性も悪くなく、何度もジャンプを繰り返しながらストライクはコアファイターが飛んで行った方向へと飛んでいく。
突然現れたナガラ衆のνガンダム、自分に味方するギャン達、何故か自分と同じく転送されていたG3の装備…
ラウンドムーバも初めからストライクでの運用を前提にした造りをしており、極め付きはジークアクスと同型のビームライフルとサーベルがストライクでも使用できるように規格が変更されている。
G3本体と装備の開発にはジオン工科大学とMグループの軍需企業が関わっている。
(まさかナガラ衆の手がここまで加わっていたとは…)
ただでさえ分からない現状が更に分からなくなる。
何も分からず、判断を下すための材料もない中でジョンはアマテ達を追う。
ナガラ衆やシャロンの薔薇が何であれ、アマテ達の身に何か起きる前に動かなければならない。
幾度かのジャンプを繰り返し、ストライクは森の中から砂浜へと着地した。
この砂浜はジョンが上陸した地点だ。
ここに来て最初に振り戻しになってしまった。
センサーはここに至ってもコアファイターを探知することが出来ない。
(まさか海に潜ったのか?)
コアファイターは潜水もカタログスペック上では可能だ。
そもそもジークアクスは海没している以上、コアファイターの潜水機能で海中を移動している可能性は十分にある。
ストライクも水中での移動は可能ではあるが、ラウンドムーバを背負った状態で移動できるかは未知数だ。
ギャン達からは、コアファイターを追いかけることを最優先するように言われてきたがここで手詰まりになってしまう。
せっかくのラウンドムーバをパージして海に飛び込もうかとストライクが考えた時だった。
突然、穏やかであった海が荒れ始めた。
天候は荒れておらず、穏やかななままなのに海面が暴れ狂う。
地震か何かと思ったジョンだったが、地面は揺れていない。
『何だ!?』
海面がミキサーにかけられたように荒れ狂い、やがて大きな変化が現れた。
海がだんだんと割れていく。
ストライクが立つ砂浜に向かって海中から道が出来始めている。
海が谷のように割れていき大きな道が開かれていく。
凄まじい波音を立てながらストライクの前に海の谷間が出来る。
『嘘だろ、何だ、これ…』
あまりに非現実的な光景を前にジョンは唖然とするしかない。
それでも本能的に対ビームシールドを構えながらビームライフルの銃口を海の谷間へ向ける。
これももしかしたらアマテ達と関係のある現象かもしれない。
ストライクは恐る恐る海の谷間へとジャンプした。
谷間をゆっくりと歩くストライクのセンサーがIFFに2機のMSを感知する。
1機のMSはIFFに反応しないが、もう1機はストライクの味方であるとジョンに伝えてくる。
IFFの感知の直後にストライクのデュアルアイが2機のMSの姿を捉えた。
『…アマテ!?』
海の谷間に見たこともないMSが立っていた。
ストライクによく似た容姿をしているが、全身がボロボロだ。
背部には翼を蓄えているが、片方が抉り取られてる。
極めつけに傷だらけの胴体には大剣が突き刺さり、アンバラスな姿勢で立っていた。
明らかに機能を停止しているようなダメージを負っているが、未知のMSはストライクに向かって歩いてくる。
その未知のMSは左マニュピレータにジークアクスの頭部を掴んで引きずりながら迫ってくる。
ジークアクスは力なく未知のMSに引きずられるままだ。
ジョンは我に返り、ビームライフルの銃口を未知のMSに向ける。
『そこのモビルスーツ、動くな!!』
銃口を向けた時点で交戦の意思ありと判断されると一瞬思ったジョンだったが、目の前のMSがジークアクスを掴んでいることには変わらない。
『腕に持っているモビルスーツを放せ!!』
ストライクのコンピュータは目の前のMSを味方だと認識する。
ビームライフルを向けようが発砲することすらできない。
ジョンの警告など知らん、と言わんばかりに未知のMSはジョンに迫る。
『大丈夫かアマテ?』
ストライクからの呼びかけにジークアクスは反応すらしない。
未知のMSはストライクと距離を詰めていくが、奇妙な動作を始めた。
自身の胴体に突き刺さった大剣の刀身を右マニュピレータで引き抜こうとしている。
歩きながらゆっくりと、ジークアクスを海底だった場所へ引きずりながら大剣を引き抜いていく。
ストライクは後退していくが、未知のMSの方が動きが速かった。
未知のMSは立ち止まり、大剣から右マニュピレータを放して左マニュピレータに掴んでいたジークアクスを両腕でストライクに向かって投げつけきた。
反射的にストライクはビームライフルと対ビームシールドを放し、投げつけられたジークアクスを両腕で抱きしめて地面に倒れこむ。
『無事か!?アマテ!?ララァさん!?』
接触回線でジークアクスに話しかけるが反応がない。
その間にも未知のMSは空いた両手で大剣を引き抜いていく。
『ジョン』
ジョンの問いかけにハロが答える。
『ハロ、アマテ達は!?』
『キゼツシテイルダケダ』
気絶は軽い怪我じゃないぞとハロに言いたいジョンだったが、目の前で大剣を引き抜いていく未知のMSの姿にゾッとする。
『ニゲロ フツウジャナイ』
ジークアクスを丁寧に地面に寝かせ、ストライクは起き上がる。
『アマテ達を置いていけない』
ジョン達がいる場所は割れた海の谷間だ。
砂浜までは多少距離がある。
本来ならジークアクスを引きずってでも砂浜まで逃げるのが正解だ。
だが、その前に目の前のMSは大剣を引き抜き終えようだ。
ゾンビのようなボロボロのボディが構える大剣に妖しい光が燈る。
大剣の切先がストライクへと向けられた。
ストライクが投げたライフルとシールドはもう回収できない。
ラウンドムーバのビームサーベルはちゃんと使えるのか分からない。
どうするべきが困るジョンだったが、そんなジョンにはお構いなしに未知のMSは大剣を構えて迫る。
CQCの構えを取ろうとしたストライクだったが、倒れたジークアクスの左腕に装着されている物が視界に入る。
『借りるぞアマテ!!』
とっさにストライクはジークアクスの左腕に装着されているシールドを取り外す。
取り外したシールドを両手で掴み、ストライクは迫ってくる大剣に向かって受け流すように叩きつける。
シールドのIフィールドと大剣に燈るレーザーの光が絡み合う。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
-
ジョン・マフティー・マティックス
-
アマテ・ユズリハ(マチュ)
-
ニャアン
-
シュウジ・イトウ
-
シャリア・ブル
-
シロウズ
-
サンライズカネバン社長
-
シイコ・スガイ